“あたそ” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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TENDOUJI http://fujirockexpress.net/19/p_1882 Sun, 28 Jul 2019 16:39:10 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1882 苗場食堂のステージからはお馴染みのイントロが聞こえる。NIRVANAの“Smells Like Teen Spirit”だった。まさかの選曲に観客たちは手を挙げ、一緒になって歌っている姿には、思わず笑ってしまった。音出しの時点で、掴みはバッチリ。会場が、すでに温かな空気の包まれていたように思う。

サッカーでお馴染み“WE ARE THE CAMP”がかかり、メンバーが登場すると、最前列の観客たちが「TENDOUJI フジロックおめでとう」と大きく書かれた紙を掲げる。
TENDOUJIの出演時間は、3日間の大トリを飾ったTHE CUREも終わり、越後湯沢駅までの終バスも過ぎ去ってしまった0時前。にも関わらず、ようやっとフジロックへの出演が決まったTENDOUJIを見るためはるばる新潟の山奥まで出向き、深夜に差し掛かるこの時間まで、通路を遮ってしまうほどの多くの人が苗場食堂の狭いステージに集まっている。これを愛と呼ばずに、なんと表現すればいいのだろう!

そんなことを思いつつ、ライブはスタート。まずは、“Killing Heads”と“Get Up!!”。ノリノリなギターサウンドと雄々しすぎるコーラスは聴いている人々を高揚させる。ギタリストにはさまざまなタイプがいるけれど、下手のアサノケンジ(Vo/Gt)は確実に顔で弾くタイプだ。観客たちが一生懸命に手を挙げ、更なるハッピーな空間を演出するかの如くリズムに合わせて飛び跳ねている。

印象的なギターリフにオオイナオユキ(Dr/Cho)の軽やかなドラミングが加わると、ワッとした声も上がる。“Kids in the Dark”だ。ときには、モリタナオヒコ(Vo/Gt)の裏声がメロウな雰囲気を演出し、ドッと爆発するかのようなサビ部分では、TENDOUJIのフジロック出演を祝福するかのようにダイブをする人を見ることもあった。本当に、色々な人から愛されているのだと思う。
ノスタルジックな雰囲気の“LIFE-SIZE”に、オオイとヨシダタカマサ(Ba/cho)の爆発するかのような低音に力強い歌声が印象に残る“D.T.A”と“Happy Bomb”。後方から見ていると、まるでライブハウスでのいつものワンシーンかのよう。

「初めて作った曲をやります」という発言を合図に、ゆっくりと“HAPPY MAN”の演奏が始められる。クラップ&ハンズも起こり、モリタのシャウトが夜の苗場に響き渡る。
TENDOUJIは、遅咲きのバンドだ。「5年前、まだバンドを組んでいなかった28歳の時に初めてフジロックに行き、どうしても出たいと思っていました。なので、遅いかもしれないけどバンドを組んで、今このステージに立てて本当にうれしいです。次も必ず戻ってきて、もっと大きなステージに出たいです」というモリタ。
ここ数年は、何度もフジロックの会場でTENDOUJIのメンバーを見ていたし、色々な人に「フジロックに出たい!」と触れ回っていたような気がする。あの会場にいた人たちは、目の前にいるTENDOUJIが一つの目標にしていたフジロック出演を目撃し、その中で初めて作った曲を演奏している。一体、どんな気持ちで曲を奏でているのだろう。染み入るギターの音を耳に残しながら、そんなことを考えてしまう。

最後の“GROUPEEEEE”では、各メンバーの気持ちがすべて乗せられたかのようなたくましく爽やかなサウンドに、観客たちも思いきり手を挙げ、TENDOUJIが全方位に放つポジティブなムードに応えようとしているかのようだった。最後には感極まったモリタが観客側へとダイブし、そしてマイクをしっかりと持ってすべてを振り絞るように力強く歌う。

TENDOUJIが作り出す幸せな空間に魅了された観客たち。今回、彼らが苗場食堂に立つことができたのは、もちろん本人たちの努力もあるが、このさまざまな人との関わりやつながり、そしてライブでの温かな一体感があったからこそだと思う。

