“あたそ” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '18 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/18 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Wed, 17 Jul 2019 08:24:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ…  http://fujirockexpress.net/18/p_10468 Tue, 07 Aug 2018 03:00:19 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=10468 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と戻ってくる。今では恒例となった、前夜祭はレッド・マーキーで行われるオーディエンスの記念撮影。満面に笑みを浮かべたフジロッカーズが堰を切ったように、ステージ前に雪崩れ込んでくると、それを粋な選曲で受け入れてくれるのがDJ Mamezukaだ。そして、その光景をステージから楽しそうに撮影しているのがスタッフの面々。オーディエンス同様にスタッフもこの瞬間を待ちわびていたのがよくわかる。彼らの顔も嬉しそうだ。

 今年は「おかえり!」に続いて、「ニイハオ」、「アンニョンハセヨ」、「オラ」「ハロー」「アロ」…と、たまたま覚えていた中国語や韓国語にスペイン語なんぞも交えて呼びかけてみた。言うまでもないだろう、ここ数年、飛躍的に増えているのが、遠路はるばる海外からやって来る人々。正確な数はわからないが、一説には、台湾からは500人近い人々が来ているんだそうな。しかも、多くが「ラインナップ」に引き寄せられたのではなく、フジロック・フェスティヴァルそのものに魅せられているという。それを証明してくれたのが6月に台湾で開催されたフジロッカーズ・バー、フジロックを愛する人たちが集まるパーティだった。

「フジロックが体現しているものを形にしたかった」

 と、これを企画してくれたのは、過去10年ほど、毎回家族でフジロックにやって来る人物だ。台北の華山1914と呼ばれる公園の一角にDJ用のテントを設置。そこから数々のDJが音楽を流し、時には生演奏も楽しむことができる2日間のイヴェントだった。踊っている人もいれば、芝生の上でのんびりと時を過ごす人もいる。大切なのは人々が繋がり、互いをリスペクトしながら、時間と空間を共有すること。フジロックをキーワードに、そんな動きが海外でも生まれていることがどれほど嬉しかったか。

 また、2001年の出演から17年を経て、苗場に戻ってきたアイルランドのバンド、ホットハウス・フラワーズのメンバーとの会話でも同じようなことを感じることになる。

「クリーンなフェスといっても、ルールやマナーを守らなければいけないってことより、互いが互いをリスペクトして、気遣う姿勢がそんな結果に結びついてんじゃないかな。それがすごいと思うんだ」

 そう話してくれたものだ。山に囲まれ、川が流れるという自然の素晴らしさが、そうさせるのかもしれない。また、長年にわたって環境問題やリサイクルを訴え続けるiPledgeや主催者、fujirockers.orgによるキャンペーンも後押しているんだろう。が、なによりも会場の主役となる観客が動かなければ、それが形になることはない。その結果が「世界で最もクリーン・フェスティヴァル」というイメージに結びついているのだ。

 もちろん、すべてがバラ色なわけはない。昨年のエキスプレスではこのゴミの問題を取り上げなければならなかったし、今年はスリや置き引きといった都会の犯罪が流れ込んでいるという話しも伝わっていた。それでも大きな事故や事件も起きることなく今年のフェスティヴァルが幕を閉じたのは奇跡ではなかっただろうか。

 特に気がかりだったのは台風だった。全国を灼熱の太陽が照りつけ、史上最高気温を記録していた開催前、接近中の台風が下手をすると苗場を直撃するのではないかという憶測も流れていた。1997年の第一回からフジロックに関わっている仲間が想起していたのはあの時の惨状だ。どれほどの人が覚えているかわからないが、あの時、台風が上陸したのは遙か西だったと記憶している。が、それでも本部からステージの上までもが野戦病院のようになっていた。そんな経験を踏まえて、フェイスブックといったSNSを通じて、充分な装備を訴え、開催期間中も台風情報を発信しながら、注意を呼びかけていたのだが、それがどこまで届いただろうか。

 雨がひどくなり始めた土曜夜から、スタッフが更新作業を進める本部テントも強風と雨の影響を受け始めていた。キャンプ場でテントを張っている人たちは大丈夫だろうか? この風雨に耐えられる丈夫なテント、ペグを使っているだろうか… 予定されていた取材が大切なのは言うまでもない。が、あの時、僕らはもっと臨機応変に対応しなければいけなかったのではないだろうか。おそらく、フェスティヴァル慣れしている多くの人々が準備万端で挑んでいたからだろう、21年前の悲劇は繰り返されることはなかった。が、それでもキャンプ場の3割ほどのテントが全半壊し、急遽用意されたプリンス・ホテルの一角に避難したのは約250人。もっと彼らに寄り添うべきではなかったのか… もっともっと必要とされている情報を発信すべきではなかったか? 反省すべきことは、今年もいっぱいあったように思う。

