“梶原綾乃” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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竹原ピストル http://fujirockexpress.net/19/p_1797 Mon, 29 Jul 2019 02:22:40 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1797 竹原ピストル。ここ数年、その名を聞く機会が増えたと思っているのは、私だけではないはずだ。ミュージシャンとして、役者としての実りを迎えて絶好調の彼が、フジロックに初登場する。実は彼、2002年にフォーク・バンド「野狐禅」としてアバロンに出演した経験も。野狐禅でできなかったこと、フジロックでできなかったことを果たすべく、満を持してメインステージへ。竹原ピストル、タイトル獲得に向けリベンジ・マッチが今ここでスタートする!

その熱の入りようはリハーサルをする様子からもすでに伝わってきた。きっと彼には伝えたいことや歌いたいことがいっぱいあって、限りある時間を最大限に使って表現していきたいのだと、私には映った。

1曲目が”オールドルーキー”。タイトルからして明らかなのだが、ここ、フィールドオブヘブンに立つオールドルーキー・竹原ピストルの姿が歌と重なる。「積み上げてきたもので/勝負しても勝てねぇよ/積み上げてきたものと/勝負しなきゃ勝てねえよ」。そう歌う彼の言葉一つ一つを観客たちは、自身に受け止めた。生きろと叱咤激励される“live in 和歌山”や、献身的な愛を歌う日本語詞をあわせた“Amazing Grace”など、あらゆる曲たちがあって、ときに励まされ、ビンタされ、優しく抱きしめられたりする。混じりけのない直球メッセージに涙を誘われ、ハンカチで目元を押さえる観客もちらほら。

さらに驚いたのは、MCにおいても彼はとても丁寧で、びっくりするくらい腰が低いということ。手拍子が自然発生した曲の最後には「盛り上げてくださって、ありがとうございます」とか、盛り上がった曲には「嬉しかったです」などストレートな対応で、彼と観客、お互いに穏やかな気持ちになれる気がするのだ。また、CMソングでおなじみの“よー、そこの若いの”では、観客みんなが一緒に歌いだし、逆に彼の涙を誘うという場面もあった。

なんといっても素晴らしかったのが、“カウント10”。かつてボクシング部に所属していた竹原らしい1曲なのだが、ここに、彼の核ともなるワンフレーズが存在する。歌詞を簡単に解説すると、「カウント9までは神様が決めてしまう部分があるかもしれないが、10だけは、自分の諦めが決める」という内容。野狐禅の解散でカウント10を出さなかった、絶対に数えなかった竹原が今ここに立っているのは、自分との戦いに勝ったからなのかもしれない。

人生は戦いだ。常に自分に勝ち続けなければならない。勝負への決意と厳しさ、そして喜びを教えてくれる竹原ピストルは、私たちの中のチャンピオンだ。

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Night Tempo http://fujirockexpress.net/19/p_1779 Sun, 28 Jul 2019 22:14:26 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1779 フジロック最終日も終盤で、疲れも溜まってきたころだろうか。いや、まだまだ遊べるだろうか?そんなことを考えていると、最高に気持ち良い懐メロたちが聴こえてきた。ナイトテンポだ。

韓国でプロデューサー兼DJとして活躍する彼は、日本のカセットテープやレトロアイテムをディグする昭和レトロオタク。大好きな楽曲たちをカットアップしてノリノリに仕立てた楽曲が多くのリスナーにウケて、Future Funkの火付け役的な存在になった。ちょうどいま、海外でシティ・ポップがブームを起こしていることも含めると、今フジで呼ばなきゃいつ呼ぶか?と言えるくらいホットなアーティストである。

ザ・ベストテンのオープニングソングが流れ、80’sリスペクトなイラストに溢れたVJ(非常に手が込んでて可愛い!)が始まると、中森明菜の“スローモーション”がゴリゴリのダンス・チューンとなって鳴らされる。“スローモーション”のジャケット写真がプリントされたTシャツを着た彼は、DJセットを広げた机から観客の目の前、ステージギリギリまで移動し始め、何をしたかと思うと…観客と一緒にガンガン踊り出した!あまりにも勢いよく踊り出したもので笑ってしまったが、プレイヤーでありリスナーでもある彼の音源へのリスペクトが、そのノリに集約されていたんだと思う。

