“坂本泉” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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Special Guest:G&G Miller Orchestra feat.トータス松本 http://fujirockexpress.net/19/p_1725 Sun, 28 Jul 2019 21:41:06 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1725 最終日の午前0時。いよいよ今年のフジロックが終わる時間が近づいてきた。2016年にフジロック20周年を記念して結成されて以来、グリーンステージ締めの顔となった総勢18名の混成ビッグバンド、ジー・アンド・ジー・ミラー・オーケストラの登場だ。

今年は日本のソウル界が誇るシンガー、トータス松本をゲストに迎え、スイングジャズ界の巨匠、故グレン・ミラーが世に送り出した名曲と国内外の名曲を織り交ぜたソウルフルなセットで賑やかに締めくくる。

暗転したステージに、ロケットが打ち上がり、人類が初めて月面を歩いたとされる映像が流れる。「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」というニール・アームストロングのあまりにも有名な言葉を受けて、ジャズのスタンダード・ナンバー“フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン”で幕を開ける。フランク・シナトラがカバーして爆発的にヒットしたが、元々は作詞・作曲家のバート・ハワードによって制作された楽曲だ。

そして今夜のゲスト、トータス松本が意気揚々と登場する。光沢のある水色のスーツに、濃いめの柄シャツにピンクのネクタイを合わせ、胸ポケットには黄色のチーフを挿れている。なんともイカした着こなしだ。マーヴィン・ゲイの“スタバーン・カインド・オブ・フェロー”、オーティス・レディングの“ハード・トゥ・ハンドル”を立て続けに熱唱。オリジナルよりも早めにテンポをアレンジしたゴキゲンでファンキーな曲調がよく似合う。ローリング・ストーンズの“サティスファクション”を歌えば、「苗場!苗場!」というシャウトに歓声が上がる。

一度ステージを後にし、再び現れたトータスが歌ったのはジェイムズ・ブラウンの“イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド”。先ほどまでの雰囲気とは一変して、体の奥底からこみ上げてくる感情を振り絞るように、しっとりと力強く歌い上げる。観客から「最高ー!」と賛辞が投げ掛けられ、トータスからくしゃっとした笑みがこぼれた。明るい曲調の中で深刻な社会問題を歌ったメッセージソング“ワッツ・ゴーイング・オン”と、グルーヴィな“アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイアー”を挟んで、「最後にバコンと歌わして、おれに! 歌うぞ、苗場!!」とトータスが歌ったのは“ツイスティング・ザ・ナイト・アウェイ”。完全燃焼しようとするように、ステージ前を中心にツイストダンスを踊る人たちの熱気が溢れた。

クリス・ペプラーが登場してメンバーを一人ひとり紹介して、「来年またここで会いましょう!」と会場に語りかけると、いよいよ今年のフジロックが終わってしまうことを痛感してさみしさが一気にこみ上げてくる。

最後は“ムーンライト・セレナーデ”でお別れ。昨年もこの曲が最後に演奏されたことを思い出し、まるで卒業式で聴く『蛍の光』のような気分になってくる。あいにくと雲に覆われた空に月は見えなかったが、ステージ中央のミラーボールが月のように輝き、周囲に星を撒き散らしているような美しい光景が広がっていた。

今年もたくさんの出会いや感動と出会えた3日間だった。始まりがあれば終わりがあるように、終わりがあれば始まりもある。さあ、今ここから、来年のフジロックまでのカウントダウンを始めよう。

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JASON MRAZ http://fujirockexpress.net/19/p_1720 Sun, 28 Jul 2019 14:01:55 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1720 最終日、夕暮れどきのグリーンステージには、ジェイソン・ムラーズが作り出した、なんとも愛と幸福感に満ち溢れた空間が広がっていた。