 それでも振り返ると、楽しいことばかりが思い出される。エキスプレスに登場したオーディエンスのひとりが口にしていたように、すでに「ホーム」のようになったのがフジロック。ここに来れば、必ず会うことができる仲間もいれば、何年ぶりかに懐かしい顔をみつけて昔話に花を咲かせることもある。子供を連れて遊びに来ている昔のスタッフや友人もいたし、ずいぶん昔、子供に連れられてここにやって来たおかぁさんとも再会。「夢は3世代でここに来ること」という、彼女の夢が現実になるのは、そう遠くはないだろう。

 ラインナップがどうのこうの… 文句を言うのも、おそらく、楽しみのひとつで、毎年のこと。でも、通りすがりに目にしたアーティストの演奏に聞き惚れたってことも少なくはなかっただろう。有名無名を問わず、ジャンルなんぞ「どこ吹く風」で世界中からミュージシャンからオーディエンスが集まってくるフジロックは、苗場での20回目で成人期に突入したのかもしれないとも思う。

「大きく育った木を根っこから掘り起こして、植え替えても根は張らないよ」

 その昔、フジロックが始まった頃、グラストンバリー・フェスティヴァルの主催者、マイケル・イーヴィス氏にそれを伝えると、そんな言葉をかけられたのを思い出す。おそらく、それは彼からフジロックへのアドバイスだったんだろう。今のフジロックを彼に体験させてみたいものだ。フジロックは苗場にしっかりと根を下ろし、根を張り、確実に成長を続けているのがわかるはずだ。それは年々と整備充実されている施設や、今回の台風への主催者の対応を見れば、一目瞭然だろう。

 1970年に始まったあのフェスティヴァルも、もう少しで50周年。面白いのは… 10数年前だったか、彼の大好きなヴァン・モリソンが上機嫌で演奏した後、「喜んでくれたよ、ステージで笑ってたからね」と話してくれたんだが、実は、同じようなことが今年のフジロックでも起きていた。「ボブ・ディランやドノヴァンが歌っていることへのロマンティックなアプローチ」がグラストを始めるきっかけと、彼が語っていたんだが、そのディランがステージを終えて、にっこりと笑って幸せそうに会場を離れたんだそうな。日頃は、にこりともしないらしいんだが、この日は上機嫌だったと、あの時、ステージにいたスタッフから聞いている。

 さて、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ、今年のフジロックを体験されたみなさん、いかがでしたか? 実際には足を運ぶことができず、自宅でモニタを見ていた方、あるいは、初めて実現したYouTubeのストリーミングでライヴを見ていたみなさんもいたかと思います。でも、この現場にあるのは、モニタからはけっして伝わらない「幸せ」。それを体験しにやって来ませんか?一度はまると抜けられませんよ。

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 苗場で20回目という節目もあって、今年は幾度もスタッフが苗場入りして、数多くのレポートを、このエキスプレスの根っこである、fujirockers.orgにアップしてきました。フジロックという「祭り」の魅力は、そこでもみつかると思います。お時間があれば、そちらもぜひチェックしていただければと思います。また、例年、主要部隊が会場入りするのは、開催前の火曜日ですが、今年はその遙か前から、準備期間を含めて取材活動をしてくれたスタッフもいました。ありがとう。あの灼熱と雨と嵐の中、熱中症と向き合いながら、一方で、ずぶ濡れになりながら、会場の内外を走り回ってレポートを続けてくれたのは以下のスタッフとなります。まだまだ未熟でいたらない点があることは否定できませんが、彼らを叱咤激励していただければ幸いです。記述に情報等の間違いがあれば、それを修正し、ご報告いたします。ただ、彼らが残した記録はアーカイヴとして、これからもずっと残していきます。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/18/)
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、安江正実、アリモトシンヤ、粂井健太、岡部智子、MITCH IKEDA、MASAHIRO SAITO、木場ヨシヒト、Yumiya Saiki、高津大地、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、HARA MASAMI、陳彦伶、上村理穂、つちもり

ライター:阿部光平、あたそ、石角友香、イケダノブユキ、梶原綾乃、長谷川円香、三浦孝文、若林修平、卜部里枝、近藤英梨子、平井ナタリア恵美(Paula)、増田ダイスケ、松原充生子、Masaya Morita、Masako Yoshioka

■英語版(http://fujirockexpress.net/18e/)
Laura Cooper, Sean Scanlan, Patrick St. Michel, Park Baker, Jonathan Cooper, Dave Frazier, James Mallion

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、酒田富紗葉(デザイン)、坂上大介、迫勇一

スペシャルサンクス:本梅あさみ、坂本泉、土橋崇志、本人(@biftech)、熊沢泉、藤井大輔、Taio Konishi、三ツ石哲也、丸山亮平

プロデューサー:花房浩一

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MISIA http://fujirockexpress.net/18/p_1625 Fri, 03 Aug 2018 06:16:16 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1625 例えば、全く音楽に興味のない会社の上司や友達に「今年のフジロックは誰が出るの?」なんて尋ねられたとき、「ボブ・ディランとか、エレカシとか、MISIAですかね~……。」なんて答えた方も多いだろう。
今年、デビュー20周年を迎えたMISIA。なんと湯沢・苗場へと会場を移したフジロックとは同い年。知名度はあるし、何曲かも知っている。しかし、ライブそのものを見るのは初めてだったという方も、同じくらいいただろうと思う。

