FUJIROCK EXPRESS'10 » ライブレポート http://fujirockexpress.net/10 フジロック会場から最新レポートをお届け Mon, 13 Sep 2010 16:31:08 +0000 ja hourly 1 http://wordpress.org/?v=3.0 ATOMS FOR PEACE http://fujirockexpress.net/10/?p=4511 http://fujirockexpress.net/10/?p=4511#comments Sun, 08 Aug 2010 14:50:17 +0000 eriko http://fujirockexpress.net/10/?p=4511 続きを読む ]]> ATOMS FOR PEACE

 今日音楽業界では有名バンドのメンバーが別プロジェクトを組むのがちょっとした流行だが、バンド名のごとく“原子力級”なバンドがフジロック最終日のグリーン・ステージにお出ましだ。レディオヘッドのボーカルのトム・ヨークとレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベースのフリーという、現代オルタナティブ・ロック界のアイコンを二人据えているだけでもお腹いっぱいなのに、それを陰で支えるのがレディオヘッドやトラヴィスなどのプロデュースでお馴染みの、音楽業界のトップ・プロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチときたもんだ。さらにはR.E.M.でドラムスを担当していたジョーイ・ワロンカーとブラジル出身のマルチ・プレイヤーであるマウロ・レフォスコが演奏に加わるとあれば、ライブ観る前から悪くなるはずがない。そう思っていた。

 だが、私は真のアーティストの底力をなめていたかもしれない。これは以前、ボブ・ディランの来日公演でも感じたことなのだが、一流のアーティストは観客が期待の上の上をいくようなことをやってのけてみせる。彼らが造りだす音は、トムの楽曲にフリーのベースによってファンクネスが加わって、ナイジェルによって全体のバランスが整えられた音・・・・・・なんて単純な加算式で導き出せるようなものではなかった。

 無感情で無機質で機械的なエレクトニカ・アルバム『The Eraser』の楽曲は、トライバルなリズムが加わることによって熱を帯び、感情を持ち、野獣のような躍動感で耳に迫ってきた。それは今年のグラストンバリー・フェスティバルででトムとジョニーによって奏でられたシンプルでアコースティックなアレンジとも全く異なるもので、一音先の展開さえ読めなかった。音のプロ集団のプライドがぶつかり合うような鉄壁の演奏に支えられ、トムはレディオヘッドのときよりもいささかリラックスした様子。お馴染みのトム・ダンスもいつもより激しい。フリーもレッチリのときほどとまででは言わないものの、あのお馴染みの動きでスラップベースを鳴らしてみせる。トムとフリーが対峙してギター×ベースバトルを繰り広げる姿は「かっこいい」の一言で、観客からも大きな歓声が沸き上がった。

 一通り『The Eraser』からの楽曲を演奏した後、中盤に挟まれたのはトムのソロコーナー。ギター一本で奏でられた”I might be wrong”、ピアノ弾き語りによる”video tape”と、レディオヘッドの楽曲が、シンプルなアレンジで演奏された。これまでの攻撃的なステージの様子とは一変、夜の苗場がトムの暖かな声に静かに包み込まれていった。

 バンドのメンバーが再度ステージにあがってからも、特にレディオヘッドのキラーチューンを演奏するわけでもなく、淡々とステージは進んだ。途中のMCで「次の曲はThe BeatlesのPaperback Writerだよ」なんてギャグを言いつつ子供のように笑っていたトムに、最後の最後までかわされた気分だ。グリーンステージの後方までみっちりと集まった観客も、ライブ後にステージを去る熱狂的な歓声で送るというよりは、彼らの演奏に圧倒されて拍手をするのがやっと、というように見えた。こんなにも「置いてけぼり」感を味わったライブはかつてなかったように思う。ただそれと同時に、こんなにも鳴らされる一音一音に身震いを覚えたライブもなかった。

 タンクトップから胸毛が覗くトムも、ピアニカを吹くフリーも、コーラスをするナイジェルも、この先そう観ることはできないだろう。そして今晩聴いたあの音も、二度と同じように鳴らされることはないだろう。これぞ一期一会のライブの醍醐味。2010年夏、この一瞬の夢のようなステージを目撃できたことがだただ嬉しい。

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[setlist]
1. The Eraser
2. Analyse
3. The Clock
4. Black Swan
5. Skip Divided
6. Atoms For Peace
7. And It Rained All Night
8. Harrowdown Hill
9. Cymbal Rush

-Thom Yorke solo part-
10. I Might Be Wrong
11. Give Up The Ghost
12. Videotape

13. Paperbag Writer
14. Judge, Jury and Executioner
15. Hollow Earth
16. Feeling Pulled Apart By Horses

写真:前田博史
文:本堂清佳

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難波章浩 -AKIHIRO NAMBA- http://fujirockexpress.net/10/?p=4231 http://fujirockexpress.net/10/?p=4231#comments Sun, 08 Aug 2010 14:45:19 +0000 bamboo56wave http://fujirockexpress.net/10/?p=4231

ライブの始まるほんの10分前のことだ。灰色の空が、青空に変わった。同時にホワイトステージの気温も上がっていく。難波章浩の11年ぶりのフジロックのステージを山の神様も待ちわびていたようだ。
ステージにはマイクスタンドが一本。楽器もきゅっとタイトにまとめてある。3ピースのシンプルなバンドセットが設置してあるだけであった。

ステージに姿を見せた難波はこう言った。
「人生一度しかないから楽しもうぜ。俺の話を聞いてくれよ。」
輝く日々からライブは始まった。のっけからCDで聞いていた音とは全く違う曲を聞いているような印象であった。難波のボーカルは力強く響き渡る。ああこの瞬間をどれだけ待ちわびただろうか。

難波さんお帰り!というオーディエンスの声が上がると自然と拍手が起こった。「俺はロックしていくよ、俺はロックを鳴らし続けるよ。6月9日生まれの難波章浩の告白でした!」と私たちに決意を告白してくれた。難波のステージングは大きいステージでもライブハウスで見ているような距離感の近いものであった。

そして難波もSTAY GOLDをフジロックのステージで演奏した。少しアレンジが加えられてはいるが、この曲を難波のボーカルで聞くと笑いながらも泣きそうになった。この曲の特別感は一体なんなのだろうか。イントロを聞きつけた多くのキッズがフロントエリアめがけて押し寄せてくる。途中に柵のないホワイトステージではその勢いが尋常ではなかった。

個人的な感想にはなるが、私は今日このステージで初めて、ベースを持って歌っている難波を生で見た。活動休止をしているアーティストには思いを馳せることしかできない。形は違えども、再び難波の力強い伸びやかな歌声を聞くことが叶ったことが私は嬉しくてならない。これからもたくさんの感動を私たちに与え続けて欲しい、そう思えるステージであった。

写真:深野輝美
文:岡安いつ美

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MUSE http://fujirockexpress.net/10/?p=2188 http://fujirockexpress.net/10/?p=2188#comments Sun, 08 Aug 2010 14:40:42 +0000 eriko http://fujirockexpress.net/10/?p=2188
今年、数々のフェスティバルでヘッドライナーを飾り、その勢いにとどまることを知らないミューズ。自分が1stアルバムの「ショウビズ」の”マッスル・ミュージアム”に衝撃を受け熱狂していた頃から月日が経ち、今や世界中から注目されるアーティストである事実は信じがたいもののように思えた。しかしそれは、今日のグリーンステージの一幕により、確信に繋がっていた。