次回はもっと広いステージで演奏を見せてくれるはずだろう。きっと、TENDOUJIの4人なら絶対にやってくれる。そんな確信を持てるようなライブだった。

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平賀さち枝とホームカミングス http://fujirockexpress.net/19/p_1881 Sun, 28 Jul 2019 15:50:06 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1881 人が集まりだし、メンバーの顔がやっと見えるか、見えないか。音出しが終わり、「皆さん、よろしくお願いいたします。楽しんでいきましょう!」と言いながら、一度ステージ横へと捌け、苗場食堂お馴染みの出囃子と、Belle And Sebastianの“The Boy With The Arab Strap”のSEがかかると、温かな拍手とともに、再び現れる平賀さち枝とホームカミングス。

ゆったりとしたムードのなか始まったのは、“ヴィレッジ・ファーマシー”。落ち着きを払いながら奏でられる爽やかなギターのサウンド。掛け合いのように交互に歌う平賀さち枝(Vo.)と畳野彩加(Vo./Gt.)。サビの部分では、福田穂那美(Ba./Cho)のコーラスが加わり、透き通るような3つの声が響いていく。

続いて演奏されるは、“白い光の朝に”。サビの部分で手を目いっぱい挙げる平賀に、観客たちからはクラップ&ハンズが起こる。疲れた身体に2人の織りなすハーモニーが染み渡り、心地がよかった。夜が更けていく今の時間帯にぴったりだったように思う。
それから、昨日までの土砂降りだった雨と示し合わせたかのような、“雨の日”。こんな1曲が聴けるのならば、昨日までの雨も悪くないような気さえしてくる。今の環境にがっちりとハマった1曲に歓声と拍手が起こる。

平賀さち枝とホームカミングスは、2人のボーカルが存在しているのだけれど、平賀の声は優しく心に寄り添うような素朴な魅力があり、その一方で畳野の声は、しっかりと安定して伸びゆくような声である。曲のなかでお互いが重なっていくように歌われ、2つの異なる種類の声が対となり、気持ちがいい。

今年のフジロックのみで販売するという新たな音源から、スローテンポであり、平賀のタンバリンが印象的な“New Song”と曲のタイトル通り静かに輝くようなギターのサウンドの鳴る“かがやき”が演奏される。聴いていて、癒しの効果を得られるような2曲であった。MCでも言っていたのだけれど、こちらの音源はすでにほぼ売り切れてしまっているそう。まだ決まってはいないが、きちんとした形でリリースされるのだそう。心待ちにしていたい。

あっという間に40分間が終わっていく。最後に演奏されたのは、“カントリーロード”だった。軽やかなメロディーに飛び跳ねるようなドラムの音。観客たちは各々に身体を揺らし、音が鳴りやむまで、聴き入っているように見えた。3日間の疲れが吹き飛びそう。癒しを与えてくれた時間だった。

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PHONY PPL http://fujirockexpress.net/19/p_1762 Sun, 28 Jul 2019 13:55:57 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1762 突然、広いステージを駆け抜けるチャリ。開始時刻はまだなのに、ステージにチャリが現れるたびに戸惑いながらも大きな歓声が上がる。ポーズを決めるバリ・ベース(Bass)にエイシャ・グラント(key)、マット“マフュー”バイアス(Dr.)。
マフューの「Make some noise!!」を合図に、背後のスクリーンの彼らの満月のようなマークが映し出され、エルビー・スリー(Vo.)とイライジャ・ローク(Gt.)。

まず演奏されたのは、“End of the niGht.”だった。ひとつひとつの音が重い。まるでのしかかるようなベースとドラムの低音に合わせ、ステージ上を自由に飛んだり跳ねたりするエルビー。マック・ミラーやプリンセス・ノキアなどの人気ラッパーたちのバックバンドに起用され、演奏力の高さに定評があるとは耳にしていたけれど、本当に想像以上。落ち着きがあり、ピアノの音を重点に置いた静かな印象を受ける音源とは全く異なり、ライブはアグレッシブそのもの。ステージからの図太いサウンドにこちらも熱くなる。