中村由真の“Dang Dang 気になる”から、渡辺美里の“My Revolution”、角松敏生の“Tokyo Tower”など、みんな馴染みのある懐かしの楽曲がハイペースで繋げられていく。もちろん、自身が手掛けたWinkの“淋しい熱帯魚 (Night Tempo Showa Groove Mix)”といった楽曲も、今日だけのスペシャルバージョンとして組み込み済み。いずれも原曲を尊重しながら、キレのよいカットアップで、跳ねて踊れる楽しいサマー・チューンに仕上がっていた。

彼の魅力と、日本のポップ・ソングへの愛を大胆に詰め込んだ短期集中型ステージ。ブルーバックに「提供 ナイトテンポ」と書かれたシュールな映像を背景に、鳴り止まないほどの拍手と声援は、観客のハートをガッチリ掴んだ証拠だろう。岩盤にて開催された第2部も盛況で、松田聖子やアニメ「セーラームーン」「カードキャプターさくら」の主題歌などがチョイスされているのも最高。今年だけとは言わず、お願いだから毎年来て欲しい。

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平沢進+会人(EJIN) http://fujirockexpress.net/19/p_1760 Sun, 28 Jul 2019 16:05:48 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1760 全国の平沢進ファン…いや、馬の骨(=ファンの通称名)の方々、ついにである。さぞ待ったことだろう。フジロック最終日、ついに私たちは、この瞬間を迎える。そう、平沢進師匠が、今日、フジロックに出演する。

思えば、師匠がTwitterを始め「間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」とつぶやいたあの衝撃から約10年。気がつけば、リアルタイムのP-MODEL好きから、解散後に掘り当てたニッチな音楽オタク、「けいおん!」や、その他アニメ・ボーカロイドなどに精通したオタク、イラストや作曲などを得意とするアマチュアクリエイターまで、あらゆる人たちがその不思議な魅力に心酔。気づけばここ数年で、馬の骨を名乗る人口は遥かに増加していた。ヒラサワ・ウイルスはいま、パンデミック状態にある。今日のために初めて苗場の地を踏んだ者、泣く泣く在宅での応援を選んだ者もいる。すべての想いを受け止めたエネルギーは、強大なサーフ・エレクトロンとどう対峙するのか?

白い烏天狗のような面をした「会人」と呼ばれる2人(2匹?)を両サイドに従え、真っ黒な衣装を身にまとった白髪の紳士・平沢が登場。その手前にはレーザーハープと呼ばれるものが弦をキラキラと光らせていて、後ろにはテスラコイルが置かれている。その異質な空間にて、まず鳴らされたのは“town-0 phase-5”。湧き上がる歓声&合唱、湧き上がる感情。ただ呆然と立ち尽くしていたが、ここで実感する。ここ苗場で、平沢進が歌っているのだ!

低音の厚み豊かに組み立てられた“フル・ヘッ・ヘッ・ヘッ”や、冒頭の声真似が楽しい“聖馬蹄形惑星の大詐欺師”、シンセサイザーの荘厳な響きがこだまする“Adios”など、彼の音楽は想像以上にダンサブルなアレンジがされており、ここレッドマーキーの雰囲気と相まってテンションは上がるばかり。平沢の無機質な歌声と「高らかに宣言する」ような歌い方は生で聴くとより刺激的である。

“夢見る機械”に突入すると、テスラコイルに変化が。楽曲のタイミングよく発せられる細い電流とその音は、見事に曲の1部であり、演出としても成り立っていた。セリフと歌詞が混ざったような曲であることから、ミュージカルのようにも感じた。

背景に「救済の技法」ジャケットの赤い長方形が映し出されると、“AURORA”、続いては“白虎野”と人気曲を次々にドロップ。“白虎野”では、あのコラージュ・チックなイントロが平沢の弾くハープから鳴らされる。そのしなやかな手先の動きは美しく、惚れ惚れする。彼の指先ひとつで、大地は揺らぎ、海は割れるのではないか?あなたは教祖、いや神なのか?