ライブの開始は予定時刻より10分以上押して始まった。始まりは最新アルバム「レジスタンス」から”アップライジング”。グリーンステージは後ろの方までびっしりと人で埋め尽くされ、大歓声と大合唱のもと再び迎え入れた。そしてかき鳴らすスクラッチで始まる”スーパーマッシブ・ブラック・ホール”。ギターボーカル、マシュー・ベラミーのどこまでも高くのびる艶やかな美声が苗場を包み込んだ。夕方の雨は重たい湿気を残していったが、霧に包まれ不気味ささえ感じるステージはぴったりの演出になっていた。

”ニュー・ボーン”で一変して旧曲に。待ってましたとばかりに飛び跳ね、踊り出す人たちの光景がレーザーライトからこぼれた光に映る。この曲を聴いていた当時を思い出しながら、人で埋め尽くされた会場を見るのは圧巻だった。そうかと思えば3rd「アブソリューション」から”ヒステリア”が。攻撃的なベースのイントロが耳にこびりつく。スポットライトを浴びたマシューはここぞとばかりにギターソロを見せつける。そして再び新譜からの”レジスタンス”。選曲は新旧が織り混ざり、そのひとつひとつが違和感なく耳に届く。

終盤は”タイム・イズ・ランニングアウト”、”スターライト”でクラップの嵐。グリーン・ステージでの一体感、星のない夜空に、光を突き刺す。激しく重たい音と美しいメロディ。ひとつのカテゴリーに収まることのないエネルギッシュなライブは、初日を飾る堂々たるステージとなった。

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写真:古川喜隆
文:千葉原宏美

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HORSE MEAT DISCO http://fujirockexpress.net/10/?p=5086 http://fujirockexpress.net/10/?p=5086#comments Fri, 06 Aug 2010 14:59:44 +0000 takumi_nakajima http://fujirockexpress.net/10/?p=5086  

シザーシスターズから流れてきたお祭りピーポーを満足させるのは小太りのおっさん2人!

サウス・ロンドンのクラブ、Eagle Londonで日曜夜の人気ゲイ・ディスコ・パーティーがホース・ミート・ディスコ。エレクトロニカとソウル・ディスコの二つが主流ともいえるゲイ・クラブミュージックにおいて、ベッタベタなディスコ・アンセムにスタイリッシユな選曲を織り交ぜての展開が人気の秘密なのかも。レギュラーパーティーとはいえ、かなりスペシャルな空間らしいので、ロンドンに行ったら是非訪れてみようと思ってはいたけど、苗場で開催されるとはラッキー!シザーシスターズで思いっきりアゲられ、体力の限界を思い知らされ帰途につくか、奮起してパーティークルーズを楽しむか。後者は嬉々としてマーキーに流れ込み、そこにはネオンカラーに彩られたディスコが待ち構えていた!

ステージに丸っこい影二つ。永遠のクラシック・ディスコ・アンセムとともにゲイ・アンセムとも言える、ドナ・サマー、トーキングヘッズにエレクトロ・ディスコからアフロ・グルーヴまで、とどまるところを知らない無限大のセレクション。懐の深さをうかがわせる。目の前の丸っこいオッサン2人がジェームス・ヒラードとジム・スタントン?現在4人になっているホース・ミート・ディスコの立ち上げメンバーの2人なのだが、なんとなく日曜日に庭の芝刈りや犬小屋のペイントをしてそうなイメージ。トレンドに敏感なゲイやクラブ・ピープルから絶賛される最先端サウンドの人とは思えない…。でも、ブース内で肩をくりくりする踊りが可愛いっ!ステージ裏から女の子が走って飛び入り。くりくりオジサン達を前にエアロビのように踊りまくる。ビジュアルからはネオンカラーの目ツブシ攻撃が止まらず、不思議な光景。

トレンドには敏感なゲイ・ピープルから賛美され、苗場ではゲイもヘテロもミックスされたレッド・マーキーでパーティー・ラヴァーズをアゲまくり。それにしても、この狂乱が深夜2:30まで続く…枯れるまで踊れってことか。

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写真:中島たくみ

文:mimi

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BROKEN BELLS http://fujirockexpress.net/10/?p=1769 http://fujirockexpress.net/10/?p=1769#comments Fri, 06 Aug 2010 14:53:00 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=1769

ブライアン・バートン(ルイスじゃないよ)ってどこかで聞いたことがあると思ったら、ナールズ・バークレイのデンジャー・マウスのことだったのか!その彼がシンズのフロントマン、ジェームズ・マーサーと結成したのが、このブロークン・ベルズ。

今年は別名義ユニットやグループが多く、こんな風にアレ?どこかで聞いたぞ?と思うことがしょっちゅう。また、プロデューサーで名をあげた人々がバンドとして続々登場しているのも今年のフジロックの特徴。音楽業界でこういう現象が多発するところの意味とは何だろう?不景気で政治も将来も雲行きが怪しい世界情勢の中、音楽がどんどん保守的になっていく。どこかで聞いたような歌詞、どこかで聞いたようなリフ、どこかで見たようなフロントマン…そんな中で良質な本物が、何とか生まれようと、もがいているのかもしれない。

ところでシンズと言えばUKインディーのカリスマバンド。私はあまり知識がないのだが、ジェームズのボーカルが美しく聴き入ってしまう。デンジャーマウスのもじゃもじゃ頭はドラム・セットからちらちらと。

ロック、R&Bの中にフォークの香りがするサウンドは心地よく踊れる。日曜昼間のフェスにはもってこいの軽やかさで、外は雨だけどマーキーの中はひまわりと太陽の幻覚が見えてきそう。夏の真昼がぴったり似合う、ちょっとメランコリックなサウンドは、ステージでも眩しい光を放っている。何か間違いが起こっても「みんな夏の太陽が悪いんだ」で済んでしまいそうな、そんな投げやり感も見え隠れする。聴きやすいフレーズに一筋縄ではいかないような“あく”を持っている…そんな印象。あ~夕暮れのホワイトあたりで一杯ひっかけながら見たかったかも!

3月にアルバムを発売してから北米ツアーに乗り出し、今回のフジロック。既にセカンドアルバムの制作が決定しているという。しかもバンド名も変わるかもしれないというユルさ。バンドとしては日が浅いけれど、さすが売れっ子プロデューサーとインディの重鎮の余裕と見た。決して華やかなバンドではないかもしれないけれど、身軽な製作意欲に期待!

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写真:前田博史

文:mimi

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FOALS http://fujirockexpress.net/10/?p=4406 http://fujirockexpress.net/10/?p=4406#comments Fri, 06 Aug 2010 13:57:40 +0000 bamboo56wave http://fujirockexpress.net/10/?p=4406
 予想を遥かに超える凄まじい爆発力だった。2年前にミッドナイト・ジャガーノーツとのツーマン・ライヴで目撃した時は、あどけないながらも性急なビートと緻密な構成力で踊れるロックを表現していたが、よもやここまでの進化を遂げているとは驚くほかない。踊れるロックよりも深遠なるスケールを広げた最新作『トータル・ライフ・フォーエヴァー』が飛躍的進化の伏線になっていることは確かだが、ライヴでは1stの踊れる要素と2ndのスケール観と深みが見事なまでに融合しあう、迫力のステージを披露してくれた。

