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7/26 SATWHITE STAGE

THE QEMISTS

灼熱のホワイトに現れた、邦洋の垣根を吹っ飛ばす爆音モッシュ・ピット!

2日連続でカンカン照りが続いているため、乾いた地面から土煙が舞うホワイト・ステージ。さながら荒野のガンマンでも現れそうな雰囲気だが、どこかですでにブッ放してきてしまったのか、多くの人が放心状態で佇みながら次のライブを待っている。

単に暑さでバテているだけなのかもしれないと思い、会場に集まっている人を観察していると、気付いたことがあった。それは、どうやら次にホワイト・ステージで行われるライブが“目的”ではなさそうな人々の存在だ。1つ前に行われたSiMのアツいライブの興奮が覚めやらないのか、次の次に控えるMAN WITH A MISSIONを狙ってるのか、次なる爆音を求めて飢えたオオカミのように徘徊する若いフジロッカーたちをチラホラ見かける。いわゆる“ロキノン”系ファンとでも言うべきだろうか、生粋のフジロッカーやフジロック原理主義者たち(多くは海外アーティスト目当て)とは違う温度感でそこに居合わせているのが分かった。

彼らは“洋楽”の出演者にいまいち反応していなさそうなのだ。確かに2日目は前述した2バンドのほかにも、ウルフルズ、ザ・クロマニヨンズ、Gotch、the band apart、THE NOVEMBERSなど日本のバンド勢も充実している。“あまちゃん”もあったし。筆者にスポッと抜け落ちていた視点だったが、海外アーティストを見なくても十分フェスとして楽しめるタイム・テーブルだ。そのためか、行く当てがないから“場繋ぎ”もしくは“体力温存”のためにホワイトに残っているだろう若者がステージ後方に分散していた。「ああ、そういう感じもあるよね。次のバンドに興味あるのかな?」と思ったが、この交わり方は数年前のフジロックではあまり感じられなかった流れかもしれない。フェス文化の一般化・巨大化がもたらした交わり、ちょっと個人的に興味深い。

そんなわけで、明らかに前門のSiM、後門のMAN WITH A MISSIONに観客の意識を持ってかれている、なおかつ、今回のフジロックの中でも随一ラウド・ミュージックを求める空気が濃厚に支配するなかに登場した“洋楽”バンドは、ザ・プロディジー直系のダンス・ロック・バンド、ザ・ケミスツだった。結論から言うと、彼らは、洋楽ファンだろうが邦楽ファンだろうがそんな小さな括りを軽々突破し、両者を問答無用で巻き込む巨大なモッシュ・ピットを創造することになった。

サウンド・システム・ブースに入ったメンバーが高らかに両手を上げると、不穏でノイジーなサウンドが鳴り出す。そこへ2MCが登場し「What’s up!? Fujirock!」と煽ると、定位置についた鋼鉄ギターの轟音とマッシヴなドラムの低音が勢い良く乗っかり加速。“Lost Weekend”でいきなり会場に爆弾を投下した。この日はゲストMCにマット・ローズ(Vo)とブルーノ・バランタ(Mc)を迎え、この2MCから繰り出されるエモーショナルな歌とラップで様子見の人々を一気にステージへ引き込んでいく。高速で荒々しいフローが入るなど最初からフルスロットルだ。ロックとドラムンベースをガッチリ融合させ、ハイ・エナジーなライブで知られる彼ららしいスタート。のっけから要らぬ心配など相手にするまでもない、観客を吹っ飛ばす気満々でやってきたのだ。すでにステージ前がモッシュ・ピットと化していく。

続く“Your Revolution”のキレのあるサウンドが鳴り出し、「これはヤバい」と察知した人々がステージ前にどんどん集まってくる。マットが絶叫すると、歓声が上がる。リオン・ハリスから繰り出されるクラブ・サウンド的な重みのあるドラムの音作りが実に巧みで、近未来感も漂わせ、ザ・ケミスツの世界観を支える土台をしっかりと作り出していた。トガったエレクトロ・サウンドを展開したかと思えば、ヴォーカルの叫びとともにラウドにバーストしていく音塊。ステージの左端では、ブルーノが踊りまくっている。「オレたちはザ・ケミスツ!戻ってきたぜ!」とここで“No More”をドロップ。緑のライトが乱舞するなか、ブルーノのアツいラップが走る。会場では早速ダイバーが発生。マットは飛び跳ねながら回転ジャンプでブレイクをキメる。「アリガトー!」とブルーノ。

