“古川喜隆” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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JAMES BLAKE http://fujirockexpress.net/19/p_1740 Sun, 28 Jul 2019 14:45:13 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1740 人間とは長い人生において、あらゆる経験をして成長する生き物である──。

昨年30歳を迎えたジェイムス・ブレイクは20代の間にあらゆる辛い体験をしてきた。失恋、睡眠障害、うつ…そして孤独。しかし、彼はそれらを乗り越え確実な成長を遂げてきた。そのことはこれまでに彼がリリースしてきたアルバムを聴けば一目瞭然だ。特に新作『Assume Form』は“他者を受け入れる”ことにより完成した、彼にとって新しい試みが詰まったアルバムである。このアルバムは「愛」について歌われていて、それまで内省的だった歌詞やサウンドらと比べ、明らかに温かく穏やかで開放的なアルバムになっている。その要因となったのは、制作を共に進めたマウント・キンビーのドミニク・メイカーをはじめ、アメリカのラッパー、トラヴィス・スコットや、アメリカのシンガー・ソングライター、モーゼス・サムニーらコラボレーターたちの存在があったことが大きい。ジェイムスは彼ら他者を受け入れることによって、自らに開けた心とフィーリングをもたらした。このアルバムでの成長がどうライブに反映されるのか?この日のステージに対する興味はそこに尽きた。

ライブ1曲めの新曲“Assume Form”はそんな今の彼のステータスを歌っている曲だ。優しくそして開放的なピアノやストリングス(サンプリング)のサウンドがホワイトステージの空間に広がっていく。新作に収録されているゲスト・シンガー/ラッパーを招いた曲では、飽きさせない創意工夫が施されていた。トラヴィス・スコットが参加した“Mile High”、ラテン・ポップの歌姫ロザリアが参加した“Barefoot In The Park”では、彼らの声の存在感を引き出すため、それがクリアに聞こえるようなサウンド・バランスを取っていた。その効果か”Barefoot In The Park”では曲中のジェイムスとのヴォーカルの掛け合いがまるでMVのワンシーンを想起させた。さらに、アウトキャストのアンドレ3000が参加した“Where’s The Catch”では、ヴォーカル・セクションとラップ・セクションを完全に分けることにより、メロディとラップそれぞれが引き立つような、いわゆる今風なアレンジになっていて、ジェイムスの曲の特徴を考えるととても新鮮だ。

一方で旧作からの曲にも新作の開かれたマインドは大きな影響をもたらしていた。例えば“Life Round Here”では曲に明るいエッセンスを入れるためメジャー・コードのシンセフレーズを入れていたり、ラストの“The Wilhelm Scream”ではパキッとしたオリジナルのアレンジに、バンドメンバーである盟友エアヘッドによるギターの生音リフを重ねることで有機感を表現していたり。そしてエレクトロ・サウンドな“Klavierwerke”や“Voyeur”に関しては穏やかな曲の間にセットすることによって、新曲の柔らかく温かいイメージとこれまで以上のメリハリをつけるための大きな役割を果たしていた。そんな変化を感じ取ったオーディエンスはその都度対応し、時に体を揺らし、時に踊り、ジェイムス・ブレイクのライブを心から堪能しているようだった。

ライブはアンコールなしの計12曲、約1時間10分で幕を閉じた。当初ジェイムスのステージは1時間半で設定されていたため、観客からは早い終演を惜しむ声が多く上がっていたが、今回のライブは間違いなく彼の来日ライブの中でベストアクトだった。その要因となったのは、新曲から滲み出ていたオープン・マインドであり、旧作にアドオンされたニュアンスレベルの穏やかさであり、明確なネクスト・フェーズに彼が突入したことを感じられたことの喜びである。

冒頭にも書いたように、ジェイムスはなかなか抜け出せない闇の中でもがいてきた。しかし、そこからなかなか抜け出せなかったとしても、いつか絶対に光のある場所へ抜け出すことができる。そのことを、彼はこれまで出してきた4枚のアルバムを通して、精神的時間軸で体現し表現してきたことは最新作であり今日のステージが証明していた。だから、彼は今「Don’t miss it like I did.(僕のように人生を見失っては駄目だ)」と静かにピアノに乗せて歌うのである。

