“北村勇祐” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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KHRUANGBIN http://fujirockexpress.net/19/p_1794 Sun, 28 Jul 2019 16:11:20 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1794 ミラーボールが周囲の木々を照らし、幻想的な雰囲気に包まれたフィールドオブヘブン。3月の来日ツアーが全公演ソールドアウトとなるなど、テキサスの3人組への期待の高さがうかがわれる沢山の人の中、大トリのクルアンビンが登場すると、割れんばかりの拍手が沸き起こる。

トレーニングウェアのようなカラフルな衣装のローラ・リーのベースが、ラフなタッチでビート刻んでいく。そこに流れるようにスライドしていくマーク・スピアーのギターが絡み合い、妖艶でサイケなサウンドスケープが展開。そして、衣装も相まってフロントの2人が目を引きがちだが、ドナルド”DJ”ジョンソンのクレバーなドラムプレイがどっしりとバンドの屋台骨を支える。

それぞれの技量を最大限に引き出すトライアングルから、ディープなグルーヴが生まれてくる。アジアンテイストをまとったメロウなファンクサウンドを、最終日の大トリ、疲れのピークに当てられるのだ。夢なのか現実なのか曖昧になってくる陶酔感に浸りながら、身体の反応のまま踊りふけるオーディエンス。うとうと座りながら心地よく浸ってる人もいる。ここは桃源郷なのか。

こんなに踊れる音を鳴らしているのに、本人達はまるで歌謡ショーのようなゆったりとした佇まい。“Evan Finds the Third Room”では、電話を使った小芝居で「ハロー、フジロック!」と声をかけてみたり、ゆったり歩くローラとマークが交錯し、ただならぬ雰囲気を醸し出したり、クルアンビンの異様な存在感はライブが進むにつれ増していくばかりだ。

軽快で陽気なYMOカバー“Firecracker”に続いて、必殺ギターの“Maria También”が本編を締める。マークの早弾きとローラの音数の少ないベースの絡み合いがなんとも気持ちいい。ドナルドだけを残し2人が脇に下がると、割れんばかりの拍手がヘブンにこだまする。

拍手がリフレインする中、ドナルドのキックの音が聞こえてくる。スネア、タムと音数を増していき、銀ピカのセットアップを纏ったローラの登場に、再び盛大に湧き上がるオーディエンス。マークもステージに戻り、ゆったりと育て上げてきたグルーヴは最高潮を迎える。始まる前は満身創痍という感じだった僕も、最後の“People Everywhere (Still Alive)”が終わる頃には、確かな満足感に清々しさを感じていた。

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JASON MRAZ http://fujirockexpress.net/19/p_1720 Sun, 28 Jul 2019 14:01:55 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1720 最終日、夕暮れどきのグリーンステージには、ジェイソン・ムラーズが作り出した、なんとも愛と幸福感に満ち溢れた空間が広がっていた。

ポジティヴなメッセージとソウルフルなフォーク・ポップ・サウンドで世界中のオーディエンスを魅了、これまでグラミー賞を複数受賞してきたシンガーソングライターのジェイソン・ムラーズ。ステージ中央に大きく掲げられた「グッド・ヴァイブス」の文字を背負って、バンドメンバーに続いてジェイソンが登場すると、さっきまで止んでいた雨がしとしとと降り始めた。

ジェイソンが「一緒に深呼吸しよう!」と提案して、みんなで二回深呼吸。「思い出して。なんでここにきたのかを。山の空気…、自然を感じよう」と、その声に合わせて感覚を研ぎ澄ませてみる。苗場の澄んだ空気の中、芝の茂る大地の上に立ち、しとしとと降る雨に打たれている自分がいる。そうしてジェイソンが歌い始めたのは“レッツ・シー・ホワット・ザ・ナイト・キャン・ドゥ”。オーガニックなサウンドに、やさしい歌声がグリーンステージに響き渡る。自然との繋がりを感じながら、今、ここでジェイソンの音楽を聴くことができるという喜びを噛み締めた。正直、始まる前までは「やっぱり晴れた空の下で聴きたいな」と思っていた自分だったが、「どんな天気でも心には太陽が出るよ」という言葉にありのままの自然を受け入れて楽しもうと思い直した。