 細かく丹念なギターワークが海のように深く広い世界観を編みこんでいく「Total Life Forever」からライヴはスタート。驚くほどにメランコリックな波動が紡がれる中で、そこに繊細に溶け込むVo&Gのヤニスの歌声が意識を妙に引っ張り出してくる。続けざまの「Cassius」では、快楽中枢を直に刺激する踊れるロックへとすぐさま仕様変更。2年前に体験したときとは、段違いの強靭なアンサンブルとグルーヴが強烈に襲いかかってくる。1stの曲では性急なビートで畳みかけ、2ndではじっくりと聴かせる、そういった構図が間違いなく存在したが、その相互補完によって昂揚と快感は一層増幅される仕組みになっていた。緻密な構成に基づきながらも、客席に向いたエネルギッシュな演奏もそれに拍車をかけていたように思う。「Red Socks Pugie」ではダイナミックなアレンジが施されていて、よりグルーヴィな演奏に昂揚感はさらに高まることに。ライヴ・バンドとしての進化/深化はこういったところからも伺えた。

 特に楽しみにしていた「Spanish Sahara」では、見事なまでのアンサンブルに鳥肌が立った。丁寧に紡がれた強く優しい音が触れ合い、密に融合しあって、美しいエモーションとミステリアスな光で覆われた奇跡のような世界を描いていく。この色鮮やかな音の波動がまた心を揺さぶる。徐々にカタルシスへと導くような大らかな空間がそこにはあった。

 終盤の「Electric Bloom」では、ヤニスがタムで加勢しての怒涛のリズム乱れ打ちが、以前見たときよりも遥かにパワーアップを遂げていたし、最後に演奏された「Two Step, Twice」ではテクニカルかつスリリングなバンド・サウンドがクライマックスで苗場の空に轟く爆音へと発展し、昂揚の臨界点を超えた。鳥肌が立つ圧巻のラストに、客席からは満足げな表情がこぼれていた。文句なしのライヴと言いたいぐらいの出来だったと思う。しかしながら、こんなスゲーことをやってる中で、ヤニスが5,6mはあるスピーカーによじ登って観客を煽るという、やんちゃな姿を見せていたのも印象深い。若くやんちゃな部分がまだまだ顔を出す辺りには、妙なうれしさを覚えたりもした。

 緻密な構成力とセンス、そして静・動と硬軟のコントラスト生かしながら、ホワイト・ステージに集まった人々の熱を最大限にまで高めたFoals。ライヴ・バンドとして予想を超える著しい成長を感じさせたライヴに出会わせてくれたことを本当に感激したい。個人的にもフジで見た数々のライヴの中でも強く思い出に残るステージのひとつだった。

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写真:古川喜隆
文:伊藤卓也

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LCD SOUNDSYSTEM http://fujirockexpress.net/10/?p=4743 http://fujirockexpress.net/10/?p=4743#comments Fri, 06 Aug 2010 13:55:40 +0000 ryotamo http://fujirockexpress.net/10/?p=4743
 今年5月に発売した3枚目のフルアルバム『This Is The Happening』をLCD Soundsystemとしての事実上のラスト・アルバムと宣言した、ジェイムス・マーフィー。有終の美を飾るのにふさわしいこの傑作を引っ提げて、もしかしたら最後になるかもしれないフジロックの舞台に登場した。

 夕暮れ時から幻想的な闇夜に落ちていく時間帯のホワイト・ステージが今回の舞台となったが、即効性も遅行性も備えたLCDのダンス・ミュージックの気持ちよさに終始酔ったライヴだった。熊みたいなでかい体をしたオッサン(本当に巨体だった)とその彼を取り囲むように陣取るバンド・メンバーの6人が紡ぎだすポスト・パンク~ダンス・ロック~エレクトロニクスを優雅に操る革新的サウンドは、クールに統制されながらも魔力のような快楽性を秘めている。ベース、ドラム、パーカッションの肉体性の強い人力パワフル・グルーヴを下地にジェイムスの熱のこもったヴォーカル、うねるギター、ユニークな電子音が濃厚に絡み合う。そのツボを外さないダンス・ビートが本当に気持ち良すぎて困る。神経の一本一本に響く音というか、それが精妙に紡がれて心身の解放を促していく。当然、その音に誘われるように会場もゆらゆらと揺れっぱなし。シンプルに踊り狂える「Drunk Girls」や独特のフレーズが耳にこびりついて離れない「Pow Pow」などアッパーな内容で苗場を席巻していた。もちろん、この心地よい昂揚感は緻密な理論や人間の構造や特徴を計算した上で、リズムを設計しているからだとは思うが、ロック譲りのダイナミズムや人力による有機的な熱気が伝わってくるからこそノリやすいとも思える。人力で創り上げるが故の気持ちよさ、それがあるLCDの存在感は大きい。

 しかし、LCDのライヴ中は、今年のフジの超目玉であるトム・ヨーク率いるジェイAtoms For Peaceへの移動が絶えなかった。曲が終わるごとにホワイトの人数がだんだんと少なくなっていくのを見ているのはつらいものが・・・。多分、始まった時の2/3ぐらいには減っていってしまっただろうか。それでも彼等が創造した孤高のダンス・フィールドには終始、小刻みに揺れされ続け、もしかしたら最後になるかもしれない時を十分に堪能することができた。まさしく、至福の時間。ずっとこの音を浴びて、踊っていられたらと何度も思わされた。ちなみに、ジェイムス・マーフィーは深夜0時からは、ソロDJとしてレッドマーキーを賑やかに踊らせていた。

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写真:森リョータ
文:伊藤卓也

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Cumbias Cumbias Cumbias http://fujirockexpress.net/10/?p=5167 http://fujirockexpress.net/10/?p=5167#comments Fri, 06 Aug 2010 05:00:47 +0000 terumi http://fujirockexpress.net/10/?p=5167

兄、ギャズ・メイオールに負けず劣らずのレコード・マニアっぷりなのが、クンビア・キッドことジェイソン・メイオール。普段はフジロックの運営として動いているが、3日間のうちのどれかの夜に、自慢のクンビア・コレクションを披露しにやってくる。例年通りならば、歯止めがきかない感じのDJなんだが、今年は東京クラブシーンのレジェンドでラテンDJ集団「カリビアン・ダンディ」を率いる藤井悟、フェルミン・ムグルザをはじめ数多くのラテン圏のアーティストを招聘しているジャポニクスからチャコが加わって、「クンビアス×3」というクンビア縛りのチームを組み、リレー形式(Back 2 Back)で繋いでいた。

途中から、即席のマラカス(空き缶などの容器に豆を詰めている)をフロアへと投げ込み、参加型としてのDJを展開。その場にいる人を取り込むという意志は、自ら踊り、騒ぐギャズにも通じるものがある。

日本におけるラテンの音楽シーンは、まだまだ発展途上にある。近い将来、大きな波が訪れるだろうから、是非ともチェックしてほしいシーンだ。

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写真:深野輝美
文:西野太生輝

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DETROIT SOCIAL CLUB http://fujirockexpress.net/10/?p=2782 http://fujirockexpress.net/10/?p=2782#comments Wed, 04 Aug 2010 18:30:24 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=2782

去年はトム・モレロ率いる、ストリート・スリーパー・ソーシャル・クラブが、そして今年はデトロイト・ソーシャル・クラブが…と去年からソーシャル・クラブづいてるフジロック。

去年の男だらけのSSSCに比べたら、こちらデトロイトのソーシャルクラブの女子率の高さには目を見張るものがある。それも納得。白いスーツで躍り出てきたジャーヴィス・コッカーを踏襲したようなフロントマンに目が釘付け。あーこれじゃあトム・モレロは…残念だな。