Ed Sheeranの“One”が流れるなか、開始時間より少し前に登場したのは白い衣装を身にまとったサポートメンバーの6人。力強いドラムのリズムが鳴り出せば、颯爽とMISIAが登場する。この日のMISIAは白と黒のドレッドヘアに白いドレスといういで立ち。彼女が動くたびに、髪もドレスも、同じように揺れている。

まずは、“BELIEVE”。しっとりと歌う声すらも安定していて、思わず鳥肌が立つ。もちろん、気温が低いからではなくて、彼女の持つ声量が、直接的に触れてくる。心を震わさずにはいられないのだ。

“真夜中のHIDE-AND-SEEK”では、トランペット、トロンボーン、サックスのそれぞれのソロが、MISIAの声に負けないくらい、空に高らかに響く。管楽器のいるMISIAのバンドセットは、ライブで聴くと音源と比較すると、野性的にも開放的にも聴こえる。自然と空が広がる空間で聴くには格別であった。

18時半、夕暮れ時で空が赤く染まり始める頃、音源と比較して少々ゆっくりとしたテンポでスタートしたのは“オルフェンスの涙”。少しも容赦することなく浴びせられるMISIAの圧倒的に力強い声に、空に高く伸ばされた手。神様とか天使とか悪魔とか、何かが降りてきてもおかしくはなく、まるで一種の儀式のようでもあった。朝から吹き続けている強い風、奇妙に揺れている木々たちも、その儀式の演出に見える。

“つつみ込むように…”なんて、まさかあの人間離れした高音域を生で聴けるなんて思ってもいなかった。高いヒールを履いてはいたけれど、MISIAの身長は153センチ。一体、あの小さな身体のどこにあの高音域を出す力が眠っているのだろう。
途中、コール&レスポンスも起こるのだが、MISIAが要求する声の高さがどんどんエスカレートしていく。実際に、MISIAの声と同じ高さを出してみると、はっきりとした高音でステージに声を戻すには難しく、どれだけ高度なことをしているのかがよくわかる。あんな声、簡単に出せないよ!最後は、“MAWARE MAWARE”を高らかに歌い、手を振り、投げキッスをしながらステージを去っていく。

大自然の中で聴く、5オクターブの声に、美しいビブラート。そして、記憶のなかに染み付いた曲たち。50分間のなかで、理由もなく何度も泣きそうになる。
髪と衣装を揺らしながら、サポートメンバーを携えながら己の声ひとつだけで人を魅了してしまうMISIAは、なんて強く、美しいのだろう。

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CHVRCHES http://fujirockexpress.net/18/p_1623 Sun, 29 Jul 2018 14:48:50 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1623 はじまる前から、予想はできていた。キュートなルックスに透き通る声。「ハピハピ!ジョイジョイ!」なんて、ギャップを感じる愛くるしいMC。ステージを駆け回るフロントマン、ローレン・メイベリー(Vo)の魅力が、会場にいる全員の胸を撃ち抜いた。もう、本当に老若男女問わずに、メロメロになっていたのではないだろうか。そして、ポップでわかりやすい曲に、特徴的なキラキラとしたデジタルサウンド。安定感のある重い低音も合わさって、自然と身体が揺れてしまう。CHVCHESの魅力に骨抜きにされてしまった!

登場したローレンは、袖の部分をカットしたTシャツにチュールスカート。全身ホワイトの装いに、目の周りにはキラキラとしたラメがまぶしいブルーとピンクのメイク。ああ、かわいい。まるで天使のようであった。

特徴的なイントロにクラップ&ハンズが起こり、まずは、5月にリリースされたばかりのニューアルバム『Love Is Dead』から“Get Out”。実は、フジロックには初登場となるCHVCHES。今回は、ドラマーのジョニー・スコットを迎えた新たなライブセットとなり、力強いアレンジが全体の演奏をより一層迫力のあるものにしている。今までの3人形態のライブは、どうしても心細い音になってしまっていたが、そういう不安が一気に払しょくできたように思う。
それだけでも十分、といいたいところなのだけれど、体内の空気が震えるほど響く低音に、ホワイト・ステージ特有の音圧。完璧な照明の揃った、シンプルなステージセット。見事なまでのライブバンドに成長したCHVCHESに、踊らされる準備はもう整っていた。

“Bury It”のサビでは、チュールスカートを鷲掴みにし、思い切りヘッドバッキングをしながら歌うローレン。ステージ上で可憐に舞う彼女も素敵だけれど、頭を振り乱す姿もたまらない。“WE SINK”では、スカートを翻しながらくるくると回る、ローレン。陰と陽が入り乱れる曲たちに、透き通る声がマッチする。ときに口元からマイクを離し、感情を発露させながら歌っていたのだけれど、それでも声の圧が収まることはなく、ホワイトステージ一面に向かって響き渡るのだった。