ポジティヴなメッセージとソウルフルなフォーク・ポップ・サウンドで世界中のオーディエンスを魅了、これまでグラミー賞を複数受賞してきたシンガーソングライターのジェイソン・ムラーズ。ステージ中央に大きく掲げられた「グッド・ヴァイブス」の文字を背負って、バンドメンバーに続いてジェイソンが登場すると、さっきまで止んでいた雨がしとしとと降り始めた。

ジェイソンが「一緒に深呼吸しよう!」と提案して、みんなで二回深呼吸。「思い出して。なんでここにきたのかを。山の空気…、自然を感じよう」と、その声に合わせて感覚を研ぎ澄ませてみる。苗場の澄んだ空気の中、芝の茂る大地の上に立ち、しとしとと降る雨に打たれている自分がいる。そうしてジェイソンが歌い始めたのは“レッツ・シー・ホワット・ザ・ナイト・キャン・ドゥ”。オーガニックなサウンドに、やさしい歌声がグリーンステージに響き渡る。自然との繋がりを感じながら、今、ここでジェイソンの音楽を聴くことができるという喜びを噛み締めた。正直、始まる前までは「やっぱり晴れた空の下で聴きたいな」と思っていた自分だったが、「どんな天気でも心には太陽が出るよ」という言葉にありのままの自然を受け入れて楽しもうと思い直した。

アーティストであると同時に農園を営んでいる彼は、何よりも世界の民であることに身を捧げ、自然や人間への愛や感謝を歌う。「僕のことを頼っていいんだよ」「どこに行こうとも君はいつでも家に帰ってこられるんだ」などといった歌詞にはもちろん、「みんな自分の身体に触ってみて。この身体は神の祝福なんだよ」など、発する言葉の端々にもその思いは宿っている。それでいて「マイクはどこー?」などとミュージカルのように歌いながらMCをしたり、ふと舌を出しておどけて見せたりと、茶目っ気も存分に見せてくれたジェイソン。心がぐっと鷲掴みにされてしまった。

今回は、共同で楽曲制作するなど長年交流のあるレイニング・ジェーン(モナ・タヴァコリ、チャスカ・ポッター、マイ・ブルームフィールド、ベッキー・ゲブハート)とステージを共有。ジェイソンとレイニング・ジェーンの4人が同じ動きをしたコミカルなダンスをすれば、思わず笑顔になってしまう。“アンロンリー”では、冒頭にジャクソン5の“アイ・ウォント・ユー・バック”フレーズを流し、間奏では5人でジャクソン5を彷彿とさせるダンスを披露。みんなで力を合わせてTシャツをパチンコ(ゴム銃)で客席に発射したりとどこまでも楽しませてくれる。レイニング・ジェーンは全員がマルチミュージシャンで、メンバーたちが曲によって様々な楽器を演奏してジェイソンとの掛け合いを披露。チャスカ・ポッターはジェイソンと“ラッキー”をしっとりと歌い上げ、“93ミリオンマイルズ”では、アコースティックと4人の優しいコーラスが会場を包みこんだ。

ギター、パーカッション、コーラス、チェロ、ベース、ドラム、キーボードという編成で、そのオーガニックなサウンドを支えていた。ステージ上のメンバーは全員お揃いの衣装で、バンドメンバーはそれぞれ黄、青、水色、緑、黒、黄緑、白の、そしてジェイソンは黒地にカラフルな色の入ったつなぎを着用。まるで「バンドメンバーがいてこそ自分がある」とでもいうようで、ジェイソンとバンドメンバーとの強い繋がりを感じる。

ジェイソン最大のヒット曲である“ユアーズ”では、会場からのシンガロングがこだました。周りを見渡してみれば、グリーンステージを満たすたくさんの人たち、その誰もが笑顔を浮かべていた。会場にいるたくさんの人たちとこの空間を共有できたことを心から嬉しく思う。