7月7日にアルバムデビューしたばかりの新人なのに、人生使いこなしたオーラが益々ジャー様を思いおこさせる。しかも、名前がデヴィッド・バーン!!更にバンドはデトロイト~と謳っていながらUKはニュー・キャッスル出身!PVではコルピクラーニ張りに森感満載だったので素朴なキコリ達だと思ったら、この伊達男ぶり!爆笑!何だこのバンドは。おまけに、ふと目の前を見ると、セキュリティの男の子はビジュアル系。初めて見たぞ、ビジュアル系のセキュリティなんて。しきりと前髪を気にして、クネッとナナメに立ってる色白の彼の向こう側に見える、ぴょんぴょん跳ねてるデヴィッド・バーン…シュールすぎる。

シングル発売だけでフジロック出演なんて山ほどいるので別に驚かないけれど、ぐるぐる渦巻くうねるビートにちょっとダーティーなサウンド、そして、のびやかなボーカルと、アート感…プライマル・スクリームのオープニング・アクトに抜擢されたのもうなずける。カサビアンに通じるものがあるかな?大物の予感を十分に持ち合わせている。ついでに言えば、発売されたばかりのデビューアルバムのプロデューサーはジム・アビス。このサウンドでアビスと言えば、ああ、やっぱり、と思った人も多いはず。

しかしながらプロデューサーなんて関係ないのがライブで、バンドの実力が嫌という程露呈されてしまう場だけど、そこがまた堂々としたもの。演奏はもとより、彼らのそのサウンドとステージパフォーマンスがマッチしていて、客の盛り上がりも相当なもの。白いスーツのジャケットをおもむろに脱いでは振り回し、投げる!ベタなプレゼンテーションが決まっていて、カッコイイ。

近い将来、更に沢山のお客さんを前に、このI love me! なパフォーマンスを繰り広げているのが想像に難くない。ひとつだけ残念なのは腹が引き締まっていることだ。スーツの下は、ナマっちろい細い体にぽっこりビール腹、それがUK大物アーティストのお約束。でも放っておけば、ワールドワイドに活躍する頃には立派なポッコリになっているはず。それは先人が証明している。

それにしても、こういう期待値の高いバンドに会えると本当にワクワクする!

Red Marquee万歳!

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写真:古川喜隆

文:mimi

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BOYS NOIZE http://fujirockexpress.net/10/?p=3664 http://fujirockexpress.net/10/?p=3664#comments Wed, 04 Aug 2010 17:41:35 +0000 ryotamo http://fujirockexpress.net/10/?p=3664

こんなにメジャーになったのに、以前よりもインディー臭漂うドイツ小僧に好感度アップ!

2007年のジャスティス、シミアンが制覇してから土曜深夜のレッドマーキーは伝説になった。しかしあまりにも2007年の圧倒的パワーが尾をひいてしまった感はあったのだが…。今年はイタリアの新顔レモン男リヴァ・スター、ドイツのボーイズノイズ、おなじみロックをデストロイ!のマイロとヨーロッパ勢で占められた。何度も来日していて、日本では結構おなじみなりつつあるボーイズ・ノイズことアレックス・リダが今年の土曜深夜の中心といっても過言ではない。赤いベースボールキャップでもくもくとプレイする姿は相変わらずだが、何だかオーラというか、貫禄みたいなものを感じる。しかしメジャー感や大物感はない。…何というか、長く留年していて、同じクラスだけど年上の人って感じ。実際は小僧といってもいい大人のハズだけど。

そして、書いてるのか?天然なのか?謎の眉毛はやっぱり今日も繋がったままで嬉しくなる!

マーキー内にも赤のベースボールキャップが目立つ。スクリーンからはPOWER!BNR!の文字が赤黒チカチカとブレイクビーツの波状攻撃とともにマーキーをバキバキにアゲまくる。その破壊力は相当なもので、マーキーは熱気でムンムンのサウナ状態。天井から、冷やされた水蒸気がボタボタと雨のように垂れてくる。そしてこれがまた臭いんだ!でも何だか臭い方がみんな楽しいみたいで、その場を動かないんだ!アホみたいに踊り続けてるんだ!

それを見て悟った。フジロックは欲望を解放する場なのだ。

ボーイズ・ノイズ→マイロとねちっこい大人のいやらしい流れで夜は更けていくが、昼間の雨にやられて、更に赤黒チカチカにこれだけ踊らされてはエナジーチャージも風前のともしび。疲労困憊の身体に曲がらないロボット状態の両足を引きずってレッドマーキーを後にする。同じように道行くロボット達。しかし振り向くとまだまだ臭い地帯で奇声をあげて解放された大人たちがキラキラ飛び跳ねているのであった。

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写真:古川喜隆

文:mimi

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MIIKE SNOW http://fujirockexpress.net/10/?p=1703 http://fujirockexpress.net/10/?p=1703#comments Wed, 04 Aug 2010 15:45:40 +0000 natsuki http://fujirockexpress.net/10/?p=1703

またまたスウェーデンがアイス系ファンタジー・バンドを世に送り出してくれた。プロデューサーデュオ、Bloodshy and AVANT(マドンナ、カイリー・ミノーグ、ブリトニー・スピアーズなどへの楽曲提供・プロディース)のクリスチャン・カールソンとポントゥス・ウィンベリのスウェディッシュ2人と、やはりシンガー兼プロデューサーのアメリカ人、アンドリュー・ワイアットの3人で結成された、いわばスーパープロデューサー・バンドなのだ。しかし、マイクにiがふたつなのは謎である。スウェーデン語では何と?マイーーーク?

サポートまで全員揃って黒シャツ・黒パンツでステージに登場。素敵!

北欧バンドが一様に持っているひんやり感がマーキーに低く漂い流れ出す。雨が降ったりやんだり蒸し暑い中に心の清涼感、ホッとする。

ロイクッソップが雪山だとしたら、マイク・スノウは雪解けの頃を感じさせる。風のにおいや空気の温度、土の中でごそごそと蠢きだす、何か。

ダンサブルなanimal、そしてBurialで合唱が起こる。一度聴いたら忘れないメロディー、さすが人気プロデューザだけあって、掴みどころをわかってらっしゃる!と言いたくなるキャッチーさ。盛り上がらないわけがない。お遊びで始めたバンドなのでライブまで考えてなかったなんてまあご謙遜!完成度の高いステージはお見事の一言である。山を越えて響き渡るような歌声が遠くへ、ライトの奥へ吸い込まれていく。美しい。

 知性ある森ガールには特におすすめ。まあ、うさぎに鹿の角がぶっ刺したジャケ写って時点で森的にはありえないかもしれない。でも、人生にはゆるフワだけでなく少しの毒も必要なのよ。

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写真:岡村直昭

文:mimi

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SPENCER(a.k.a.大谷友介) http://fujirockexpress.net/10/?p=4564 http://fujirockexpress.net/10/?p=4564#comments Wed, 04 Aug 2010 14:50:23 +0000 bamboo56wave http://fujirockexpress.net/10/?p=4564

 悲しみを泳ぐ歌だとしても、どこか柔らかさを感じるSPENCER(a.k.a.大谷友介)の音楽。まさに人間が持つ光と影の部分を、鮮烈に描くことができる表現力を持ち合わせている。彼が奏でる曲が終わるたびに、とめどなく切ない感情が沸き上がるようだった。

 オオヤユウスケ。この名に聞き覚えがある人も、多くいるはずだろう。SPENCERこと大谷友介は、Polarisやohanaといったバンドでも知られるアーティスト。彼は今年の2月に活動拠点をベルリンに移し、ミニアルバム『My Wave』を完成させた。まるで心の隙間にそっと入り込むような作品で、開催ギリギリまで何度もリピートして聴いていたように思う。