中盤では、ローレンとマーティン・ドハーティー(Key, Vo)がパートを替え、“God’s Plan”と“Under The Tide”の2曲を堂々と、歌い上げる。ノリノリのダンスも含めてなかなかの上手さ。ローレンが歌うCHVCHESの雰囲気とはまた異なった一面を見せてくれ、ホワイトステージはこの日一番の大盛り上がりを見せたのではないだろうか。

複雑なリズムが心地よい“Leave a Trace”、ローレンのアカペラからはじまった“The Mother We Share”、雨がやみ本当の意味でブルーの夜空が広がった“Clearest Blue”と、後半にかけての素晴らしい畳みかけも、大いに盛り上がりを見せた。この絶妙な流れに、興奮した方も多かったのではないだろうか。

最後は、“Never Say Die”で大合唱が起き、ゆっくりと終了に向かっていく。ファンの方が柵にかけていた「CHVRCHES」と書かれた日本の国旗をまとい、はしゃぐようにステージを走り回っているローレン。ああ、もう!最後の最後までかわいいんだから!
アンコールはなし。途中から雨が降り出してしまったのは少し残念だったけれど、心地よい音の洪水にのまれ、作り込まれた音に踊りに踊らされた夜となった。

後半のMCでは、「まだ詳しくは言えないけれど、近々また来る予定だから、すぐに会おうね!」という嬉しい報告をしてくれるローレン。もしかして、単独公演?なんて、ちょっと期待してしまう。
駆け抜けるようにフジロックが終わり、明日からフジロスを抱えてしまいそう。けれど、近々CHVRCHESのライブを見ることができる日が来ることを胸に、これから続いていく毎日も頑張っていけそうな気がする。

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DIRTY PROJECTORS http://fujirockexpress.net/18/p_1643 Sun, 29 Jul 2018 13:31:39 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1643 人で敷き詰められたレッド・マーキー。大きな拍手と歓声のなかで迎えられたのは、ブルックリン出身男3人女3人の6人組バンドのDirty Projectorsだ。

これだけの人が集まったのは、もちろん8年前の2010年に出演したときの評判のよさもあるだろう。しかし、その8年間の間に、中心メンバーであるデイヴ・ロングストレスが失恋を経験し、他メンバーだった5人が全員脱退。昨年のソロプロジェクト状態から再びバンド編成になったという人間臭いバックグラウンドがある。失恋から復活し、今年の7月にリリースしたばかりのニューアルバム『Lamp Lit Prose』は全体を通じて明るい雰囲気であり、評判もいい。そういえば、何日も前から前入りをし、居酒屋で飲んでいたところにファンが居合わせたというツイートも見かけた。いくつもの要因が合わさったからこそ、雄叫びのような歓声と拍手のなかで、6人が迎えられたのだった。

「こんばんは!みんな元気~?」と流暢な日本語で話すデイヴの着ているTシャツの胸にはなぜか「コーヒー」の文字が書かれている。そんなだっさいTシャツ、一体どこで売っているんだ!(笑)
ステージの背後には、カラフルな花々が映し出されている中、ニューアルバムから“I Found It In U”、“Break-Thru”、“What Is the Time”の演奏がでスタート。曲のイントロが鳴る度、観客たちからは声が上がる。
Dirty Projectorsの音楽は、魔法のようだと思う。6人と、バンド編成としては人数が多く、当然その分音の数は多くなる。音源を聴けば、各々のパートが複雑なことをしていることがわかるだろう。なのに、しっかりと統制の取れた再現率の高いライブを平然とこなしている。ライブは、どこの部分を切り取っても楽しいのだけれど、一体どこに合わせているのだろう。音源で聴いても、ライブを実際に見ても、謎が深まっていき、魅力にもとりつかれていく。

転換時にデイヴのTシャツにちなんで「コーヒー!コーヒー!」というコールが起こり、笑いを誘う場面もあった。“I Feel Energy”、“No Intension”では、女性陣によるコーラスの独特のハーモニーが癖になる。どうしたらそんな音を出せるのであろうか、コーラスワークも見事なもので、楽器の一部にも感じられるほどであった。

全編を通じて、独創的でありながら凝ったアレンジをしているのに、ポップに突き抜け、デイヴのヘタウマな歌声も親しみやすい。絶妙なバランス感覚には圧倒されっぱなしであった。
アンコールはなし。「フジロック愛してます!またね!」と言い残し、ステージを去っていく6人。今回のライブは、Youtubeで中継もされていた。Dirty Projectorsに摩訶不思議な魅力に取りつかれ、中毒になってしまった方も多いのではないだろうか。

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Awesome City Club http://fujirockexpress.net/18/p_1645 Sun, 29 Jul 2018 12:08:13 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1645 満員のレッド・マーキー。「待ってました!」と言わんばかりの大きな拍手と歓声で迎えられ、駆けながら登場するAwesome City Clubの5人のメンバー。これだけで、観客たちからの期待値が充分に高いことがよくわかる。

Awesome City Clubと言えば、どんなイメージがあるだろう。お洒落で、クールで都会的。そんな、自然に溢れた苗場には似つかわしくない印象を持っている方も多いかもしれない。しかし、そのイメージは、半分本当で半分は嘘。あんなに激情的でエモーショナルなライブを見ることができるなんて思ってもいなかった。

