“石角友香” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '25 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/25 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 12 Aug 2025 09:39:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.2 「もうええやろ。そろそろ辞めようか…」と考えたことが幾度かあった。でも、辞めなくてよかったね。やっと、「いつものフジロック」が戻ってきた…かも。 https://fujirockexpress.net/25/p_9083.html Sat, 09 Aug 2025 02:09:19 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=9083 我々が愛情と尊敬の念を持って大将と呼ぶのが、フジロックを創造したプロデューサー、日高正博。その彼に「俺がやりたいことを一番わかってるのがお前だ。手伝ってくれ」と言われて、黎明期のインターネットを核に情報発信を始めたのは第1回が開催された1997年が開けた頃だった。それからすでに28年が過ぎている。あの年、台風の影響で生まれた混乱や2日目のキャンセルで荒れまくったのが公式サイトの掲示板。それを公式から切り離し、コミュニティ・サイトとして、その年の暮れか翌年にfujirockers.orgを立ち上げている。それは大将と相談の上で生まれた、いわば、裏公式サイト。フジロッカーという言葉を生み出したのもこの時だ。個人として積極的に発言できる場として彼は幾度となく、ここを通じてメッセージを発信。直接、オフ会に顔を出すことさえもあった。ところが、コロナ禍で参加者が抗原検査を余儀なくされ、全面禁酒に加えて小規模開催しかできなかった21年を境に彼の言葉がほとんど聞こえなくなっていった。我々が彼の「指名手配」写真をパロディ化したTシャツを制作したのは、それを受けていた。なによりも大将が描いたフェスティヴァルを楽しみにしているのがフジロッカー。それほどまでに彼は求められている(「Wanted」)という意味をここに込めていた。このTシャツが最も参加者数が少なかったフジロックで、fujirockers.org史上最高の売り上げ枚数を記録。それはフジロッカーと大将が強い絆で結ばれている証のようにも思えていた。

その大将が「もうどうでもいい。放っとけ」と口にしたのは22年か。彼の体調が悪くなったのは、フジロックがただの野外コンサートにしか見えなかったあの頃からではなかったか? 人気エリア、カフェ・ドゥ・パリ周辺がフード・コードになり、パレス・オヴ・ワンダーにいたってはその片鱗さえなかった。主催者には苦渋の決断だったかもしれないが、あれを「フェスティヴァル」と呼ぶには無理がある。それにも関わらず、「いつものフジロック」を謳っていることに大きな失望を感じていた。もう辞めようか… fujirockers.orgも解散してしまおうかという思いが脳裏をよぎっていた。それでも自分をつなぎ止めたのはスタッフを含め、フジロックの存続を支えようとしていたフジロッカーたち。あの時、「フジロックがない人生なんて考えられない」という声を耳にしていた。そんな彼らがこのままじゃ終われないという気持ちにしてくれたように思う。もちろん、あの流れに抗い、フェスティヴァル復活を目指して必死に動き続けていた裏方がたくさんいたことも忘れてはいけない。

そのフジロックを触発した英国のグラストンバリー・フェスティヴァルを初体験したのは1982年にさかのぼる。当時、まだ20代だった自分はすでに高齢者と呼ばれる年齢になっている。あの時とは比べることができないほど巨大化したこれを取材し続ける意味はあるのか? ここ10数年悩み続けていた。そろそろ潮時かもしれないと思ったことが何度もあった。メディアが求めるのはステージに姿を見せるアーティストのことばかり。でも、それは、おそらく会場の20%にも満たないスペースで繰り広げられている一部分にしか過ぎない。だからこそ、ラインナップがほとんどわからない時点でも、20万枚以上のチケットが20~30分で完売となる。あのフェスティヴァルの魅力はメディアがほとんど取り上げない、その他にあるのだ。が、それを伝えるメディアはほとんど消え失せている。加えて、毎回同じことを書くわけにもいかないと、ここ数年はグラストンバリー未体験の若手ライターや写真家を同伴。彼らの新鮮な視点で伝えられる記事を楽しむようになっていた。開催時期に入院していた1995年を除いて、欠かさず通い続けて今年は43年目。もうなにも目新しいものはないと予測するのが普通だろう。が、待っていたのは「伝えなければいけない」という衝動を生む出来事や人との出合い。それが嬉しくて、また語り、書き続けていくことになる。

そのひとつが今年の前夜祭でレッド・マーキーに集まったみなさんの集合写真を撮影する時に語ったことだった。

「The Whole Farm’s the stage and all of you are players」

そんな言葉が書かれたポスターが、取材拠点となるプレス・テントを出た広場の壁に飾られていた。これは会場内で古ぼけた活版印刷の機械を使って毎日新聞を発行している地元のスタッフが作った1枚。それにハッとさせられるのだ。ここに書かれているfarmとは会場となっている農場を示す。簡単に訳せば「会場全てが舞台(ステージ)で、あんたたちみんなが演者(プレイヤー)なんだ」となる。

Photo by 阿部光平

フェスティヴァルの魅力…あるいは、そこで生まれるマジックの所以をこれが見事に語りかけているように思えていた。「自然に囲まれた環境がフジロックの魅力ですよ」としたり顔で語る業界人は多い。でも、それは要素のひとつにしか過ぎない。また、「ユニークなラインナップ」も間違ってはいない。が、フジロックというフェスティヴァルの魅力ってなになんだろうと考えた時、グラストンバリーでみつけたあのフレーズがピンとくる。おそらく、苗場にやって来る人たちの想いがなにやら磁場のようなものを生み出し、それがフェスティヴァルを作り出しているんじゃないだろうか。

フジロックに絡んで始まったのが年に3回ほど開催されている苗場のボードウォーク・セッション。全国からその補修をするために集まってくるヴォランティアのみなさんとはすでに顔なじみで、会場で彼らとよく顔を合わせている。今年は行けなかったが、フジロック直前の7月のセッションの時には会場設営が始まっていたはず。ここに舞台設営にPA関連、テント設営からトイレの準備と、多くの人が加わっていく。そして、前夜祭前日まで、汗まみれで働いているのが、ゴンちゃんの制作チームやパレス・オヴ・ワンダーのスタッフ。と思えば、ボードウォークを歩いていると、様々なオブジェを作っているアーティストたちが目に入る。その誰もが笑顔で輝いている。出店しているブースの飾りやデザイン担当から、その裏で働く人たちやフジロックを支えてくれる地元のみなさんの想いをひしひしと感じるのだ。