 そして活動開始からあまり時間が経たないうちに、今年のフジロックの出演が決定。今回はCaravanやハナレグミなど、多数のアーティストと共演するドラマーのPeace-kとともに、ゆったりした雰囲気を醸し出しながらステージへ。

 まずは音を確かめ合うように、ふたりでセッションを行なっていく。ほどなくして、最新ミニアルバムにも収録されている「Free Bird」を。彼らの音がひとたび響き出すと、すぐさま幻想的な世界へと変わっていくよう。とくにアコースティックギターと、スティールパンの絡み具合が絶妙だ。また、歌詞に合わせて効果音のように音色が鳴り出す場面も。まるで物語でも見ているかのように、ライヴが進んでいく。

「今すごく気持ちよくて、Peace-k君とどの曲にしようかと話していたのですが。最後に長い楽曲を1曲やります」という言葉のあとにラスト曲へ。するとすぐさま夕暮れをイメージした、暖かな曲が辺り一面に広がっていく。彼の視点から見た日常は、なぜこんなにも優しさに包まれているのだろう。そう幾度も感じながら、最後の1音が消えるまで演奏に見とれてしまった。

 自身が持つ心情を隠すことなく、全面に押し出した彼の音楽。また早く日本でもライヴをしてほしいものだ。ただ彼の新プロジェクトは始動したばかり。焦らずゆっくり見続けていきたい。

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写真:近澤幸司
文:松坂愛

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踊ってばかりの国 http://fujirockexpress.net/10/?p=5232 http://fujirockexpress.net/10/?p=5232#comments Tue, 03 Aug 2010 17:19:15 +0000 naoaki http://fujirockexpress.net/10/?p=5232

 多分、今年のルーキー・ステージでは一番世間に名前が知られているバンドだと思う。平均年齢20歳そこそこという”踊ってばかりの国”は、ラフでユニークでサイケデリックなサウンドが肝の新人5人組。奇抜なバンド名が特徴である彼等は、前述の通りに既に話題となっている存在だ。CDを某レンタルショップでレンタルすることも可能だし、今年発売されたアルバム『グッバイ、ガールフレンド』のレビューを雑誌やWEBで見かけることも多かった。世間的にもかなり期待されているバンドといっていいだろう。個人的にも期待は高いし、ルーキー・ステージに集まった人数もこの時間にしてはかなり多かったこともそれを物語る。

 『苗場のクソヤローどもー、踊ってばかりの国です。4曲やったら帰るんでー』というやんちゃな宣言から始まったこの日のライヴ。言葉とは裏腹に、紡がれる音のひとつひとつは客席に向いていて、心にジンとくるものがある。ブルースやサイケ、フォークを下地にしたサウンドを柔らかなアコギの音色と歌がやんわりと包み込み、意外とポップにくるまれている印象。この日も丁寧な演奏で、少しねじの外れた詩を朗々と歌い上げている。それが琴線を妙につついてくる。不思議と親しみやすさを持ったメロディも染みてくるだろうか。けれども、程よく毒素もはらんでいるのか、やけに気持ちよさも増幅される。

 3曲目まではそんな感じの曲が続いて、ゆるく心地よい気分を味わっていた。しかしながら最後に演奏された曲(多分、10分超える「テカテカ」という曲だったと思う)で脳天ぶっ飛ばされた気になった。前半に紡いだしっとりとした雰囲気が中盤から堰を切ったように溢れだした轟音が押し流していく。渦巻くギターと硬質なリズム、荒々しく叫ぶヴォーカル、さっきまでと別バンドかと思えるぐらいに感情のスイッチが入った演奏で牽引する。急激にその膨れ上がった音圧に合わせてバンドのアクションも激化し、景色を一気に塗り替えてしまった。爪を隠していたともいうべきか、こんな凶暴な一面を隠し持っていたとは驚きだ。のんびりとした歌声と演奏のゆるさに心地よい気分を味わっていた自分からすると、仰天の転換、ゆえに現出した鮮烈な世界にぶったまげた。最初は普通の青年たちだったのが、終演後はまるで別のオーラをまとって見えてしまうのが末恐ろしい。

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写真:岡村直昭
文:伊藤卓也

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CHRIS CUNNINGHAM http://fujirockexpress.net/10/?p=3150 http://fujirockexpress.net/10/?p=3150#comments Tue, 03 Aug 2010 16:00:26 +0000 ryotamo http://fujirockexpress.net/10/?p=3150

キモイ、怖い、痛快、凄い!

フジロックに来ている、特にクリエイター達にこれほど強烈なカウンターパンチを浴びせてくれた人もいないのではないか。

通常、どんなアーティストでもステージ上のサウンドと映像がマッチしてひとつの作品として完成されているケースは稀で、大抵の場合、映像は“添え物”である場合が多い。また、「アレコレ口出しした結果」と思わされるような欲望丸出しのものも見られる。映像と音が一体となったステージなんてなかなか拝めるものではない。こんな2時間映画より強いインパクトをグリーンステージでやってのけるとは…この先、こんな空間を体験できることがフジロックであるのだろうか?

“肉体”にこだわり抜いた彼の映像は多くが人間の裸体である。裸でボコりあう男女に炸裂するビート、寝ている間に顔をアレコレやられる子供は、まるで繰り出されるノイズがいたずらしている様だ。時折差し込まれるグッチのフローラの映像がキレイで、逆に怖かったりする。…センパイ勘弁して下さいよおなかいっぱいっスと言いたかった人も多かったのではないかと思うくらい、振り向くと口を開けてポカーンとしている人、人、人…ああ、ラバージョニー!気味が悪いのに忘れられない。

完璧な映像と音のリエゾンからレーザーが山に向かって発せられる。足もとの水たまりにグリーンの光が反射して見とれる。ここはどこ?

こんなエグイ映像ばかり作っている本人が普通にイケメンってところも意外性があって良い。ブサイクなら好感度アップ。まあ顔は何でも良い。大体ステージ真っ暗で映像以外なにも見えなかったから。

重ねて言うが、フジロックに来ていながらクリス・カニンガムを見なかったクリエイターはyoutubeでも何でも探してみるべし。そして散々、後悔して、高いお金払って、どこか海外に飛んで行ってでも見るべし。その価値はある。

何度でも言う。いやはや、エライもん見せられてしまった。

CHRIS CUNNINGHAM 100731chris0007 100731chris0019

写真:森リョータ

文:mimi

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石橋英子 http://fujirockexpress.net/10/?p=4859 http://fujirockexpress.net/10/?p=4859#comments Tue, 03 Aug 2010 14:52:38 +0000 eriko http://fujirockexpress.net/10/?p=4859
 遅目の夕飯の時間帯だったせいか、ステージ前では石橋英子の登場を椅子に座ってのんびりと待つ人が多く目立った。彼女はシンガーソングライターでありピアニストでありドラマーでもある。ライブや音源では、山本精一、七尾旅人、灰野敬二、ナスノミツルなど名だたるアーティストと共演しており、楳図かずおの作詞作曲した「むかしトイレがこわかった!」をみんなの歌で歌っていたりもする。知れば知るほど石橋英子への興味は深まるばかりだ。さて今日は誰と一緒に演奏するのだろう。

 苗場食堂のステージに登場した石橋英子とともに現れたのは、ドラムの山本達久とヴァイオリンの勝井祐二(ROVOなど)。メンバーの2人をを紹介し軽く挨拶をしてから美しいピアノのイントロ「帰郷」がスタート。キーボードだけのサウンドから徐々にドラムとヴァイオリンが重なってゆき音に滑らかな厚みがついてくる。