<セットリスト>
intro: Forword (feat. James Blake)
01: Assume Form
02: Life Round Here
03: Timeless
04: Mile High (feat. Travis Scott & Metro Boomin)
05: Barefoot In The Park (feat. Rosalía)
06: Limit To Your Love (Feist cover)
07: Klavierwerke
08: Where’s The Catch (feat. André 3000)
09: Voyeur
10: Retrograde
11: Don’t Miss It
12: The Wilhelm Scream


【追記】
7月29日の午後、ジェイムス・ブレイクのインスタグラム・アカウントにて、YouTube生配信の中止及び当日のセットリストについての説明アナウンスがあった。それによると「喉の違和感があり、これ以上負担をかけないためにセットの変更した」「本番開始直前の機材トラブルにより、フルプロダクションでのパフォーマンスが実現できない状況になった」とのこと。彼の一日も早い回復を願っています。

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VINCE STAPLES http://fujirockexpress.net/19/p_1741 Sun, 28 Jul 2019 12:33:58 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1741 この日のホワイトステージは深遠なトラック上でラップするKOHHからVINCE STAPLES、そしてVINCEがフィーチャリングでJAMES BLAKEの“Timeless“に参加しているためにひと連なりのストーリーを感じて、続けて見た人も多いだろう。様々なスロットに時代を感じる今年のフジロックだが、2019年らしさを一つ象徴しているのが最終日のホワイトステージという気がする。

いわゆるダーティなラッパーとは真逆なメンタリティで、Odd Futureに見出されて以降、本国アメリカでグランジラップよりは日常的で、でも嘘のない表現が求められていたところ、ラップの内容しかり、ミニマルなベースミュージックやエレクトロに接近したトラックもリリックとの親和性が高く、評価を高めてきた彼。日本でも大雑把に言えば、ケンドリック以降、チャンス・ザ・ラッパーやタイラー・ザ・クリエーター、フランク・オーシャンら、個性が際立つラッパーをチェックしてきたリスナーならもちろん気になる存在だろう。無論、ヒップホップ・プロパーはいうに及ばず。

定刻にホワイトステージが暗転し、背景に写し出されたのは少し前までのアメリカを象徴する、8分割されたテレビ画面だ。億万長者クイズ、アニメ、料理番組、音楽番組などがランダムにコラージュされている。中にはVINCEを主役にしたアニメなども仕込まれ、なかなか周到だ。そこにマリファナの葉のバックプリントのロンTに細いパンツ、スニーカー姿のVINCEがスキップするように現れた。

冒頭は“FUN!”や“Run the Bands“といった『FM』からのトラックにのせ、自由にラップに沿ったアクションで一人きりのステージを縦横無尽に動いたり、顎に手を当てたり、昨夜、SIAで見たパフォーマンスを少し思い出させるような強迫観念的な謎の動きを見せる。この人、手首の柔らかさが印象的で、突然爆発したようにジャンプしたり、語り部のようにステージ前方に腰掛けラップしたり、音楽性同様、パフォーマンスも特定の誰かからの影響が見て取れない。それが今の若い世代には新鮮でクールに見えるのだろう。十二分に存在が突出した人だが、カリスマがあるかというと、それとも違う。フレンドリーかというとそれも違う。日本でライブができることを喜んではいたが、笑顔は一瞬。真剣なのか、あらゆることに醒めているのか、自分が巻き起こしたことも冷静に見つめている、そんな人なのだ。

エレクトロやベースミュージックといった音像にラップを乗せていくスタイルが定着した『Big Fish Theory』からの“Big Fish“や“Rain Come Down”などは非常に演劇的。中盤から後半には、淡々とした調子でオーディエンスを煽り、大きなサークルを作らせてはモッシュを促していた。VINCEの求めていることに即リアクションできるという意味で、ホワイトステージの前方はちょうど良いスケール感だったようで、何度もサークルを作り、もみくちゃになっていた。ただ、自分で指示しながら虚無な眼差しを向けるVINCEは最後まで何を考えているのかわからなかったが。