そこに雪崩れ込んでくるのが、全国どころか全世界から集まってくるオーディエンス。なかには思い思いのコスチュームに身を固めて遊んでいる人や楽器を持ってきて演奏する人もいる。今年はゲリラDJも出没したんだそうな。彼らから放たれるエネルギーがなにかを揺り動かし、それが共鳴しながら拡散、拡大されていく。ステージに立つミュージシャンの演奏がそこに重なって有機反応を引き起こす。それが奇跡的なパフォーマンスの数々を生み出しているようにも思えるのだ。フジロックでのライヴ体験の素晴らしさの背景にはそれがある。DJブースは、もちろん、カフェやバーに食事を提供するストールでも同じこと。見ず知らずの人にだって、当たり前のように話をすることができて、あっという間につながりができる。そんな空気がここに出来上がっている。

そのフジロック、今年は7月19日に始まっていた。前夜祭は7月24日なのになぜ? と思われるかもしれないが、その前の週末に幕を開けたのがフジロックの一部、ピラミッド・ガーデン。会場の端っこにあるここが「Beyond the Festival」と銘打って単独開催されていた。フジロック独特の磁場がゆるやかに、本番に向かって確実に強くなっていたのを、ここに遊びに来た人たちなら、感じることができただろう。

主催していたのは2010年からこのエリアを任されていたキャンドル・ジュン。彼のフェスティヴァルへの想いがこれを動かしていた。それは大将が抱いていた「想い」にも繋がっている。ずいぶん昔のこと、彼が口にしていたのは「1週間ぐらい開催するってのもいいなぁ」というアイデア。ひょっとすると、そのあたりに伏線があったのかもしれない。大将がなによりも求めていたのは、ラインナップに依存することなく、「フジロックだから」こそ戻ってきたいと思わせるフェスティヴァルを作り上げること。そんな想いをピラミッド・ガーデンに詰め込もうとしたのが今回の試みだったのかもしれない。

ここにいるだけで気持ちよかった。ライヴを追いかけてあくせく歩き回ることもない。タイムテーブルはのんびりと余裕を持って作られているし、ライヴが中心でないのは明らかだ。釣り堀で釣った魚を料理して食したり、サウナで汗を流して冷たい水が流れる川に飛び込む。あるいは、ワークショップを覗き込んだり、日陰で昼寝をしたりと、ゆったりとした時間と空間の中に身を置くことだけで気持ちいい。生きていることのしあわせを充分に感じることができるのだ。

加えて、大将がいつも口にしていたのは「地元の人たちと一緒に作る」という意識だった。都会から地方に来た企業が利益を吸い上げ、地元はおこぼれを授かるだけといったイヴェントのあり方を彼は嫌悪していた。ピラミッド・ガーデンに反映されていたのがそれだった。後援は地元の湯沢町で、一役買っていたのが苗場観光協会。実は、この閉幕からフジロック開催までの間に会場を使って開かれたのが、フジロックに大きな貢献をしている地元若者の結婚式だった。これが今後、どういった展開を見せるか未知数だが、フジロックや苗場を愛する人たちにもそういった場として、この時間と空間を提供していきたいとのこと。興味がある方は観光協会へ問い合わせてみたらどうだろう。

大将から「フジロック前に、みんなに伝えておきたいことがある」と連絡があったのはその取材をしていた時だった。それを受けて、東京のスタッフが彼を訪ねている。話題になったのはクロージング・バンド。その言葉からはこのプロジェクトに対する彼の並々ならぬ想いが伝わっていた。今年はそれだけにとどまらず、様々な指示を出している。ネパールのバンドを招聘したり、どん吉パークのDon’s CafeにDJを入れたいという依頼も届いていた。それを受けてフジロッカーズ・バーの常連DJに協力を依頼。「俺もDJするかも」なんて言われて、リクエストのあった昭和歌謡のシングル盤も用意していた。その1枚がクロージングに出演した尾藤イサオの大ヒット曲『悲しき願い』のオリジナル。もちろん、これはここで使っているし、最後のグリーン・ステージでご本人に見せると大喜びしてくれて、なんとサインもいただいている。

Photo by おみそ

Don’s Cafeは大将の盟友、池畑潤二率いる苗場音楽突撃隊がゲリラ的にライヴをする苗場のホーム。昨年はDJゴンちゃん夫妻がDJをしているし、彼のお気に入りバンド、USも演奏している。今年も同じだがホットハウス・フラワーズのリアムがここに加わり、ゴンちゃん夫妻に代わったのがフジロッカーズ・バーや仲間のDJたち。主要ステージでの演奏が終わる頃ともなると、大将を慕う仲間がここに集まってくる。といっても、実は、フジロック開催を前に「身体が持たないかもしれない」という情報もあって、大将の会場入りが危ぶまれていた。が、前夜祭の朝、東京を離れたという連絡が入ってひと安心したものだ。彼を訪ねると、血色もよくて、去年より元気に見えた。体調もよかったんだろう、毎晩、ここに顔を出して仲間と一緒に楽しんでいた。

そして、最終日、いきなり大将から呼び出しだ。DJの仲間とセッティングをしていたどん吉パークからとぼとぼ歩いて本部の隣を訪ねると、「フジロッカーになにかプレゼントしたいんだ」という。「じゃぁ、今年のポスターにサインしてよ」とお願いして、その様子を撮影。それを3枚受け取っている。さて、このプレゼント、どうしようか。大将へのメッセージを書いてもらうのを要件として、応募してくれた人から抽選するのがベストだろうと思う。もちろん、そのメッセージは彼に手渡すことにしよう。詳しくはこちらで確認していただけると幸い。

Photo by おみそ

クロージング・バンドが演奏する前に大将と一緒にグリーン・ステージ脇に移動。初めて顔を合わせる尾藤イサオと彼が談笑している姿がほほえましい。耳をそばだてているとエルヴィス・プレスリーがどうしたこうしたとロック談義が続いているのがわかる。このライヴに出演するみなさんと挨拶を交わしつつ、「お客さん、残ってくれてるかなぁ」と心配顔だった大将。でも、残って楽しんでいる人たちを見ると実に嬉しそうだ。そして、1943年生まれで御年82歳だというのに、とてつもなくソウルフルな尾藤イサオに大喜びしながら、『悲しき願い』を声を出して一緒に歌っているのだ。

「みんな、若いから知らないかもなぁ。でも、これは、俺からみんなへのギフトなんだ」

彼が愛して止まないロックンロールの名曲の数々を、日本の伝説的ロッカーに歌ってもらい、オーティス・レディングの名曲『ドック・オヴ・ザ・ベイ』をリアムにまかせる。そして、チェ・ゲバラと並んで彼のヒーローだというジョン・レノンの『イマジン』を加藤登紀子に託して幕を閉じる。そこには彼の想いがあった。

