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7/25 FRIGREEN STAGE

FOSTER THE PEOPLE

皆が歓喜して歌い踊る新たなメイン・ストリームの誕生

開演10分ほど前にグリーン・ステージに到着すると、“まだステージ前でもスペースに余裕があるな”と思いつつスマホをイジッていた。しかしふと気が付けば、ほんの数分周囲から目を離した隙に、これから始まる“新しい波”を一目観ようと集まった人々でステージ前方からPAブースの後方まで広大な会場がパンパンになっていた。男女比は半々ほどで、年代も上から下まで幅広く、フジロックでの下馬評通り注目の高さがうかがえた。

アメリカ・LAを拠点とするフォスター・ザ・ピープルは、マーク・フォスター(Vo&Gt/以下、マーク)、カビー・フィンク(Ba)、マーク・ポンティアス(Dr)というシャレオツ優男的(※筆者の想像)な3ピース・バンドで、「MGMT以来の衝撃」と称され今アツい注目を集めているアーティストだ。ロック、R&B、ファンク、エレクトロニカなど様々なスタイルの音楽を貪欲に吸収し、シンセサイザーのサウンドをフィーチャーした楽曲群は洗練されたメロディと丁寧に構築されたアンサンブルとともに、ポップな音作りとは対照的なシニカルな歌詞が込められていることでも、クレバーな才能を随所に感じさせてくれる。先ほど3ピース・バンドと書いたものの、ステージ上には多数のシンセサイザーと、サンプラーやパッドらしきものがいくつも並んでいた。のちに登場する3人のサポート・ミュージシャンを加え、6人編成でライブを行うのだった。

SEが流れただけで、会場の期待値がグンと上がるのを感じつつ、大歓声のなかメンバーが登場。マークとサポート2人の3人がシンセサイザーへ、マーク・ポンティアスのドラムにパーカションがもう1人加わるという体制で、1曲目の“Life On The Nickel”がスタートした。バスドラ1発で腹に来る音圧の中から、マークのキュートな歌声が立ち上がってくる。それだけでテンションが上がってしまった。周りの人々もそんな様子で、ドキドキしているのが伝わってくる。マークは、すでに1曲目の後半から観客を煽るように叫び歌う。手を挙げるフジロッカーたち。彼らの曲をよく知っている人も多そうだ。しかし、これだけ大きいステージなのにドラムがタイトで良い音だ。音源で聴くとデジタル感がもっと前面に出ているが、野外のライブではエレクトロな音色がやや弱まり、有機的なビートや身体性が色濃く浮き彫りになっているように感じた。

シンセサイザーのサウンドがうっすら鳴り始めると、それを呼び水にパワフルなドラムが加わっていく。この時点で何の曲かピンと来た観客は歓声を上げた。そのまま一気に“Helena Beat”になだれ込む。マークの歌声と歌メロが本当にスウィート。みんなでシンガロングしたくなるほど、心も身体もそのサウンドに解放されて気持ちよくなってしまう。先ほどまでキーボードだったサポートはタンバリンに持ち替え、マークはギターを持ちながらフジロックのステージに立った喜びを表現するように小粋な横移動ステップ(?)を見せた。

メンバーたちは1ステージを通して、1曲の中でも楽器を頻繁に持ち替えて演奏していく。間奏では、マーク・ポンティアスとパーカッションによるツイン・ドラムの有機的なビートが冴えた。自然発生的に会場から手拍子も起こり、マークが「みんな手を叩いて!」と呼びかけるとさらに多くの人々が応じていく。それにはマークも嬉しそう。すると、ここでも先ほど披露した横移動ステップを見せる。嬉しいんだね、マーク。グリーン・ステージの正面右側からは強い夕陽が射し込み、晴れ渡った空と乾いた空気がフォスター・ザ・ピープルのサウンドに揺られて、カルフォルニアの雰囲気を思わせた。