アーティストであると同時に農園を営んでいる彼は、何よりも世界の民であることに身を捧げ、自然や人間への愛や感謝を歌う。「僕のことを頼っていいんだよ」「どこに行こうとも君はいつでも家に帰ってこられるんだ」などといった歌詞にはもちろん、「みんな自分の身体に触ってみて。この身体は神の祝福なんだよ」など、発する言葉の端々にもその思いは宿っている。それでいて「マイクはどこー?」などとミュージカルのように歌いながらMCをしたり、ふと舌を出しておどけて見せたりと、茶目っ気も存分に見せてくれたジェイソン。心がぐっと鷲掴みにされてしまった。

今回は、共同で楽曲制作するなど長年交流のあるレイニング・ジェーン(モナ・タヴァコリ、チャスカ・ポッター、マイ・ブルームフィールド、ベッキー・ゲブハート)とステージを共有。ジェイソンとレイニング・ジェーンの4人が同じ動きをしたコミカルなダンスをすれば、思わず笑顔になってしまう。“アンロンリー”では、冒頭にジャクソン5の“アイ・ウォント・ユー・バック”フレーズを流し、間奏では5人でジャクソン5を彷彿とさせるダンスを披露。みんなで力を合わせてTシャツをパチンコ(ゴム銃)で客席に発射したりとどこまでも楽しませてくれる。レイニング・ジェーンは全員がマルチミュージシャンで、メンバーたちが曲によって様々な楽器を演奏してジェイソンとの掛け合いを披露。チャスカ・ポッターはジェイソンと“ラッキー”をしっとりと歌い上げ、“93ミリオンマイルズ”では、アコースティックと4人の優しいコーラスが会場を包みこんだ。

ギター、パーカッション、コーラス、チェロ、ベース、ドラム、キーボードという編成で、そのオーガニックなサウンドを支えていた。ステージ上のメンバーは全員お揃いの衣装で、バンドメンバーはそれぞれ黄、青、水色、緑、黒、黄緑、白の、そしてジェイソンは黒地にカラフルな色の入ったつなぎを着用。まるで「バンドメンバーがいてこそ自分がある」とでもいうようで、ジェイソンとバンドメンバーとの強い繋がりを感じる。

ジェイソン最大のヒット曲である“ユアーズ”では、会場からのシンガロングがこだました。周りを見渡してみれば、グリーンステージを満たすたくさんの人たち、その誰もが笑顔を浮かべていた。会場にいるたくさんの人たちとこの空間を共有できたことを心から嬉しく思う。

「どんな夢を持っていても、その夢を持ち続けていて。“オール・ユー・キャン・ハヴ”だから」と、“ハヴ・イット・オール”で締めくくる。“ハヴ・イット・オール”は、ジェイソンがミャンマーへの旅の最中に仏教僧にかけてもらった祈りの言葉から着想を得た楽曲だという。ラップソングの形をとって祈りの言葉が降り注ぎ、身体と心にじわじわとしみ込んでいく。ああ、なんて温かい気持ちに満たされたステージなんだろう。メンバーたちがステージを後にした後も、その余韻はグリーンステージを満たしていた。

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Superfly http://fujirockexpress.net/19/p_1721 Sun, 28 Jul 2019 11:27:21 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1721 2007年のデビュー当初から、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンス、オリジナリティ溢れる音楽性が大きな注目を集めてきたSuperfly。2010年の初出演から時を経て、今年再びグリーンステージに立つ。

最初の曲『Beautiful』のイントロが始まる。越智はそっと目を閉じ、バンドの音を噛み締めてから、一つひとつの言葉を大切にするように、丁寧に歌い始めた。サビに向かって盛り上げていき、サビの高音を力強い声で響かせる。その歌声に息を飲み、どこからこんなにパワフルな声が出てくるのだろうとただただ驚くばかりだ。その迫力に、身長153センチと小柄な越智がとても大きく見えてくる。サックスにトランペット、トロンボーンやキーボード、ダブルギター、ドラム、ベースという厚みのあるバンドが越智を支える。