しかし思えば、音楽の話は聞かれず、儲けてるかどうかばかり聞かれるインタビューのバカバカしさに辟易し、そんなに人の音楽は聴かないとまでいうVINCE STAPLESというアーティストにとって大事なのは、くさい言い方をすれば彼にとってのリアル、それは間違い無いだろう。そう考えるとテレビ画面の演出も皮肉が効いている。

旧来型じゃない、ヒップホップのセオリーにもハマらない、ブラックのミュージシャンの規範になるようなことを別にしているわけじゃない。グランジラップのようなブームとも違う。彼自身は運動神経最高なオタクのような相反する資質を持ち合わせているように感じたが、それって世界中の最新のラップカルチャーに触れているユースの「なりたい人間」なのではないか。抜群の音響と圧倒的な演者一人がいれば、それでいい。そんなアクトを終えた彼は深々をお辞儀し、素早くステージを後にした。新しい……。VINCE STAPLESは誰にも似ていない。

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KOHH http://fujirockexpress.net/19/p_1742 Sun, 28 Jul 2019 10:29:19 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1742 2017年の圧巻のパフォーマンスが記憶に新しく、多くの人が押し寄せるホワイトステージ。DJが静かに登場し、黒く、炭が溶け出したかのような映像が背後に映し出される。そして、壮大な音楽が大音量で流れ、気だるそうに登場するKOHH。シルバーの大きなリングがたくさん埋め込まれ、水玉模様のようなセットアップにTシャツという、いで立ちだった。

1曲目は、“ひとつ”。裏声がきれいに伸び、観客たちは指を「1」の形にして掲げる。曲の終盤に真っ直ぐ前を見つめたかと思えば、一瞬、KOHHがにやっと笑みを見せた。その直後、ここから一気に加速していくかのように、どこまでもヘビーな音が体内にまで響く。“Imma Do it”だ。ステージの端から端までを歩き、ときにしゃがみながら、強気の姿勢を一切崩すことはない。大音量かつ重すぎるサウンドに、まるで絶叫にも近いKOHHの声に鼓膜や胸が揺さぶられ、まるで無抵抗なままぶん殴られているかのようだった。

「今日の天気は暑くもない。寒くもない。だから……薬物の曲をやります」と始まったのは、“Drugs”。今回のフジロックで薬物に関する曲をやるのは、何かの意図を感じずにはいられない。KOHHといえば、自身の過去をリリックに落としていることでも知られている。薬物を吸わされたリアリティの滲み出る歌詞に加え、背後に映し出されているのは薬物使用時をイメージしたのだろうか、物体が徐々に色を持ち歪んでいく映像に、思わずクラっとしてしまう。
また、このときスクリーンに映し出された映像は、2台のカメラが撮影をしたものを、リアルタイムでCGなどの加工を重ねたものだった。今見ているものが本物で現実なのはわかっているのに、ずっと眺めていると、バーチャルの世界に無理やり引きずり込まれそうになる。

他者から向けられた賞賛や好意をすべて否定する“Hate me”をゆっくりとアカペラで歌ったあとは、“Leave Me Alone”。相変わらず、押しつぶされそうになるほどの重低音に、声質を変化させたいくつもの叫びが重なる。KOHHという個人から溢れ出る膨大な感情とそこに混ざり合った絶望的なまでの孤独を感じ、思わず鳥肌が立つ。

“Mind Trippin’”。そして、言葉だけではなく身振り手振りに感情を込められた“ロープ”が終わると、あっさりとステージを後にするKOHH。終盤にのみ降ってきた冷たい雨は、まるでこのパフォーマンスの演出でもあるかのようだった。
全編を通じて、KOHHの視界に観客の姿が入ることは、それほど多くはなかったように思う。背後にDJを従えていたものの、大きなホワイトステージにたった1人で立つ堂々たる姿は、周囲の人間なんてまるで関係がない。どこまでも孤独であり、ライブやパフォーマンスというよりも表現を通じて自己との対峙を見せられているかのようだった。本当なら、目を逸らしたかった。なんだか、少しショックな体験であり、見る者の力を奪うかのような50分間だった。

