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7/25 FRIGREEN STAGE

佐野元春&THE HOBO KING BAND

『Visitors』完全再現した、貴重なひととき

16時前のグリーンステージ。モッシュピットの中は、彼の登場を静かに待ちわびていた。集まるお客さんの年齢層が高いのは言わずもがなではあるが老若男女、一括りにしにくいのも特徴的だ。今回、初のフジロックに登場した佐野元春は、事前の予告通り、自身4作目のアルバム『Visitors』の完全再現をこのライブで果たした。

『VISITORS』というアルバムは、今から30年ほど前の作品。”SOMEDAY”や”ガラスのジェネレーション”といったデビューから彼の音楽人生の礎を築いた名曲が含まれる3部作と言われるそれまでのアルバムとはテイストの異なっており、彼が活動拠点をニューヨークに置いたころに、そこで感じたさまざまなジャンルの音楽が同居するこの街からインスパイヤされた作品となり、大瀧詠一に見初められたデビュー当時からのナイヤガラ系テイストとは逸した、最先端を取り入れた当時の日本には新しい音楽の原点となり、後に音楽関係だけでなく実に多彩な文化人たちへも多大な影響を与えている。

作品発表から30年が経過した今、20代、30代が比較的多く集まるこのステージで、ベスト・ヒットを並べる曲目をあえてはずし、自身が20代の時に異国の地で受けた異文化への初期衝動を詰め込んだこの作品をこのフジロックにぶつける攻めの姿勢にロックの精神を感じずにはいられない。さまざまな人種や文化が集まるニューヨークとさまざまなジャンルの音楽が一同に集まるフジロックに繋がりを感じた彼なりのアプローチは、往年のファンへはもちろんであるが、フジロックで初めて彼の演奏を見る人たちに向けたものなのかもしれない。

街の喧騒からファンキーなリズムで踊りを誘う”Complicaton Shakedown”が始まると、たちまち歓声が上がる。THE HOBO KING BANDという往年のバンドメンバーとサポート・コーラスにラブ・サイケデリコのkumiを迎え、80年代らしいサウンドをみずみずしく蘇らせる。続く”Tonighgt”に演奏が変わると、苗場に吹き込む心地よい風と音楽が一体となって、聞き入る私たちは『Visitors』の世界から引き返せなくなる。

ベテラン勢が揃いに揃った舞台上での”Sunday Morning Blue”の再現もまた秀逸。佐野がアコースティックギターに持ち返ると、”VISITORS”が披露される。この曲で使われるギターは5本。重厚ながらもふわりとしたハーモニーがじわっと身体に染みわたるような感覚に陥る。前半舞台袖でノリノリに踊っていた横内タケは、このアルバムのオリジナルメンバー。”Come Shining”から参戦、力強いギターサウンドで演奏は一層に華やいだ。アルバム完全再現という貴重な時間はあっという間に過ぎ、”New Age”でラストを迎えるころには、この場を離れたくない気持ちでいっぱいだった。

演奏中、一切のMCを挟まなかった佐野は最後にメンバー紹介をし、1980年に発売された1stシングル”アンジェリーナ”を披露する。ああ、もっと聞きたい。こんな思いをしているのは、私だけじゃないはずだ。フジロックをきっかけに彼の音楽に出会えたことが何よりも誇りに思える瞬間だった。

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