“北村勇祐” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '18 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/18 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Wed, 17 Jul 2019 08:24:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ…  http://fujirockexpress.net/18/p_10468 Tue, 07 Aug 2018 03:00:19 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=10468 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と戻ってくる。今では恒例となった、前夜祭はレッド・マーキーで行われるオーディエンスの記念撮影。満面に笑みを浮かべたフジロッカーズが堰を切ったように、ステージ前に雪崩れ込んでくると、それを粋な選曲で受け入れてくれるのがDJ Mamezukaだ。そして、その光景をステージから楽しそうに撮影しているのがスタッフの面々。オーディエンス同様にスタッフもこの瞬間を待ちわびていたのがよくわかる。彼らの顔も嬉しそうだ。

 今年は「おかえり!」に続いて、「ニイハオ」、「アンニョンハセヨ」、「オラ」「ハロー」「アロ」…と、たまたま覚えていた中国語や韓国語にスペイン語なんぞも交えて呼びかけてみた。言うまでもないだろう、ここ数年、飛躍的に増えているのが、遠路はるばる海外からやって来る人々。正確な数はわからないが、一説には、台湾からは500人近い人々が来ているんだそうな。しかも、多くが「ラインナップ」に引き寄せられたのではなく、フジロック・フェスティヴァルそのものに魅せられているという。それを証明してくれたのが6月に台湾で開催されたフジロッカーズ・バー、フジロックを愛する人たちが集まるパーティだった。

「フジロックが体現しているものを形にしたかった」

 と、これを企画してくれたのは、過去10年ほど、毎回家族でフジロックにやって来る人物だ。台北の華山1914と呼ばれる公園の一角にDJ用のテントを設置。そこから数々のDJが音楽を流し、時には生演奏も楽しむことができる2日間のイヴェントだった。踊っている人もいれば、芝生の上でのんびりと時を過ごす人もいる。大切なのは人々が繋がり、互いをリスペクトしながら、時間と空間を共有すること。フジロックをキーワードに、そんな動きが海外でも生まれていることがどれほど嬉しかったか。

 また、2001年の出演から17年を経て、苗場に戻ってきたアイルランドのバンド、ホットハウス・フラワーズのメンバーとの会話でも同じようなことを感じることになる。

「クリーンなフェスといっても、ルールやマナーを守らなければいけないってことより、互いが互いをリスペクトして、気遣う姿勢がそんな結果に結びついてんじゃないかな。それがすごいと思うんだ」

 そう話してくれたものだ。山に囲まれ、川が流れるという自然の素晴らしさが、そうさせるのかもしれない。また、長年にわたって環境問題やリサイクルを訴え続けるiPledgeや主催者、fujirockers.orgによるキャンペーンも後押しているんだろう。が、なによりも会場の主役となる観客が動かなければ、それが形になることはない。その結果が「世界で最もクリーン・フェスティヴァル」というイメージに結びついているのだ。

 もちろん、すべてがバラ色なわけはない。昨年のエキスプレスではこのゴミの問題を取り上げなければならなかったし、今年はスリや置き引きといった都会の犯罪が流れ込んでいるという話しも伝わっていた。それでも大きな事故や事件も起きることなく今年のフェスティヴァルが幕を閉じたのは奇跡ではなかっただろうか。

 特に気がかりだったのは台風だった。全国を灼熱の太陽が照りつけ、史上最高気温を記録していた開催前、接近中の台風が下手をすると苗場を直撃するのではないかという憶測も流れていた。1997年の第一回からフジロックに関わっている仲間が想起していたのはあの時の惨状だ。どれほどの人が覚えているかわからないが、あの時、台風が上陸したのは遙か西だったと記憶している。が、それでも本部からステージの上までもが野戦病院のようになっていた。そんな経験を踏まえて、フェイスブックといったSNSを通じて、充分な装備を訴え、開催期間中も台風情報を発信しながら、注意を呼びかけていたのだが、それがどこまで届いただろうか。