さて、今年のフジロックはどうだったか? なによりも嬉しかったのは愛知県豊田市で続けられている、おそらく、国内で最も素晴らしいと感じた『祭り』、橋の下世界音楽祭の仲間がフジロックの奥地を復活させたことかもしれない。印象的なステージを苗場に持ち込んで作り上げたのがオレンジ・エコー。これで明らかに観客の流れが変わっていた。彼ら独特の色を持つラインナップも興味津々で、あの世界がまだまだ広がっていくことを予感させる。地元新潟から三国トンネルを越えた群馬あたりの伝統工芸から民謡や芸能までがここに紛れ込んできたら… なんて夢みるのは、それこそ彼らが橋の下でやっていることだから。さて、来年はどうなるだろう。

また、子供の頃から、あるいは、生まれた頃からフジロックと共に育ってきた地元、苗場の若者たちがDJブース、Roots Grooveを動かし始めたのも特筆に値する。かつてワールド・レストランがあったエリアにGonchan Barを誕生させたのもそんなひとり。これで彼らもフジロックを作る一部となった。さて、これから彼らがなにをどうする? ボードウォークでのパーティは、もちろん、まだまだできることはあるはずだ。彼らからどんなアイデアが出してきて、どう発展させていくのか、それが楽しみでならない。

3年を費やして徐々に復活したパレス・オヴ・ワンダーとブルー・ギャラクシーがフジロックには「なくてはならない存在」だということを見事に証明していたのが今年。「ラインナップでしかチケットは売れない」ってのが、業界では常識らしいが、さて、どうなんだろう。圧倒的な人気を持つスターが演奏している時だって、ちっぽけなステージやDJがいるところには人が集まっていた。その全てがフジロックの魅力。だから、ここに来るのだ。

結局、今年も、雑務に追われて、ほとんどライヴを見ることはできなかった。6月にローマにまで出かけていって、魅力を伝えようとしたフェルミン・ムグルサもクリスタル・パレスでチラ見しただけ。楽しみにしていたホワイト・ステージにはたどり着けなかった。春ねむりを見ようとアヴァロンに向かうと、NGOヴィレッジで難民問題をアピールするブースで昔からの友人と遭遇して長話。結局、わずかな時間しかライヴには接することができなかったが、インパクトは強力で濃密だった。ちなみに、かつてワールド・レストランでフィッシュ&チップスを売っていたのが遭遇したイギリス人。映画にもなったワイト島ミュージック・フェスティヴァルを10代の頃に体験していて、東京でやったフジロッカーズ・バーに来てもらって当時の体験談を聞かせてもらったことがある。

多くの人がそうだったように山下達郎のライヴはなんとしても見たかった。が、あまりの人の多さに恐怖を感じてステージが見えるところまで出かけてはいない。簡単には帰ってこられないと思って、フジロック・エキスプレスの本部裏で音を聞いてたにすぎない。

「仕事がどうなるかわからないんですけど、見に行きたいですよ。竹内まりやが出てきたら… もう、奇跡ですもの」

と、語っていたのは苗場プリンスで働いているスタッフの方。さて、彼はその奇跡を体験できただろうか。あの時の騒ぎや興奮は本部裏にも伝わっていた。実際に見に行った仲間からは、目の前で泣きそうになっていたのは日本人じゃなくて、アジアのどこかから来た人だったとか、海外からのお客さんがやたら多かったなんて話しも伝わっている。

山下達郎の方針としてライヴは放送させないんだとか。でも、それでいい。スクリーンを通じて伝わるのはその一部。Be there or be squareとはよく言ったもので、そこにいなけりゃわからない。うだるような暑さに襲われていたあの日、ひどい雨にやられてしばらくの後に始まったあの時の空気や臭い… そのなかで待ちわびた人たちが最初の音を聞いた時の興奮がどれほどのものだったか。ステージから放たれる音楽が空気を揺らして、それを全身で浴びる感覚はお茶の間ではわからない。さらに、フジロックそのものの魅力は伝わりようがないだろう。

あのステージに近づけなかったおかげで、苗場食堂で目撃することになったのがクリス・ペプラーのバンドだった。

「J-Waveで番組をやっているんですけど、そこで言ってたんですよね。今年のフジロックの一押しは、間違いなく山下達郎だよねって。そしたら、真裏で演奏ですからね」

と苦笑いしながら続けたライヴ。素晴らしかった。スライ&ザ・ファミリーストーンの『Thank you』をカバーしたのは、スライ・ストーンへのトリビュートなんだろう。そこにはブラック・サバスのフレーズも飛び出していた。言うまでもなくオジー・オズボーンへの感謝の気持。めちゃくちゃ嬉しかった。

始まるまではずいぶん長い時間を待たされるように感じるけど、動き出すと一瞬のうちに終わってしまうのがフェスティヴァル。どこかでメンバーには出会えてもライヴを見ることができなかった友人のバンドは数え切れない。出店している仲間たちにもわずかに挨拶できたに過ぎない。会場内外を歩きながら、できるだけ多くの仲間たちと言葉を交わそうと思うけど、なかなかうまくはいかない。そして、気が付くと最終日。いつものように夜明けを迎えるパレス・オヴ・ワンダーあたりに顔を出すのだ。そこで体験できるのが至福の時。会場から流れ出てくる人たちの表情が素晴らしい。若干の疲れを見せながらも、誰もがニコニコ、ニヤニヤと笑顔を見せている。それだけで「楽しかったよ」と語りかけてくれているように見える。名残惜しそうな表情を浮かべながら、たむろしている人も多い。クリスタル・パレスから音が消えて、バーのテントも最後の曲を流している。ザ・ハイロウズの『日曜日よりの使者』。それを大声で歌っている人たちに感動しながら、撤収作業に向かう。ありがとう。今年もフジロックに来てくれて。きっと、来年も、また会えるよね? 心の中で彼らにそう語りかけながら、今年の幕が下りていった。

さて、自分が体験できたフジロックはほんのわずかな部分でしかない。でも、全国から駆けつけてくれたボランティア・スタッフが、馬車馬のように働きながら続けてくれたこのがフジロック・エキスプレス。ここにもっともっとたくさんの「しあわせ」の瞬間 が刻まれているはず。これを書き上げて一段落したら、また、ジックリと拝見しようと思う。ありがとう。みなさんは、私の宝物です。

なお、今年動いてくれたのは以下のスタッフとなります。

■日本語版
HARA MASAMI(HAMA)、安江正実、堅田ひとみ、リン(YLC Photography)、森リョータ、みやちとーる、古川喜隆、おみそ、平川啓子、佐藤哲郎、©2025MITCH IKEDA、前田俊太郎、井上勝也、suguta、粂井健太、エモトココロ、Miyaryo
東いずみ、渡辺紗礼、YAMAZAKI YUIKA、越川由夏、浅野凜太郎、こっこ、Izumi、Eriko Kondo、阿部光平、丸山亮平、梶原綾乃、阿部仁知、イケダノブユキ、三浦孝文、石角友香、あたそ、西野タイキ

■E-Team
Jonathan Ruggles、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

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勢喜遊 & Yohji Igarashi https://fujirockexpress.net/25/p_1083.html Sun, 27 Jul 2025 16:34:01 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1083 ドラマーの勢喜遊とDJ/プロデューサーのYohji Igarashi。先日1stシングル“Say Less”がドロップされ音楽性を知ることはできたが、果たしてライブは?

