Steve Hillage (System 7) and 勝井祐二 (ROVO)
時間が奪われた世界
時刻は夜23時を回ったところだ。ピラミッド・ガーデンが煌びやかに、そして穏やかに輝く時間。ここに来るたびに時間の流れが変わったかのような不思議な感覚に陥る。ここで日付が変わる瞬間を迎える予定だが、きっとその事に気付く事は不可能だろう。何故ならこの後出演するのはSteve Hillage (System 7) and 勝井祐二 (ROVO)だからだ。前日のホワイト・ステージと違って今回は二人きり。一体どのような演奏になるのだろうか…。
定刻を迎える頃、徐々に人が増え始める。立っている人間は少なく殆どの人たちがシートを敷いたり椅子を置いて腰をおろしている。客は少なくない。徐々に増えている。程なくして二人が登場した。Steveが「グッドイブニング」と言うと客席から拍手が起こった。いよいよ始まるのだ。
ステージ手前にはたくさんのキャンドルが、ステージ上では青い光が照らされていた。Steveが隙間を無くすような音を流し始める。勝井はその上を自由にそして美しい音を重ねていく。観客はそれに静かに身を委ねる。ピラミッド・ガーデンのステージは演奏によって受ける印象が変わってくる。静かに聴き入る観客。空間を伝播していく音。揺れるキャンドル。以上の要素が非現実的な世界を創りだしていく。勝井のヴァイオリンが増していく。しばらく滑らかな音が続きリズムと呼べるものが無かったが、徐々に産声をあげていく。細かく整列されたメロディが時間の流れとともに姿を現した。ここで時計を見てみると20分が経過していた。逆に言えばここまで時間をアタックのない音色で過ごしていたのだ。やはり時間が奪われる。この細かい音がこのままビートになっていくのだろう。かと思いきや、消えていった。後に残るは残響。その後ろからふと思い出したかのような滑らかなフレーズ。そしてまた細かく早いシンセサイザーのフレーズ。その上で今度はSteveと勝井は細かいディレイで音を紡ぎ出す。そして完全にビートが現れる。観客の中には立ち上がるものも現れる。ふと気付くと観客が増えている。この幻想的な世界に惹かれてくるのだろう。そう感じているうちに一曲目が終了した。時計をみる。0時10分だった。約40分近くこの不思議な空間で過ごしていたのだ。
間をとらず二曲目へ。打ってかわって今度はSteveと勝井のユニゾンフレーズ。リフと言えるリフを弾いている。先ほどまでのアタックの無い音色から考えるとこれは対比だ。照明も赤くなった。観客席を見てみると相変わらず聴き入っている。これがピラミッド・ステージなのか。昼間のバンドで起こるレスポンスとは明らかに質が違う。別にそれが悪いことだとは全く思わない。むしろこれは適材適所というべきなのかもしれない。ピラミッド・ガーデンでこの二人の演奏を聴けたのは貴重なことだ。
最後の曲が終わり、拍手が巻き起こる。Steveと勝井が肩を組んで挨拶をする。その光景と止んだ音で現実に戻らされたようだった。
posted on 2014.7.26 23:30
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