「こんにちは、Superflyです。フジロックは9年ぶり、2回目の出演。そびえ立つ山を目の前にして歌うこともないので嬉しいです」と挨拶。9年前のフジロックでのステージを見た人がいるか聞いてみるとちらほらと手が上がり、越智は嬉しそうに「また観に来てくれたんですね。ありがとう」と感謝を述べた。オーディエンスに手拍子を要求して『Alright!!』と『タマシイレボリューション』を熱唱。「フジロック最高ですね。激しめな曲をやって私も疲れたので(笑)、落ち着いた曲をやりましょう」と、中学校の合唱コンクールのために書いた楽曲『Gifts』を届ける。誰かと比べてしまうけど、自分の中にあるものを大切にしたい。それを他の人にも教えてあげられたらという気持ちのこもったやさしい歌だ。優しく深い声で語りかけるように歌う。

前の曲を歌い終え、静かに目を閉じた越智。すると、あのピアノのフレーズが聴こえてきた。代表曲の一つである『愛をこめて花束を』である。ピアノが鳴った瞬間、越智の表情がガラリと変って笑顔がこぼれ落ち、感情たっぷりに歌い上げる。サビではグリーンステージ奥の山の方まで観客みんなが手を左右に振っている。観客だけでのシンガロングに嬉しそうにはにかむ越智がかわいらしい。「みんなの手が稲穂みたいに揺れていて、まるで魔法みたい」とその光景を語っている。

越智はMCの中で、今年の冬に新しいアルバムを出す予定であると発表。ファンが喜びを拍手に変えて送る。「9年ぶりに出れて嬉しい。幸せでした」と久しぶりのフジロック出演を語り、『Ambitioius』を披露。最後までエネルギッシュなステージを見せた。終演後、下手で10秒ほどの長いお辞儀をしてから、跳ねるように舞台袖に戻った越智。その真摯な姿勢と愛嬌のある仕草に心が持って行かれてしまった。

実はこのSuperflyのライヴ中に、グリーンステージの後方でドラマが起きていたらしい。PAテントの後ろあたりで、観客の一人が花束を手に彼女にプロポーズして大成功! その幸せムードの漂うなか歌われたのが『愛をこめて花束を』だったというのだ! なんという奇跡…! こんなドラマも生まれるのが、フジロック。いつも会場のどこかでは、何かが起きているのだ。

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HIATUS KAIYOTE http://fujirockexpress.net/19/p_1722 Sun, 28 Jul 2019 09:41:13 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1722 バンドとしては5回目の来日となるハイエイタス・カイヨーテだが、フジロック出演は今年が初めて。最終日昼過ぎのグリーンステージに登場し、圧巻のステージを披露した。

これまでリリースした2枚のアルバムから、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』へのオマージュである“ラピュタ”を始め、“モラセス”や“スワンプ・シング”、“バイ・ファイア”に“ビルディング・ア・ラダー”などを演奏。新曲も織り交ぜながら、変幻自在のジャム・バンドとしての本領を発揮した。

ハイエイタス・カイヨーテは、オーストラリアのメルボルンで結成されたフューチャー・ソウル・ユニット。2012年にデビューアルバム『トーク・トマホーク』を自主リリースすると、そのサウンドに注目したサラーム・レミが自身主宰のレーベル「フライング・ブッダ」から世界発売。これまでグラミー賞に2度ノミネートされるなどの実績を持つ。ちなみに「カイヨーテ」は、「リスナーの創造力を喚起するために使っている造語」なのだそう。

メンバーの音楽的バックグラウンドが様々で、それゆえ生み出される各自の音楽知識のカタログからアイディアを持ち寄って共作される楽曲はまさにジャンルレス。多種多様な音楽文化の集まるメルボルンを体現したようグループなのだ。わざとズラしたリズムに、引っかかりのある歌い方のボーカル。不協和してしまうような組み合わせだが、なぜか不思議と気持ちの良いグルーヴが生まれているのは、絶妙なセンスと高い演奏力の賜物だろう。音源を一聴してそのサウンドの虜になってしまったが、やはり生のグルーヴ感は格別だった。変拍子を始め、一曲を聴いている間にも音が様々に変化するので、次はどんな展開になるのだろうと終始ワクワクしっぱなしで、およそ1時間のセットがあっという間に終わってしまった。まだまだ聴きたい、聴き足りない!