軽快なメロディーにギターのスクラッチが心地よい“Take a Chance.”と跳ねるようピアノのサウンドがロマンチックな演出をする“Either Way.”。演奏はもちろんだったけれど、演奏中にも、観客たちからは何度も何度も歓声が上がる。
確かに、PHONY PPLの5人は全編を通じて見ているこちら側を圧倒する、演奏をしていた。しかし、あのときのレッドマーキーの歓声は、まるでどこかもっと広いスタジアムにいるのかと勘違いしそうになるほど、すさまじいものだった。一体感があり、PHONY PLLを含めてその場にいた全員が楽しんでいたように思う。ライブは、アーティストだけではなく、観客がいなければ成り立たない。目の前の演奏に何十人、何百人が表情や態度、声などで反応を示し、そこに呼応するように更なる素晴らしい演奏をする。
観客たち一人ひとりの熱狂的な反応も含めて、あのときのPHONY PPLのショーが作られたんじゃないだろうか。

“something about your love.”や“Baby Meet My Lover.”では、手を広げ、ステージの端から端までを飛んだり跳ねたりするエルビー。各パートの凄まじいテクニックを披露するソロパートには思わずうなりながら大きな声を上げてしまう。バリの分厚いベースサウンドにマフューの破裂音のようなドラムの音、時に前に出て華やかなギターリフを聞かせるイライジャ。エイシャのセクシーなキーボードの音にもうっとりしてしまう。このバンドは、全員が主役なのだろうと思った。

エイシャとエルビー以外のメンバーが一度ステージからはけ、ムーディーなピアノの音に、ボイスパーカッション。そして、バリとマフューが愉快なダンスを披露する。「ドラムのマフューが踊っているのに、なぜドラムの音が聞こえるのだろう?」と思えば、イライジャが叩いていた。この5人は、本当に仲がよく、いつ何時だって心から楽しそうな演奏を見せてくれる。
そして、クラップ&ハンズの巻き起こった“Why iii Love the Moon.”は、ロマンチックで少しビター。繊細なピアノのサウンドが、月の光のようにキラキラときらめく。
「フジロック最高!」と言い、最後の“Before You Get a Boyfriend.”では、大合唱も起こり、手を左右に振る観客たち。最後の最後まで、熱気が尽きることはなかった。

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KOHH http://fujirockexpress.net/19/p_1742 Sun, 28 Jul 2019 10:29:19 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1742 2017年の圧巻のパフォーマンスが記憶に新しく、多くの人が押し寄せるホワイトステージ。DJが静かに登場し、黒く、炭が溶け出したかのような映像が背後に映し出される。そして、壮大な音楽が大音量で流れ、気だるそうに登場するKOHH。シルバーの大きなリングがたくさん埋め込まれ、水玉模様のようなセットアップにTシャツという、いで立ちだった。

1曲目は、“ひとつ”。裏声がきれいに伸び、観客たちは指を「1」の形にして掲げる。曲の終盤に真っ直ぐ前を見つめたかと思えば、一瞬、KOHHがにやっと笑みを見せた。その直後、ここから一気に加速していくかのように、どこまでもヘビーな音が体内にまで響く。“Imma Do it”だ。ステージの端から端までを歩き、ときにしゃがみながら、強気の姿勢を一切崩すことはない。大音量かつ重すぎるサウンドに、まるで絶叫にも近いKOHHの声に鼓膜や胸が揺さぶられ、まるで無抵抗なままぶん殴られているかのようだった。

「今日の天気は暑くもない。寒くもない。だから……薬物の曲をやります」と始まったのは、“Drugs”。今回のフジロックで薬物に関する曲をやるのは、何かの意図を感じずにはいられない。KOHHといえば、自身の過去をリリックに落としていることでも知られている。薬物を吸わされたリアリティの滲み出る歌詞に加え、背後に映し出されているのは薬物使用時をイメージしたのだろうか、物体が徐々に色を持ち歪んでいく映像に、思わずクラっとしてしまう。
また、このときスクリーンに映し出された映像は、2台のカメラが撮影をしたものを、リアルタイムでCGなどの加工を重ねたものだった。今見ているものが本物で現実なのはわかっているのに、ずっと眺めていると、バーチャルの世界に無理やり引きずり込まれそうになる。