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HYUKOH http://fujirockexpress.net/19/p_1743 Sun, 28 Jul 2019 08:28:06 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1743 今年のフジロックはアジアルーツのアーティストが熱いという実感は初日のMITSKIや、ライブとDJを行うKHRUANGBIN、YAEJIらへの注目度の高さで予感していた。HYUKOHももはや韓国を代表するロックバンドという形容では収まりきれないワールドワイドな活躍で知られるバンドだ。

楽曲の良さと演奏そのもので見せるライブはサービス抜きの質実剛健なもの。以前、2017年にnever young beach(以下、ネバヤン)をゲストアクトに行われた来日公演の際に驚いたのだが、K-POP全般を愛するファンはフジロックでもやはり散見された。というか、彼女たちのアンテナの張り方は実に幅広い。が、今回は作品も浸透し、それこそネバヤンの安部勇磨が共演以降、親しくなり、衝撃を受けたという新曲“LOVE YA!”をラジオで紹介したこともあり、奇しくもネバヤンと同日出演となったこの日、ホワイトステージに確認しに足を運んだ人も多かっただろう。

ブルーのセットアップを着たオ・ヒョク(Vo/Gt)は最後までサングラスを外さず、シャイな感じで感謝を述べるにとどまった。奇抜なシルバーのパンツにパープルのノースリーブというイム・ヒョンジェ(Gt)、ひたすらパワーヒットする上裸のイ・インウ(Dr)、デビュー前のバンドマンのようないでたちのイム・ドンゴン(Ba)と、今日は点でバラバラに好きなものを着ている感じだ。

しかし音を出せば軍靴の響きのようなSEに導かれ、ミニマルにタイトな音を重ねてソリッドなアンサンブルを聴かせる“Wanli”、ポストパンクなタイトなドラムが焦燥を掻き立てる“Citizen Kane”などで、バンドの骨太さを伝える。しかもオ・ヒョクのボーカルは特段張上げるでもなく、よく通る声質で、厳選した音に似合う表情豊かなものなのがこのバンド最大の魅力だ。

アジアの都市をタイトルに冠した曲がいくつか選曲され、自分たちの地元であるソウルに対してはダイナミックなビートの“Goodbye Seoul”、特徴的な機械的なドラムと、リフに80年代の日本のAOR的なものをにじませる“Tokyo Inn”など、彼らの眼に映るアジアが作品になっていることも興味深い。HYUKOHのフィルターを通したロック、ファンク、ポストパンクなど、比較的ハードな曲は“Settled down”のスリリングで厚みのあるプレイで昇華された印象。一旦はけてアンコールしたわけではないのだが、そのあとはガラリと印象を変えて、この場を一つにするような選曲で届ける。ベースのイム・ドンゴンがアコースティックギターを担当し、親密で素朴な優しいメロディを持つ“Gang Gang Schiele“を4人の息を合わせて鳴らす。特にボーカルのメロディライン、語りかけるようなオ・ヒョクの表現力には耳を済ませてしまう。そして、冒頭の話題にもあった、「ドント・ビー・アフレイド」から始まる、愛だけが溢れる“LOVE YA!”の包容力。ビートルズの時代から変わらない、何か大事なことを伝えたい時のアレンジや構成を持つこの曲。もしかしたらこの曲への思いをオ・ヒョクが語れば、初めて聴く人には感動的だったかもしれないが、それをせずに演奏に託したことは彼やバンドの性格なのだろう。

誰にも頼れないとき、ふと夜中に目が覚めてしまったとき、この“LOVE YA!”という曲に随分助けられた。もちろん彼らの魅力はそれだけじゃないが、世の中には無償の愛、仲間からの愛が存在することを伝えるこの曲は、この日のホワイトステージでもっと響いてよかったと思う。必ず再訪してほしい。