 雨がひどくなり始めた土曜夜から、スタッフが更新作業を進める本部テントも強風と雨の影響を受け始めていた。キャンプ場でテントを張っている人たちは大丈夫だろうか? この風雨に耐えられる丈夫なテント、ペグを使っているだろうか… 予定されていた取材が大切なのは言うまでもない。が、あの時、僕らはもっと臨機応変に対応しなければいけなかったのではないだろうか。おそらく、フェスティヴァル慣れしている多くの人々が準備万端で挑んでいたからだろう、21年前の悲劇は繰り返されることはなかった。が、それでもキャンプ場の3割ほどのテントが全半壊し、急遽用意されたプリンス・ホテルの一角に避難したのは約250人。もっと彼らに寄り添うべきではなかったのか… もっともっと必要とされている情報を発信すべきではなかったか? 反省すべきことは、今年もいっぱいあったように思う。

 それでも振り返ると、楽しいことばかりが思い出される。エキスプレスに登場したオーディエンスのひとりが口にしていたように、すでに「ホーム」のようになったのがフジロック。ここに来れば、必ず会うことができる仲間もいれば、何年ぶりかに懐かしい顔をみつけて昔話に花を咲かせることもある。子供を連れて遊びに来ている昔のスタッフや友人もいたし、ずいぶん昔、子供に連れられてここにやって来たおかぁさんとも再会。「夢は3世代でここに来ること」という、彼女の夢が現実になるのは、そう遠くはないだろう。

 ラインナップがどうのこうの… 文句を言うのも、おそらく、楽しみのひとつで、毎年のこと。でも、通りすがりに目にしたアーティストの演奏に聞き惚れたってことも少なくはなかっただろう。有名無名を問わず、ジャンルなんぞ「どこ吹く風」で世界中からミュージシャンからオーディエンスが集まってくるフジロックは、苗場での20回目で成人期に突入したのかもしれないとも思う。

「大きく育った木を根っこから掘り起こして、植え替えても根は張らないよ」

 その昔、フジロックが始まった頃、グラストンバリー・フェスティヴァルの主催者、マイケル・イーヴィス氏にそれを伝えると、そんな言葉をかけられたのを思い出す。おそらく、それは彼からフジロックへのアドバイスだったんだろう。今のフジロックを彼に体験させてみたいものだ。フジロックは苗場にしっかりと根を下ろし、根を張り、確実に成長を続けているのがわかるはずだ。それは年々と整備充実されている施設や、今回の台風への主催者の対応を見れば、一目瞭然だろう。

 1970年に始まったあのフェスティヴァルも、もう少しで50周年。面白いのは… 10数年前だったか、彼の大好きなヴァン・モリソンが上機嫌で演奏した後、「喜んでくれたよ、ステージで笑ってたからね」と話してくれたんだが、実は、同じようなことが今年のフジロックでも起きていた。「ボブ・ディランやドノヴァンが歌っていることへのロマンティックなアプローチ」がグラストを始めるきっかけと、彼が語っていたんだが、そのディランがステージを終えて、にっこりと笑って幸せそうに会場を離れたんだそうな。日頃は、にこりともしないらしいんだが、この日は上機嫌だったと、あの時、ステージにいたスタッフから聞いている。

 さて、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、灼熱の太陽ニモマケズ、今年のフジロックを体験されたみなさん、いかがでしたか? 実際には足を運ぶことができず、自宅でモニタを見ていた方、あるいは、初めて実現したYouTubeのストリーミングでライヴを見ていたみなさんもいたかと思います。でも、この現場にあるのは、モニタからはけっして伝わらない「幸せ」。それを体験しにやって来ませんか?一度はまると抜けられませんよ。

