“梶原綾乃” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '18 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/18 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Wed, 17 Jul 2019 08:24:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ…  http://fujirockexpress.net/18/p_10468 Tue, 07 Aug 2018 03:00:19 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=10468 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と戻ってくる。今では恒例となった、前夜祭はレッド・マーキーで行われるオーディエンスの記念撮影。満面に笑みを浮かべたフジロッカーズが堰を切ったように、ステージ前に雪崩れ込んでくると、それを粋な選曲で受け入れてくれるのがDJ Mamezukaだ。そして、その光景をステージから楽しそうに撮影しているのがスタッフの面々。オーディエンス同様にスタッフもこの瞬間を待ちわびていたのがよくわかる。彼らの顔も嬉しそうだ。

 今年は「おかえり!」に続いて、「ニイハオ」、「アンニョンハセヨ」、「オラ」「ハロー」「アロ」…と、たまたま覚えていた中国語や韓国語にスペイン語なんぞも交えて呼びかけてみた。言うまでもないだろう、ここ数年、飛躍的に増えているのが、遠路はるばる海外からやって来る人々。正確な数はわからないが、一説には、台湾からは500人近い人々が来ているんだそうな。しかも、多くが「ラインナップ」に引き寄せられたのではなく、フジロック・フェスティヴァルそのものに魅せられているという。それを証明してくれたのが6月に台湾で開催されたフジロッカーズ・バー、フジロックを愛する人たちが集まるパーティだった。

「フジロックが体現しているものを形にしたかった」

 と、これを企画してくれたのは、過去10年ほど、毎回家族でフジロックにやって来る人物だ。台北の華山1914と呼ばれる公園の一角にDJ用のテントを設置。そこから数々のDJが音楽を流し、時には生演奏も楽しむことができる2日間のイヴェントだった。踊っている人もいれば、芝生の上でのんびりと時を過ごす人もいる。大切なのは人々が繋がり、互いをリスペクトしながら、時間と空間を共有すること。フジロックをキーワードに、そんな動きが海外でも生まれていることがどれほど嬉しかったか。

 また、2001年の出演から17年を経て、苗場に戻ってきたアイルランドのバンド、ホットハウス・フラワーズのメンバーとの会話でも同じようなことを感じることになる。

「クリーンなフェスといっても、ルールやマナーを守らなければいけないってことより、互いが互いをリスペクトして、気遣う姿勢がそんな結果に結びついてんじゃないかな。それがすごいと思うんだ」

 そう話してくれたものだ。山に囲まれ、川が流れるという自然の素晴らしさが、そうさせるのかもしれない。また、長年にわたって環境問題やリサイクルを訴え続けるiPledgeや主催者、fujirockers.orgによるキャンペーンも後押しているんだろう。が、なによりも会場の主役となる観客が動かなければ、それが形になることはない。その結果が「世界で最もクリーン・フェスティヴァル」というイメージに結びついているのだ。

 もちろん、すべてがバラ色なわけはない。昨年のエキスプレスではこのゴミの問題を取り上げなければならなかったし、今年はスリや置き引きといった都会の犯罪が流れ込んでいるという話しも伝わっていた。それでも大きな事故や事件も起きることなく今年のフェスティヴァルが幕を閉じたのは奇跡ではなかっただろうか。

 特に気がかりだったのは台風だった。全国を灼熱の太陽が照りつけ、史上最高気温を記録していた開催前、接近中の台風が下手をすると苗場を直撃するのではないかという憶測も流れていた。1997年の第一回からフジロックに関わっている仲間が想起していたのはあの時の惨状だ。どれほどの人が覚えているかわからないが、あの時、台風が上陸したのは遙か西だったと記憶している。が、それでも本部からステージの上までもが野戦病院のようになっていた。そんな経験を踏まえて、フェイスブックといったSNSを通じて、充分な装備を訴え、開催期間中も台風情報を発信しながら、注意を呼びかけていたのだが、それがどこまで届いただろうか。