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INTERACTIVO http://fujirockexpress.net/19/p_1744 Sun, 28 Jul 2019 07:02:27 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1744 昨年は別名義も含む6ステージを賑やかなキューバンビートで踊らせたインタラクティーヴォが、今年も苗場の地にやってきた!大将こと日高正博が惚れ込んだキューバのビッグバンドは、昨年のフィールドオブヘブンでのライブを収録した『INTERACTIVO EN VIVO EN FUJI ROCK』をリリースしたことも相まって、「もう一度観たい」と、恋い焦がれていたフジロッカーも多かったに違いない。

前日の木道亭、苗場食堂でもフジロックを賑わせた彼らは、負けじと多数のステージを練り歩く、スタンダップコメディアンのSaku Yanagawaに迎え入れられて、ステージに登場する。昨日とは打って変わって、かんかん照りのホワイトステージ。彼らと一緒に踊るには最高の環境だ!

歓迎ムード全開の中、1曲目の“ALABAO SEA DIOS”から熱いキューバンビートで会場中が踊りだす。このバンドの頭脳、ロベルティコことロベルト・カルカセスのピアノを中心に賑やかす、13人編成のビッグバンドだが、ごちゃごちゃした感じもせず、驚くほどまとまりのあるサウンドを奏でるのが印象的だ。

リラックスしたムードで身体を動かすオーディエンス。後方で座っている人も手を振り上げたり、歩きながら見知らぬ人と手を振り交わしたり、横の友達と競うようにダンスしたりと、とにかく視界に入るすべての人が気分よく踊っている。こんなの最高じゃないか…。

代わる代わるメインボーカルが入れ替わったり、ギターソロ、ピアノソロと目まぐるしく展開したり、観ているだけで楽しい彼らのライブ。「日本語で話してみるよ」と始まった“ANANAOYE”では、日本語混じりの歌詞にハンドクラップが巻き起こり、「あななおいぇー」とコールアンドレスポンス。ボーカルのフランシスコは歌わずに、客席にビデオカメラを向け続ける。なんでもありか。なんだか観光旅行みたいだなと、思わずクスッとしてしまった。

コンガやギロのリズムに乗せて、バイオリンや高速ラップなどいろんな音が縦横無尽に飛び交うホワイトステージ。僕らも、ややこしいことを考えずとも「踊るの楽しいな!」なんて素直な気持ちで、自由に身体を動かしていた。ああ、最高だ!

「フジロック最高!」と口々に喜びをあらわしていた彼らだが、こちらこそインタラクティーヴォ最高!と言いたい。ありがとう。また来年もフジロックで会いたいな!

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BANDA BASSOTTI http://fujirockexpress.net/19/p_1745 Sun, 28 Jul 2019 05:28:56 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1745 昨日までの豪雨が嘘の様に晴れ渡ったフジロック最終日。満を持してホワイトステージに登場するのは、イタリアはローマからやってきた闘う音楽ギルド、バンダ・バソッティだ。開演前から入念にリハをやり、開演10分前になるとスマッシュ代表の大将こと日高正博が登場し、「晴れたね!開演まで後10分あるからみんな友達呼んでくれよ!ローマからやってきてくれてるんだからさ。よろしくな!ありがとう!」と呼びかける。

開演時間になると、ピースマークがでっかく描かれたTシャツを着たFujirockers.org主宰、花房浩一がバンドの紹介役としてステージに登場。「みなさん、こんにちは!知っている人も多いと思うけど、2002年のフジロックには、ジョー・ストラマーがいました。マヌ・チャオもいました。そして、これから登場するバンダ・バソッティもいました。バンドの代表メンバーだったシガロ(故アンジェロ・コンティの愛称)が昨年12月に亡くなりました」と声を詰まらせる。見ると、ドラムセットのところにシガロに捧げるサッカーユニフォームが掲げられている。「彼の魂がここにあります。彼がフジロックの時の思い出を基に“Fuji Rock”という曲を作りました」と、フジロックに集う人たちは戦争なんて無縁の仲間たちだと歌ったその胸を打つ歌詞を語りかけた。「あなたが目の当たりにしているのは現実です。彼らの音楽は政治的です。彼らの音楽は現実を変えるための武器です。でもね、政治のための音楽じゃないんですよ」と言う。バンダ・バソッティはパレスチナ、ニカラグア、エルサルバドルで、現地の人の為に学校や家を建てるなど、ダイレクトな行動を起こしていることでも有名だ。これから登場するバンドは、ただのロックバンドではない雰囲気を場に作り出して「ブラザー&シスターズ、そして同士のバンダ・バソッティ!」とメンバーを呼び込んだ。