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 苗場で20回目という節目もあって、今年は幾度もスタッフが苗場入りして、数多くのレポートを、このエキスプレスの根っこである、fujirockers.orgにアップしてきました。フジロックという「祭り」の魅力は、そこでもみつかると思います。お時間があれば、そちらもぜひチェックしていただければと思います。また、例年、主要部隊が会場入りするのは、開催前の火曜日ですが、今年はその遙か前から、準備期間を含めて取材活動をしてくれたスタッフもいました。ありがとう。あの灼熱と雨と嵐の中、熱中症と向き合いながら、一方で、ずぶ濡れになりながら、会場の内外を走り回ってレポートを続けてくれたのは以下のスタッフとなります。まだまだ未熟でいたらない点があることは否定できませんが、彼らを叱咤激励していただければ幸いです。記述に情報等の間違いがあれば、それを修正し、ご報告いたします。ただ、彼らが残した記録はアーカイヴとして、これからもずっと残していきます。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/18/)
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、安江正実、アリモトシンヤ、粂井健太、岡部智子、MITCH IKEDA、MASAHIRO SAITO、木場ヨシヒト、Yumiya Saiki、高津大地、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、HARA MASAMI、陳彦伶、上村理穂、つちもり

ライター:阿部光平、あたそ、石角友香、イケダノブユキ、梶原綾乃、長谷川円香、三浦孝文、若林修平、卜部里枝、近藤英梨子、平井ナタリア恵美(Paula)、増田ダイスケ、松原充生子、Masaya Morita、Masako Yoshioka

■英語版(http://fujirockexpress.net/18e/)
Laura Cooper, Sean Scanlan, Patrick St. Michel, Park Baker, Jonathan Cooper, Dave Frazier, James Mallion

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、酒田富紗葉(デザイン)、坂上大介、迫勇一

スペシャルサンクス:本梅あさみ、坂本泉、土橋崇志、本人(@biftech)、熊沢泉、藤井大輔、Taio Konishi、三ツ石哲也、丸山亮平

プロデューサー:花房浩一

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GREENSKY BLUEGRASS http://fujirockexpress.net/18/p_1677 Sun, 29 Jul 2018 14:37:06 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1677 始まる30分くらい前に着いたらサウンドチェックをやっていて、ギターがブラック・サバスの”Iron Man”のリフを弾いていた。ブルーグラスのバンドなのに、やっぱりこういうのも好きなのね、と思った。そして、メンバー全員でリハーサルで1曲。数は少なかったけど、早くもフィールド・オブ・ヘヴンに来ていたお客さんから拍手をもらっていた。

バンドがでてくるまでは、ボズ・スキャッグスの”Lowdown”が流れていた。20:40にバンドが登場する。メンバーはステージ下手からMichael Arlen Bont (バンジョー)、Paul Hoffman (マンドリン)、Mike Devol (アップライトベース)、Dave Bruzza (ギター)、Anders Beck (ドブロギター)という配置である。アップライトベースが中央にあり、左右に2人ずつというシンメトリックな布陣である。このバンドの最大の特徴はドラマーがいないことだ。ヴォーカルは主にPaulだけど、Daveがリードを取るときもある。

名前の通りブルーグラスのバンドだけれども、2000年結成ということで懐古を目的としたバンドではない。配信の音源を聴くと、マムフォード&サンズやルミニアーズといった新しい世代の感触がある。様々な音楽をひと通り聴いて、あえてブルーグラスを選んだ人たちのように感じた。バンド自体はギャラクティックやレイルロード・アースのようなジャムバンドに親近感があるようだ。ストリング・チーズ・インシデントのようなバンドが人気あるフジロックなので、グリーンスカイ・ブルーグラスの初来日のステージになることは相応しい。

そして演奏。”Demons”から始まる。ブルーグラス的な速弾きのすさまじさは全員が当然のように持っている。何よりも驚異的なのは、ドラマーが不在なのに、このグルーヴ感なのである。アップライトベースがしっかりと低音をだしているからなんだろうけど、他の楽器も正確無比にリズムをキープしている。メンバーがソロをとって暴れているときでも、他の楽器がバックに徹して一体感を生みだしていた。そのため黙って聴くというより、踊りながら観る人が多い。いつの間にかお客さんが増えて混雑してきた。