 雨がひどくなり始めた土曜夜から、スタッフが更新作業を進める本部テントも強風と雨の影響を受け始めていた。キャンプ場でテントを張っている人たちは大丈夫だろうか? この風雨に耐えられる丈夫なテント、ペグを使っているだろうか… 予定されていた取材が大切なのは言うまでもない。が、あの時、僕らはもっと臨機応変に対応しなければいけなかったのではないだろうか。おそらく、フェスティヴァル慣れしている多くの人々が準備万端で挑んでいたからだろう、21年前の悲劇は繰り返されることはなかった。が、それでもキャンプ場の3割ほどのテントが全半壊し、急遽用意されたプリンス・ホテルの一角に避難したのは約250人。もっと彼らに寄り添うべきではなかったのか… もっともっと必要とされている情報を発信すべきではなかったか? 反省すべきことは、今年もいっぱいあったように思う。

 それでも振り返ると、楽しいことばかりが思い出される。エキスプレスに登場したオーディエンスのひとりが口にしていたように、すでに「ホーム」のようになったのがフジロック。ここに来れば、必ず会うことができる仲間もいれば、何年ぶりかに懐かしい顔をみつけて昔話に花を咲かせることもある。子供を連れて遊びに来ている昔のスタッフや友人もいたし、ずいぶん昔、子供に連れられてここにやって来たおかぁさんとも再会。「夢は3世代でここに来ること」という、彼女の夢が現実になるのは、そう遠くはないだろう。

 ラインナップがどうのこうの… 文句を言うのも、おそらく、楽しみのひとつで、毎年のこと。でも、通りすがりに目にしたアーティストの演奏に聞き惚れたってことも少なくはなかっただろう。有名無名を問わず、ジャンルなんぞ「どこ吹く風」で世界中からミュージシャンからオーディエンスが集まってくるフジロックは、苗場での20回目で成人期に突入したのかもしれないとも思う。

「大きく育った木を根っこから掘り起こして、植え替えても根は張らないよ」

 その昔、フジロックが始まった頃、グラストンバリー・フェスティヴァルの主催者、マイケル・イーヴィス氏にそれを伝えると、そんな言葉をかけられたのを思い出す。おそらく、それは彼からフジロックへのアドバイスだったんだろう。今のフジロックを彼に体験させてみたいものだ。フジロックは苗場にしっかりと根を下ろし、根を張り、確実に成長を続けているのがわかるはずだ。それは年々と整備充実されている施設や、今回の台風への主催者の対応を見れば、一目瞭然だろう。

 1970年に始まったあのフェスティヴァルも、もう少しで50周年。面白いのは… 10数年前だったか、彼の大好きなヴァン・モリソンが上機嫌で演奏した後、「喜んでくれたよ、ステージで笑ってたからね」と話してくれたんだが、実は、同じようなことが今年のフジロックでも起きていた。「ボブ・ディランやドノヴァンが歌っていることへのロマンティックなアプローチ」がグラストを始めるきっかけと、彼が語っていたんだが、そのディランがステージを終えて、にっこりと笑って幸せそうに会場を離れたんだそうな。日頃は、にこりともしないらしいんだが、この日は上機嫌だったと、あの時、ステージにいたスタッフから聞いている。

 さて、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ、今年のフジロックを体験されたみなさん、いかがでしたか? 実際には足を運ぶことができず、自宅でモニタを見ていた方、あるいは、初めて実現したYouTubeのストリーミングでライヴを見ていたみなさんもいたかと思います。でも、この現場にあるのは、モニタからはけっして伝わらない「幸せ」。それを体験しにやって来ませんか?一度はまると抜けられませんよ。

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 苗場で20回目という節目もあって、今年は幾度もスタッフが苗場入りして、数多くのレポートを、このエキスプレスの根っこである、fujirockers.orgにアップしてきました。フジロックという「祭り」の魅力は、そこでもみつかると思います。お時間があれば、そちらもぜひチェックしていただければと思います。また、例年、主要部隊が会場入りするのは、開催前の火曜日ですが、今年はその遙か前から、準備期間を含めて取材活動をしてくれたスタッフもいました。ありがとう。あの灼熱と雨と嵐の中、熱中症と向き合いながら、一方で、ずぶ濡れになりながら、会場の内外を走り回ってレポートを続けてくれたのは以下のスタッフとなります。まだまだ未熟でいたらない点があることは否定できませんが、彼らを叱咤激励していただければ幸いです。記述に情報等の間違いがあれば、それを修正し、ご報告いたします。ただ、彼らが残した記録はアーカイヴとして、これからもずっと残していきます。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/18/)
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、安江正実、アリモトシンヤ、粂井健太、岡部智子、MITCH IKEDA、MASAHIRO SAITO、木場ヨシヒト、Yumiya Saiki、高津大地、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、HARA MASAMI、陳彦伶、上村理穂、つちもり