“SAVE DONBASS CHILDREN”とドーンと描かれたスクリーンが表示され、バンダ・バソッティの“Asi Es Mi Vida”が流れると、フロアからどでかい「Oi! Oi!」コールが巻き起こる。サイレンが鳴り響き、“The Internationale”をバックに、腕を突き上げたメンバーが「¡No pasarán!」(スペイン語で「奴らを通すな!」の意)と描かれた横断幕を掲げ登場した。

熱さそのままに一発目に繰り出したのは“Piazza Fontana(Luna Rossa)”。想いが込められた歌に胸が熱くなる。続けて“E’ Solo Un Sogno”でフロアは一瞬でスカ天国に。サックス、トローンボーン、トランペットのブラス隊がこれでもかとブロウし、ギターの軽快なカッティングでフロアにスカダンスを次々に生み出していく。

ゆったりしたテンポのレゲエチューン2連発で「踊ってくださーい!」と会場を暖めた後に、激烈パンクチューンの“Avanzo De Cantiere”を落とすものだから、ステージ前方はモッシュが巻き起こるわ、クラウドサーフは飛び出しまくるわでぐちゃぐちゃな状態に。その様を見ていて、不意に涙が流れてきた。集まったみんなが今、この瞬間を存分に楽しんで笑顔でいっぱいの空間。こんな空間がもっともっと共有されれば世界は平和になるのに。

バンダ・バソッティ節満載のパンクチューンはとどまるところを知らない。ハイオク満タンのパンクアティテュードで疾走する。ステージ中央を見やると、の黄色い旗と、チェ・ゲバラの真紅の旗がはためいている。今、ここには銃なんて必要としない音楽と言う名の革命が繰り広げられているのだ。シガロの魂もステージで一緒になって歌っているかのような熱さを伴っている。「オーオーオー」とみんなで歌い、何度もしゃがんでは天に向かって爆発するダンスをかまして最高の時間を共有するのだ。

「ジョー・ストラマーと花房に捧げる!」と投下したのは、ザ・クラッシュの“Revolution Rock”。俺たちは武器を手にせず、音楽を武器として踊って体制に立ち向かうぜ!という熱い気持ちが込められているような胸が熱くなる演奏だった。そのまま軽快なビートで“L’altra Faccia Dell’impero”になだれ込んだ。あ~、終わってほしくないこの時間!最後は反ファシストの讃美歌“Bella Ciao”で拳を突き上げ歌い、「¡No pasarán!」の横断幕と“The Internationale”の再登場とともに締めくくった。オーディエンスから「ありがとうー!」や「Gracias!」といった感謝の歓声が尽きなかった。音楽に込められた想いと主張、音楽が持つ可能性を訴えかけてくるような彼らのステージは、今回のフジロックで体験したどのステージよりも涙腺にくる胸を打つものだった。

“Limited Edition for Fujirockers”と記されたバンダ・バソッティの「Fuji Rock(c/w)Revolution Rock」7インチシングル盤は、フジロッカーズ・ラウンジと岩盤のオフィシャルショップで購入できます。限定100枚しかありません。ぜひ、記念にお買い求めください。

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SANABAGUN. http://fujirockexpress.net/19/p_1746 Sun, 28 Jul 2019 03:27:37 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1746 前日の豪雨によりグリーンステージのエリア後方にできた小川を越えて、ホワイトステージに向かう。開演予定の40分前。ステージ前にはまだ一列ほどの人が並んでいるくらい。ステージには笑いながら楽しそうにサウンドチェックをするSANABAGUN.の姿があった。ほぼフルコーラスで2、3曲を演奏、PAテント前の中央真正面を陣取って聴くそのサウンドは最高だった。サウンドチェックの段階でこれだけ楽しませてくれるとは。本編への期待がさらに高まる。