バンドが煽らなくても手拍子は自然と発生するし、踊る人も多い。この辺はオープンマインドなヘブンの住人らしい。バンドも5人が一斉にジャンプしたりする演出があったけど、基本的には真面目に演奏するのみ。照明はバンドの演奏とぴったり合っていてさらにアがる。フジロック3日目ヘブンのトリであるから、最後を楽しみ尽そうという人たち、しかもコアな人たちが集まっているわけだから、バンドとお客さんたちでこの雰囲気を作り上げたのだ。お客さんたちはジャムバンドとしてこのバンドをとらえているのだ。

本編最後は、フィールド・オブ・ヘヴンのレジェンドに捧げるカヴァー、PHISHの”Chalk Dust Torture”だった。先人への敬意もあるし、ジャム系のバンドがたくさん出演していた、あの頃のフィールド・オブ・ヘヴンを懐かしく思う人たちの気持ちを汲んでくれたカヴァーにフィールド・オブ・ヘヴンは湧き上がった。そしてアンコールにも応え、終了予定時刻を10分くらい過ぎて終わったのだった。そして終わったあとにはデヴィッド・ボウイ”Let’s Dance”が流れたのだった。

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HOTHOUSE FLOWERS http://fujirockexpress.net/18/p_1678 Sun, 29 Jul 2018 11:01:25 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1678 ホットハウス・フラワーズ。僕が彼らの曲を初めて聴いたのは高校生の頃。当時ロック少年だった僕はジャンルの幅を広げたくて、安く手に入る中古のコンピレーションCDを買い漁って聴いていた。それらコンピCDに収録されていたマーヴィン・ゲイの”Mercy Mercy Me”にどハマりし、その後カーティス・メイフィールド、アル・グリーン、サム・クックなど、大御所どころをひたすら聴き漁っていたのだが、ロックも同時進行で聴いていた。その頃、某洋楽ロック誌に乗っていたコラムに載っていたのが彼らホットハウス・フラワーズだった。その中に書かれていた彼らを表す一つのフレーズ「アイリッシュ・ソウル」。この言葉がどうしても気になって、速攻CD屋へダッシュし、手に入れたのが彼らのアルバム『People』だった。そこには、ブルー・アイド・ソウルとも違う、それまで僕の聴いたことのなかった「ソウル・ミュージック」が存在していた。

その後、彼らの新作を絶えず追いかけることはできなかったのだが、最初に買ったアルバム、彼らの曲、リアムの歌声はエヴァーグリーンな存在として心に存在し続けていた。そして、今年久しぶりに触れるきっかけになったのがフジロック出演のニュースだった。そして今日、あのホットハウス・フラワーズをフジロックのステージで観ることができる興奮と、生で彼らを見ることができることを”現実として受け止めきれていない”自分の気持ちと、なんとも不思議な心境で僕は彼らの登場を待っていた。

開演時間にほぼ定刻通りに登場した彼ら。ゾワゾワっと思わず鳥肌が立ってしまった。サポートメンバーを率いて、フィアクナ・オブラニアン(G.)、ピーター・オトゥール(B.)・・・そして、リアム・オ・メンリィ(Vo. / Key. / Bodhrán)がステージに登場した。

リアムの静かなピアノのフレーズをイントロに始まった”An Raibh Tu Ar An gCarraig”、その静かなリアムの語り口、徐々に溢れ出す彼のソウルに、僕の心からどんどん熱が込み上げてくる。続く”I Can See Clearly Now”には、完全に感情が解放され、シンガロングせずにはいられなかった。中盤に披露された新曲”Back Through Time”と”These Sister”に旧作の曲と変わらぬソウルを感じ打ち震え、ラストにかけて畳み掛けられた”Hollelujah Jordan”、”Feet on the Ground”、”Don’t Go”には「陶酔」と「心酔」そして「情熱」が同居するような、今まで体験したことのない心境が生まれていた。1時間の短いステージは、本当にあっという間だった。

音楽は時代と共に進化し、それに伴いジャンルの数も飽和状態になっている。ジャンルは「アティテュード(姿勢)」から「コンテナ(入れ物)」に変わり、ただの言葉となってしまった。それは「ソウル・ミュージック」も然り。しかしホットハウス・フラワーズの歌、そしてリアム・オ・メンリィの歌声には、今もなお確実に「アティテュード」と「ソウル(魂)」が存在していた。