その音楽性だけでなく、ぶっ飛んだネイのファション性にも度肝を抜かれた。ヴォーカル兼ギターを担当するネイのファッション性は、ブーツにポケットモンスターのキャラクターをあしらったり、帽子にはキューピーがぶら下がっていたりと、日本のエッセンスを取り入れながら独自の個性を遺憾なく発揮したもの。その音楽性も相まって、ネイがだんだんガネーシャのような、一種の虚像のような存在に映ってくる。苗場に降臨した“神”の力によってか、それまでぐずついていた空も、彼女たちのステージが始まるとともに明るくなっていった。

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HANGGAI http://fujirockexpress.net/19/p_1724 Sun, 28 Jul 2019 04:14:35 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1724 豪雨の2日目から一転して、若干の晴れ間が見える3日目の朝一グリーンステージ。あの男たちが7年ぶりに苗場へ帰ってくる。そう中国北部に位置する内モンゴル自治区出身の6人組バンド、ハンガイだ。彼らの音楽は、モンゴル民謡をベースにしたロック・ソングである。バンドの中心人物であるイリチは、北京に住んでいた頃にパンク・ロックをやっていて、故郷である内モンゴルへの訪問などをキッカケにしてルーツであるモンゴル伝統音楽に回帰し、ハンガイ結成に至ったという。そんな異色バンドの彼らがグリーンステージに立つ。

バックドロップに『HANGGAI』のロゴがあしらわれた巨大フラッグが掲げられる中、モンゴルの民族衣装に身を包んだメンバーが登場。彼らのライブでの編成は、イリチ(トップシュール※1/バンジョー)、フルジャ(ボーカル/アムネ・フア)、バゲン(モリンホール=馬頭琴※2)、ニウ・シン(ベース/ボーカル)、アイラン(ギター/モンゴル三味線)、モウタツ(ドラムス/パーカッション)、ホーン隊7人の全13人編成だ。

ライブはバンドの中心人物であるイリチの音楽体験歴史が垣間見れたステージとなった。ヴォーカルは基本的にモンゴル民族音楽の歌唱法“ホーミー”で歌っていて、その歌唱法とロック、モンゴル民族音楽が相まって、僕らにとって新鮮な音がグリーンステージに広がっていった。さらに驚くべきはその融合力の高さ。ハードロックから、ファンク調のロック、ジャジーなロック・バラード、アイリッシュ・パンクなどを、モンゴルの民謡音楽と自分たちの解釈でミックスさせ、見事な新しいモンゴル音楽を作りあげていく。最後“初升的太阳”が終わり、メンバー全員がオーディエンスに向かってお辞儀をすると、観客から自然と大きな拍手が起こっていた。

今日、彼らのライブを観て最後に思ったことがひとつある。それは「ピュアな民族音楽」と「ハンガイの音楽」の違いだ。僕らが初めてピュアな民族音楽を聴くとき「へぇ、こんな音楽があるんだ」という“発見”を得る。では、ハンガイの音楽からは何を得られたのだろう。それは「自分たちの知るロックが世界と繋がっている感覚」─そうそれは“繋がり”だ。

※1 トップシュール:モンゴルにおけるチェロのような楽器で、ヘッドの部分に馬の頭の形の飾りがついている。
※2 モリンホール(馬頭琴):弦が二本ある弦楽器のことで、モンゴルを代表する弦楽器である。 モンゴル語で「馬の楽器」という意味。

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DANIEL CAESAR http://fujirockexpress.net/19/p_1753 Sat, 27 Jul 2019 13:24:46 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1753 この日レッドマーキーのメイン・アクトでトリを飾るのは、カナダのシンガー・ソング・ライター、ダニエル・シーザー。弱冠24歳で、アルバムはグラミー賞にノミネートし、昨年ホワイトステージに出演したカリ・ウチスとの曲“Get You”が大ヒットするなど、R&B界期待の若手である。舞台は豪雨の中、やや浸水気味のレッドマーキー。たまたま休んでいる人も、彼を目当てで待っていた人たちも、しっとりと耳を傾ける先は、まぎれもなく彼だった。