ライター:阿部光平、あたそ、石角友香、イケダノブユキ、梶原綾乃、長谷川円香、三浦孝文、若林修平、卜部里枝、近藤英梨子、平井ナタリア恵美(Paula)、増田ダイスケ、松原充生子、Masaya Morita、Masako Yoshioka

■英語版(http://fujirockexpress.net/18e/)
Laura Cooper, Sean Scanlan, Patrick St. Michel, Park Baker, Jonathan Cooper, Dave Frazier, James Mallion

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、酒田富紗葉(デザイン)、坂上大介、迫勇一

スペシャルサンクス:本梅あさみ、坂本泉、土橋崇志、本人(@biftech)、熊沢泉、藤井大輔、Taio Konishi、三ツ石哲也、丸山亮平

プロデューサー:花房浩一

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KALI UCHIS http://fujirockexpress.net/18/p_1626 Sun, 29 Jul 2018 19:42:47 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1626 今年リリースしたデビューアルバムの話題性はもちろん、実力も申し分なしのカリウチス。コロンビア生まれの25歳、いったいどんなパフォーマンスをみせてくれるのだろうかと、晴天のホワイトステージに人が集まる。赤バックのスクリーンに白文字で「KALI UCHIS」と表示されると、ベース、ドラム、キーボードのバックバンド3人が入ってきて演奏がスタートした。

やがて、表に出てきたカリウチスは、胸元までのショートなタンクトップ、下はTバック、そしてその上に網タイツのようなパンツを履いた全身真っ黒、下着姿のようなファッション。妖艶な吐息、鼻に抜ける子音がセクシーな“Speed”で始まりを告げる。続いて披露された、“Rush”をはじめ、次の“Nuestro Planeta”など、終始体をくねくらせながらサルサのようなステップで踊り出し、注目を集める。彼女の歌声はソウルフルなのだが、曲の表情によっては太く低い声に移り変わるから、それもまたかっこいい。“Feel Like a Fool”からは、アップテンポなナンバーが続き、お待ちかね“Just a Stranger”、“Your Teeth In My Neck”など、ツボを押さえた満足感の高い楽曲たちが揃う。さらに、彼女本人の魅力に加え、バックバンドの力強さもまた、確実にパフォーマンスに貢献している。“In My Dreams”のトライバルなビート、ドスのきいた低音が響く“Tyrant”などの奥行きは、生の演奏だからこそ生まれる立体感だ。彼らも、カリウチス本人と同様とても楽しそうな顔をしているのが印象的だった。

デビュー前~今回の新作の音源を聴く限りは、R&Bシンガーというよりもドリームポップ色が強い彼女だったが、そのどれでもない、実にバランスのとれたシンガーだということに気づかされた。これからも意外性のあるパフォーマンスやコラボレーションなどで驚かせ続けてくれるだろう。

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CHAI (selected by ROOKIE A GO-GO) http://fujirockexpress.net/18/p_1664 Sun, 29 Jul 2018 18:20:39 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1664 昨年、ルーキー・ア・ゴーゴーに出演したCHAIが投票を見事勝ち抜き、レッドマーキーに登場だ。昨年、ルーキー出演時から既に注目を集めていたが、ルーキー後もメキメキと成長し、知名度ある若手バンドの中でも、頭一つ抜けた存在となった。