他者から向けられた賞賛や好意をすべて否定する“Hate me”をゆっくりとアカペラで歌ったあとは、“Leave Me Alone”。相変わらず、押しつぶされそうになるほどの重低音に、声質を変化させたいくつもの叫びが重なる。KOHHという個人から溢れ出る膨大な感情とそこに混ざり合った絶望的なまでの孤独を感じ、思わず鳥肌が立つ。

“Mind Trippin’”。そして、言葉だけではなく身振り手振りに感情を込められた“ロープ”が終わると、あっさりとステージを後にするKOHH。終盤にのみ降ってきた冷たい雨は、まるでこのパフォーマンスの演出でもあるかのようだった。
全編を通じて、KOHHの視界に観客の姿が入ることは、それほど多くはなかったように思う。背後にDJを従えていたものの、大きなホワイトステージにたった1人で立つ堂々たる姿は、周囲の人間なんてまるで関係がない。どこまでも孤独であり、ライブやパフォーマンスというよりも表現を通じて自己との対峙を見せられているかのようだった。本当なら、目を逸らしたかった。なんだか、少しショックな体験であり、見る者の力を奪うかのような50分間だった。

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ドミコ http://fujirockexpress.net/19/p_1765 Sun, 28 Jul 2019 10:02:11 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1765 2年前、2017年の苗場食堂に出演したときのドミコは機材トラブルに見舞われてしまい、少々時間が押してからのスタートだった。彼らのサウンドの要とも言えるループマシンの調子が悪かったのだろう。決して万全ではない体勢のなかの出演となってしまい、悔しそうな姿を覚えている。そして、2019年のレッドマーキー。ついこの間には、“What’s up summer”が配信されたことから察せるように、気合いが入らないわけがなかったし、絶対にいいライブをしてくれるのだろうという予感はしていた。
本編では、いつもの気の抜けるMCも一切なし。緊張感を持ちながらも攻めの姿勢を一切崩さず、最後の最後まで駆け抜けるようなライブは、リベンジ戦としてはパーフェクトだったように思う。

中央に置かれたギターアンプの上、「Domico」のネオンが光り、背後のスクリーンには、“What’s up summer”のジャケットと同じロゴがパッと浮かび上がる。King Crimsonの“Easy Money”がかかると、ドミコの2人が定位置にスタンバイ。1曲目は、“ペーパーロールスター”だ。長谷川啓太(Ds,Cho)の突き抜けるようなハイハットの音に、さかした ひかる(Vo,G)のしゃがれたギターが気持ちよく、初めから一切手を抜くこともなく全力で急発進をしていく。観客たちへの掴みはバッチリだった。全身でリズムを取りながらのさかしたのソロパートには声もあがり、観客たちは自然とハンドクラップを鳴らしている。
これは個人的な考えではあるけれど、いいライブというのは1曲目でどれだけたくさんの観客を圧倒し、魅了できるか、というのがひとつの要因としてあげられると思っている。この日のドミコの最初の音を瞬間、「ああ、今日は絶対にいいライブを見ることができるんだろう」と、ワクワクにも似た期待を持ってステージを眺めていた。

さかしたがループマシンに触れると、おなじみのイントロが流れる。次の曲は“くじらの巣”だった。浮遊感のあるような力の抜ける声でありながら、身振り手振りを交えながらも力強く歌っている。
そして、“わからない”、“まどろまない”と、目も耳も身体も、少しも休む暇がない。曲の合間には音を作るためのセッションの時間があるのだけれど、その間のサウンドですら、2~3つに重なるギターのメロディに重いドラム。なんだか、音を通じて「もっと楽しめ!」と軽く挑発されているかのよう。この瞬間も、次はどんなことをしているんだろう?と心が躍る。

ギターの音色が心地よい“深海旅行にて”のあとは、爆発音のような長谷川のドラミングに首を振り、歪ませたギターを弾き鳴らすさかした。間髪を入れないでの“What‘s up summer”には、思わず声が上がる。
最後はビビットなギターリフが印象的な“こんなのおかしくない?”を演奏し、あっさりとステージを後にするドミコの2人。まさに圧巻!骨抜きにされてしまった!音の止んだレッドマーキーからは、ドミコを称賛する声がところどころから聞くことができた。