 あたりに音が充満すると、苗場食堂の中だけでなく目の前の小高くなった場所も、ワールドレストランの入り口も素敵な空間に早変わり。レストランでディナー、なんて背伸びしたお洒落の空気ではなく田舎に帰って畳の上でくつろいでいるような落ち着いた感覚だ。のんびり食事をしながら、お酒を飲みながら生演奏が聴けるだなんて贅沢なんだろうか。あぁ、私も椅子を持ってくればよかった。

 美しい演奏にのせて「Postcard from Ghost」では「まるつぶれ めっためただ」「アル中になればよかった」などというドキっとするような歌詞が、家族団らん的な雰囲気の客席に容赦なく刺さる。刺さりはするが不快感や嫌悪感は感じないのが彼女の魅力の1つなのだろう。その証拠に演奏が終わったとき苗場食堂を埋め尽くした拍手は、とても暖かさに溢れていた。
_MG_5714 _MG_5737 石橋英子 KKM_8471 KKM_8430

写真:輪千希美
文:名塚麻貴

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BUFFALO DAUGHTER http://fujirockexpress.net/10/?p=4451 http://fujirockexpress.net/10/?p=4451#comments Tue, 03 Aug 2010 14:44:21 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=4451
最終日夕方、赤い衣装をまとったBuffalo Daughterがレッドマーキーに現れた。そういえば7月に出たばかりのアルバム『The Weapons Of Math Destruction』のジャケットも赤だ。赤・レッド・赤…彼らがこのステージに立つことは当然のような気分になってくる。

襟元にキラキラとした飾りのついたかわいらしいノースリーブワンピースの大野由美子が客席に向かって手を振る。対するシュガー吉永はオーバーサイズの赤いTシャツ、黒のスリムパンツ、スニーカーといったボーイッシュな格好だ。バンドでの彼女たちのキャラクターが衣装を見るとなんとなくわかって面白い。2人が向かい合うように並び、その後ろにこちらも赤いTシャツのムーグ山本とドラムの松下敦が並ぶ。

1曲目はニューアルバムから「Gravity」。名前どおり重力を感じるような重いリズムの上にミニマルなメロディが重なってオーディエンスを静かに揺らしていく。人力エレクトロサウンドから、続く「All Power To The Imagination」ではギターのカッティングがジャキジャキと響くロックン色の強いサウンドへ。Buffalo Daughterの3人の演奏もさることながら、ZAZEN BOYSなどで活躍するサポートドラムの松下敦がとても魅力的だ。クールな音を弾き出す3人に対して、松下は汗が飛び散るような獣のような熱さをみせる。ただ激しいドラムを叩きながらも決してバンドのサウンドを邪魔せず下から押し上げるような頼もしさがあるので、より3人の音が引き立つのだ。

「Pshychic A-Go-Go」が始まるとじりじりと熱を帯びてきた会場の盛り上がりは最高潮に。ミニマルなハンマーフックのギターリフに大野、シュガー、ムーグのハーモニーが心地良く響く。ラストはさらに煽るように「Cyclic」。演奏が終わると、そうだここは苗場だったとはたと気づいた。Buffalo Daughterは一瞬の赤い旅へ連れて行ってくれたのだった。

BUFFALO DAUGHTER _IZ13077 _IZ13080 _IZ13113 _IZ21573

写真:熊沢泉
文:名塚麻貴

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ALBERTA CROSS http://fujirockexpress.net/10/?p=4117 http://fujirockexpress.net/10/?p=4117#comments Tue, 03 Aug 2010 14:30:59 +0000 natsuki http://fujirockexpress.net/10/?p=4117
 スウェーデン人とイギリス人を中心に結成されたALBERTA CROSS。ハードな部分もソフトな部分もたくましい輝きを持っていて、まっすぐなサウンドがとても魅力的に映るバンドだ。あのリアム・ギャラガーにも認められて、オープニング・アクトを務めたこともあるという。というわけで、非常に期待が込められているバンドの一つだろう。

 ライヴを見ていて思ったのは、いい歌を届けてくれるバンドだなあということ。容姿はキーボーディストを除く4人が長髪で一見するとハードロッカーっぽいのだが、彼等の音楽は前述したように、無垢な響きを持った端正なロックを鳴らしている。ギター、ベース、ドラムがサウンドを編みこみ、キーボードがゆるく被さっていく。ただ、その中でやはり歌の良さを最大限に引き出すような構成がとられている。ゆえに彼の声は胸の奥まで浸透していく。その歌には悲しみを受けてくれるかのような、また前へ踏み出す力を与えてくれるというか、そんな力があると思う。

 その中でアコースティック・ギターの甘美な響きと歌の良さを生かした曲で、感動を誘ったり、Voがタンバリンに持ち替えてリズム隊、キーボードと共に静かに燃え上がるような空間を作り上げている時もあった。ラストにはシューゲイザー寄りの轟音まで手繰り、会場を震え上がらせていたのが印象的。予想以上に引き出しの多いライヴを披露してくれたことには驚きを隠せなかった。今度は屋根付きではなくて、風を浴びられるようなステージで彼等の歌と演奏を堪能したいものだ。

ALBERTA CROSS _IZ12965 _IZ12990 _IZ21467 _IZ12967

写真:熊沢泉
文:伊藤卓也

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AIR http://fujirockexpress.net/10/?p=4677 http://fujirockexpress.net/10/?p=4677#comments Tue, 03 Aug 2010 14:23:46 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=4677

 待ちに待った、AIRのフジロック出演!ステージ上にはニコラとJB、そしてドラムは北米ツアーもサポートしていたアレックス・トーマス。いつものことながらシンプルなシャツ姿で登場。ニコラは白いストールを巻いていて、とても似合っている。そういえばエールの2人がTシャツやカットソーを着て演奏しているのは見たことがないが、想像もしたくない。

Dot the joyで幕を開け、久しぶりに堪能するエールの世界はリズムを強調して、全体的にテンポ速め。結果、ポップでコンパクトな印象を受ける。特に、RememberやHow does it make you feelといった昔の曲ではちょっとだけ違和感が…。個人的に、エールの魅力は気だるく甘いメロディとふわふわ夢心地な浮遊感だと思うのだが、今回浮遊感は少々抑え気味の様子。ただ、Tropical diseaseやDon’t be light、Sexy boyにおいてはアップテンポがマッチして新鮮。大体、Tropical diseaseなんて一歩間違えばムード歌謡に転びそうな危険なメロディ満載なのに、ギリギリのところでバランスを保っているのはさすがである。映像もハイエンドなビジュアルではなく肌のぬくもりを感じさせる独特さで、そこはかとなく漂う場末感が思いっきりパリっぽい!コンパクトに感じるとはいえ、耽美さはダダ漏れで、最後のLa femme D’argentでは、お得意のメランコリーで甘美な世界を思う存分堪能させてもらって大満足。

 フレンチエレクトロ旋風の先駆けのようなメディアからの扱いに、本人達は淡々とNonと言い続けてきた。そして、実際にもシーンとは少し離れたところに居続けた。現在のフレンチエレクトロがダンス・トレンド寄りになっていくのに対し、エールはオリジナリティを貫き続けた。フジロックではその世界を愛する大勢の観客に愛を持って迎えられた。ステージでお辞儀するエールの2人にいつまでも感性と拍手がなりやまず、マーキーはアムールに包まれたのである。