まず、演奏されたのは、“ダンシングファイター”。atagi(Vo/Gt)の丁寧なビブラートがしっかりと伸び、それに負けじと耳に残る透き通った声で歌うPORIN(Vo/Syn)に会場の空気はどんどんヒートアップしていくのがわかる。
“今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる”からノンストップで続く“アウトサイダー”では、2人の掛け合うような絶妙なハーモニーに、ブイブイ言わせているマツザカタクミ(Ba/Syn/RAP/Cho) のベースラインに、アクセントとなっているモリシー(Gt/Syn/Cho) の気の利いたフレーズ。ユキエ(Dr)も複雑なフレーズを難なくこなしている。フロントマンの2人がこうして安定感を持って、自由気ままに歌うことができるのは、バックのサウンドがしっかりしているからであろう。

“燃える星”、“pray”と落ち着いたナンバーのあとは、先月末にリリースされたばかりの“SUNNY GIRL”。クラップ&ハンズも巻き起こり、ステージ上で踊るatagiとPORINの2人につられて、観客たちの身体も自然と動き出す。正直に言うと、atagiの声の調子が良さそうではなく、特に伸びのいい高音がキツそうはあった。しかし、この場面ではなんとしてでも歌い切らなければならない。先ほどのMCでは、バンド結成当初からフジロックのステージに立ちたいと思っていて、ROOKIE AGO-GOに何度も応募し、それでも返事が来ることはなかったという。今年、結成5年目を迎えるAwesome City Club。ルーキーのステージを飛び越えて、やっとの思いで立ったレッド・マーキーの大舞台。ここで、すべての力を出し尽すしかなく、なんとか最後までしっかりと歌いあげるatagiには、さすがプロ!と思わずにはいられなかった。

ブルーとピンクのライトとミラーボールがキラキラと光る“Don’t Think,Feel”、レッド・マーキーが一帯となりながら踊った“ASAYAKE”とダンスナンバーが続き、最後の曲“GOLD”が演奏される。「熱狂のラストシーン 響くファンファーレ 早くなるハートビート 時が止まって」と歌うPORIN。ああ。今この瞬間に、なんて似合った歌詞なんだろう。ACCの熱気のこもったステージは、本当に素晴らしい景色を見せてくれたように思う。本望を言えば、本当に時が止まって(というか永遠に月曜日が来ないで)もっともっとフジロックを、ACCのステージの楽しさに浸っていたいのだけれど。

演奏後、メンバー紹介ののち、「今、ここにいるあなたたちを含めてAwesome City Clubでした!ありがとう!」とatagiが言い残し、メンバーはステージを去っていった。

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go!go!vanillas http://fujirockexpress.net/18/p_1615 Sun, 29 Jul 2018 07:50:40 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1615 遂に始まった、2018年のフジロック。天気は快晴、気温は少し暑いくらい。ビールを飲みながら音楽を聴くにはうってつけのフェス日和になった。

「盛り上がって行こうぜ!」という挨拶が終わり、ステージ背後に映し出されたgo!go!vanillasのロゴマーク。それから、去年リリースされたアルバム『FOOLs』の1曲目、”We are go!”が流れ、メンバーの4人が元気よく登場する。
「夏、感じませんか?ハジけていこうぜ!」という牧 達弥(vo/gt)の声とともに、”SUMMER BREEZE”の爽やかなイントロがかき鳴らされる。キャッチーで耳に残るメロディにエネルギッシュなサウンド。観客たちの腕は上がり、指先はステージで楽しそうに演奏をしているメンバーたちに向けられている。なんだか、一種のラブコールのよう。見ているこちらも、自然と笑顔になってしまう。
この曲には、「Summer Breese 風に乗れ Congratulation for your life」という歌詞がある。12時近くになると太陽は頭の真上。日が直接射して暑かったからこそ、ホワイトステージ一帯に吹いてくる風が、より一層気持ちよく感じられた。

次に演奏された”エマ”と”おはようカルチャー”では、みんなで飛んだり跳ねたり。すでに暑いのにも関わらず、曲が進んでいくにつれて、どんどんヒートアップしていく。go!go!vanillasの魅力と言えば、古きよきロックンロールに自分たちのポップさやハッピー感を混ぜ込んだ爽快な楽曲が挙げられる。けれど、それだけじゃなくて牧の芯のある声に、メンバー全員が参加する力強いコーラスだってこちらにヒリヒリとした音の圧が感じられるほど。それに、時にはステージを笑顔で走り回る柳沢進太郎(gt)と長谷川プリティ敬祐(b)、間奏時にスティックを空高く投げ、見事キャッチすることに成功したジェットセイヤ(dr)。キメるところはきちんとキメる。見ている人を飽きさせないステージング能力もgo!go!vanillasに惹かれてしまう魅力の一部なんだな、なんて思う。