1曲目は、“Cianide”。なめらかな地声と、優しく包み込んでくれるようなファルセットに、早くも歓声が上がる。“Love Again”は、地響きのような低音と艶めいた歌声が絡み合い、想像以上にセクシーで踊れる曲に仕上がっていた。最初のドラムの音だけで大歓声の“Japanese Denim”とか、ダニエル自ら鳴らすアコギの乾いた音がこだまする“Complexties”などで途中何度か、雨が止んだかと錯覚するくらいの静寂を感じた。でも、レッドマーキーの出口をみるとそんなこともなくて、とても不思議だ。彼の歌声に耳をすますと、ほかの世界をシャットアウトしてしまうくらい、ぐいぐいとその世界に引き込まれるのだろうか。

演奏中、スクリーンには終始「DANIEL CAESAR」の文字と、戦争、砂漠、子供、女性などの映像がとめどなく流れていた。「Freudian」のジャケットにも登場する、ブルガリアの「友愛の塚」(戦闘追悼碑)を思わせる、力強くももの悲しい主張。トップアーティストであっても、どこか憂いを帯びた彼の眼差し。それは「CASE STUDY01」で語られる、実家の教会を抜け出したエピソードの傷跡なのかもしれない。

みんなが待ちに待っていた“Get You”も披露するなど、あっという間の13曲。最新のヒップホップ+R&Bを鳴らすトラックの数々に、祈りと悲しみが詰まった彼の優しい歌声がじんわりと響く。大雨で弱った私たちの心からの支えは今、彼だけだ。

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ALVVAYS http://fujirockexpress.net/19/p_1754 Sat, 27 Jul 2019 12:39:03 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1754 ALVVAYS(オールウェイズ)のライヴを初めて観たとき、「おれの好きな要素だけでできているバンドだ!」と感激した。声、メロディ、サウンド全て、ギターポップが好きだった者にとっては好きになることしかできないバンドである。

ヴォーカル&ギターのモリー・ランキン。甘く伸びやかでよく通る声はそれだけで才能だ。その声でもってポップで印象的なメロディを歌われると、心を射抜かれしまう。キーボードのケリー・マクラーレンは眼鏡っこで黙々とキーを押さえる。萌える。アレック・オハンリーによるギターはギターポップ好きど真ん中の音をだす。ときに軽やかに、ときにシューゲイザー的に弦をかきむしる。ブライアン・マーフィーのベース、シェリダン・ライリーのドラムはヴォーカルとギターを生かすために徹したプレイをする。ドラムはたまに「ダカダカダカダカ!」と入れるフィルインが少々重くしたオルタナ版森高千里というか、このタイミングで入れたら気持ちいいー!を実践している。

レッドマーキーは雨もあるだろうけど人がいっぱいであまり先に進めなかった。登場時から歓声が上がって、フジロックが歓迎していることをバンドに伝える。まずは“Hey”からライヴはスタートする。ステージ背後には白地に黒で「ALVVAYS」という文字が映しだされていた。照明は背後から当てられることが多く、全体的に暗いので顔がよくみえなかった。演奏はびっくりするくらい生き生きとしていて、音が躍動していた。“Adult Diversion”に湧き上がる歓喜の声。曲によってはフロアの人たちの手が上がり、満員のレッドマーキーは夢見心地な時間に浸っていた。選曲は2枚のアルバム、特に2nd『ANTISOCIALITES』中心に、ザ・ブリーダーズ“Divine Hammer”のカヴァーも演奏する。

途中アレックが「リードヴォーカリストが誕生日なんだ」というと「52歳よ、ベンジャミン・バトン(老人として生まれ、年を経るごとに若くなる男の小説/映画の主人公)なの」とモリーは冗談で返し、会場を和ませた。

この日のハイライトは“Archie, Marry Me”からラストにかけてだろう。レッドマーキーの外が過酷な状況になっているので、なおさら軽やかに駆け抜けたり、フワフワ浮かんだり、キレイで夢のような時間はいつまでも続いてほしいと思った。

セットリスト
Hey
Adult Diversion
In Undertow
Plimsoll Punks
Lollipop
Not My Baby
Interlude
Forget About Life
Your Type
Ones Who Love You
Divine Hammer
Atop a Cake
Echolalia
Archie, Marry Me
Dreams Tonite
Saved by a Waif
Party Police
Next of Kin