「どんな夢を持っていても、その夢を持ち続けていて。“オール・ユー・キャン・ハヴ”だから」と、“ハヴ・イット・オール”で締めくくる。“ハヴ・イット・オール”は、ジェイソンがミャンマーへの旅の最中に仏教僧にかけてもらった祈りの言葉から着想を得た楽曲だという。ラップソングの形をとって祈りの言葉が降り注ぎ、身体と心にじわじわとしみ込んでいく。ああ、なんて温かい気持ちに満たされたステージなんだろう。メンバーたちがステージを後にした後も、その余韻はグリーンステージを満たしていた。

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Superfly http://fujirockexpress.net/19/p_1721 Sun, 28 Jul 2019 11:27:21 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1721 2007年のデビュー当初から、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンス、オリジナリティ溢れる音楽性が大きな注目を集めてきたSuperfly。2010年の初出演から時を経て、今年再びグリーンステージに立つ。

最初の曲『Beautiful』のイントロが始まる。越智はそっと目を閉じ、バンドの音を噛み締めてから、一つひとつの言葉を大切にするように、丁寧に歌い始めた。サビに向かって盛り上げていき、サビの高音を力強い声で響かせる。その歌声に息を飲み、どこからこんなにパワフルな声が出てくるのだろうとただただ驚くばかりだ。その迫力に、身長153センチと小柄な越智がとても大きく見えてくる。サックスにトランペット、トロンボーンやキーボード、ダブルギター、ドラム、ベースという厚みのあるバンドが越智を支える。

「こんにちは、Superflyです。フジロックは9年ぶり、2回目の出演。そびえ立つ山を目の前にして歌うこともないので嬉しいです」と挨拶。9年前のフジロックでのステージを見た人がいるか聞いてみるとちらほらと手が上がり、越智は嬉しそうに「また観に来てくれたんですね。ありがとう」と感謝を述べた。オーディエンスに手拍子を要求して『Alright!!』と『タマシイレボリューション』を熱唱。「フジロック最高ですね。激しめな曲をやって私も疲れたので(笑)、落ち着いた曲をやりましょう」と、中学校の合唱コンクールのために書いた楽曲『Gifts』を届ける。誰かと比べてしまうけど、自分の中にあるものを大切にしたい。それを他の人にも教えてあげられたらという気持ちのこもったやさしい歌だ。優しく深い声で語りかけるように歌う。

前の曲を歌い終え、静かに目を閉じた越智。すると、あのピアノのフレーズが聴こえてきた。代表曲の一つである『愛をこめて花束を』である。ピアノが鳴った瞬間、越智の表情がガラリと変って笑顔がこぼれ落ち、感情たっぷりに歌い上げる。サビではグリーンステージ奥の山の方まで観客みんなが手を左右に振っている。観客だけでのシンガロングに嬉しそうにはにかむ越智がかわいらしい。「みんなの手が稲穂みたいに揺れていて、まるで魔法みたい」とその光景を語っている。

越智はMCの中で、今年の冬に新しいアルバムを出す予定であると発表。ファンが喜びを拍手に変えて送る。「9年ぶりに出れて嬉しい。幸せでした」と久しぶりのフジロック出演を語り、『Ambitioius』を披露。最後までエネルギッシュなステージを見せた。終演後、下手で10秒ほどの長いお辞儀をしてから、跳ねるように舞台袖に戻った越智。その真摯な姿勢と愛嬌のある仕草に心が持って行かれてしまった。

実はこのSuperflyのライヴ中に、グリーンステージの後方でドラマが起きていたらしい。PAテントの後ろあたりで、観客の一人が花束を手に彼女にプロポーズして大成功! その幸せムードの漂うなか歌われたのが『愛をこめて花束を』だったというのだ! なんという奇跡…! こんなドラマも生まれるのが、フジロック。いつも会場のどこかでは、何かが起きているのだ。

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HIATUS KAIYOTE http://fujirockexpress.net/19/p_1722 Sun, 28 Jul 2019 09:41:13 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1722 バンドとしては5回目の来日となるハイエイタス・カイヨーテだが、フジロック出演は今年が初めて。最終日昼過ぎのグリーンステージに登場し、圧巻のステージを披露した。