会場が暗転すると、「C・H・A・I」と一文字ずつスクリーンにに映され、みんなでCHAIの名をコールしていると、ブルーのライトが付き、4人のピンクのシルエットが浮かび上がる。「we are CHAI!」とマナ(vo,key)が叫び、“We Are Musician”がスタート。以前に増してタイトに鍛えられたリズムと、弾んで遊ぶヴォーカルアプローチ。“ボーイズ・セコ・メン”の早口のリリックなど、独特な歌の乗せ方が生むグルーヴが、オーディエンスをぐいぐいと引き寄せていく。
もはやおなじみの自己紹介&宣伝タイムでは、The Ting Tings “Great DJ”のメロディーで新譜を紹介。と思いきや次の“N.E.O.”では、ABBA“Dancing Queen”で独自な「NEOかわいいソング」を繰り広げるなど、エンタメ性もばっちりだ。カナは、「私たちを初めて見る人、いろいろ、思うところあると思う!」と笑いを取りながら、自分の目は小さい、足が短い、それでもNEOかわいいよね、と語りかける。それも英語のMCに、ユウキ(ba,cho)が日本語を同時翻訳するかたちだ。海外で一定の評価を受けた上で、フジロックという多国籍な空間でのこのアプローチ。「NEOかわいい」の概念が、初見の人にも伝わりやすいと思う。

そして、後半からはパワーアップ。“ハイハイあかちゃん”、“クールクールビジョン”、“フライド”と流れるように3曲。つい「CHAIってこんなエレクトロポップバンドだったっけ?」と周囲に確認してしまいたくなるくらいの化けっぷり。躍動するベースと、芯の太いドラム。キックの力強さ。だとしても、こんなにCHAIが踊れるバンドだとは思っていなかった。定番のブーイングからはじまる“ぎゃらんぶー”、宇宙で遊泳しているようなVJのなかの“ウオーキング・スター”、キーボードが前面に出てメロディックな“フューチャー”など、彼女たちのカラーがしっかりと主張されていく。最後の1曲はトロピカルなギターアレンジを加えた“sayonara complex”で、惜しまれつつもフィナーレだ。

魅せ方、センス、ウケ、全て間違いなしの充実したライヴステージだった。そして、彼女たちの向いている方向が完全に海外であることも、改めて認識した。これから一皮も二皮も剥けていった彼女たちが、「NEOかわいい」を世界の言語にしていくのだろうか、楽しみだ。

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cero http://fujirockexpress.net/18/p_1624 Sun, 29 Jul 2018 12:48:17 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1624 前回のフジロックでの彼らのことは、とても印象に残っている。ブラックミュージックの要素を取り入れた『Obscure Ride』という大名作が生まれた直後だったこと。演奏の完成度は高く、シンガーとしての髙城 晶平に伸びしろを感じていたこと。そんな彼らが3年ぶりに、また一段とビックになって戻ってきた。それも、髙城 晶平のポテンシャルをフルに開花させた状態で、だ。3年前では観られなかったceroの到達点が、今ここにある。

前回の真っ昼間とはうってかわって夜のホワイトステージ。新編成のceroは、高城晶平(vo,g,fl)、荒内佑(key,cho)、橋本翼(gt)の3人と、サポート厚海義朗(ba)、光永渉(dr)、古川麦(cho,tp)、角銅真実(per,cho)、小田朋美(key,cho)の合計8人。1曲目“Summer Soul”で高らかにオーケストラの開始を宣言すると、続いて最新アルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』でも鍵となっている”魚の骨 鳥の羽根”。6/8拍子から発展するエキゾチックなビートと、古川、角銅、小田を巻き込んだコーラスワークがアンサンブルしていく。高城は叫んだり、鳥の鳴き真似などを突発的に入れ、曲のエフェクトとして落とし込んでいく。
続いて“Yellow Magus”。わっと会場は湧き、発生したスモークが彼らを包んでいく。夜のceroは、チルな空気でとてもイイ。そして、以前の同曲とは比べものにならないくらいの「モノにした」感がある。それは“レテの子”でもハッキリと感じ取れていて、「笑って」という歌詞で笑ってみせたり、ブラックミュージックさながらのしゃがれ声を出すなど、歌の表情に合わせて変わる高城のフロウに、とてつもない進化を感じる。それでいて、飛んだりくるくる回ったりと、心から楽しめる余裕っぷりも感じられる。“Buzzle Bee Ride”が終わったあとは腕組みをして、右肩だけクイっとあげたヒップホップ的キメポーズでカメラ目線。茶目っ気たっぷりだ。後半は“Orphans”、“water”と苗場をメロウな空気に変換させ、現編成のひとつの完成形ともいえる“POLY LIFE MULTI SOUL”へ。音が消えた瞬間、スモークがふわっとオーディエンスに向かってくる様子は幻想的な一コマだった。