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DYGL http://fujirockexpress.net/19/p_1755 Sat, 27 Jul 2019 10:39:19 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1755 フジロック2017以来、2年ぶりの出演である。そのときも同じレッドマーキーだった。その間にバンドはイギリスに拠点を移して活動、新しいアルバムを出して苗場に戻ってきた。

その2年という時間はバンドを成長させたとはっきりとわかるものだった。その姿を観ようとレッドマーキーはほぼ満員に近い人たちが集まっていた。もちろん、雨が激しかったということもある。

背後のスクリーンには、新しいアルバム『Songs of Innocence & Experience』のジャケットが映されている。バンドはギター&ヴォーカルのAkiyamaを中心に、ギターのShimonaka、ベースのKachi、ドラムスのKamotoという編成。まずは“Hard To Love”で小気味よく始まる。2年前の初出場時と比べ、堂々としていて、音にも迷いがない力強さがある。新しいアルバムからの“Bad Kicks”を始める前に「音楽を聴き始めたとき、音楽だけが自分のことをわかってくれる気持ち」を曲にしたと語る。フェスで「みんなと一緒に観る」、音楽を「SNSとかでシェアする」と体験を共有する機会が増えているなか、孤独に音楽と向き合った経験を持つ人も減っていくかもしれないけど、ラジオにしてもウォークマンなどにしても音楽はまず一人で聴くものだった世代にとって痛いくらいわかる話であった。

レゲエの“Boys On TV”、スローで重たい“An Ordinary Love”と中盤は勢いを貯めて、後半で定番曲“Waste of Time”や“Come Together”の爆発力につながったのである。特に“Come Together”がソリッドで荒々しくなり、曲の魅力がさらに増したのであった。

「今の日本(社会)をみて思うこと」を歌にしたと語った“Don’t You Wanna Dance In This Heaven?”、そして“Don’t Know Where It Is”で締めくくる。バンドにとって2年で吸収したものを中間報告にしたようなステージだった。定期的にフジロックでみて成長ぶりを確認したいバンドである。

セットリスト
Hard To Love
Let It Sway
Spit It Out
Bad Kicks
Slizzard
Boys On TV
An Ordinary Love
A Paper Dream
As She Knows
Waste of Time
Nashville
Come Together
Don’t You Wanna Dance In This Heaven?
Don’t Know Where It Is

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JAY SOM http://fujirockexpress.net/19/p_1756 Sat, 27 Jul 2019 06:32:51 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1756 レッドマーキーに入ったころ、それまで小雨で済んでいたけど、本降りになった。雨が降ると混雑するのがレッドマーキーの常で、かなりの人がメリーナ・ドゥテルテ率いるJAY SOMの登場を待つことになった。出演予定時間に特にSEもなく現れる。まずは“Baybee”でライヴがスタートした。メリーナがステージ中央でギター&ヴォーカル、サポートするギター、ベース、ドラムスの計4人編成だ。オルタナ的なギターがよく響き、演奏陣がしっかりサポートしているのでリズムも重たく手応えがある。

ステージ背後のスクリーンには、今度発売されるアルバム『Anak Ko』のジャケットが映しだされている。メリーナは(遠目からは)白い帽子を被り眼鏡をかけていて、全体的な雰囲気は、西海岸の学生といったものである。音がオルタナ的な装いだけれども、歌メロを取りだして今どきの打ち込みっぽいアレンジを施せば、メインストリームで通用しそうなポップソングになりそうなところも彼女の強みである。特に“The Bus Song”を演奏しているときに、この曲を今のR&Bみたいなアレンジにしたらおしゃれになるんじゃないだろうかと思った。この曲でメリーナは曲の途中で演奏を止めて「フジロック! フジロック!」と煽る。

最後の曲となった“Pirouette”はサイケデリックでシューゲイザーなギターが長い時間響き、そのクレイジーなやりたい放題も含めて、オルタナの面目躍如である。できればこういうのをもっと観たかった。雨もそれに合わせて激しくなる。メリーナは「See you next year」と挨拶したので来年は何かあるのかな? 今後に期待を持たせるライヴだった。

セットリスト
Baybee
Ghost
Tederness
Peace out
Superbike
Our Red Door
Nighttime Drive
The Bus Song
Pirouette

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