アンコールには“回路OFF回路ON”を、会場の皆で手を挙げ、合唱しながらフィナーレ。あっという間の13曲、しばらく思考が停止するような驚きと衝撃に満ちた時間だった。初登場にしてメインステージのトリを飾るそのキャリアの長さと貫禄、さすがである。

私たちは、有難いものを見せていただいた。彼を1ミリも知らない観客でも、その強烈なインパクトは頭にこびりついて離れないだろう。ああ、入信必至の大パフォーマンス!これからも大好きだ。ありがとう。

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never young beach http://fujirockexpress.net/19/p_1723 Sun, 28 Jul 2019 09:24:31 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1723 「みんなぁ…晴れたね!楽しんでいこうね、よろしく!」と、安部勇磨(Vo,gt)の声で始まったnever young beach。こみ上げる想いを抑えきれない様子のその声は、昨日からの大雨が止むことを必死で願っていた人の声だ。なにせ彼に用意された場所はココ、グリーンステージ!

マリンバに小林うてなを迎えた“STORY”で始まり、マイクをぎゅっと握りしめた安倍がステージを右へ左へと暴れて踊る“夏のドキドキ”、サポート・ギター山本幹宗の最高にトロピカルなソロが聴けた“自転車にのって”(高田渡のカヴァー)など続々と繰り出される楽曲たち。コブシをきかせたような安部の歌声は、日本らしい奥ゆかしさと、古き良き歌謡/フォークの血が流れているのを感じる。声も調子もゴキゲン、最初から飛ばしまくりで、安部勇磨の大!爆!発!といった感じだ。

その後もMCで「もっと雨の曲作っておけばよかったなんて思ったよ。もうテンション上がっちゃってさ、銅鑼持ってきたよ」なんて言いながら、“Let’s do fun”をイントロから再現。久々に演奏するという“ちょっと待ってよ”や、チル感高めの“夢で逢えたら”など、ギラギラとした日差しの刺さるステージを、さながら常夏のビーチに変えていくようだった。

彼らのユルユル脱力系MCは、グリーンステージの規模でも相変わらず面白くて、その後も続いていく。「5年前の苗場食堂では、本当に気軽な気持ちで、あっちのステージに出られたらいいよね、なんて言ってたけど、気がついたらここに出られていた。スマブラ(ゲーム)やって、アハハハ楽しいねって笑ってたら、いつの間に」。そんなことをさらっと言って笑いをとる彼らだけれど、有言実行までは決して簡単な道のりではなかっただろう。5年前にいた人たちを挙手させて、ちらほら挙がる手を見ながら安部と私たちは、ここでの再会を「エモいね」と喜びあった。

終盤は、彼ら曰く「爆裂ヤングモード」。“どうでもいいけど”が始まると、両手を挙げ踊る人が続々と増えていく。PA裏でハイタッチして踊る人たちもいて、お祭り騒ぎだ。“明るい未来”、“fam fam”などとたたみかけていき、ラスト“お別れの歌”では、安部が観客に向かってダイヴ!歌い、動き、暴れまくるネバヤン史上最強にエモいライヴ。ありったけのものをぶちかましてくれた彼らに、心からのおめでとうを言いたい。

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近藤利樹 http://fujirockexpress.net/19/p_1823 Sun, 28 Jul 2019 03:59:49 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1823 あっという間の3日目、朝から今日はいい天気!アバロンの最初を飾るのは、「ナニワの光速ウクレレ少年」としておなじみ、大阪府枚方市出身のウクレレ奏者、近藤利樹だ。何度かTV番組に出演しているので知っている人も多いかもしれないが、彼はなんと12歳、中学1年生なのである。紛れもなく、フジロックの出演者で最年少!「あいうえ大阪出身の、かきくけ近藤利樹です」というお決まりの自己紹介はちょっぴり照れていてあどけない。それでもひとたび弦を揺らせば、ジェイク・シマブクロも認めるプロのウクレレプレイヤーに変身するのだ。