正直に言うと『POLY LIFE MULTI SOUL』が発表されたときは、より実験的になっていくサウンドに戸惑いを感じたこともあった。『Obscure Ride』のceroがどこかに行ってしまうようで名残惜しかったのかもしれない。しかし、ceroはやっぱりceroだった!自分たちのやりたいように、面白いようにサウンドを突き詰めながらも、わかりやすくて爽快で、気持ちいい。3年前のフジロックで見た良い部分も、これ以上に期待してた部分もすべて身にまとった髙城には今、不安も隙もなかった。

「最高に楽しかったです!いい思い出をありがとうございました!」とMCが入り、名残惜しくも“街の報せ”でフィナーレ。この先にグリーンステージが見える、素晴らしい時間だった。こちらこそ、いい思い出をありがとう。

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INTERACTIVO http://fujirockexpress.net/18/p_1680 Sun, 29 Jul 2018 06:30:01 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1680 天気は振ったりやんだりの、なかなか不安定な気候が続くなか、最終日にふさわしい注目株が登場。その名はINTERACTIVO。前夜祭や過去の記事などではすでにおなじみだが、フロム・キューバの大人数編成のバンドである。大将こと、スマッシュの日高正博氏がキューバで直接口説いたというキューバ直輸入のサウンドを、このフィールド・オブ・ヘブンで、ついに楽しむことができる。直前のアクトはWestern Caravanなので、昨年から今年へと、目玉バンド同士によるバトンタッチの意味も込めたタイムテーブルになっているのかもしれない。

定刻になると、晴れ間が差し込んできて、本バンドの頭脳、ロベルト・カルカサス(key)が登場。晴れ間が差し込んできた空を見つめて、流ちょうな日本語で「太陽!」と驚く。ソロプレイが始まると、ベース、パーカッション、ギター、トロンボーン、トランペット…と、メンバーが次々と登場し、セッションの開始。フランシス・デル・リオ(vo)、エンリケ・イグレシアス、(vo)、ウィリアム・ヴィヴァンコ(vo)のメインボーカル3人が登場し、ステージ上は13名のビックバンドへと進化した。ホーン隊の張りがあるイントロから始まる“MI CUBANA”、ゆったりとしたルンバ・ナンバー“Baila Con Mi Rumba”を披露。耳をくすぐるギロの軽いタッチ、タンミー・ロペス(vo,vio)の早口なリリックと腰の動き。ああもうここは、いつものヘブンではない。最初はどう踊ってよいかわからずに戸惑っていたお客さんたちも、次第に揺れて跳ねて、自分の踊り方を見つけていく。

“Cubana de Pura Cepa”は、アフロ・キューバンリズムを体験してみよう、と言われんばかりのコーナーに。促されるままに2拍3泊のリズムで手拍子を打ち、“Calavera”では、サンバのリズムからput your hands up!なヒップホップアレンジまで、あらゆる引き出しを開けて、一緒に踊ろう!と誘ってくる。あまりノッてなかったお客さんたちも、ようやくここで腕を上げる。楽器を持ったメンバーもほとんどメインボーカルとして歌う“Pilon”では、彼らの歌うメロディのコールアンドレスポンスが行われる。が、わりと難しいようで、なかなかうまくいかない。頑張って真似してみたつもりが、なんだか「ピンクパンサーのテーマ」みたいになってしまって、ラテンでもなんでもなくなってしまった結果につい笑ってしまった。

彼らの音楽は、初見のわたしたちに大変優しく、キューバ音楽の世界から伸びてきた手は我々をぐいっと引っ張ってくれる。縦ノリではないとなかなかうまくノれない人も、ステージの彼らを見よう見まねでいい。お尻や腰を使って踊ることの気持ち良さを教えてくれたと思う。