開演が近づいてきて、人もどんどん増えてきた。そこにロング丈のスーツを身にまとったメンバーたちが現れる。まるでイタリアン・マフィアのようにキメたこの出で立ちは、初めてフジロックのステージを踏むことへの気合いの表れなのかもしれない。「平成生まれのヒップホップ・チーム。これがSANABAGUN.だ味わえー!」と自己紹介がわりに自身のテーマ曲をおみまいする。サックス、トランペットを含む6人のジャズ・グルーヴに、ヴォーカリストとラッパーが織り成すオリジナリティ溢れるリリックが融合した、新世代のストリート・ミュージックがホワイトに鳴り響いた。

岩間が観客の上空を指差し、高岩が観客に背を向けて立つ。しばらくの静寂の後、突如始まった岩間のボイスパーカッションを合図に“B-BOP”へとなだれこんだ。岩間がロングジャケットの裾を翻しながら一回転キックし始まった“居酒屋JAZZ”。ステージを自由に駆け回り、ストリート仕込みの躍動感あるパフォーマンスを繰り広げる。

「フジロック、初めまして!みんなが最高のフジロック最終日を過ごせるように、これだけは言わしてくれ…。『おはようございます!』」「路上から上がってきて、フジロックに来れて…、最高に『おはようございます!』」との掛け合いMCで、会場は爆笑の渦に。MCでも持っていくのはズルい…!

「俺らの後に続いてくれ」とコール&レスポンスをし、『フジロック』の声がホワイトステージにこだましてから“人間”に突入。「休みは働く為のものものじゃない」の歌詞に深く頷きながら、今ここで彼らの音楽に身を任せていられることに幸せを感じる。

そして「3・2・1、行くぞ、フジロック!」のカウントとともに、ラストの“FLASH!”に突入。突き抜けるようなスカの音が気持ちいい。オーディエンスと高速のハンド・クラップを繰り出す。「リリックもデートも適当な俺が唯一約束するとすれば 苗場で踊った時間かな」と岩間が歌詞を一部変えて歌えば、オーディエンスは絶叫。高岩がステージ下にマイクを落としてしまうほどに、息もつかせぬ勢いあるパフォーマンスで締めくくった。

ステージ終了後、メンバーが一列に整列。「集まってくれてありがとうございます。また絶対にこれより大きいステージで帰ってくるんで、応援お願いします! ありがとうございました、礼!」とオーディエンスに深々とお辞儀をして感謝するとともに決意を語った。今日彼らのステージを初めて観たという人たちさえも熱狂の渦に巻き込む圧倒的なステージングを披露したSANAGAGUN.。次に会うときも、最高に踊れる苗場での時間を約束してくれるはずだ。

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SIA http://fujirockexpress.net/19/p_1713 Sat, 27 Jul 2019 13:37:14 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1713 おそらくグリーンステージに集まった3〜4万人がアンコールの後、終演した瞬間「ほー!」とか「はー!」と声を発したことはフジロック23年の歴史の中でもなかったんじゃないだろうか。その声の種類は単純にため息や種明かしをされた驚きとも言えない、もしくはその両方の気持ちがこもっているとも言える。単に演劇的なパフォーマンスであるだけでなく、曲とSIAの歌唱にテンションは上がっても、どこか物悲しさや息苦しさが残る。いわゆるライブパフォーマンスとしての演者が放つカタルシスとは異質なアートフォーム。立ち尽くしていたのはSIA本人だけじゃなく、ほとんどのオーディエンスもそうだったのではないだろうか。

ミュージックビデオである程度、予想できたとは言え、オープニングでのSIAのドレスのスカート部分が分解し、マディー・ジーグラーが「誕生」したかのような演出は、マディーを分身としてステージに放つ儀式のように見え、鳥肌が立った。そこからのマディーのパフォーマンスは、あまりにもスキルと表現力が高い。しかしそれはビジョンに映っているものを見ているので、ステージ上とは別物なのでは?と疑ってしまうほどだった。しかしパフォーマーもすごいけれど、1時間半、直立で歌唱だけに専念するSIAも生身の人間と思えない集中力だ。その場に存在していることは、紛うことのない事実だが、リズムをとったり身振りをしたりしないSIAは目に見える虚構のようだ。