そう考えると、それら音楽の本質を再実感できたこの1時間は、最高に価値のある1時間だったと心から言える。

<セットリスト>
An Raibh Tu Ar An gCarraig
I Can See Clearly Now
Movies
Back Through Time
Three Sisters
Your Love Goes On
Hallelujah Jordan
Feet on the Ground
Don’t Go
Si Do Mhamo i

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BEN HOWARD http://fujirockexpress.net/18/p_1679 Sun, 29 Jul 2018 10:10:06 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1679 昼下がりのフィールド・オブ・ヘブン。先ほどまで降りしきっていた豪雨と打って変わって、ここは晴れ渡っている。今は晴れているというべきだろう。山だから天候が変わりやすい。苗場の天気はいつでも気まぐれだ。

これからヘブンに登場するのは、イギリスからやって来たシンガー・ソングライターのベン・ハワードだ。デビュー作からマーキュリー・プライズとアイヴァー・ノヴェロ賞にノミネートされるという才能の持ち主だ。今年リリースされたばかりの新譜『Noonday Dream』を引っ提げ、このフジロックのステージが初来日公演となる。

ステージには2ドラム、キーボード3台、ヴァイオリンにビオラ、ギターやアンプやらがゾロゾロと機材が所狭しと並んでいる。新譜の『Noonday Dream』がアコースティックな音色主体だった前二作からアンビエントでシューゲイザーな音に一変していたので、それを再現しようという意気込みが感じられる。

開演時刻を過ぎたが、機材トラブルが発生したのかだいぶ押している。約10分遅れでバンドメンバーがステージに姿を見せ、グラサンをかけてクールな雰囲気を醸し出しているベンがで登場し、横を向いて座ってマイクに向かってヴォコーダーがきいた柔らかな歌声で祈るように‟Towing the Line”を歌いはじめる。爪弾かれるアコギにギターがアームを駆使し浮遊するようなアンビエントな鳴りで絡み、会場が静謐な感動に包まれた。曲を終えるとベンがフロアに向かってウインクを飛ばし、上がった大歓声に応えた。

ベンを含めたアコギとエレキの総勢5名のギターアンサンブルから始まり、中盤に至るに連れて、2ドラムのぶっといビートが飛び、ギブソンレフリーレスポールが重厚に鳴り響く中盤が超絶かっこいい‟A Boat To an Island On the Wall”。ベンのバンドメンバーは楽器を何役もこなすミュージシャンシップが高い人ばかりだ。‟Nica Libres At Dusk”の間奏部、何とも気持ち良さそうな表情を浮かべる。サウスポー特製のギターを手に寡黙に演奏を続けていたベンだったが「最高の景色だね。マジカル!もっと早く来るべきだったよ」とコメント。笑顔の聴衆と広がる豊かな山々。気持ちが良いに決まっている。‟Someone In the Doorway”も色んな音が飛び交う。バンドが控えめな演奏しているからか、色んな音の粒子が心地よく耳に届くのだ。

ステージにベースと、ベンの二人だけになり、ベンの浮遊し流れるようにリフレインフレーズが印象的な‟Conrad”をじんわりと終えて、バンド全員がステージに戻り、‟Small Thing”で巧みなバンドとともに濃く、壮大なグルーヴを醸成して本セットを締めくくった。どの楽器の音もはっきりと聴き分けられるような、粒度がとても高く音の雨をヘブンに降らせた。「いや~、ジャック・ジョンソンを蹴ってこっちに来てよかった!」、「めちゃめちゃカッコよかった!」といったポジティブな感想があちこちから聞こえてきた。フジロックでの初公演は大成功と言って間違いないだろう。