これまでリリースした2枚のアルバムから、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』へのオマージュである“ラピュタ”を始め、“モラセス”や“スワンプ・シング”、“バイ・ファイア”に“ビルディング・ア・ラダー”などを演奏。新曲も織り交ぜながら、変幻自在のジャム・バンドとしての本領を発揮した。

ハイエイタス・カイヨーテは、オーストラリアのメルボルンで結成されたフューチャー・ソウル・ユニット。2012年にデビューアルバム『トーク・トマホーク』を自主リリースすると、そのサウンドに注目したサラーム・レミが自身主宰のレーベル「フライング・ブッダ」から世界発売。これまでグラミー賞に2度ノミネートされるなどの実績を持つ。ちなみに「カイヨーテ」は、「リスナーの創造力を喚起するために使っている造語」なのだそう。

メンバーの音楽的バックグラウンドが様々で、それゆえ生み出される各自の音楽知識のカタログからアイディアを持ち寄って共作される楽曲はまさにジャンルレス。多種多様な音楽文化の集まるメルボルンを体現したようグループなのだ。わざとズラしたリズムに、引っかかりのある歌い方のボーカル。不協和してしまうような組み合わせだが、なぜか不思議と気持ちの良いグルーヴが生まれているのは、絶妙なセンスと高い演奏力の賜物だろう。音源を一聴してそのサウンドの虜になってしまったが、やはり生のグルーヴ感は格別だった。変拍子を始め、一曲を聴いている間にも音が様々に変化するので、次はどんな展開になるのだろうと終始ワクワクしっぱなしで、およそ1時間のセットがあっという間に終わってしまった。まだまだ聴きたい、聴き足りない!

その音楽性だけでなく、ぶっ飛んだネイのファション性にも度肝を抜かれた。ヴォーカル兼ギターを担当するネイのファッション性は、ブーツにポケットモンスターのキャラクターをあしらったり、帽子にはキューピーがぶら下がっていたりと、日本のエッセンスを取り入れながら独自の個性を遺憾なく発揮したもの。その音楽性も相まって、ネイがだんだんガネーシャのような、一種の虚像のような存在に映ってくる。苗場に降臨した“神”の力によってか、それまでぐずついていた空も、彼女たちのステージが始まるとともに明るくなっていった。

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SANABAGUN. http://fujirockexpress.net/19/p_1746 Sun, 28 Jul 2019 03:27:37 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1746 前日の豪雨によりグリーンステージのエリア後方にできた小川を越えて、ホワイトステージに向かう。開演予定の40分前。ステージ前にはまだ一列ほどの人が並んでいるくらい。ステージには笑いながら楽しそうにサウンドチェックをするSANABAGUN.の姿があった。ほぼフルコーラスで2、3曲を演奏、PAテント前の中央真正面を陣取って聴くそのサウンドは最高だった。サウンドチェックの段階でこれだけ楽しませてくれるとは。本編への期待がさらに高まる。

開演が近づいてきて、人もどんどん増えてきた。そこにロング丈のスーツを身にまとったメンバーたちが現れる。まるでイタリアン・マフィアのようにキメたこの出で立ちは、初めてフジロックのステージを踏むことへの気合いの表れなのかもしれない。「平成生まれのヒップホップ・チーム。これがSANABAGUN.だ味わえー!」と自己紹介がわりに自身のテーマ曲をおみまいする。サックス、トランペットを含む6人のジャズ・グルーヴに、ヴォーカリストとラッパーが織り成すオリジナリティ溢れるリリックが融合した、新世代のストリート・ミュージックがホワイトに鳴り響いた。

岩間が観客の上空を指差し、高岩が観客に背を向けて立つ。しばらくの静寂の後、突如始まった岩間のボイスパーカッションを合図に“B-BOP”へとなだれこんだ。岩間がロングジャケットの裾を翻しながら一回転キックし始まった“居酒屋JAZZ”。ステージを自由に駆け回り、ストリート仕込みの躍動感あるパフォーマンスを繰り広げる。

「フジロック、初めまして!みんなが最高のフジロック最終日を過ごせるように、これだけは言わしてくれ…。『おはようございます!』」「路上から上がってきて、フジロックに来れて…、最高に『おはようございます!』」との掛け合いMCで、会場は爆笑の渦に。MCでも持っていくのはズルい…!