 彼らは以前から野外ステージでの演奏を望んでいると言っていたので、できることならグリーンやホワイトで見たかった。でも、それは次のお楽しみとしてとっておこう。山、森に映えるエールのサウンドを想像しただけでも、宙に漂ってしまいそう。

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写真:熊沢泉

文:mimi

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OZOMATLI http://fujirockexpress.net/10/?p=4971 http://fujirockexpress.net/10/?p=4971#comments Sun, 01 Aug 2010 16:48:47 +0000 natsuki http://fujirockexpress.net/10/?p=4971

最終日の深夜パレスでは、「明日から仕事」と考える人と、「最後だから弾ける」という人の2種類がいる。名残惜しさは誰しもが同じ、されどこの日の小さなテントには、泣く子を黙らし、憂鬱を吹き飛ばし、耳の端に引っかかればその場を去ることをできなくさせるお祭りバンドがブッキングされていた。

パレスに入れば、その湿気に一瞬息が詰まる。それでもおかまいなしに突っ走るオゾに、フロアはかき乱されてあれよあれよと暴動の様相を呈する。バンドひとつでフェスティヴァルを体現してしまう彼らを最終夜に持ってきたのは、ある意味反則。日常を見始めたオーディエンスを再び濃ゆいフェスの世界に引きずり込み、場をたぎらせていった。

ジャンルの垣根を越えたオゾのパフォーマンスで、湿気まじりの熱気はさらに蒸したものとなって、テントの中に立っているだけでも汗ばむ状況になった。それでも、ゴキゲンな音とパフォーマンスはステップを踏ませ、夜は朝に限りなく近づいていった。

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写真:佐俣美幸
文:西野太生輝

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RIDDIM SAUNTER http://fujirockexpress.net/10/?p=4957 http://fujirockexpress.net/10/?p=4957#comments Sun, 01 Aug 2010 16:45:25 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=4957
リディムサウンターはきっと若い人の音楽なんだろうと勝手に思い込んでいた私は間違っていた。苗場食堂という不思議な偶然勃発地帯で見たから、きっとそういう巡り合わせなんだと思う。今年のフジロックの締めがここで本当に良かった。

「(フジロックのみなさんは)雨に強いと聞いてますが、大丈夫ですか?」と表れたメンバーは5人。フジロック3日目の苗食のステージには、乗り切らないほどのエネルギッシュなパワーが溢れていた。

リディムサウンターを見て印象的だったのは、フルートの綺麗な音色とコーラスのハーモニー、トランペットや鉄琴など多彩な音色。それを乗せた軽快でハッピーなリズムに体を動かさずにはいられなかった。そんなテンションの中でも客席に投げかけるように丁寧に歌うボーカル田中の姿には目が離せない。

「まだ踊れますかー?」最終日、最後の最後まで楽しみたいお客さんの勢いは止まらない。スカ要素のある”I’m Dabbling”や3拍子の入った”Waltz of The Twins”など多様な音楽性でどれを聴いてもみずみずしくフレッシュな楽曲だった。ラストの曲が終わってもコールは鳴り止まず、アンコールは”What Comes After The Parade”で大きな手拍子とラララの大合唱。ステージは小さいながらも、とてつもない一体感が会場を覆っていた。
KKM_8697 KKM_8751 KKM_8812 KKM_8979 RIDDIM SAUNTER

写真:輪千希美
文:千葉原宏美

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カジヒデキ http://fujirockexpress.net/10/?p=4950 http://fujirockexpress.net/10/?p=4950#comments Sun, 01 Aug 2010 16:41:52 +0000 eriko http://fujirockexpress.net/10/?p=4950

 登場するアーティストもあとわずかになったフジロック最終日の夜。苗場食堂のステージ周辺はいまだかつて無いくらいにギッシリとお客さんで埋まり、そして「彼」が登場するのを待っていたのだった。
 
「こんばんは、カジヒデキです(はあと)」

 あぁ全てのセリフに(はあと)を入れたい。ノンジャンルの出演者を誇るフジロックに、ついにミスター・スウェーデン、カジ君の登場である。集まれ森ガール! 集まれオリーブ女子!

 カジ君を中心にRiddim Saunterのメンバーが参加するパーカッション、ドラム、フルートで構成されたバンドは、アコースティック仕様。”パッション・フルーツ”からライヴは始まり、ハーフパンツに麦わら帽子姿のカジ君が「さぁみんな一緒だよ(はあと)」と客席に声をかけるのは”甘い恋人”。デスメタルの人が乱入して苗場食堂のステージが真っ赤な血で染まる……ような事はなく、お客さんも一緒にサビで大合唱。

 フジロック開催前、テレビ番組でブライアン・バートンルイスに苗場に連れて行かれたというカジ君。番組の中でフジロックのお客さんをテーマにしたという”ロックと長靴”を作曲したのがきっかけで、急遽フジロックへの出演が決まったのだという。フジロックのお客さんに捧げるというこの曲、苗場食堂の空気にもピッタリハマって、ほんとにポップでキュート(はあと)。

 後半はギターを持ち替えて、ロックモードのカジ君。再び降り出した雨にも全然負けないお客さんの熱気に、「サンキュー、ソーマッチ(はあと)」と嬉しそう。かつてCMソングにもなった”LA BOUM ~MY BOOM IS ME~”ではオアシスエリアのお客さんも大盛り上がり。本編終了後には熱烈なカジ君コール(アンコール)が起こり、急遽予定に無かった”ヘイ・ヘイ・ベイビー・ポップ”が演奏され、お店のお客さんまでも盛り上がっていた。カジ君が去り際に言っていたのけれど、「サンキューフジロックピーポー(はあと)」。そう、まさにそんな一体感を見せていたのだった。

_MG_5746 _MG_5748 KKM_8493 KKM_8520 カジヒデキ

写真:輪千希美
文:小田葉子

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SCISSOR SISTERS http://fujirockexpress.net/10/?p=4927 http://fujirockexpress.net/10/?p=4927#comments Sun, 01 Aug 2010 15:58:09 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=4927
強くなる一方の雨は遠慮を知らず、さすがに参る。足元がピカピカ光り、気を抜けばマンガのようにひっくり返る危険すらあるのに、奥地から戻ってきた人たちも、グリーンステージから発せられる磁力によって、どんどんとモッシュピットに吸い込まれていく。時間よ止まれ。そう願う人たちの最後の宴がいよいよスタートした。

フジロック前にリリースされた4thアルバム、その名も『Night Works』。高らかと、Sissor Sistersの代名詞を宣言したこのアルバムは、まさに原点回帰。胸のはだけたジャケットに、遠めからみてもどうやら網タイツから半裸を経て、最後にはパンイチに……深夜の物好きが集まる名残惜しさもどこへやら、ジェイクの本気具合にただただ爆笑。姐さん!そう呼ばれる人は、きっと美人と強さとエロさを持ち合わせた人だと再確認させてくれるのが、胸元の大きく開いたレザーのドレスに、濃い目の化粧のアナがジェイクの隣に凛々しく立つ。

『Night Works』からの曲を中心に、ジェイクとアナの極上エンタテイメントは、夫婦漫才の掛け合いのように、お互いステージの端と端で投げかける視線が遠くなっても、ぶれることのないジェイクとアナ。時として、スクリーンにどアップで映し出されるのは、アナに支配されたジェイクとのいけない情事。世の中のあらゆるすべての事柄の原点=支配者と被支配者の関係を表す縮図の原点ともいえる人間の生々しい面を惜しげもなく曝け出した。それはタイトでポップな曲であればあるほど、オーディエンスが狂おしく踊れば踊るほど、相反する支配と被支配の関係が鮮明になっていった。前回、フジのステージに立ったのは、2006年のホワイト・ステージ。あの時には、バンドよりもステージが遥かに大きく見えたのに、この日はどうしたことか、グリーン・ステージが小さく見え、完全に3万人のオーディエンスを一気に飲み込んだ。