最終日のRED MARQUEEの深夜枠であるSUNDAY SESSIONのトッパーで登場した2人、というかまずセットがすごい。ステージ上におのおの小さなリングのごとき輪で囲んだステージ2基が準備され、方やドラムセット、方やDJ機材がスタンバイ。この演出の時点で爆上がりである。ステージが始まると、RED MARQUEEのクラブ仕様のポテンシャルが音響、ライティングともに最大限に発揮された。

エレクトロミュージックのビートを人力で叩き出すことで生感が増すのはもちろん、視覚的にも正確さが欠かせないこのスタイルをこの目で見る楽しさ。King Gnuでのドラムスタイルとは当然違うのも見ものだ。インストに続いてはODD FOOTWORKSのラッパーPECORIが彼のスタイルとも親和性の高いハードなビートに乗せて一発かます。ゲストも多彩そうだと理解したフロアのテンションは一気に上昇。予感は的中、新井和輝がベースを携えオンステージし、極太なエフェクトをかましたサウンドを放ち、自在に動きながら弾き倒す。昨日、君島大空バンドで見せたアプローチとはまた違う側面にこの人のレンジの広さを思い知る。

ゲストはさらにラッパーのHANATANIとCOTAMORIを迎え、ロック寄りのヒップホップとの相性の良さも証明。もちろんすさまじくローを強調したサウンドは軽く音圧でぶっ飛ばされそうな勢いだし、ライティングと背景映像が襲いかかるような情報量だ。初お目見えのライブにここまで準備してくるのはフジロックだからなのもあるだろうし、RED MARQUEEの深夜帯という特性もめちゃくちゃ戦い甲斐があるだろう。最後のゲストはDaichi Yamamoto。最もストーリー性がありそうなラップで、ぜひ音源としてリリースしてほしい。

ゲストのフィーチャリングで大いに湧いたあと、より加速するようにハードかつ速い曲が続く。ハウス/テクノを人力で表現する、そのディティールの細かさが勢喜遊というドラマー/パーカッショニストの個性かもしれない。勢喜遊とYohji Igarashiがサシで勝負するニュアンスも人力とマシンの拮抗ならではだ。ラストスパートにドラムンベースナンバーをぶち込むと、冒頭、若干様子見だったフロアも完全に着火。このアクトを逃さなかったオーディエンスは誰もが満足顔だった。初っ端から濃厚なライブを実現したのは2人の功績だが、フジロックはこんなことも起こり得る場所なのだ。

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kanekoayano https://fujirockexpress.net/25/p_1077.html Sun, 27 Jul 2025 13:52:49 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1077 正直びっくりした。ライブ、こんなサウンドだったっけ?パッと思いついただけでもMy Bloody Valentine、ときに初期のRadiohead、曲によってはOGRE YOU ASSHOLE……。バンドKanekoayanoの初作にして最新作『石の糸』のインタビューで、彼女はシンガーソングライターのバンドアレンジみたいなのが嫌と言っていたが、そのニュアンスはすごいわかると思った。カネコアヤノが「バンドにしよう」と提案したことは彼女を自由にしたと同時にミュージシャンとして腹を括らせたところもあったんじゃないか。もう、そのことがダイレクトに伝わるライブだった。

RED MARQUEEは外まで人が溢れる盛況ぶり。テントの中の音はかなりの轟音で、外に出るとベースのローが他の音より強く響いてしまい、やはり中で観るのが正解ではある。ステージ上はほぼ観えないが出音を確かめるべきだろう。どうやらバックライトでシルエットになっているようだ。のっけから林宏敏(Gt)のリバーヴィなサウンドが空気を揺さぶる“石と蝶”。カネコのボーカルはただ伸びやかというより柔らかさと鋭さが交互に来るのが破壊力になっていると思っていて、いまのシューゲイズなバンドサウンドにより自然にハマっている。のっけから10分近い体験的な演奏が聴けた。バンドkanekoayanoを演奏と音でわからせた感じ。

“アーケード”もいまのアンサンブルと音になり、“太陽を目指してる”は音でメンバー同士が喋ってる印象で、“僕と太陽”はサイケなギター、ダンスミュージックのようにベースのローが効いている。どの曲もぐっとフィジカルに来る。カネコの表情など細かい部分はわからないが、遠目に伸びた髪とシンプルな黒いワンピースがフォークの女性シンガーみたいに見える。印象としてはジョニ・ミッチェル。仲間とともにバンドを始めたばかりの、しかし自分が作詞作曲した楽曲をやるバンドのメインソングライターの凛々しい感じだ。

新作からの“さびしくない”はカネコのボーカルがこちらに「おまえ、なんか嘘ついてんじゃないか?」と過度な褒めとか誇張に対する忌避感があって、それが彼女の歌を「まっすぐ」だと形容することにつながるのかな、と思った。なかなかすごい曲である。「さびしくない」のリフレインがとぐろを巻いて、大きく振りかぶったカネコの髪が揺れた。

“気分”に続き、フリーなセッションぽい“ラッキー”でミュージシャンそれぞれの個性がわかる。ブルージーだったりダブセクションぽい箇所があったり体験的なライブアレンジだ。以前の曲もバンドアレンジになって彼らが何を試行してるのかがわかるし、長いギターソロも自然に聴こえる。

さらに新作からの“WALTZ”、難しいという気持ちをそのままの純度で叫ぶ“難しい”はフューシャピンクのライティングがより意識をそっちに向けさせたのかもしれないが、マイブラの“Loveless”じゃん!と心の中で呟いてしまった。楽器がノイズを放ちまくりエンディングを迎えたのも痛快だった。フジロックで、しかもキャパとしては大きくはないRED MARQUEEでバンドkanekoayanoはその実相をしっかり刻みつけたのは偶然じゃなかったと思いたい。

メンバー:カネコアヤノ(Vo/Gt)、林宏敏(Gt)、takuyaiizuka(Ba) / サポートメンバー:SEI NAGAHATA(Dr)、宮坂遼太郎(Perc)