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King Gnu http://fujirockexpress.net/18/p_1648 Sun, 29 Jul 2018 04:49:05 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1648 昨年のルーキー・ア・ゴーゴーに出演したKing Gnu。前身となるバンドを経て2017年から活動を始めたにもかかわらず、今年メインステージへ登場。驚きの早さで注目される彼らを一目見ようと、レッドマーキーには多くの人が。ステージのテントの外では、昨日の夜を予感される雨がざっと音を立てて降り出し、その瞬間、ステージのスクリーンには彼らのロゴが映し出される。なんてナイスなタイミングの登場だろう。

最初は“Flash!!!”。こちらを食い入るような井口理(vo,key)のギラギラとした目線は、緊張でも自信でもなく、どこか殺気的だ。MCでは一転して「キングヌーと申します!」とぱっと明るい。新井和輝(bs)が右へ左へと独特なステップで足を踏み出し、“Tokyo Rendez-Vous”へ。常田大希(vo.gt)がマイクからメガホンに変え、ステージに宣戦布告するが如く、歌声を吹き込む。オーディエンスもそれに答えるように、みんなでハンズアップ!
続いて勢喜遊(dr,Sampler)は曲中に前へ飛び出して煽りだし、“McDonald Romance”では、持ち場でくねくねと踊り出す。余裕のある表情とパフォーマンスぶりに彼らの実力がうかがえる。

そして、“あなたは蜃気楼”、“NIGHT POOL”など、次々とプレイされていく。「トーキョー・ニュー・ミクスチャー」と称される彼らは、ファンク、ジャズ、ヒップホップなどの要素をコラージュのように切り貼りしていく。それでいてメロディはとてもキャッチーで、歌いやすいのだからびっくりだ。常田がキーボードにチェンジして“PPL”を歌い出すと、渋くて男前な常田の歌声に対し、井口は透明感あるハイトーンボイスだということに気づかされる。その2人の対比が良いグルーヴを生み出し、お互いの歌声が重なるときも好バランスを保っている。“Vinyl”では、地響きのごとくビリビリと鳴る新井のベースライン、勢喜の骨太なキックなど、リズム隊のたくましさに身を委ねられる。

最後は「何かしらで歌ってくれると嬉しいです!」という井口のMCから“サマーレイン・ダイバー”へ。オーディエンスとともに手を右へ、左へと動かし、会場は一体感を残したままフィナーレへ。各々に個性があって演奏力も高く、この人気。これからの可能性に満ちている彼らの今がここにはあった。

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And Summer Club http://fujirockexpress.net/18/p_1756 Sun, 29 Jul 2018 01:47:49 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1756 今まさにKendrick Lamarがプレイしているその裏、苗場食堂では、And Summer Clubがスタート。
彼らは2013年結成、大阪の4人組バンド。昨日出演したneco眠る、ルーキー出演経験のあるTHE FULL TEENZらと親交があり、
それぞれのバンドのメンバーが主催するレーベルにてCDをリリースしている。

苗場食堂前に集まったオーディエンスは、轟音のギターに青い青春パンクな“In to the White”や、チャイニーズな音階が特徴的な“Weekend”などの縦ノリに合わせて大きく拳を上げて、メンバーたちを逆に煽っていくくらいの勢いだ。

そしてなんといっても“Got Beach”のサマーチューン感が素晴らしかった。波に乗るが如く軽やかに吹き抜けていくギターのメロディライン、スミダケンスケ(vo,gt)の冷静でいて熱を帯びた歌声。ああ、甘酸っぱいといったらありゃしない。最後は最新EPから“Hyper Boredom”。オオオトトキヨ(gt,cho)の憂いを帯びた歌声、たった今鳴らしているギターに向ける真剣な表情が、緊張にもこなれ感にも見えて、そんなミステリアスさが魅力的だった。

彼らはともに演奏してきた仲間とまたひとつ同じ舞台に立ち、さらに加速し続けるだろう。彼らの音楽を聴いているときだけは、いつも夏でいられる気がするから、もっともっと聴きたい、感じていたい。苗場の夏に響くひとつひとつの音たちが、とびきり眩しかった。