「俺らの後に続いてくれ」とコール&レスポンスをし、『フジロック』の声がホワイトステージにこだましてから“人間”に突入。「休みは働く為のものものじゃない」の歌詞に深く頷きながら、今ここで彼らの音楽に身を任せていられることに幸せを感じる。

そして「3・2・1、行くぞ、フジロック!」のカウントとともに、ラストの“FLASH!”に突入。突き抜けるようなスカの音が気持ちいい。オーディエンスと高速のハンド・クラップを繰り出す。「リリックもデートも適当な俺が唯一約束するとすれば 苗場で踊った時間かな」と岩間が歌詞を一部変えて歌えば、オーディエンスは絶叫。高岩がステージ下にマイクを落としてしまうほどに、息もつかせぬ勢いあるパフォーマンスで締めくくった。

ステージ終了後、メンバーが一列に整列。「集まってくれてありがとうございます。また絶対にこれより大きいステージで帰ってくるんで、応援お願いします! ありがとうございました、礼!」とオーディエンスに深々とお辞儀をして感謝するとともに決意を語った。今日彼らのステージを初めて観たという人たちさえも熱狂の渦に巻き込む圧倒的なステージングを披露したSANAGAGUN.。次に会うときも、最高に踊れる苗場での時間を約束してくれるはずだ。

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YAEJI http://fujirockexpress.net/19/p_1768 Sat, 27 Jul 2019 22:49:40 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1768 午前0時を過ぎた頃、レッドマーキーは超満員。激しく降る雨に急いでレッドマーキーに駆け込むも、吹き込む雨で足元には水たまりができていた。お目当てのアクトを観にきた人はもちろん、屋根の下を求めてレッドマーキーにやってきた人たちもたくさんいたようだ。

前アクトのBIGYUKIのステージが押していたこともあって、15分遅れでスタートしたステージ。暗転した会場にピンクとオレンジの照明がともり、下手からYAEJIが姿を現すと観客は沸いた。韓国人の両親の元、ニューヨークに生まれたYAEJIは、プロデューサーやシンガー、DJとして活動し、さらには自身のミュージックビデオの制作も手掛けるなど、多才に活躍する注目の新世代エレクトロアーティスト。2018年にはコーチェラにも出演しており、今回満を持してフジロックに初出演となった。

まっすぐステージ中央に置かれたターンテーブルに向かい、まず“フィール・イット・アウト”をかける。濃いめに焚かれたスモークの中、YAEJIはマイクを手に、身体を揺らしながら縦横無尽にステージを歩き、手をあげて観客を煽る。スモークの中で踊るYAEJIの顔ははっきりとは見えず、それが神秘的で妖艶な雰囲気を作り出す。音に身を任せて身体を動かす観客会場はダンスフロアと化した。

YAEJIといえば、英語と韓国語の二か国語を併用したチューンが特徴的。何度も繰り返される韓国語の「クゲアニヤ(そうじゃない)」がクセになる“ドリンク・アイム・スリーピング・オン”や、テクノとラップをトリッピーに融合したサウンドの“レイン・ガール”も披露された。

最初は韓国語で作曲を始めたYAEJI。その理由は内容を他の人に知られるのが恥ずかしくて、自分だけにわかるようにしたかったから。そうして曲づくりを続けていくうちに、韓国語の発音そのものの美しさに気づき、そのうち周りの友人たちにも理解できるようにと英語も取り入れるようになり、現在のような二つの言語をブレンドするスタイルができたという。アメリカと韓国という2つの文化を背景に持つYaejiだからこそ生まれた、英語と韓国語を縦横無尽に行き来するサウンドは、波間をプカプカと漂っているようでとても気持ちがよく、自然に身体が揺れてきてしまう。