最初に、斎藤和義の“歩いて帰ろう”を始めると、早速会場からのあたたかい手拍子が。近藤の歯切れの良いスタッカートに、加藤聡(percussion)もカホンで応える。観客の方を向くだけではなく、お互いに向き合い息を合わせ、セッションを組み立てていくようだ。続いて、運動会のBGMとしておなじみ“クシコス・ポスト”、今日グリーンステージに出演するジェイソン・ムラーズの“I’m Yours”、懐かしのフィンガー5“学園天国”など、フジロックからお茶の間まで対応したバラエティ豊かなチョイスである。

特に素晴らしかったのは、ジェイク・シマブクロのカヴァー“Crazy G”。近藤がこちらに耳を澄ませたポーズをしたならば、観客は「もっと早く!」とコールすることになっているこの曲、加藤に「え、まだやれるの?」と聞かれてもチャレンジした早弾きが見事にハマって、一体感と盛り上がりは最高潮だった。荻野目洋子のカヴァー“ダンシング・ヒーロー”では、ひとりでも多くの観客をノらせた、近藤の煽りの上手さにも脱帽!最後はビールのCMでお馴染みジプシー・キングスの“Volare”をカヴァーして、楽しくみんなで歌いながらフィナーレ!

上半身を前後に振り乱しながら、終始笑顔でウクレレを奏でる近藤。ウクレレと楽曲と観客への愛に溢れた、幸せいっぱいのステージだった。次登場するときは、ジェイク・シマブクロとの共演を、ぜひ!

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ずっと真夜中でいいのに。 http://fujirockexpress.net/19/p_1757 Sun, 28 Jul 2019 00:42:11 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1757 君は知ってるか?2018年にYouTubeで初投稿された楽曲「秒針を噛む」が、1000万回以上の再生を記録し、あれよあれよと大きくなっていったアーティストの存在を。どうやら、ACAねという女性のユニットらしいが、顔出しはしておらず詳しい正体も明かされていない。にもかかわらず、ボーカロイド・プロデューサーが共作に挙げられていること、動画のアニメーションや世界観も良くできていることなど諸々の要素が絡み合い、ロックファンやボーカロイドファン、ニコニコ動画界隈など、あらゆる層にヒットしている様子なのだ。その名は、ずっと真夜中でいいのに。だ!

舞台はここレッドマーキー。薄い幕がかけられていて、メンバーの顔が見えないようになっている。ステージの背景には、バンド名のロゴ文字がきらきら。両端には、大きなオープンリールデッキが2台あり、Open Reel Ensembleの3人が関わってるようだ。それ以外のパートはドラム、キーボード、ベース、ギター&バイオリンで計7人。ACAねは銀色に反射する法被のような服を着て登場した。

まずは“ヒューマノイド”で、音が鳴り始まると、はやくも大歓声!ACAねの歌声は基本的にハイトーンで、そのピッチをいとも簡単に上げていく。主旋律=歌声ともとれる彼女の楽曲は、会話をするように滑らかで心地よい。キーボードのジャジーなタッチと、万華鏡のように次々と変わる音の景色たち。それらは一見難解なのだが、ポップな芯が通っていてわかりやすく、ノリどころが掴めるのが嬉しいところ。あえて近しいものを挙げるならば、ゲスの極み乙女。のジャス感と、パスピエのお茶目な歌い回しだろうか。話題性においては、ポスト米津玄師と言ってもいい。ポップのツボをわかりきっているACAねの思惑に、ハマりっぱなしの観客多数だ。