そうだ。go!go!vanillasの4人と言えば、平成生まれ。更に言えば、牧と長谷川は平成元年生まれだったりする。”平成ペイン”と、牧が「ここで一番奏でたいと思って書いた」という”マジック”では、ジェットセイヤの爽快なリズムに乗せられ、ステージを縦横無人に動き回ったり特にはクラップ&ハンズをしてみたりと、様々な表情を見せながらどんどんgo!go!vanillasのポップさに会場全体が引き込まれていく。苗場に会場を移してから20年目、かつ平成最後のフジロック。そんな記念すべきトップバッターに彼らが選ばれた理由がなんとなく分かったような気がした。

途中のMCで、2010年のフジロックに参加し、当時ホワイトステージの大トリを務めたBELLE AND SEBASTIANを見て、人生を変えられたという牧。そして、その自分の人生を変えてしまった運命のバンドを見てから8年後の今、同じステージに立ち、自由気ままに演奏している4人は、気合い充分。go!go!vanillasの魅力が存分に発揮され、見る者すべてを笑顔にしてしまうような50分間だった!

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THE FEVER 333 http://fujirockexpress.net/18/p_1629 Sun, 29 Jul 2018 03:38:48 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1629 最高!クレイジー!で終わらせたいところだが、そうもいかないのでこのチャーミングな3ピースのLOVE満載なフジロック初出演かつ日本初ライブを振り返ろう。

サウンドチェックの後、ただでさえ強風の中、楽器セットの前に白い幕が張られ、オープニングSEにのせ黒装束に黒頭巾の男が登場し、立ち尽くす。SEが止まると、黒頭巾をかなぐり捨て、男は実はボーカルのジェイソンとわかる。そこからは阿鼻叫喚(!?)、トライアスロンもかくやなステージが展開。ジェイソンもギターのスティーヴィンもステージを駆け回り、モニターは転倒するわ、先ほどの幕を立てていたポールを撤去するわでスタッフもその狂騒についていくのに必死だ。ドラムのアリックも椅子の上に立って煽りまくる。

サウンドはロックとパンクとヒップホップが融合された、大雑把に言えばレッチリ的なミクスチャー感と、ポリティカルなメッセージの部分ではレイジに通じる部分もある。が、もっと底抜けに目の前にいるオーディエンスをサウンドとアクトと、今できる最大限のヒューマンパワーで、見ず知らずの人と人を繋ごうとする意志がちょっとどんなバンドとも比べ物にならないほど強い。

2曲目でモッシュピットに突撃したかと思えば、4曲めで早くもパンイチになるボーカリストなんて、いくら急に雨が降ってきたからって見たことない。でも、モッシュピットでオーディエンスにもみくちゃにされていようと、裸でステージ上をスライディングしようと歌やラップはブレないのだ。同期を用いているので、楽器隊は手を離してパフォーマンスできる部分もあるが、それでもクランチなカッティングも、カッチカチにタイトなスネアも止まることはないのだ。

しかもヒューマン・ビート・ボックスも達者なジェイソンは、身体能力の高さの中に音楽的な身体能力も備えているのだろう。見ていて笑うしかないカオティックなステージだが、音楽性が担保されているから、どんどん後方にも人が集まってくる。曲の良さがホワイトの橋の前にも届いているのだろう。さらにこのバンドの人間性の素晴らしさ。中盤に自分たちのスタッフはもちろん、日本サイドのステージスタッフも呼んで、オーディエンスの前で感謝の言葉を述べ、握手を交わしている。このあたりから完全に3人のファンになってしまった。国も言語も違うけれど、僕たちは喜びをシェアできる、そんな意味のことをジェイソンが言うと、説得力が違う。

約1時間のライブは後半になっても全力のパフォーマンスが続き、ジェイソンとスティーヴィンが中継車(機材車?)の屋根に登って演奏する場面も。苗場の森を背景にしたパンイチの男二人。自然に溶け込みすぎている。冗談じゃない。本気の人間の表現ってこんなに愛らしくてかっこいいんだ。もしかしたらディランを見に来たのかな?と思しき世代のオーディエンスも軽くヘドバンさせてしまう、おそるべき全人類への共通言語を持つバンドに午前中から勇気をもらってしまった。来年3月には来日するらしいが、この熱量は初来日にして初フジロックだったからかもしれない。最高!

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平井 大 http://fujirockexpress.net/18/p_1682 Sun, 29 Jul 2018 02:39:41 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1682 最終日を迎えたフジロックは生憎の雨と強風。
フィールド・オブ・ヘヴンのトップバッターとして、サポートメンバーと共にゆっくりとした足取りで登場した平井大。ここ最近のサーフロックと言えば平井大の名前が挙がるようだし、その貫禄たっぷりの落ち着いた雰囲気からは想像できないのだけれど、フジロックには意外にも初登場。

まずは挨拶を、と1曲目“I SHOT THE SHERIFF”の演奏からスタート。ゆったりとした心地よいリズムにパーカッションがスパイスとなり、音楽に身を任せながら踊りたくなる。間奏部分では、前に出て、目を閉じながら気持ち良さそうにソロを弾く平井。様々な表情を見せてくれつつ、会場の温度感を確かめるようでもあった。キャッチーなメロディーラインに乗る、平井の透き通るような優しい歌声。悪天候のなかであったとしても、気が休まるというか、だんだんとステージ上で演奏されている曲に入り込んでいき、穏やかな気持ちになっていけるような気がした。