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MGMT http://fujirockexpress.net/18/p_1636 Sat, 28 Jul 2018 12:34:58 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1636 MGMTが復活した。アンセム“kids”のジレンマ、自分たちの方向性と周囲の求めるものの違い、活動休止など、数々の葛藤の果てに生まれた5年ぶりの新作『Little Dark Age』は、そうしたしがらみから抜け出した(達観したという見方もあるが)先にある1枚だと思う。ネガティブがちな時代をポップに吹き飛ばす、原点回帰のタームへと突入した彼らは今、最高にいい状態だと思う。そのタイミングでの、フジロックへの出演は大変喜ばしいチャンスだ。なんと、8年ぶりだという。

レッドマーキーには、雨も相まって大混雑。30分以上前から、入場規制を感じるレベルだ。ステージは、植物が配置されていたり、神殿のような白い柱が立ち並んでいて独特の世界観を持つ。背後には巨大なスクリーン、その前方にはさらに長方形のスクリーンがセットされている。ステージは左側にベン・ゴールドワッサー(key,programing)、右側にアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(vo,g)が立ち、その背後にジェームス・リチャードソン(gt)、ウィル・バーマン(Dr)、マット・アスティ(bs)らが並ぶ。甚平を着ていたり、甲冑を着ていたり、バランス感や意図は不明だが、日本を意識した手作り感を感じる。さっそく新譜より”Little Dark Age”、そして早速“Time To Pretend”!早速メロディの合唱が沸き起こる。気づいたらベンの後ろにはピエロのような、ムンクの叫びのような、最新アルバムのあのアートワークの立体verのフロートがむくむくと立ちあがっている。続いて”When You Die”は、ややグロテスクなあのPVが映像素材として使われ、独特な歌い回しと合わせてサイケな音楽性が一気に爆発。楽曲に合わせて点滅する照明が、雷に打たれたような感覚で、何度も死んでは生き返ってるような気分だ。キラキラと輝く四つ打ちポップ“Flash delirium”、“Me and Michael”と続き、終盤はついに“kids”!堪えていた感情を爆発させていくかのごとく、会場はとてつもないエネルギーを内包して、巨大なダンスフロアとなっていく。中盤、8小節間のループが重なっていくごとに様々な音を乗せていき、ぐっとデカいヴァースが来るのかと思いきや、スッと静寂が訪れてからのヴァース、という点も、彼らなりのちょっとひねくれた工夫だと思う。

ほかにも“She Works Out Too Much”ではアンドリューがエアロバイクを漕ぎ出しまさに「ワークアウト」な演奏をする、VJにうんち頭の人間が踊っているなど、ところどころネタの回収には困らないというか、そういうちょっとズレたところも含めて、彼らの芸術性への愛おしさを再発見するステージだった。彼らの作り出したアンセムやここまでの苦労や道のり、それらをすべてひっくるめてのMGMTなのだから、それを肯定していきたい、と強く感じた。

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ハンバート ハンバート http://fujirockexpress.net/18/p_1673 Sat, 28 Jul 2018 10:34:54 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1673 昨日のピラミッドガーデンに続き、本日はヘブンに出演のハンバートハンバート。フジロックではすでにおなじみの彼らだが、なんと3年ぶりの出演。バンドセットと予告されてたとおり、ステージにはキーボード、ドラム、ベースがセッティングされている。

まずは佐野遊穂(vo)、佐藤良成(gt)の2人だけが登場し、おなじみのMCタイム。佐野が母親にハンバートハンバートのYoutube配信を伝えたつもりが、ボブディランの話とごちゃ混ぜになってしまったという、日常の些細な勘違い話がゆる~く展開されていく。そして始まった1曲目は、「ミサワホーム」のCMでおなじみの“いついつまでも”。苗場の地で突然披露される有名CMソングに、ついクスっとしてしまう。夫婦デュオならではの愛らしさが詰まった吉田拓郎“結婚しようよ”、本家よりも下がったキーがハンバートらしさを感じるMONGOL800“小さな恋の歌”など、カヴァーを続けて披露。