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clammbon http://fujirockexpress.net/19/p_1735 Sat, 27 Jul 2019 23:39:31 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1735 お揃いの鮮やかなブルーの服を身に纏うクラムボンの3人。ミト(bass/guitar/vocals)の「もう、このままやっちゃおうか!」という声とともに、サウンドチェックからそのまま本編がスタートする。

「僕たち、昨日のトムヨークよりも機材が多いんですよ!」と冗談交じりにはじまったサウンドチェックの“波よせて”では、クラップ&ハンズや一緒に歌っていた観客たちの準備はばっちり。雨の冷たさに奪われていた体温が徐々に戻りつつ、雨の似合う軽やかなピアノのサウンドから演奏されたのは“KANADE Dance”。青と白のライトが暗くなりはじめた夜のホワイトステージを照らし、会場中に原田郁子(vocal/keyboards)の声が遠くどこまでも伸びていく。
定番のイントロが鳴らされると、思わず観客たちからも声があがる。“シカゴ”だ。ミトの低音の効いたブリブリ言わせるベースのサウンドに、軽やかさのスパイスになる伊藤大助(drums)のドラミング。ああ、聴いていて心地よい。手拍子をし、音に身を任せて揺れつつもリラックスしながらステージを見つめていた。

原田の「またこのステージに戻ってくることができてうれしいです」、ミトの「4年ぶりの出演だけど、すげえ落ち着いて演奏ができています」というMCを挟み、7/19のサブスクリプションとして配信がスタートした『モメント l.p.』から、“Lush Life!”、“グラデーション”、“nein nein”が続けて3曲演奏される。彼らの言葉が真実だとしたら、落ち着いて演奏ができるのもそのはずで、今回でクラムボンのフジロック出演は7度目となる。今までステージに立ってきたアーティストのなかでも常連と言ってもいいほどの出演回数だろう。
“Lush Life!”では、飛び跳ねるようなピアノにドラミング、透き通るようなコーラスが、歌詞として描かれる恋の甘酸っぱさやもどかしさ、ときめきをぐっと引き出しているような気がした。

ミトが激しく曲の疾走感を体現する“yet”の後、最後には、チェリストの徳澤青弦と、明日フィールドオブヘブンに出演するtoeの4人が登場し、Nujabesの“reflection eternal”のカバーが演奏される。この曲がはじまる前、ミトが「この空間を世界一幸せな空間にする曲を演奏します」と言っていた。雨なんて関係ない。足元はぐちゃぐちゃだし、どんどん体温が下がっていくのを感じる。でも、そんなのどうだってよくなっていた。これだけのたくさんの音楽を浴びられるフジロックのなかで、こんな豪華メンバーの奏でる“reflection eternal”を聴ける空間なんて、世界一幸せに決まっている!

Clammbonの3人が作り出す世界一幸せな空間に居合わせたことを、光栄に思う。

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Shohei Takagi Parallela Botanica http://fujirockexpress.net/19/p_1811 Sat, 27 Jul 2019 20:04:28 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1811 Shohei Takagi Parallela Botanicaは、フジロックでもおなじみceroのフロントマンを務める高城晶平が今年からスタートさせたソロプロジェクトである。
今まで、1月に行われた「カクバリズム presents Quiet Spark #3」にて大盛況に終わった初ライブと、5月に福岡で開催された「Circle」。この2つに出演し、今回のフジロックで、人前に演奏する機会は3度目となる。

生憎の天気ではあった。先ほどまでぱらつく程度だったのに、「パラボタ(と略すらしい)」の出番が近づくにつれて、どんどん強くなっていく雨足。しかし、音源も出しておらず、ライブの回数は少ないながらも、たくさん人が高城のソロプロジェクトに注目を集めているのだろう。アヴァロンの会場には所狭しと並ぶカラフルなレインコートが見える。