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INTERACTIVO http://fujirockexpress.net/18/p_1680 Sun, 29 Jul 2018 06:30:01 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1680 天気は振ったりやんだりの、なかなか不安定な気候が続くなか、最終日にふさわしい注目株が登場。その名はINTERACTIVO。前夜祭や過去の記事などではすでにおなじみだが、フロム・キューバの大人数編成のバンドである。大将こと、スマッシュの日高正博氏がキューバで直接口説いたというキューバ直輸入のサウンドを、このフィールド・オブ・ヘブンで、ついに楽しむことができる。直前のアクトはWestern Caravanなので、昨年から今年へと、目玉バンド同士によるバトンタッチの意味も込めたタイムテーブルになっているのかもしれない。

定刻になると、晴れ間が差し込んできて、本バンドの頭脳、ロベルト・カルカサス(key)が登場。晴れ間が差し込んできた空を見つめて、流ちょうな日本語で「太陽!」と驚く。ソロプレイが始まると、ベース、パーカッション、ギター、トロンボーン、トランペット…と、メンバーが次々と登場し、セッションの開始。フランシス・デル・リオ(vo)、エンリケ・イグレシアス、(vo)、ウィリアム・ヴィヴァンコ(vo)のメインボーカル3人が登場し、ステージ上は13名のビックバンドへと進化した。ホーン隊の張りがあるイントロから始まる“MI CUBANA”、ゆったりとしたルンバ・ナンバー“Baila Con Mi Rumba”を披露。耳をくすぐるギロの軽いタッチ、タンミー・ロペス(vo,vio)の早口なリリックと腰の動き。ああもうここは、いつものヘブンではない。最初はどう踊ってよいかわからずに戸惑っていたお客さんたちも、次第に揺れて跳ねて、自分の踊り方を見つけていく。

“Cubana de Pura Cepa”は、アフロ・キューバンリズムを体験してみよう、と言われんばかりのコーナーに。促されるままに2拍3泊のリズムで手拍子を打ち、“Calavera”では、サンバのリズムからput your hands up!なヒップホップアレンジまで、あらゆる引き出しを開けて、一緒に踊ろう!と誘ってくる。あまりノッてなかったお客さんたちも、ようやくここで腕を上げる。楽器を持ったメンバーもほとんどメインボーカルとして歌う“Pilon”では、彼らの歌うメロディのコールアンドレスポンスが行われる。が、わりと難しいようで、なかなかうまくいかない。頑張って真似してみたつもりが、なんだか「ピンクパンサーのテーマ」みたいになってしまって、ラテンでもなんでもなくなってしまった結果につい笑ってしまった。

彼らの音楽は、初見のわたしたちに大変優しく、キューバ音楽の世界から伸びてきた手は我々をぐいっと引っ張ってくれる。縦ノリではないとなかなかうまくノれない人も、ステージの彼らを見よう見まねでいい。お尻や腰を使って踊ることの気持ち良さを教えてくれたと思う。

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WESTERN CARAVAN http://fujirockexpress.net/18/p_1681 Sun, 29 Jul 2018 04:55:19 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1681 昨年、初めてフジロックに本格的なカントリー・ミュージックを奏でるバンドが出演した。彼らの名前はWestern Caravan。2016年、日高代表がニューヨーク・ブロードウェイに食事で訪れた際、そこでたまたま演奏していた彼らの音楽に惚れ込み、その場でオファー。トントン拍子でフジロックへの出演が決定した。その後実現したフジロック、フィールド・オブ・ヘヴンでのステージは、彼らの魅力が伝わるとても良いパフォーマンスだった。そして、異例の2年連続出演となった今回は、新作『Honky Tonk』(しかも、なんと国内盤!)がリリースされたばかりということもあり、新曲も多く盛り込まれたステージとなった。

牧歌的で気分が高揚するメロディラインの”Back Home Again In Indiana”から始まったライブは、デビュー・アルバム『The Western Caravan』と先日リリースされた新作、さらにはアルバム未収録の曲で構成されたセットリストで、彼らの最大の魅力である南部音楽の伝統に根ざした本格的カントリー・ミュージックと、バンドメンバー各々のバックボーンにある、スウィング・ジャズやブルース、レトロR&Bがミックスされたより幅のある展開を見せていた。

