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7/26 SATPYRAMID GARDEN

ホテルニュートーキョー

闇夜に開かれた夢の世界

すべてが夢の中の出来事ではないかと思わされるような時間だった。

心地よい夜風が吹く午前1時、Candle JUNEがプロデュースしたピラミッド・ガーデンのステージ前には、大小様々なキャンドルがユラユラと静かに揺れている。夜深い時間に、ホテルニュートーキョーとキャンドルとすべてを飲み込むような巨大な闇、そしてこのステージ。彼らの都会的でラウンジ・ミュージックのような質感を持つ曲と、この素敵な組み合わせを考えた人物は天才に違いない。

メイン会場から離れた場所に位置するピラミッド・ガーデンは、他のエリアとは雰囲気を画する。特に夜は最低限の明かりがあるだけで暗く、集まった人々はその静かな闇に身を潜め、1日の疲れを癒しているように見えた。またそれは、更けゆく夜を最高のものにしようとこの異空間を選んだということでもある。結果として、その選択は大正解だった。

すべてが静寂に包まれたとき、キャンドルの灯りがともる幻想的なステージに現れたホテルニュートーキョーのメンバーは、ゆっくりと“カルトヒーロー”を奏で始めた。暗闇の中に見つけた小さな光のような、ユラユラとたゆたうような音像が立ち上がってくる。

まるで、闇に浮かぶピラミッド・ガーデンのステージが小さな箱で、ホテルニュートーキョーはおとぎ話に登場する小人の楽団のようだ。そんな錯覚に襲われた。白シャツを着た今谷忠弘(Gt)、高橋充(Ba)、亀山雄三(Dr)、高田陽平(Per)、中村圭作(Key)の5人がどこか給仕のようだし、ヨー・ハーディング(Vo)は雇われの唄うたい、後関好宏(Sax)、本澤賢士(Sax)、松本浩典(Tp)の3人は厨房の料理人のようにも見えた。深い山奥にある料理店のお客様は、もちろん集まった観客たち。魔法がかった深夜の晩餐会が厳かに始まったのだ。

続く“マッドサイエンティスト”では、ラグジュアリーでロマンティックなサウンドが会場を包んでいく。ベース&ドラムの深く余韻のあるリズムが、観客の身体を夜の闇に溶かしていくようだ。ステージには青、赤、紫の淡い光が瞬き、鍵盤が静かな気持ちの高揚をすくい上げるように、宝石のようなサウンドを散りばめていく。“マッドサイエンティスト”とは“ロマンティスト”と同義なのかもしれない。そんなことをふと思った。

ドラムのカウントから“Ebony and Ivory”が始まる。おとぎ話の中の楽団は更けゆく夜に、忘れてしまった愛なのか今でも胸に残る優しさなのか、揺れ動く感情の疼きをキャンドルの光の中にそっと落としていく。消えない悲しみを認識しながら何かを必死に掴み取ろうとするような名曲。この胸を締め付けるサウンドを、幻想的な苗場の夜に聴けたのは最高だった。

「ありがとうございます。楽しんで観ていっていただければと思います」 気が付けば、その何気ない今谷のMCにも不思議と深みを感じてしまうくらい濃厚な空間が出来上がっている。

無音から激しく立ち上がっていく楽器たちの音。点滅するライト。トランペットやサックスのムーディさ、鍵盤やスティールパンの美しい響き。インストのナンバーたちが次々演奏され、悠久の時すら感じさせる。メンバーは淡々と表情を変えずに演奏しているが、各々の音に込められた熱量が火傷しそうなほどに熱い。オレンジの照明に変わると、まるですべてが音楽で溶かされていくようだ。時折、今谷が頭を振りながら音楽と一体化していく。そして、ギターを高く掲げたシーンはこの夜がいかに素晴らしいものかを物語っていた。

終盤に差し掛かり、アーバンな雰囲気の“Succession”へ。ミディアム・テンポで紡がれるギターのリフと柔らかなヴォーカルで、観客の心を夜空へと昇華させていく。そして、ラスト・ナンバーは力強いドラミングから始まった“Bison”。淡く揺れるキャンドルの光。いつまでも続いてほしい時間はゆっくりと終わりを告げた。

こんな最高の音楽と最高の空間に出会う夜は、今後何度経験できるのだろう。闇の中で静かに聴き入っていた観客は、良質のグルーヴでどっぷり身体を満たしてくれたバンドに惜しみない拍手を送っていた。音と光に酔いしれながら、みんなこう思ったに違いない。あれは夢だったのではないだろうかと。

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