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SILICA GEL https://fujirockexpress.net/25/p_1052.html Sun, 27 Jul 2025 12:04:09 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1052 今年のフジロックにはHYUKOH(AAAでの出演だが)、Balming Tigerら韓国でも突出したアーティストが出演していることも話題だが、エッジの立ったロックバンドではこのSILICA GELが筆頭だろう。メンバーのKim Hanjoo (Key, Vo)は昨日のBalming Tigerでバンマスも務めた、いまの韓国シーンのキーマンのひとりだ。

MONO NO AWAREのあと、暑さと土埃対策でWHITE STAGEに放水されたのが功を奏して若干過ごしやすい。ワンマンライブにも足を運ぶようなコアファンは最前列で待機しているが、じょじょに他のエリアから人が流れてきた。サウンドチェックの段階から「そこまで本気出して大丈夫か?」と心配になる丹念さと熱量を見せた韓国のトップバンドは音源でのクールさや先鋭性と比較して、いい意味で大学の音楽サークルっぽいナードさに情が湧いてしまった。ピュアなのである。

メンバー登場とともにロゴが投影され、おのおの位置につくとHanjooのシンセにトンボがとまり、それをそっと逃がしてやっていた。スターターはKim Chunchu (Gt, Vo)のスリリングなリフが痛快な“NO PAIN”。ハンドマイクで予測不可能な動きで歌うHanjoo。インディギターバンドだが、ジャズ/フュージョンのテクニックや速さが彼らの存在を際立たせている。“sister”“Juxtaposition”と、走らせるシーケンスのマシンぽいセンスもクール。かつギターソロがしっかり意味を持つ、男子学生永遠の大好物メガ盛りみたいなバンドである。

シンプルなドラムセットにも関わらず手数の多いKim Geonjay (Dr)。その個性が際立つ“ Realize”でさらに加速する。SF的なシーケンスとグラムロックっぽいギターリフが並列する“Kyo181”では強めな声質のHanjooとChunchuの真っ直ぐな歌声の対照も聴きどころだ。曲によっておのおのボーカルパートを持っていたり、ユニゾンで歌ったりする編成自体が珍しいが、ステージ上で2人が向き合い、いい緊張感を保っていることがこのバンドのダイナモなんだろう。歌いながらテクニカルなフレーズを弾くChunchuもだが、4人とも音楽的な運動神経がすこぶる良い。

Hanjooの短い謝辞に続いて、先日リリースされたばかりの新曲“NamgungFEFERE”のシンセのイントロに歓声が上がる。明らかにこれまでのナンバーとテンポもリズムも異なり、アトモスフェリックな音像だ。音源ではJapanese Breakfastをフィーチャーしているが、そこもHanjoo、Chunchuのツインボーカルでカバーする。

再びマシンミュージックっぽい体感を本領発揮する“APEX”でインストセッションが加熱。音像はクールだが人力のループを愚直なまでにGeonjayもChoi Woonghee (Ba)も刻み続ける。続く”Andre99“でのChunchuのギタープレイを見ているとTK from 凛として時雨や崎山蒼志のエクストリームさを思い出した。自分を最も投影できる武器としてのギター。素朴な風貌も相まって意外性がすごすぎる。すでにライブで何度も披露されてきたのか本国ファンを中心にクラップが決まる”NEO SOUL“、ここまでの楽曲と少し趣きが変わった大きなノリを持つ”Ryudejakeiru“まで、ほぼシームレスに突っ走ってきた4人。プログレッシヴな側面とメロディやリフのキャッチーさが絶妙にライブ映えするセットリストで、意外と肉体派であることが理解できた。

Hanjooは日本語で「こんにちは!」と「お元気ですか!」をおのおの3回繰り返す。フロントマンあるあるな変わり者気質なのかもしれない(失礼)。Woongheeはフジロックはロック好きな彼にとって夢の場所だったそうで、自分に何ができるわけじゃないけれど、このフェスティバルは終わらせたくないと改めて思う。そして目下新作を制作中で、今年か来年、そのアルバムを携えて帰ってきてくれるそうだ。今回のベスト選曲のライブはそれを考えるとこの日、ギリギリ間に合った近年最後のモードとも言える。

ラストは存分にギターソロを盛り込んだ“Tik Tak Tok”。ちょっと前、ギターソロ不要論が浮上したけれど、今年のフジロックではギターソロをはじめインストゥルメンタルの楽しさを体現するバンドが多い。冗長なソロではなくスリルを感じる楽器演奏が完全に還ってきた。もちろんSILICA GELもその一端を代表するライブを見せたのだった。

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She Her Her Hers https://fujirockexpress.net/25/p_1105.html Sun, 27 Jul 2025 07:31:42 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1105 昨日は長めの豪雨に見舞われたが、最終日の午前中は再び強い日差しが容赦なく照りつけている。FIELD OF HEAVENのトッパーを務めるのはキャリア十分にして、国内以上に中国など海外のライブで多くの動員を誇り、アジア16都市を回るツアーも行っているShe Her Her Hers。2019年には中国のレーベルと契約も果たしている。が、いかんせんアジアでの活躍は伝えられているものの肝心の音楽性に触れた記事をあまり目にしない。ここは久しぶりにステージを見るのがいい。しかもバンドにとって初のフジロックなのだから。

ベースとヴァイオリン&キーボードのサポートメンバーを含めた5人編成でステージに現れた彼ら。淡々と滑り出したのは“Diagram X”。サウンドがミスト状に降りかかり体感マイナス2℃ぐらいの感覚だ。髙橋啓泰(Vo/Gt)の声とギター、とまそん(Syn)の澄んだシンセのテクスチャーが通奏音を司る。“Bloody Mary Girl”“non zero sum game”と早くも彼らのグルーヴがヘヴンを支配する。なると、なぜこの涼やかなドリーム・ポップをシラフで聴いているんだろうと悔しくなる。軽い酩酊があればこの揺らぎもさらに最高なはず。真夏だからこその贅沢だろう。

一定数、彼らのライブを目当てに集まったファン以外も次第に身体を揺らしていくアンサンブル。高橋のボーカルのオクターブ上下でユニゾンするとまそんのコーラスも涼やかさを醸す“SPIRAL”、“Pre-Logue”でのアンニュイなボーカルともどかしさを音にしたようなギターサウンドを何も損ねずに届けてくれるライブPAも素晴らしい出来だ。ヴァイオリンリフやパーカッションサウンドのサンプリングも曲のフェティッシュな魅力を支えて、より届くアレンジで聴かせる“drip”。空間を拡張するギターサウンドと暑さがまさに白日夢を見ているような気分をナチュラルに増幅する。それでいて歌詞は忘れそうな本音を鋭く刺してくる。“誤魔化していないと痛い、短いドキュメンタリー/主役は君だから/アスファルトに歪んだ輪郭のbad trip”なんて歌詞が耳に忍び込むのだから。エンディングに向かって松浦大樹(Dr)のドラムの手数が増え、すべての音のレイヤーが壁を作りスッと終わる。なんとも冷ややかな感触だ。