「こんな雨のなか、来てくれて本当にどうもありがとうございます。高城です。浸ってくれればと思います。」という高城の声の後に、ハラナツコ(Sax, Cho)の高らかなサックスと中山うり(Accordion, Tp,Cho)の懐かしさを覚えるアコーディオンの音、そして乾いたギターのメロディーが混ざり、ゆったりとしたテンポの1曲だった。秋田ゴールドマン(Bass)チェロの低い音も体内に響き、心地よく聴くことができる。
お次は、浮遊感を覚えつつも、ノスタルジックな1曲。儚く静かに終わっていく恋にもよく似た人の気持ちを歌っていたようだった。光永渉(Drums)の軽やかなドラミングにチェロの音がアクセントとなり、伴瀬朝彦(Key,Cho)のキーボードの音もキラキラと美しく響く。
途中のMCでも高城が「雨、いいですね。僕たちの曲は、晴れよりも雨の方が合いますからね」と言う。確かに、しっとりと奏でられる丁寧なサウンドに、ロマンチックな歌詞と歌声、情緒を大切にするのであれば、今日はぴったりだった。しかし、演奏をかき消すほどの雨の音がなければ!……いや、こんなに強くなければ、目の前の演奏にもっと浸ることができたのに!なんて、思ってしまう。

後半部分では、細野晴臣のカバーを折り混ぜ、どんどんひどくなっていく雨の中、ロマンチックかエロティックな雰囲気満載の曲たちを演奏したパラボタの5人。
「インディー音楽界のとっつあん坊や、高城でした。またどこかで会いましょう」と、最後の曲に入る。アコーディオンの音色とギターの音をしっとりと聞かせ、サックスのソロパートでは曲から感じられる切なさを更に表現しているかのようだった。

まだまだスタートしたばかりではあるけれど、ゆっくりペースで作品も作っていくという。もう少し小雨だったらよかった……!と、正直思わなくはない。しかし、パラボタの音楽は雨のなかでしっとりと聴き入るのがよく似合う。高城のソロプロジェクトということで、新な一面に魅了されたひと時であった。

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EGO-WRAPPIN’ http://fujirockexpress.net/19/p_1788 Sat, 27 Jul 2019 19:12:20 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1788 サポートメンバーとともに定刻よりも少し早く登場するEGO-WRAPPIN’の2人。準備をしながら、「ええ天気やな」と陽気な関西弁を発している。周りを見渡せば、全員がずぶ濡れのレインコート。空を見上げれば、重い雨が降り続いている。
しかし、2日目のトリを務めるEGO-WRAPPIN’には、天気なんて関係ない。どんなにひどい雨だったとしても味方につけてしまうのだろう。

まず演奏されるのは、今年の5月に発売された『Dream Baby Dream』から“Arab no Yuki”。マイクスタンドに取り付けられた赤いライトが印象的に光り、サックスとトランペットがタイトル通りのアラビックな雰囲気を演出している。ハツラツと歌いながらステーを左右に動く中納良恵 (Vo.)。イエローの一風変わったデザインの衣装もかわいらしい。スモークも焚かれ、ロマンチックだった。
次は、トランペットソロが一層ヘブンのステージにムーディーな雰囲気を演出し、盛り上がりを見せた、“裸の果実”。赤いライトを持ち、中納を身体いっぱい自由に踊らせるサウンドには、さすがフジロック9度目の出演!常連者の余裕や貫禄すら見える。

「もっとびしょびしょにしますからね!」というMCを挟み、サックスとトランペットが織りなす情熱的なサウンドの“BRAND NEW DAY”と“PARANOIA”が、更に苗場を躍らせる。手を左右横に振り、飛んだり跳ねたり。中納のノリノリなダンスもさることながら、観客たちを全員巻き込んだキャバレーでのショーでもあった。

先ほどまでの躍らせる曲たちのあとには、「愛しています!」と声高らかに中納が告げ、“a love song”。歓声が上がる。ゆったりとしたメロディーに力強い歌声には、惚れ惚れとしながら聴き入ってしまう。ああ、一体あんな小さく、細い身体のどこに、こんなにも強いエネルギーが秘められているのだろう。
その次に演奏された“on this bridge”は、森雅樹 (Gt.)のセクシー全開のギターサウンドに簡単なパーカッションのみ。そこに駆けるようなピアノが加わり、しっとりと、落ち着きながら聴くことのできるナンバーが続いた。

さて、休憩は終わり!と言わんばかりに、“サイコアナルシス”に“くちばしにチェリー”と、2日目の幕引きに向けて、更にヒートアップ!クラップ&ハンズに観客たちのコール&レスポンスもパーフェクト!頭と肩ののしかかるような雨は重い。けれど、その雨をも吹き飛ばすように踊り、飛び跳ね、どんどん加速していくように、会場が温められ、盛り上がっていく。

