THE NOVEMBERS
レッド・マーキーで暴かれた感情
フジロックに出演することで確実に届けたいリスナーにリーチしそうなバンド筆頭株が、自分にとってはTHE NOVEMBERSだったので、今回の初出演はステージ上はもちろん、初見らしいオーディエンスの反応をつい見てしまう。もうここ何年も言われていることだが、日本のロックを聴く層は今の洋楽、特にUSインディを聴かないという、ある程度は信ぴょう性のある事実。だけど、好きでやってる音楽でどちらの音楽のハブにもなれるバンドを発見すれば、音楽の楽しみはもっと増す。
THE NOVEMBERSは最近だけでもWild Nothingやなんと御大TELEVISIONと共演を果たし、一方でCharaの作品やステージのバンドとしても活動している。もしそこに共通項を見つけるとしたら、あくまでもオルタナティヴだということだ。
午前中のレッドマーキーという、まだ素面の人が多い状況で、登場するのは彼らにすれば、ライブそのもので判断される好機だったのではないか。カジュアルな野外フェスのシチュエーションに黒装束の4人がステージに登場した最初の時間帯は、まだ熱心なファンが前方で、この一度しかない瞬間を凝視している印象。
1曲めは新曲。ファストなビートとポップに昇華されたシューゲイズ・サウンドは彼らの美学を損ねることなく、さらに広いフィールドへ打って出られる可能性濃厚。一転、透明で輝度の高い”Flower of life”は、キュアーのストレンジなポップネス、ザ・スミスの毒気のあるイノセンスなんかが好きな人には、どストライクだと思う。そしてベースラインはニュー・オーダーあたりから綿々と続く硬質な美学が感じられる。
小林祐介(Vo、G)の「改めまして、ノーベンバーズです。楽しんでいってください」というMC以外、ほとんど言葉を発さず、ひたすら演奏に集中する4人。真夏の陽射しと人いきれで蒸しかえるレッドマーキーにいても、感性だけは研ぎ澄まされていく。バンドのソリッドで獰猛なサウンドのギアが一段上がったのは、小林がエフェクトでまるで生き物の咆哮のようなノイズを出し、冷たく重いバスドラとベースが淡々と鳴らされる”永遠の複製”のイントロダクション。単にテンションが上がるというより、自分の中に邪悪な何かを見つけて、そいつに身体を食い破られるような恐怖を憶える不気味なナンバーだ。
それが小林のシャウトで増幅され、ステージを凝視する人、自分の内側に向き合いながら頭を揺する人が散見された。そのままダークなナンバーが続く。インダストリアル・ロックを想起させる硬質なビートの”鉄の夢”で、さらに激しいシャウトをする小林、恐らく初見のオーディエンスに歌詞は聴き取れないと思うのだが、彼の様式美とは対極にあるシャウトに、誤解を怖れずに言えば「狂っちゃっていいよ」という、音楽だけに許される種類の開放感を得ている気がする。
ラストは反復するギターフレーズがポストパンク/ニューウェーブ好きにはたまらない”Wire(Fahrenheit 154)”。「土足禁止させるわりにここの床は汚すぎる」という、あらゆる己の都合とテリトリーだけで生きる人間や状況への嫌悪。そう、そんな歌詞を歌うバンドなのだ、この人たちは。そんな曲を演奏しながら、ひっつめていた髪をほどき、ギターのヘッドを床に突き刺す小林。その一瞬の行動に目を奪われたまま、4人はあっさりとステージを後にした。
posted on 2014.7.26 11:30
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