そして、会場全体からスローテンポなクラップ&ハンズが巻き起こった“RIDE THE WAVES”では、ようやっと太陽も顔を出してくれたようだった。平井の美しい裏声が、どこまでも伸びていくように苗場の大自然の中に響き渡っている。途中、シャボン玉も風に乗って、高く舞い上がり、なんだか演出のひとつであるかのよう。

優しく、心に寄り添うような“SONG FOR TWO”と“tonight”の演奏が終われば、「次で最後の曲です!」という、平井。観客からは「えー!!!」という不満たらたらの声が聞こえた。曲は確かにスローではあるのだけれど、だからこそ時間という概念を忘れて聴き入ってしまう。まだまだ平井大の生み出す世界に浸っていたい。
そんな中で演奏されたのは、5月末にリリースされたばかりの”はじまりの歌”。バンジョーにブルーハーブとアコ-スティックギターの感情的なサウンドと平井の声が混ざり合い、身体も自然と揺れてしまう。

最後には、「もう少し時間があるから、みんなで歌いたかった曲をやります!」と言い、彼の表題曲である“Slow&Easy”のイントロが流れる。手を左右に大きく振りながら、印象に残るコーラスをヘヴンにいる皆で歌った頃には、ゆるやかでピースフルな空間が広がっていた。この曲の終盤には、なかなかの強い雨が降っていたけれど、いいんだ。そんなのは関係ない。疲労の溜まり始めた3日目の朝、心地よい平井大の音楽が、心を穏やかにしてくれ、癒しを与えれくれたようでもあった。

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マキシマム ザ ホルモン http://fujirockexpress.net/18/p_1598 Sat, 28 Jul 2018 17:55:02 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1598 開始20分前にも関わらず、グリーン・ステージ前方には多くの腹ペコキッズたちが集まっている。……キッズ?いやいや、いい年した大人たちばかりだ。まあ、フジロックにくる年齢層としては相応だ。フジロックと言えば、本格的な登山グッズに身を包むのが常だろう。
しかし、不思議なことに、周囲にはマキシマム ザ ホルモンのTシャツやタオルを身に着けている人が多く見受けられた。このバンドがどれだけの人に愛され、そしてフジロックのステージに立つことを待ちわびていたのかがよくわかる。

ライブは時間通りにスタート。お決まりのSEである、SPACE COMBINE『marchin’mint flavors』が鳴ると、唸るような野太い大歓声が上がり、さらに人が前に前に押し寄せてくる。

1曲目は、”恋のメガラバ”。身体の奥に直接打ち付けるような重低音を響かせるナヲ(ドラムと女声と姉)と上ちゃん(4弦)。ステージの端から端を、デスボイスやシャウトをしながら駆け巡るダイスケはん(キャーキャーうるさい方)。時には人を踊らせる軽やかさを持つような、そして時には攻めの姿勢全開のギターサウンドをかき鳴らしながら歌う、マキシマムザ亮君 (歌と6弦と弟)。
まあ~、相変わらずキャラが濃い!見ているこちらはヘッドバンギングやモッシュに巻き込まれ、汗まみれでもみくちゃになっているのに、ステージ上でも目が忙しくて追いつかない。観客たちは手を挙げ、体力を温存するという方法を知らないのではないのかと思うくらい激しく踊り狂っている。

もう何度も出演していそうな風格なのだけれど、意外にも初登場だというマキシマム ザ ホルモン。「フジロックやっと来れたぜー!」というナヲは、MCの途中で大画面にSNOWで加工した犬に扮した自らの顔を映してくれるというサービスっぷり。
いつものように全力で笑わせにくるMCのあと「サクサクと音楽で殺していこうと思います!」というナヲの声のあとに演奏されたのは、“maximum the hormone”に”便所サンダルダンス”。のしかかるような重低音に、ダイスケさんの破壊力抜群のデスボイス。ああ、本当に音楽に殺されてしまいそうだ。でも、マキシマム ザ ホルモンの音楽に殺されるなら、それも本望なのかもしれないなんて思ってしまう。

今年のフジロックは、台風12号が苗場を直撃すると言われていた。自宅でプリントアウトした紙をカメラに映しながら、以前の角度は小田和正の『OH!YEAH!』のジャケットに、進路変更したあとの角度はGO!皆川の「ウンチョコチョコチョコピー!」の角度に似ていると言い出すダイスケはん。台風の進路予想図にわざわざ合成した紙を見せてくれ、BGMには『ラブストーリーは突然に』が流れる。こんなの、笑っちゃうじゃないか!こうして時事ネタをもってくるのは流石だった。

”パトカー燃やす”では、背後にパトカーの燃えている映像を映しつつ、耳に残る軽快なメロディに合わせて、みんなで「パトカー燃やす」の大合唱。一般のお客さんはあまり知らないかもしれないが、実はグリーンステージ近くには、新潟県警の方々が駐在しているテントがある。そう。警察の方は、思いっきりこの「パトカー燃やす」を聴いているのだ。フジロッカーのために用意したというこの曲。”Mr.ブギータンブリンマン”からの流れも絶妙だったが、なんだか聴きながら冷や冷やしてしまう。