ブルーグラスなアレンジ・メロディラインの”Yellow Texas Moon”、ブギーでロカビリーな空気感もある“Car Trouble”、曲名の通りブルース風味が感じられる”King of the Blues”、それら思わず体が動いてしまうような良い曲の連続に、オーディエンスからは「最高だ!」「楽しいー!」なんて歓声も上がっていた。そして、気がついたらみんなが笑顔になっていた。

今の主流のカントリー・ソングと一線を画した彼らのカントリー・サウンドは、僕らが忘れかけていた”音に身を委ね、楽しむ”ということを思い出させてくれた。だからこそ、僕らは自然と笑顔になれたんだと思う。

<セットリスト>
Back Home Again In Indiana
Keys In Mail Box
Yellow Texas Moon
Why I’m Walkin
Stay All Right
Raining
Pig Is A Pen
King Of The Blues
Right Or Wrong
Crazy Creek
Car Trouble
Molly
Making A Fool Of Myself
Oklahoma Blues
The Honky Tonk Song

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TANUKICHI http://fujirockexpress.net/18/p_1852 Sun, 29 Jul 2018 04:00:31 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1852 MANDIDEXTROUS http://fujirockexpress.net/18/p_1853 Sun, 29 Jul 2018 03:04:43 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1853 平井 大 http://fujirockexpress.net/18/p_1682 Sun, 29 Jul 2018 02:39:41 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1682 最終日を迎えたフジロックは生憎の雨と強風。
フィールド・オブ・ヘヴンのトップバッターとして、サポートメンバーと共にゆっくりとした足取りで登場した平井大。ここ最近のサーフロックと言えば平井大の名前が挙がるようだし、その貫禄たっぷりの落ち着いた雰囲気からは想像できないのだけれど、フジロックには意外にも初登場。

まずは挨拶を、と1曲目“I SHOT THE SHERIFF”の演奏からスタート。ゆったりとした心地よいリズムにパーカッションがスパイスとなり、音楽に身を任せながら踊りたくなる。間奏部分では、前に出て、目を閉じながら気持ち良さそうにソロを弾く平井。様々な表情を見せてくれつつ、会場の温度感を確かめるようでもあった。キャッチーなメロディーラインに乗る、平井の透き通るような優しい歌声。悪天候のなかであったとしても、気が休まるというか、だんだんとステージ上で演奏されている曲に入り込んでいき、穏やかな気持ちになっていけるような気がした。

そして、会場全体からスローテンポなクラップ&ハンズが巻き起こった“RIDE THE WAVES”では、ようやっと太陽も顔を出してくれたようだった。平井の美しい裏声が、どこまでも伸びていくように苗場の大自然の中に響き渡っている。途中、シャボン玉も風に乗って、高く舞い上がり、なんだか演出のひとつであるかのよう。

優しく、心に寄り添うような“SONG FOR TWO”と“tonight”の演奏が終われば、「次で最後の曲です!」という、平井。観客からは「えー!!!」という不満たらたらの声が聞こえた。曲は確かにスローではあるのだけれど、だからこそ時間という概念を忘れて聴き入ってしまう。まだまだ平井大の生み出す世界に浸っていたい。
そんな中で演奏されたのは、5月末にリリースされたばかりの”はじまりの歌”。バンジョーにブルーハーブとアコ-スティックギターの感情的なサウンドと平井の声が混ざり合い、身体も自然と揺れてしまう。

最後には、「もう少し時間があるから、みんなで歌いたかった曲をやります!」と言い、彼の表題曲である“Slow&Easy”のイントロが流れる。手を左右に大きく振りながら、印象に残るコーラスをヘヴンにいる皆で歌った頃には、ゆるやかでピースフルな空間が広がっていた。この曲の終盤には、なかなかの強い雨が降っていたけれど、いいんだ。そんなのは関係ない。疲労の溜まり始めた3日目の朝、心地よい平井大の音楽が、心を穏やかにしてくれ、癒しを与えれくれたようでもあった。

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JOSHUA MOYLETT http://fujirockexpress.net/18/p_1874 Sat, 28 Jul 2018 17:05:53 +0000 http://fujirockexpress.net/18/?p=1874