続く“Best Friend”のイントロが鳴らされた時点で観客は大喜び。クセになりそうな、スペシャルでハッピーなビートが会場を踊らせる。こちらもシンガロングしたくなる名曲だ。サポートも楽しそうにピンクのカウベルを叩いて跳ね回り、つられて踊ってしまうフジロッカーも大量発生。曲の終わりには、マークが「アリガトウ!」と日本語でMC。日本へ戻ってこられたことに感謝を述べつつ、「フゥ!アッハッハッハ!」と楽しさのあまり笑ってしまうマーク。そんな幸福な雰囲気を包み込むように、“Pseudologia Fantastica”では大きなグルーヴで聴かせる。オレンジに染まりゆく空を泳ぐようにスケールのあるサウンドを鳴らし、マークは両手を大きく広げて空を見上げた。今度は着ていたジャケットを脱いだ彼は、次の“Houdini”で跳ねるリズムに身を任せながらファンキーに、ラグジュアリーに歌い上げていく。何をするにしても品の良さを感じるバンドだ。

日がゆっくりと暮れていくなか、まるで水辺にいるような清涼感のあるイントロから始まった“Coming Of Age”ではマークの伸びのある歌声を聴かせ、歓声の上がった人気曲“Call It What You Want”では会場の手拍子がまた自然に発生した。マークも後から手拍子を呼びかけてはいたが、何より観客が自主的に音楽を楽しもうとしている雰囲気が感じられるのが実に心地いい。“Call It What You Want”のアウトロでアツくなっていく各々の演奏に、巨大なステージは大いに盛り上がりを見せた。

「アリガトウゴザイマス!」の日本語MCから間髪入れず、“ナーナナナーナナナーナナナー!”のフレーズが印象的な“Are You What You Want To Be?”に突入。会場のテンションは一気に急上昇する。ニュー・アルバム『Supermodel』のオープニングを飾る同曲は、Aメロのラテン的な歌い回しが個人的にもグッと来てしまう強力なアンセムだ。これを大音量で聴かされれば、勝手にステップを踏み出してしまう身体を止めるのは不可能である。フジロッカーたちも豊かな音の海を泳ぐように踊っていた。マークは曲の終盤でマーク・ポンティアスのドラムを一緒に叩くといったエキサイトを見せ、観客から大きな歓声が飛んだ。

磨き込まれたシティ・ポップのように、どれもキャッチーでついつい踊りたくなってしまう彼らの曲だが、その歌詞には社会を冷静な視線で見つめた痛烈な言葉ややり切れない想いが乗せられているのがまた興味深い。踊らされながら「楽しんでいるだけでいいのか?」そんな自問自答に襲われてしまう。その鋭いバランス感覚こそが、彼らを単なるパーティー・バンドに括ることができないアイデンティティであり、大きな魅力だ。そこまで分かっていてもライブで聴けば、どうしたってウキウキしてしまう彼らの音はある意味背徳的な魔法がかけられている。どうしようもならなくて踊り明かすだけ。それってロックンロールの根源的な部分だなぁ、と、ぼんやり気が付く。

荘厳な“The Truth”をじっくり聴かせた後は、デジタル・パーカッションを加えてジャングル・ビートのような力強いツイン・ドラムが走り始める。“Miss You”では、歌声の瑞々しさと荒ぶるリズム隊の獰猛さが鮮やかなコントラストを浮かび上がらせる。同曲のライブ・バージョンではリズムの肉体性がより露となり、迫力を増していた。

そして、米SPIN誌が“2011年のアンセム”と評したヒット曲“Pumped Up Kicks”へ。イントロのリズムが鳴り始めると、“待ってました”と大群衆のフジロッカー総出で大はしゃぎ。アップ・ビートのハッピーなサウンドにシニカルな歌詞といった、バンドのカラーがよく分かる代表曲だ。マークも「Singing Japan!」とフジロッカーたちにマイクを向けて大合唱となった。温かくて壮観な光景を照らす夕陽が眩しい。

最後は、音圧のあるバスドラのビートから“Don’t Stop (Color On The Walls)”。こちらも思わず「フューイフュウ!」という口笛や「Don’t Stop, Don’t Stop」のフレーズを口ずさみたくなるキラー・チューンで締めくくった。

「Thank you so much!」 グリーン・ステージに溢れた数え切れない笑顔。皆で踊り、皆で歌う。そんな“新しい音楽シーン”が出来上がっていく過程を目撃することができた。ライブをたっぷり堪能した人々はフォスター・ザ・ピープルの曲をよく覚えていたし、または分からなくてもその場で覚えて思い切り歌っていた。それだけ、彼らの音楽がキャッチーで優れている証拠だろう。苗場の風に吹かれながら、アーティストとオーディエンスが互いの出会いを祝福し合うような素晴らしい時間だった。

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