パフォーマーの表現と曲の相乗効果は、いずれも高い次元で化学反応を起こしたが、こと強迫観念に関する部分では“Reaper”でのマディーの不安発作的な表情と動きにまず圧倒された。他に男性のパフォーマーが3人、女性がもう一人、入れ替わりで曲の世界観を演じていく。男性、女性それぞれの葛藤を“Big Girls Cry”などで描いた上で、男女間の残酷なまでのすれ違いを、パフォーマンスで、より凶暴で攻撃的なものに昇華していく。ステージ作品としては納得するけれど、迫真という言葉以外、どう表していいのか分からないパフォーマンスが続く。自身が前面に立たないことを選んだSIAは、曲のメッセージを伝えるために、より強固なショーを作り上げてきたのだなと、作品への自信、ひいては彼女が経験してきたことの重さを知る。高次元のアートが作られた背景にある構造の恐ろしさ。

曲間のつなぎはライブ映像からすでにある映像が接続され、さらにライブにつながっていく。ライブでありパフォーマンスを途切れさせないための手法だが、最後の最後に「虚構を完成させるためにそこまでやるか」と、薄ら寒いような、同時にユーモアを感じるような場面を迎える。曲間のつなぎの演出は最終的にエンディングで回収されていく。

人間関係、特に男女関係の一筋縄でいかない表現は対立と融和、そのまた次の瞬間にはすぐまた裏切り、そして抱擁……。動物的なアクションに演出されているが、人間の中の暴走する本能を目の当たりにするようで、熱を帯びていくSIAのボーカルには歓声が上がりながら、ただカタルシスに浸ることは難しい。逆に男女をパンダとウサギの被り物にし置き換え、仲違いしたり、一人でも歩いたり、二人揃って歩いたり、距離ができたりする演出に感情移入してしまった。傷つけ合うほどの感情を持つ者同士にしか築けない関係。この演出で感情の防波堤が壊れた人は多かったのではないだろうか。

繰り出される曲は世界的なヒットチューンばかりなのだが、今、目の前にしているコンテンポラリー・アートとでも言うべきパフォーマンスに簡単に騒げない。しかし流石に“Chandelier”ともなると、イントロで歓声が上がる。もちろんモッシュピットはさらに熱狂的なのだろう。自室のベッドと机を小道具に、壊れてしまいそうな精神状態を圧倒的な体力と表現力でマディーがイメージを増幅させて見せる。ここまで登場してきた男女が勢ぞろいした本編ラストの“The Greatest”。ここでも力関係を思わせるパフォーマンスで、不穏なまま終了するという、SIAらしい世界観で完結。さらにはライブでの役柄と言うべき登場人物が、別撮りの映像で挨拶するように流されたのは周到だった。

さて、曲間のつなぎの映像と終演後の映像の関係だが、ライブ終了後のマディーを追うカメラが捉えているのは「今ここ」じゃないことに気づく。最後に楽屋にいる後ろ姿のSIAを捉えたところでショーは完結。グリーンステージにいる約4万人がため息とも納得とも言えるリアクションをしたのはある意味、当然だったのかもしれない。

これぞSIAにしかできないライブという人もいれば、これはミュージックビデオの再現だという人もいるだろう。革新的だという人がいる一方、ライブってこういうことではないだろうという人もいるだろう。意見が分かれるほど、これまでにない問いかけをしてくれたことだけは間違いない。土砂降りの中、離脱する人が少なかったことを鑑みるに、ほとんどの人がSIAの術中にはまっていたのだ。

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キネマズ http://fujirockexpress.net/19/p_4976 Sat, 27 Jul 2019 09:26:30 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=4976 今年もZIP-FM公開録音にキネマズが登場! 激しい雨もちょうど止んだ合間に、ミニライブを披露してくれました。このあともゲストを招いたトークライブを予定しています。雨足が弱くなることを祈りましょう!

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