電車で見かけた居眠りの話、つい思い出した、ラーメン屋での酔っ払いのおじさんについてなど、溢れ出るたわいもない話に、「うんうん」「それで?」「こうなったんだ」と、相槌が入る。いつまでも聞いてられるふたりの話もいいところで切り上げて、曲は“同じ話”、バンドメンバーが揃って入場して”ぼくのお日さま”と、定番ナンバーで立て続けに歓声が上がる。2人で歌っているときよりも音数が多いぶん、ガッシリと強固なアンサンブルで、まろやかに甘い歌声がぐっと引き立つのを感じる。

その後も“虎”、“がんばれお兄ちゃん”と人気ナンバーが揃い、オーディエンスのテンションもぐいぐいと上がっていく。カントリー調のリズムが愉快な“国語”では、佐野のこぶしのきいたハーモニカが鳴り響き、「もっと元気になるの、やっていいですか?」という佐藤の発言から“おいらの船”。船を漕ぐような振りで会場に一体感が生まれたと思いきや、突然のNirvana“Smells Like Teen Spirit”になり、さらに「太郎、次郎、三郎、 四郎」という歌詞なのもお茶目で可愛らしい。最後は佐藤がフィドルに持ち替えて“ホンマツテントウ虫”。今年20周年を迎えたベテランデュオの確かな実力と、遊び心に満ちた完璧なライヴだった。

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toconoma http://fujirockexpress.net/18/p_1676 Sat, 28 Jul 2018 04:38:52 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1676 暑い日差しと涼しい風が交互に来て、まだまだ快適といえるレベルのフジロック2日目。フィールド・オブ・ヘブンのスタートを飾るのは、4人組インストバンド、toconomaだ。彼らは平日には会社員、週末にはバンド活動を継続している「週末バンドマン」である。 昨今、さまざまなタイプのバンドマンがいるのは承知だが、その両立をあえて打ち出しているスタイルはなかなかない。今日出ているアーティストのなかでは、いちばんオーディエンスに近い立ち位置なのではないだろうか。そういえば筆者は昨日、ステージ脇で電話していたお客さんが「ごめん会社でトラブっちゃったから、先に宿帰ってて!」と友人に説明している場面に遭遇した。皆、苗場に来るために日々を戦っているのだ。

ステージに石橋光太郎(gt)、西川隆太郎(key)、矢向怜(bs)、清水郁哉(dr)の4人が揃い「演奏しなくてもいいくらい気持ちいいですね!みんなで素敵な週末を過ごせたらと思います、よろしく!」と、始まったのは“Second Lover”。涼しげな音色がヘブン全体を吹き抜けていき、メロウなメロディから荒削りでダンサブルなサウンドになっていく。続いて、「調子どうですか、フジロック!」と、“jackie”へ。自由に駆け回るベースラインやキーボードソロ、ワウワウとした主旋律に合わせて展開する、くつろぎの空間。まさに「床の間」という言葉がふさわしいくつろげる音楽が広がっていて、それがこのヘブンで聴けるのだから、なおさら感動する。

“L.S.L”では、石橋のプレイ中の笑顔が輝き、矢向のベースソロへと突入すると、スラップのハマり具合が爽快だ。続いて“Yellow Surf”が始まると、会場からは「おお~!」と喜びの声が。ジャジーなリズムに寄せては返すようなビートがまたがり、サウンドは万華鏡のように、何度も何度も新しい展開を見せていく。そして、気づくと前のフレーズにスッと着地し、お互いの呼吸を合わせながらまたセッションは続いていく。途中、「僕たちインストバンドなので、歌はありません!」「イントロが長いわけじゃないんです」などと説明し笑いが出るなどお茶目な一面も。80sライクなスペースミュージック”under warp”、本日3度目のベースソロが取り込まれた“vermelho do sol”などを含め、終始ダンサブルな全8曲を、実に多くのオーディエンスが踊りきった。今年活動10周年を迎え、フジロックへと上り詰めた彼らの達成感は、踊りきったオーディエンスの満足そうな表情と、涙ぐむ石橋の姿で感じ取れた。ぜひ、またこの場所で!

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