続いて”Episode 33“を披露し、おもむろにフジロック初出演の感慨をとまそんは「いつかシーハーズの1年目を観たって言えるよう、続けていく」、松浦は「選択の連続のようなフジロックで会えて嬉しいです」とオーディエンスに感謝し、高橋は「フジロックで出会ったカルチャーや音楽がたくさんあるので、ほんとに今日は幸せです」と、さりげないけれど心から望んでいたことが伝わる言葉ばかりだった。

MC後も”Chelsea“、近作『Pathway』から”Thirsty“、そしてひとりの夜にリピートしたリスナーもきっと多いであろう”Bystanders“が、フジロックという祝祭の場所で鳴らされた。これはきっと記念日だ。

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MONO NO AWARE https://fujirockexpress.net/25/p_1053.html Sun, 27 Jul 2025 04:56:22 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1053 玉置周啓(Vo/Gt)はただフジロックに出演できることを手放しで喜んでいるわけじゃなく、この場でいまのMONO NO AWAREがどんなバンドなのか?セットリスト+αで意思表明してきた。おそらく玉置だけの意見じゃないだろうが、最近のアルバムやシングルリリースの都度、明確なテーマがあるだけに、ファン以外のオーディエンスも多いフジロックではっきりさせたい何かがあったんだろう。

というのもオープニングは玉置と加藤成順(Gt)の故郷、八丈島の太鼓の演奏が2人の演者によって披露されたのだ。その強靭なビートに身体をくねらせる玉置をはじめメンバーがステージに現れる。彼らの演奏は山に響き渡るように「ヤーヤーヤーヤーヤー」と詠唱する“明日晴れたら”から。民謡的な側面とXTCにも通じるユニークなアレンジに耳が行く。続いては“井戸育ち”。世間や都会を知らないことを意味する初期のナンバーだが、玉置のストラトはコリー・ウォンばりのナイスカッティング、加藤も山が見えるこの空間に身を任せてリラックスした表情でアレンジは大幅に更新されている。

「外気持ちいーーーーー!」と大声で心情を伝える玉置に100%賛同のリアクション。まだライブは序盤なので、立て続けに初期曲を演奏したのはたまたまかもしれない。ライブの行方を見守っていると、次は玉置ならではの早口言葉がスリリングな“かむかもしかもにどもかも!”が大きな歓声とともに進んでいく。こうしたループナンバーでの竹田綾子(Ba)のプレイはティナ・ウェイマウスを思い出させるし、曲そのものもトーキング・ヘッズのある時期に近いミニマムなファンクだ。そして派手さはないがバンドを支える柳澤豊(Dr)の確かさは観ていて安心を与えてくれる。

さて個人的にポイントに思えたのは続く“me to me”と“同釜”だった。言葉の実験場の側面も捨てずに音楽的な快楽を拡張していくアレンジ。フロント3人によるコーラスも声だからできる有機的なものでありつつ、意味より体感重視。長尺のナンバーをフェスの場でもじっくり聴かせる胆力が頼もしい。食を切り口にした近作『ザ・ビュッフェ』のなかでもタイトル通り同じ釜の飯を食うことを軸にしたにした“同釜”は言葉の積み重ねや加藤のトリッキーなギターがカタルシスを生む。後半、ジャムバンドのごときグルーヴを生み出し、大きく開脚してギターから何かを出すような仕草で弾く玉置はこれまでのキャラクターを少し逸脱したんじゃないだろうか。

2016年、OASISの裏で出演したROOKIE A GO-GO。そこからここまでやってきたと感慨を語る玉置。そこから代表曲“風の向きが変わって”をメンバー全員心地よさそうに演奏した。そして海を感じる加藤のギターが八丈島を想起させる“東京”。バンドというかアーティストの数だけ東京をテーマにした曲があると言っても過言じゃなく、この曲で玉置は今自分がいる街は東京であり、故郷は帰る場所じゃないと歌う。それは若い時期のプライドでもあるだろう。それがMONO NO AWAREの“東京”の軸だ。だが玉置は前言を撤回する。というか、曲は曲なのだが、「(“東京”で)故郷は帰る場所じゃないと歌いましたが、帰るのもいいんじゃないかといとも簡単についえてしまいました。八丈太鼓が曲の後半で入って大団円を迎えるというのを皆さんも楽しんでいただけたらなって」と、“水が湧いた”をファンク×島太鼓バージョンで展開。しかも曲は“マイムマイム”に変化して行き、民謡と誰もが子どもの頃から馴染みのフォークダンス、つまり異国のフォークソングがつながる仕組みが面白かった。玉置は島太鼓を聴いて育ったから今回共演したという意味合いのことを言っていたが、果たして本当にそういう意図だったのか。いや、深読みしすぎずに先人の魂を太鼓で癒やしたんだと思えば納得である。

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君島大空 合奏形態 https://fujirockexpress.net/25/p_1027.html Sun, 27 Jul 2025 01:36:08 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1027 100%ポジティヴな意味で言うのだが、これほどわかりやすい共感性が薄い音楽がGREEN STAGEで鳴らされることにフジロックの個性が窺える。君島大空のフジロック出演歴は今回の合奏形態とともにあり、もはやルーキーでもなんでもない実力派プレーヤーのバンド形態に多くのオーディエンスが集まった2019年、テント内の暑さを忘却させた2021年のRED MARQUEE、灼熱の2023年のFIELD OF HEAVENと、WHITE STAGE以外のメインステージをすべて経験してきた猛者たちである。しかも日本の音楽シーンの重要な場面をもはや司るメンバーだ。それでもGREEN STAGEに現れた4人は武者震いしつつ眼前のオーディエンスをロックオンするつもり満々の若き無敵艦隊の乗組員のような表情だった。

なのだが、バンドである以前に君島大空という個人を紹介するようにガットギターのソロでスタートしたステージ。すかさず西田修大(Gt/Cho)がSEを鳴らし、新井和輝(Ba)のシンセベースが広いフィールドを揺らす。プリズマイザーがかけられた君島の歌に夏が走馬灯のように駆けていく“除”でのスタートだ。石若駿(Dr)のシグネーチャー的なスネアで輪郭がはっきりした“火傷に雨”では珍しく叫ぶように歌う君島。そして4つの楽器ががっぷり四つに組んで会話するような、あるいはマスロックのような緻密なアンサンブルと、君島のギタリストとしての個性の一つである過度に破壊的なメタリックで凶暴なプレイに無邪気なぐらい重いファンクネスを叩き込んでいくリズム隊。もう笑っちゃうしかない重戦車級のアンサンブルの曲が“笑止”なのがまんまとこちらがはめられてる気分。思わず上がった男子の「かっけー」の一言が真実だ。一転、みずみずしい西田のストラトが響きわたる”19℃“、そして”鏡“まで季節も心情もぶん回される。