「初めてのフジロック。スペシャルな曲を届けます」と新曲も披露された。フジロックの出演がYaejiにとっても特別なもののようでうれしい。演奏が終わり、「まだ曲数がないから、デモの中からかけてもいいかな?」と少し恥じらった様子で問いかける姿には思わずキュンとしてしまった。「もちろんいいよ!聞かせて!」と歓声で答える観客。アップテンポなナンバーで会場の盛り上がりが最高潮に達した。15分押しで始まりながら、元々予定されていた時刻の10分前に終了。短めのセットではあったが、YAEJIの魅力を存分に感じることができた。

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AMERICAN FOOTBALL http://fujirockexpress.net/19/p_1734 Sat, 27 Jul 2019 13:27:13 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1734 日が暮れて周辺の森は漆黒の闇に包まれ、昼間とはまた違った表情を見せるホワイトステージ。雨が、しとしとと地面を濡らす中、たくさんの人たちがステージ上を見つめていた。目線の先に彼らが思い描いていたのは、エモ・シーンのレジェンドと称されるアメリカ・イリノイ州出身のAMERICAN FOOTBALLだ。

1999年にセルフタイトルのデビューアルバムをリリースするも、わずかな活動期間で解散したAMERICAN FOOTBALL。だが、その魅力は世界中でじわりじわりと伝わっていき、ついにはポリヴァイナル・レコーズ史上最高のセールスを記録。待望の再結成を2014年に果たし、2016年には17年ぶりのアルバム(セカンド・アルバム)を、今年3月にはサード・アルバムを発表するなどめざましく活動している。

暗転したステージに“シルエット”のイントロが流れる。鉄琴の柔らかな音に合わせ、ステージ上に置かれた8機のスタンド照明が、一つひとつ、不規則な順番でチカチカと点灯する(1機につき2つのライトがついているので厳密には計16個のライト)。バンドの音が一斉に鳴り出したとき、ステージ上にメンバーたちのシルエットが浮かび上がった。なんとも粋な演出に、のっけから心をくすぐられる。変則的なリズムを支えるドラムにベース、透明感のあるメロディーを奏でるクリーントーンのギターや鉄琴に、繊細で美しいヴォーカルが重なる。なんとも心の落ち着く、幻想的な世界観が広がっていた。

光を反射してキラキラと輝く雨はまるで星のようで、音楽とともに優しく降り注ぐ。降りしきる雨さえも、彼らのステージに彩りを添える演出となってしまう。まあ、マイクの声がかき消されてしまうほどに、地面を叩きつける土砂降りの雨が降った時は、そんなことは言っていられなかったのだけれど…。だが、そんな悪天候の中でも微動だにせず、ステージを見つめるたくさんのオーディエンスたちの姿がそこにはあって、なんだかうるっときてしまった。

ラストに披露した“ネバー・メント”では、親交のある岸野一(malegoat/The Firewood Project)も参加してタンバリンを打ち鳴らす。メンバーと岸野が笑顔を交わす姿がなんとも微笑ましかった。

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MATADOR! SOUL SOUNDS http://fujirockexpress.net/19/p_1790 Sat, 27 Jul 2019 09:20:22 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1790 ザ・ニュー・マスターサウンズのギタリストであるエディ・ロバーツと、ソウライヴのドラマーであるアラン・エヴァンスという現在のジャズ・ファンク・シーンの頂点を極める2バンドのリーダーがタッグを組んだスーパー・バンド、マタドール!ソウル・サウンズ。60年代後半のソウル・ジャズからミーターズ(ニューオーリンズ・ファンク・サウンドを生み出した第一人者的存在)直結のサウンドまで、ザ・ニュー・マスターサウンズとソウライヴの良い部分を完璧に融合させた演奏で、ジャズ・ファンクの真髄を見せつけた。