エモーショナルな“Dirty Words”で、会場はさらにヒートアップ。バス・ドラムに飛び乗って歌うマット。メロディ・ラインとラップと叫びが快楽中枢を刺激していく。「元気デスカー!アリガトゴザマス!」と呼びかけるのは、サービス精神溢れるブルーノ。その人柄の良さからか、この台詞は1セットとしてライブ中何度も繰り返されることになる。「You know?」と問いかけからギターが鳴り出し、驚いた。なんと、間髪入れず本日2回目の“No More”へ突入!何それ!?しかも音圧がさらに増してる!?これはヘッドバンギングは必至、モッシュピットは騒乱!間奏で、ブルーノは「モット、ナビテ(アゲて?)イコー!」「モット!モットモット!」と観客をあおる。これはヒヨッた選択ではなく、ブチ上げる気満々の超攻撃的なセットリストというわけだ。おい感動した!「No More!」と全力で叫ぶマット。「アリガトゴザマス!フジィ最高ゥ!」とブルーノの喜びも伝わってきた。

トランス的なインスト“Be Electric”の“VIP”Ver.が始まるとバキバキのラップを乗せていく2MC。「モットモット、モリアゲテイコー!」とグラサン・革ジャンを脱いだブルーノは「Jamp!Jamp!」「Come on!」と観客をあおる。マットの「Let’s Go!」でさらに加速するビート。ステージの両翼で飛び跳ねる2MCとともに踊りまくるフジロッカーたち。最後にマットが手を挙げると、皆も手を挙げた。音楽で完全に場を掌握していた。「アリガトー!」と1曲ごとに感謝を伝えるのを忘れないところも彼らの気さくさがよく出ている。

ここから立て続けにカヴァー曲を披露。「ザ・ケミスツと一緒にパーティーする準備はいいか?!」とザ・ビースティ・ボーイズのカヴァー“(You Gotta) Fight for Your Right (To Party!)”に投下すると、会場は大盛り上がり。この曲を弾いているときのリアム・ブラック(Gt)は本当に楽しそうだった。ギター、ドラム、サウンド・システムというザ・ケミスツの中心メンバーによる楽器隊のみで、エッジの効きまくったインストへと入っていく。今さらで恐縮だが、2009年のサマソニでのライブではダン・アーノルドがベースを弾くバンド構成だったが、今回ステージ上にベースの機材は見当たらず、中央にあるサウンド・システムでその役割が置き換えられているようだった。公式サイトやYouTubeで確認すると、近年はこのスタイルの模様だ。勉強不足でお恥ずかしい。

「Ladies and Gentlemen!」 彼らはフジロックのためにビックなサプライズも用意していた。「Brand new Track, Just for you.」 大きな歓声が上がる。彼らは熱気でむせ返るホワイト・ステージを見渡しながら、誰もまだ知らない完全な新曲を世界初披露すると告げた。「This is Special One, Just a Fujirock!」 これにはフジロッカーたちも大喜び。その曲の名は“Jungle”。フジロックのために用意されたサウンドは、その名の通りドラムンベースにジャングルの要素を大幅に加え、ノリにノレるグルーヴ。女性ヴォーカルをフィーチャーしたエキゾチックな雰囲気に、ザ・ケミスツが得意とするダンス・ロック的なビートのパートもふんだんに盛り込まれている。世界最速で演奏された“Jungle”に、文字通り山の中の観客も心から楽しそうに暴れていた。

「ありがとう!もうすぐ新しいアルバムも出るし、また戻ってくるよ。私たちは日本を愛してます!」とラストは“Stompbox”!途端にホワイト・ステージの後ろで終盤まで様子見していた人々が前方に殺到し、モッシュ・ピットが巨大化。ダイバーも大量発生!揺れる会場。マットは爆音に身を任せながら、その様子をしっかり目に焼き付けるように眺めていた。フジロッカーたちは拳を振り上げている。

すると、間奏で突如「ミンナ、シャガンディー!ミンナ、シャガンディー!」と呼びかけるブルーノ。「シャガンディー!」に戸惑う観客を「ダウン!ダウン!ダウン!」としゃがませる。となれば、あとはアレだ、「1、2、3!」の合図で全員ジャンプ!さらにモッシュ・ピットは激化し、「See you soon!元気デスカー!」「Once more time!」と火のついた会場に延長戦のガソリンを投入。イカツイ男どももキャピキャピな女の子たちも荒れ狂う!爽快な光景!「アリガトーゴザイマース!」とブルーノ。すべての観客を否応無しに巻き込んで駆け抜けたライブはこうして終わった。全力で暴れ回ったメンバーもフジロッカーたちも笑顔に溢れていた。

ライブ終了後、近くにいた邦楽バンドのTシャツを着た若者グループが「これベストで楽しかったかもしれない」と盛り上がっていた。聴いたことのない音楽に触れられるのもフェスの醍醐味。特にこちらが勝手に垣根を作ってしまいがちな洋楽・邦楽なら、なおさら良いブレイク・スルーだ。ザ・ケミスツは、若者の“洋楽離れ”が騒がれる昨今に、「そんなのは杞憂に過ぎない。届くべきところに届いていないだけ」とそんな明快でシンプルな原因を明示できたのではないだろうか。

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