マンガみたいなボイスエフェクトを駆使する西田にいじられて真面目な挨拶も全部ふざけて聴こえるMCを挟んで、シンベの低音が這うように地面に放たれ、西田のエフェクトが次々にぶち込まれる“散瞳”、イントロで大きな歓声が上がった凶暴なダンスミュージックとみずみずしいポップスが高次元で融合する“˖嵐₊˚ˑ༄”。エフェクトで作る空間系の予定調和を超えて肉体的なそれはこの4人にしかなし得ない音像だ。エンディングはブラックホールに吸い込まれるような体感であっけにとられる。

さらに新井の叩きつけるようなプレイに石若のちょっと後ろ乗りのビート、そして西田も君島もほんの少しだけズレのあるタイム感にどう乗るか?自分ににやついてしまう“向こう髪”。土曜日のラインナップは世界の優れたインストゥルメンタリストの揃い踏みという側面もあるだけに、若いリスナーの演奏に対するモチベーションも大いに刺激されているんじゃないだろうか。アーティスト君島大空の初期からの作品を貫くストーリーはコアなファンに共有されつつ、このアンサンブルがGREEN STAGEで演奏されている豊かさに、苗場に来た実感を獲得するのだ。

君島のクラシックやブラジル音楽のギター奏者としての力量とアレンジ力を発揮したナンバーには素直に感激を表すリアクションが起こる。その後、無邪気に高度な遊びを展開する“WEYK”でZAZEN BOYSもかくやな重く爆走する演奏を聴かせた。終盤にはフジロックで経験してきたステージ、そしてメンバー紹介をすると個々に大きな歓声が挙がる。今日のオーディエンスにとっては間違いなくヒーローたちである。さらに今年の年末、集大成となる単独公演の開催も発表。京都のロームシアターと東京はガーデンシアターという史上最大級のキャパシティである。ここまでの足跡にはフジロックで衝撃的な出会いを果たしたリスナーもきっと含まれるだろう。まだ聴いたことのない鳴らされたことのない音楽を標榜するミュージシャンにとって、フジロックは希望の塊なんだと思う。

終盤、君島のライブのラインナップとして長く愛されている“遠視のコントラルト”が印象的な歌詞の一節「僕の所為で笑ってよ!」がこれまでの何倍もの強度で響く。この曲で終わるかと思いきや、素直にリフとメロディに乗っていける“都合”が、新しいチャプターに進む君島と仲間たちのこれからを象徴しているようだった。メンバー全員の「やったった!」笑顔がいい。それが初めてのGREEN STAGEの手応えのすべてだ。

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Kim Oki (guest 折坂悠太) https://fujirockexpress.net/25/p_1114.html Sat, 26 Jul 2025 14:43:31 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1114 先ほどの豪雨が上がったあとのボードウォークを滑らないように気をつけながらORANGE ECHOに向かう。遠くに霧がかった山々が見える道中そのものが少し異世界めいている。さまざまな興味のもと、ぬかるんだORANGE ECHOに集まってきた人たちが醸すムードは開始当初のFIELD OF HEAVENにも似たものを思い出させる。

最新作『Hip Hop Retreat』で折坂悠太と共演していることからも興味をそそられたKim Oki。自分が知識不足なだけで韓国のインディペンデントなジャズシーンで名を馳せるサックスプレイヤーとのこと。インディロックバンドは知っていても、ジャズシーンはまだまだ未知の世界だ。バンドの構成はサックスのkim Oki、ウッドベース、キーボード、ドラム、エレクトリックギター。1曲目はダブのムードもあるドープなナンバーで、ここまでたどり着いた人に幽玄な景色とともに深い癒やしをプレゼントしてくれるよう。後半にはKim Okiの強烈なブロウでアツい展開を見せ、10分近い長尺ならではの変化を見せてくれた。

続いて腰の入ったスローチューンでは温かみのあるオルガンのフレーズがしみる。奇をてらったアレンジはなく素直に身を委ねられる世界観だ。しかし一辺倒じゃないのが彼の個性のようで、ループするフレーズのユニゾンがじょじょにトランシーになっていくナンバーで先の印象はいい意味で覆されていく。

折坂が呼び込まれると、小さく「アンニョン」と挨拶。昨夜ののろしレコーズと悪魔のささやき同様、マンドリンを携えている。コラボナンバーである“月がきれいだね”で音を重ねていくと、同じ楽器でもこんなに表情が違うものなのかと驚かされる。一言でアジアっぽいというのも乱暴だが、広く東洋のニュアンスのあるメロディと民謡の朗らかさや大きさを持つ歌がこちらの気持ちもせいせいしたものに塗り替える。さらに人が増えてきた。

もうひとりのゲストシンガーとの楽曲がシティポップにも遠からじなのが驚きでもあったのだが、音楽的なレンジの広さはKim Okiを知っていく余地なのかもしれない。入口をくれたORANGE ECHOに感謝したい。

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LEENALCHI https://fujirockexpress.net/25/p_1115.html Sat, 26 Jul 2025 13:27:37 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1115 サウンドチェックからものすごい丁寧な詰め方で期待が高まっていたものの、ORANGE CAFÉのエリアから人がほぼいなくなってかなり心配していた。が、杞憂だった。20:20にはワラワラと人が集まり、オンタイムに動物をおびき寄せるような声色が夜の山に似合い過ぎな曲でスタート。アン・イホ(Vox)、チェ・スイン(Vox)、パク・スボム(Vox)、ラ・ソジン(Vox)という男女2人ずつの歌とラップに似た語りのメンバーとチャン・ヨンギュ(Ba)、チェ・イジェ(Ba)のツインベース、オ・ヒョンソク(Dr)という変則的な構成だが、声の個性が強いため、ギターや鍵盤の音域が不要なんだと思う。

韓国の口承伝統であるパンソリとニューウェーヴ、ポストパンクなビートが出会った彼らの音楽は端的にダンス・ロック好きに刺さりまくる。女性ふたりの人間じゃない生き物の声の要素や民謡っぽい声の震わせ方は初見でもキャッチー。さすがに物語を声で伝えるパンソリがベースにある基礎体力の違いというべきか。しかもツインベースであることの旨味も大きく、個人的にはニュー・オーダーやクラウトロックも思い出すプレイの女性ベーシストにメンバー中最も惹かれた。誰一人欠けてもこのバンドは成立しないだろうけど、際立った個性は彼女が担っていると見た。