でもやっぱり一番人気は、彼女がここに登りつめたきっかけの”秒針を噛む”か。隣の男性も、後ろの外人2組もノリノリで手を上げて踊っている。周囲を見渡すと、ステージにスマホを向ける観客がちらほら。YouTubeから飛び出した彼女をリアルに記録して、それをまたインターネットに収めて拡散させる…ずっと真夜中でいいのに。という存在は、ネットとリアルを行き来する新しいコミュニケーションのカタチなのかもしれない。

巧みなヴォーカル、演奏能力の高さで言うと、耳の肥えたリスナー向きでもあるが、若いリスナーも多く、間口が広い音楽なので、なぜフジロックに?とも思う。それはきっと、海外進出の身近な手段として、フジロックが最適だったからではないだろうか。再生ボタンひとつでつながれる世の中、彼女はどこにでも現れ、私たちに歌を届けてくれるだろう。

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DANIEL CAESAR http://fujirockexpress.net/19/p_1753 Sat, 27 Jul 2019 13:24:46 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1753 この日レッドマーキーのメイン・アクトでトリを飾るのは、カナダのシンガー・ソング・ライター、ダニエル・シーザー。弱冠24歳で、アルバムはグラミー賞にノミネートし、昨年ホワイトステージに出演したカリ・ウチスとの曲“Get You”が大ヒットするなど、R&B界期待の若手である。舞台は豪雨の中、やや浸水気味のレッドマーキー。たまたま休んでいる人も、彼を目当てで待っていた人たちも、しっとりと耳を傾ける先は、まぎれもなく彼だった。

1曲目は、“Cianide”。なめらかな地声と、優しく包み込んでくれるようなファルセットに、早くも歓声が上がる。“Love Again”は、地響きのような低音と艶めいた歌声が絡み合い、想像以上にセクシーで踊れる曲に仕上がっていた。最初のドラムの音だけで大歓声の“Japanese Denim”とか、ダニエル自ら鳴らすアコギの乾いた音がこだまする“Complexties”などで途中何度か、雨が止んだかと錯覚するくらいの静寂を感じた。でも、レッドマーキーの出口をみるとそんなこともなくて、とても不思議だ。彼の歌声に耳をすますと、ほかの世界をシャットアウトしてしまうくらい、ぐいぐいとその世界に引き込まれるのだろうか。

演奏中、スクリーンには終始「DANIEL CAESAR」の文字と、戦争、砂漠、子供、女性などの映像がとめどなく流れていた。「Freudian」のジャケットにも登場する、ブルガリアの「友愛の塚」(戦闘追悼碑)を思わせる、力強くももの悲しい主張。トップアーティストであっても、どこか憂いを帯びた彼の眼差し。それは「CASE STUDY01」で語られる、実家の教会を抜け出したエピソードの傷跡なのかもしれない。

みんなが待ちに待っていた“Get You”も披露するなど、あっという間の13曲。最新のヒップホップ+R&Bを鳴らすトラックの数々に、祈りと悲しみが詰まった彼の優しい歌声がじんわりと響く。大雨で弱った私たちの心からの支えは今、彼だけだ。

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ASIAN KUNG-FU GENERATION http://fujirockexpress.net/19/p_1715 Sat, 27 Jul 2019 11:05:44 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1715 歳を重ねるといいこともあるんだなと、最近思った。それは昨日、ELLEGARDENで暴れるロックキッズたちと一緒に泣けたからで、今日NUMBER GIRLが復活するからで、アジカンが再びフジロックに出るからだ。

かつてルーキーアゴーゴーに出た彼らが、2006年で初めてステージに立ち、2010年には2度目の登場、そして今日再び苗場へ帰ってくる。「フジで観るアジカンは初めて」という10〜20代の人もいれば、ずっと苗場で観てきた歴の長い人もここにいる。じーちゃん、ばーちゃん的年齢の人も、つい最近ハマった若い子もきっとYouTubeで見てる。お茶の間からグリーンステージまでを埋め尽くす多くの観客たちが、彼らの歩んだこの数年に、想いを寄せているのだろう。ステージに張られた白いカーテンの奥に見え隠れする、「ホームタウン」の文字。それは、最新アルバムのタイトルだが、フジロックのことを指しているんじゃないかとさえ思う。