”F”、”シミ”、”ぶっ生き返す!”と、マキシマム ザ ホルモンのライブはどんどん加速していく。ステージ上で繰り広げられている凄まじすぎる演奏に負けじと、観客たちはひとつの宗教のようにそろったヘッドバッキングをし、大きなサークルモッシュもできる。みんな笑顔になり、童心、それも中学生くらいの気持ちに戻っているのだと思った。聴いているだけで身体がうずき、何もかもを忘れて重低音とライブの楽しさに身を任せてしまいたくなる。

最後にはお決まりの恋のおまじないをグリーンステージにいる全員で行い、そして最後は”恋のスペルマ”。このときには、パラパラと雨が降り出していたのだけれど、そんなの全く関係ない。みんな汗まみれでもみくちゃ状態だったし。

ある意味で伝説となっている第1回目のフジロックに参加したという亮君。セットリスト、演奏、後ろに映し出されるこだわりの見えた映像。すべてにおいて高い攻撃力を持っていたように思うし、初登場にしてグリーン・ステージに立つことに対する気合いが十二分に感じることができた。
”恋のスペルマ”の前に、ナヲは「伝説なんて自分たちで作っていくんだよ!」と言っていた。こういう思いがあるからこそ、ホルモンのライブはいつ見ても印象に残るのかもしれない。

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小袋 成彬 http://fujirockexpress.net/18/p_1639 Sat, 28 Jul 2018 08:45:03 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1639 2016年に発売された、宇多田ヒカルの『Fantôme』に無名のままゲストボーカルとして参加し、駆け上がるように世に名前を知らしめた小袋成彬。今年の4月に満を持してリリースしたデビューアルバム『分離派の夏』での歌唱力や才能に慄いた方も多いだろう。

今年のフジロックは、少し毛色が異なっている。ヘッドライナーにバンドスタイルで演奏するアーティストが一組もいないし、世界で注目を浴びているHIPHOPやR&B、ブラックミュージックなどのアーティストが例年よりも多く集められている。
日本の音楽シーンも黙ってるはずもなく、そんな中で発表された小袋成彬の出演。一目見ようと、レッド・マーキーには人が押し寄せるように集まってくる。苗場の天気は心変わりが激しい。先ほどまで雨が降り、湿度の高くなった屋内のステージは、背中に汗が伝うほどの暑さだった。

時刻ちょうどの午後2時。近所のコンビニに向かうかの如く、小袋成彬がふらっとひとりでステージ上に現れる。「恋に落ちれば負けちゃうゲーム」と、片手をポケットに突っ込みながら、力強く歌う小袋。“Game”だ。美しいファルセットに、どこか切なく悲しい声。恋ではないのは確かだけれど、落ちるように一瞬で心を掴まれてしまった。

”茗荷谷にて”から”Lonely One feat.宇多田ヒカル”のイントロが流れると、観客からは声があがった。低音が響き、宇多田ヒカルのパートすらも己の高い声で歌い上げ、その圧倒的すぎる歌唱力には、更なる観客からの声。場の空気がだんだんと温まっていくのがわかる。

“Summer Reminds Me”の後半部分でサポートメンバーの小島裕規と畠山健嗣が登場するまで、ひとりでステージに立っていた小袋。左右にゆっくりと動きながら、観客側を見ることがほとんどない。どこか、別のところを見つめているような気がした。彼にしてみたら、どれくらいステージが大きいのか、そしてどのくらいの人が自分の目の前に集まっているのかは、関係ないのかもしれない。

”夏の夢”が終わると、畠山のゆったりとしたギターが心地よく響く。次は、何の曲だろう。聴いたことがない。そんなことを考えていると、「真夏のピークが去った」という、聴き馴染みのあるフレーズを歌ってくれている。フジファブリックの『若者のすべて』をワンコーラス歌うという、素晴らしいサプライズプレゼントを用意してくれたのだった。そこからの”門出”の流れも素晴らしく、ステージで淡々と歌う小袋を目で追いながら聴き入ってしまう。

本編も終盤に差し掛かり、”Selfish”では、音源とは異なるアレンジ。シンプルな曲に、芯を持ちつつもどこまでも伸びるような繊細な声は、まるで青春映画のワンシーンを見ているかのようで、思わず鳥肌も立つ。最後の“愛の斬進”が終了したあと、颯爽とステージを去っていき、50分のステージが終了していった。

MCは一切なし。淡々と曲をこなしていくステージには、純粋に小袋成彬の音楽があった。音源も、もちろん素晴らしい。彼の生み出した芸術作品のひとつと言ってもいいだろう。しかし、ライブで、しかも場の空気を感じながら見る小袋成彬のステージは、歌い方やメロディーに少しずつアレンジを加えてくれ、また音源とは違った印象を持つことができた。恐らく、こんな風に儚く、一瞬で終わっていってしまうライブはもう2度と見ることができないのだろうと思う。

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