すべての曲名まではわからないのだが、例えば、韓国観光協会とのコラボ映像で世界的に視聴回数が伸びた“Tigar is Coming”のクールなビートとユニークな声の表現は自然に踊りだしてしまうし、メロディは新鮮この上ないし、ステージングはダンスロックバンドのソリッドさとポップボーカルグループの華やかさを兼ね備える。クールなビート以外にもヘヴィ・ロックっぽいナンバーもある。が、すべて声の表現が格別に新鮮なのだ。しかもグッズの紹介もサラッと行い、リーダーはオーディエンスに自分が持っていたTシャツを投げ込む勢い余った(?)アクションも。

演奏そのもので十分楽しんだが、1曲1曲のストーリーを知ればさらに楽しめるはずで、またどこかで再会したいとせつに思った。世界中をツアーする彼らのこと、きっとどこかで会えるだろうし、なんなら韓国旅行の理由がまた増えたとも言える。

PS それにしてもORANGE ECHO、未知の音楽に出会えるし、時間によってはこのエリアのごはん屋さんも空いていて穴場です。

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STUTS (Band Set) https://fujirockexpress.net/25/p_1026.html Sat, 26 Jul 2025 12:51:52 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1026 先ほどまでの灼熱がウソのように豪雨と呼んでも差し障りない雨。至るところで悲鳴が上がっている。15:00からのSTUTSの機材が心配だ。と、思っていたらやはり機材を雨から守るために少しスタートが押している。それでもGREEN STAGEにはモッシュピットはおろか続々人が集まっている。フジロックのGREEN STAGEにかける思い入れはアーティストなら誰だって半端ないと思う。結果的に“STUTSフェス”と呼べるほど音楽的にもゲストの豪華さでも全力でこの日に臨んでくれたことが伝わるすさまじい内容だった。

駆け込むようにMPCの元にたどり着いたSTUTS。怒涛の開幕ドラムサウンドを全身を使って鳴らす。意気込みがすごい。スタッフパスを外すのを忘れたと慌てているのも彼らしいが、「僕のことを知らない方もいらっしゃると思うので、説明すると、ヒップホップアーティストのSTUTSと申します」との自己紹介になんだかグッときてしまったが、まさにその自己紹介通りの内容だから当然と言えば当然か。バンドがインしての”Renaissance Beat“の打ち込みと生音のバランスがいい。辣腕バンドのメンバーは岩見継吾(Ba)、仰木亮彦(Gt)、TAIHEI (Key)、高橋佑成(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax,Flute)、佐瀬悠輔(Tp)という現在のポップミュージックを演奏で支える面々だ。

最初のゲストはtofubeats。STUTSにとって初のボーカルナンバーである“One”を一部、生の鍵盤などを使ったライブアレンジで披露。STUTSはもちろん、tofubeatsがこんなにアクティブにパフォーマンスするとは意外だった。さらに矢継ぎ早にDaichi Yamamotoと鎮座DOPENESSとのフル生演奏の“Mirrors”では2人の異なる個性のラッパーの強い存在感を見せつける。続いてはKaneeが招き入れられ“Canvas”を披露。エンディングからTAIHEIの叙情的なピアノ・ソロで繋ぎ、インスト曲“Conflicted”が、突然の豪雨という自然現象と不思議な調和を見せていた。

変わりやすい山の天気を「さっきまですごく暑かったのになんのせいなんですかね」と、次を匂わせるSTUTS。ん?と思った次の瞬間、「先輩が来てくださいました」と、スチャダラパーがおそろいのシャツ姿で登場した。若いオーディエンスが多いが、リアクションは最高潮。もちろんSTUTSの前フリといまの季節からこの曲以外ない“Summer Jam ‘95”をドロップ。STUTSのMPCプレイとSHINCOのDJプレイのコラボという歴史的な場面を目撃できたのは豪雨に負けなかったご褒美といったところ。夏休みの退屈とチルが混じり合う日本的なサウダージ感はスチャダラパーならではだ。さらにバンドサウンドで“Summer Situation”を共演したあと、この2組と言えば、さらにもう一声でもないが、あの人の客演も観たいと思っていたらやはりPUNPEEの名前がコールされる。去年リリースの昭和〜平成〜令和の記憶をミックスした新しいエバーグリーン“Pointless5”の生共演が実現した。STUTSはもちろん、バンドメンバーも嬉しそうな表情にこちらもつられてしまう。

世代を超えた共演のあとはSTUTSが長い友人でもあるKMCを呼び込み“Rock the Bells”を披露。隙間なくストレートな言葉を熱量高く発し続けるKMCのスタイルはある種愚直ではあるけれど、この1曲にすべてを込めようとする彼のスタンスは胸を打つものだった。続いてはSTUTSの最新ワークスであるSTUTSとZOT on the WAVEによるプロデューサーユニット、STUTS on the WAVEの楽曲が続けて展開される。まずZOT on the WAVEを呼び込み、ワークスの説明をすると、Yo-SeaとLEXをフィーチャーした“Shall We”。滑らかなボーカルが素晴らしいYo-Seaはよく口から音源なんて表現が巧さの評価になりがちな昨今、文字通り音源なのか?と思えるスムーズさで、こういう人のことを指すんじゃないかと思えたぐらいだ。そして再び鎮座DOPENESS、そしてCanpanella、Candeeを招き入れての“Final Destination”と、今夏きっての話題のユニットのワークスをライブで体験させてくれたのだった。

ヒップホップアーティストとしての現在地を網羅しつつ、ユーモアも織り交ぜるSTUTS。ポカリ一気飲みに笑いが起こるのも当然で、しかもあざとくないのは人徳か。そのままタイアップ曲である“99Steps”をフィーチャリングアーティストのKohjiyaとHANA HOPE、さらにTVCMに出演した現役高校生ダンサーも加わり、それぞれの才能を思い切り表現して見せた。

唐突だが、GREEN STAGEと言えば、以前ここでPUNPEEが見せた広範な音楽と接地する彼のヒップホップを思い出した。一つのジャンルに特化したフェスじゃないからこそむしろ自分のバックグラウンドを明示するスタンスが活きるのははPUNPEEもSTUTSも近いんじゃないだろうか。そんな渾身のセットリストを組んできた2人が再び大名曲“夜を使い果たして”のバンドセットでオンステージした光景は記念すべき瞬間かもしれない。すごくあっさりステージを後にしたPUNPEEに贈るように感謝を述べるSTUTS。

そしてエンディングは「音のなかでは会えるから」と、力強く言ったものの感極まった表情でJJJをフィーチャーした“Changes”を彼の映像を背景にプレイしたSTUTSのこの選択はさまざまな音楽好きがいるこの場で外せないものだったのだろう。STUTSの芯の強さを見た1時間だった。

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