Scissor SistersはScissor Sistersであるのに、メディアによって、そして世界中の人たちによって、Scissor Sistersが勝手に独り歩きしてしまい、Scissor Sistersが本来のScissor Sistersでない時期もあった。こういうことはScissor Sistersに限らず、超破格のビッグ・ウェーブを起こしたバンドにはよくあること。Scissor SistersがScissor Sistersであることを勝手に操作され、Scissor SistersがScissor Sistersであることを見失いかけた時期もあったという。だがScissor SistersがScissor Sistersであることを堂々を証明してくれた。フジロック最終日、最後まで天はフジロッカーズに微笑むことはなく本格的に降ってきた雨とは裏腹に、原点回帰して、晴れ晴れとしたScissor SistersであるScissor Sistersがそこにいた。
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写真:前田博史
文:ヨシカワクニコ

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DJ ALEXIS TAYLOR (from HOT CHIP) http://fujirockexpress.net/10/?p=4882 http://fujirockexpress.net/10/?p=4882#comments Sun, 01 Aug 2010 15:05:58 +0000 shaquille http://fujirockexpress.net/10/?p=4882 DJ ALEXIS TAYLOR (from HOT CHIP)
 ますますわからない。Alexis Taylorとはどんな人物なのだろう。わけがわからないのではない。逆に知れば知るほど、謎が湧き出してくるのがAlexis Taylor。笑わない、媚びない、でも音楽に対する静かな熱さを秘めた人……。この後に続くJames Murphyへとつながる線は、実によく理解できる。Alexis TaylorだけではなくHot Chipのメンバーは、The 2 BearsやGreco-Romanといった別ユニットや、Hot Chipからは一見連想することが難しいアーティストのRemixを手がけたりと、ひとつ引き出しを開けて閉じると、別の引き出しが飛び出すという罠にはまっているのだ。

 Hot Chipのライヴの興奮冷めやらぬこちら側とは裏腹に、まったく表情の変わらない涼しい顔のAlexis Taylorがひとりぽつんと機材の前に立つ。グリーン・ステージでは、今年のフジの大きな事件、Atoms For Peaceが、そしてMassive Attackへのバトンタッチが行われている。レッド・マーキーには、人は少ない。ただ、ここへ集まった人たちは、モノ好きそのもの。さっきは気づかなかったけれど、モノクロのメデューサのTシャツ……つっこんでほしいのか、どうなのか。

 こちらフロアに目をやることもなく、ただただ淡々と、黙々と7インチレコードを手にしては、小さなツマミをキュッと上下。そして視線の先にはぐるぐると回ったレコードと、レコードの針。ミニマムなピアノの音がただただ繰り返される。日本では貴重なDJとしてのステージに、心が躍った。Alexisの元には、Hot Chipのメンバーが立つ姿もあった。Alexisが回す曲が何であるかはわからなくとも、この日のAlexisのプレイには、納得がいった。でも、さらに私はAlexis Taylorという泥沼の深みにさらにはまってしまった。わからない…Alexis Taylorという人物が理解できないのではない。謎を解き明かそうともがけばもがくほど、抜け出せない底へ底へと向かっているだけ。ただ、そのもどかしさが心地よい。Alexis Tayorという人をきちんと解明できる日が来るなんて思っていない。むしろこれからもこの泥沼感をもらたしてくれる人でいてほしい。
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写真:中島たくみ
文:ヨシカワクニコ

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JJ Grey & Mofro http://fujirockexpress.net/10/?p=4533 http://fujirockexpress.net/10/?p=4533#comments Sun, 01 Aug 2010 14:55:19 +0000 bamboo56wave http://fujirockexpress.net/10/?p=4533

 ヴォーカルのJJ Greyを中心とした、JJ Grey&Mofro。今回が初来日にして、フジロック初出演を迎える。彼らは普段フロリダをベースに、4人組で活動しているバンドのひとつ。正直フジロックに出演が決定するまでは、自分にとって馴染みのないバンド名だった。けれど彼らのことを調べているうちに、一度はステージを体感したいと思ったのがレポートをするきっかけだ。

 ライヴはギターと鍵盤、ドラムとベースに加えて、トランペットとサックスも参加した7人編成でスタート。安定感のある力強いソウルフルなナンバーで、実力をまざまざと見せつけてくれる。そして正統派ロック・バンドかと思いきや、繊細でムードのあるナンバーも。まさにジャム・バンドのように、ジャンルを越えた表現スタイルを兼ね備えている。

 彼らはステージ上で激しく動くことはないけれど、見ているだけで充分に音楽のパワーをひしひしと感じることができる。だからこそ会場では、飛び上がったりするオーディエンスが集まるのだろう。また、落ち着いたナンバーでは、カップルが手を取り合い楽しむことも。1曲ずつ楽曲の雰囲気がガラリと変わるのも嬉しいところだ。

 そして8月7日には、アルバムを発売することが決定している彼ら。今作ではエリック・クラプトンのツアーにも同行した経験のある、ギターリストのデレク・トラックスが参加している曲もあるそう。きっと今後も何かと注目されるに違いない。そして再び来日するときには、さらに日本に浸透していることを願っている。

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写真:北村勇祐
文:松坂愛

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DONAVON FRANKENREITER http://fujirockexpress.net/10/?p=4156 http://fujirockexpress.net/10/?p=4156#comments Sun, 01 Aug 2010 14:40:41 +0000 kim http://fujirockexpress.net/10/?p=4156

 その場にいるだけでも、思わず顔が緩んでしまうライヴ。フジロック内で最も大きいステージにも関わらず、DONAVON FRANKENREITERのステージは常にアットホームな空間が広がっていた。

 なぜかTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」がSEとして流れ、集まったオーディエンスのボルテージがアップ。けれど当の本人は、いたって自然体のままステージに登場。そして演奏がスタートすると、輝かしい音たちがどんどん散らばっていく。思わず体を揺らしてしまうほど、リラックスできる歌とサウンドだ。ただひたすら、音に身を任せていたように思う。

 夏にピッタリ合うナンバーを数曲披露してくれたところで、ステージ後方に用意していたクーラーボックスからビールを手にする彼。すると手に持ったビール缶を観客に渡し、乾杯するなんてことも。彼が誰からも愛される理由が分かった気がした。また、覚えやすいメロディが特徴的な「Free」に入る前には、数多くのビーチボールが観客のいる場所へと投げ込まれていく。ビーチボールを空高く上げながら、大合唱していくオーディエンスたち。気付くと自分も一緒になって、合唱に参加してしまっていた。彼の音楽は、とてつもなく幸せな雰囲気が漂っているのだ。

 後半戦に演奏された「It Don’t Matter」では、ステージを降りてオーディエンスにマイクを向ける彼。しかもひとりの観客に歌わせてしまうという、とびきりのサプライズを用意。しまいにはマイクごと渡してしまい、一人ひとりたらい回しに歌う一幕も。見ているだけでも、至福の気分にひたれる時間だった。

 一瞬にして人を笑顔にしてしまう彼のステージ。こんなにもハッピネスに満たされるライヴに、立ち会えたことがなにより嬉しい。

DONAVON FRANKENREITER _HY20174 _HY20191 _HY20218 _HY10181

写真:穂谷益代
文:松坂愛

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