本編最後は“L‘amant”。歌詞に習い、「愛しています!」という中納。「私も!」なんて思わず叫んでしまいそうになる。改めて、こんなひどい雨のなかの苗場の山奥にも関わらず、ジャズサウンドに踊らされ、中納のエネルギッシュな歌声に聴き入ることのできるこのひと時は、絶対にさまざまな愛に満ち溢れていたのだと思う。
アンコールは、“GO ACTION”。おなじみのイントロに「GO ACTION!」の声とともに、大きな歓声があがる。管楽器メンバーがかわいらしく飛び跳ね、こちらも最後の力を振り絞るように大盛り上がり!そして、「誰よりも愛し合おうぜ!」と言い、高音がどこまでも響く、“サニーサイドメロディー”で2日目のヘブンステージは終わっていく。
1時間半の長いショーはあれだけ踊り、手を挙げ続けていたのに、見ている私たちにまでエネルギーを分け与えてくれたかのよう。ああ、なんて強い愛に満ちた空間だったのだろう!

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JONAS BLUE http://fujirockexpress.net/19/p_1772 Sat, 27 Jul 2019 17:03:03 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1772 超満員のレッドマーキー。土砂降りの雨だからこそ、屋根のあるステージに人が集まってくるのは自然なことかもしれないけれど、直前のグリーンステージにはMARTIN GARRIXが出演していたことも要因として挙げられただろう。「踊りたい!」という雰囲気が、広い空間のなかに充満していた。それもそのはずで、Jonas Blueといえば、2018年5月にリリースした“Rise”では日本国内の主要チャートを総なめし、今年3月に行われた来日公演もチケットは早々に完売している。急速に世界で知名度を上げているが、日本でも今もっとも注目を集めているDJといっても過言ではないはずだ。

正方形をくりぬいたような形の大掛かりなスクリーンがでかでかと置かれている。自身の名前が背後に映し出され、中央に配置されたDJ卓に向かって颯爽と歩いていく、Jonas Blue。イントロの時点で、この日一番の雨にも関わらず、周囲の音をすべてかき消すほどの大きな音に、観客もすでに大盛り上がり!低音が体の芯にまで響き、凄まじい歓声が上がる。
まずは、“By your side”。爆音に合わせてクラップ&ハンズ!途中では前がまったく見えなくなるほどのスモークの嵐に、レッドマーキーのボルテージはみるみるうちに上がっていく。

ここにいる人たちは、日中から遊びまわり、雨に体力を奪われながらも踊りたい馬鹿ばかりが集まっていたはずだ。自身の曲の合間には、Daft Punkのヒット曲である“One More Time”やThe White Stripesの“Seven Nation Army”に、Billie Eilishの“Bad guy”のマッシュアップ!こんな選曲、盛り上がらないわけないだろう!ベッタベタ?いやいや、だからこそいいんです。惜しみのない低音は決して不快ではなく、むしろ心地のよいほど。

“Perfect Strangers”、“Ritual”、“In Your Arm Tonight”とヒット曲を飛ばし、まだまだ攻めている。今回のステージは、1時間半とフェスにしては長丁場。盛り上がり方といえば、クラップ&ハンズにジャンプと至ってシンプルではあったけれど、どうしてこんなにも気分が高揚し、盛り上がらずにはいられないのだろう。先ほどまで疲れていたはずの身体が、ステージから鳴らされる大きな音を聞く度に、少しずつ体力を取り戻していくようであった。

ゲストを呼びつつの“Mama”に、日本国旗の大きな旗を振りながらマイクを持ち、ステージギリギリにまで出てきてくれた“What I like about you”に、最後にかかった“Rise”。歌ものやアンセムを含めてさまざまなジャンルがレッドマーキーを包み込んだ、Jonas Blueのステージを見ていると、トロピカルな雰囲気に「ああ、やっと夏が来たんだな」なんて思ってしまう。贅沢なほどの重低音にギラギラした照明、そして無駄遣いを心配するほどのスモークの量!時間は深夜1時を回ったが、手をたたき、飛び跳ね、踊り、フェスらしい暑さを取り戻したようだった。

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