激しく降っていた雨も、たまに小雨が降る程度になってきた頃。「ハロー、フレンズ!」と挨拶して、歌詞の中で「アーユー・レディ?」と語りかける“ゲット・レディ”でセットをスタートさせる。途端に生み出されたグルーヴに身体の揺れが止まらない。客席はすぐさまダンスフロアへと化した。

切れ味鋭いギターに、グルーヴ感溢れるハードヒッティングなドラムを中心に、完成度の高いバンド演奏が繰り広げられる。バンドの生み出すグルーヴはもちろんのこと、ヴォーカル二人(アドリオンとキム)のリズムに乗ったモーションがさらに躍動感を与える。深く腰を落としリズムに合わせて腰を振ったり、胸の前で腕をぐるぐる回したり。その動きにこちらもどんどん気分がアガってくる。アドリオンの少しハスキーな高音と、キムの深く響く低音の掛け合いにもうっとり。PAテント後ろに設置されたミラーボールも、まるで音に乗るように上下左右に揺れていた。

途中雨が激しくなることもあったが、それでもオーディエンスの熱は冷めやらず、むしろ上昇していくばかり。雨の中、たくさんの人がグルーヴに身を任せて踊る光景は、一種の宗教的な雰囲気さえ感じてしまうほどだった。

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ZOO http://fujirockexpress.net/19/p_1738 Sat, 27 Jul 2019 07:59:01 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1738 毎年メスティソ枠を楽しみにしている人もいるだろう。今年やってきたのは、スペインはバレンシア発のデジタルメスティソバンドのZOO(ソオー)だ。今回初来日したバンドなのだが、どうも見たことのある顔がある。それもそのはず。以前フジロックに出演したオブリント・パスやラ・ゴッサ・ソルダに所属していたミュージシャンがメンバーにいるのだ。バレンシアのレベルミュージックシーンのパイオニアたちが新たに結成したこのバンドは、ギター、ヴォーカル、ベース、トロンボーン、サックス、パーカッション、打ち込みという編成。デビューシングル『Estiu』を発表するといきなりYouTubeで442万のアクセスをたたき出し、2018年に発表したシングル『Omerta』はYouTubeスペインの閲覧者数1位に。彼らがヨーロッパで演奏すれば、たちまち数千人規模の盛大なラテンハウスパーティーの会場となるほどに絶大な人気を誇る。

「こんにちは、フジロック! 盛り上がって~!」と、ひとたび曲が始まれば、ラテンの陽気なサウンドにいてもたってもいられず身体が動く。トニとアルノーの繰り出す快活な響きのスペイン語リリックの応酬に、高らかに歌うホーンセクションが気持ちいい躍動感あるバンドの音。頭上を覆う厚い雲を吹き飛ばすかのように音が弾ける。目を閉じればここはスペイン、燦々と太陽が輝いている。

ロックにラップ、レゲエ、バレンシア民謡に地中海のブラックビーツ、スカやジャングル、エレクトロなどを融合させた彼らのデジタルメスティソスタイルのサウンドに、道行く人もどんどんと引き寄せられて気づけばホワイトステージを多くの人が埋め尽くしている。「やばい! めっちゃいい!!」「どこのバンド? 南米あたりかな?」などと話す声が聞こえてくる。道すがら見かけたおもしろいアーティストに出会えることもフェスの楽しみのひとつ。こういう瞬間に立ち会えるたびに自分自身もうれしくなってしまう。そうして集まったオーディエンスをさらに高めてくれる絶妙な煽り。さすがベテランバンド、アップテンポな曲ではバウンス、スローなナンバーでは水面をゆらゆらと漂うように場内を揺らす。終盤には「さよならの時間だ、フジロック。腰を低くしてー!」と、音を絞りつつ、オーディエンスをしゃがませてその後一斉にジャンプし同時に再び音を炸裂させる! 一体となったオーディエンスは盛大なラテンハウスパーティーの空気に酔いしれ、踊り狂った。

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