聴き慣れたあの4つ打ちが軽快に始まると…“君という花”だ。さっきまで降っていた滝のような雨は少し落ち着いてきてはいるが、「青天の霹靂」というフレーズに合わせて、雨粒に向かって手を挙げている私たちがいた。さっきまでの雨は、まさに青天の霹靂…。そんな偶然に笑ってしまった。この楽しい瞬間はこれから先もずっと、忘れないでいる気がする。その後のアウトロでは“大洋航路”のフレーズを引用するアレンジも。これまでの彼らと新しい彼らが同居する、幕開けにふさわしい1曲だった。

続いて“リライト”ではみな手を突き揚げ、それはグーだったり、パーだったり、人差し指だったりと、思い思いのエモーショナルを前方へ炸裂させる。ステージ前方のスクリーンに映った外国人も、口パクで楽しそうにして歌っている。“君の街まで”は、観客の手拍子で溢れたグリーンステージに、ゴッチの歌声がダイヴし、揺らいでいくのを静かに見守った。

“UCLA”では、Homecomingsの畳野彩加がゲストで登場し、音源の世界がここで再現される。当たり前なのだが、アジカンの音で歌う畳野は、Homecomingsでは聴けない歌い回しを感じて、新鮮そのものだった。音源で聴いていた以上に奥行きと伸びがあって、彼女の声がいつもよりも尊重された1曲となっていた。

数少ないゴッチのMCの中でも特に印象的だったのは、「歳をとることが怖くなくなった」という話だった。歳をとることで見えてくる景色や豊かさがあって、変わっていくのが人間であるということ。だから無理に立ち振る舞おうとせず、ありのままでいいんだ、と彼は言う。これは、さすがにハッとしてしまった。喜びも悲しみもあったけれど、年齢を重ねないと見えてこなかった景色を、私たちはいま目の当たりにしているのだ、と。

そして、彼らは“ボーイズ&ガールズ”でこのステージを締めた。ファースト・アルバムから最新作までをシャッフルしたオールタイム的セットリストであったが、彼らの音楽性の変化も、変わらない部分も両方感じることができる、不思議な時間だった。

きっとまた彼らはここに帰ってくる。そのころまでにまた、音楽シーンには新たな発見や驚きがあって、きっと豊かな景色が目の前に広がっていることだろう。とりあえず今はありのままで、また会おう。

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Tempalay http://fujirockexpress.net/19/p_1758 Sat, 27 Jul 2019 05:52:27 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1758 おかえりTempalay!今年はついにメインステージに進出だ。2015年にルーキーアゴーゴーに出演し、2017年には苗場食堂に出たものの、小原綾斗(vo,gt)が出演前に骨折するというハプニングが。DENIMSのカマチューなど、現地の友人たちに力を借りたパフォーマンスは、それはそれで特別なものとなった。あれから2年、雪辱を晴らすステージはレッドマーキー。この日はYouTube配信もされるということで、苗場とお茶の間、どちらも賑わっているようだ。SNS上のおうちフジロッカーたちも続々と「次はTempalay見ます」宣言している。

SEはまさかの電気グルーヴ“Shangri-La”。驚いて笑っていると、ステージの大画面にアダルトサイトの請求画面が表示されたり、Tempalayのロゴ+レトロな文字で「現代のニューウェーブ」と書かれた画像が出てくるなど、ちょっとシュールでカッコいいVJもいい味を出している。

ゆるっとサイケなサウンドと、人の心の奥底を突いてくるような歌詞は、ライヴではロックに化ける。“のめりこめ、震えろ。”で放たれるのは藤本夏樹(dr)の締まったドラミング、小原のゴリゴリのギター、熱のこもった歌声。今日のこのステージへの気合いが、その声から溢れ出ている。“SONIC WAVE”ではタテノリ強めのビートに揺らされて、“どうしよう”では、退廃感だだよう空間にトリップ。サビのメロウなギターが、心ををぐっと掴んで離さない。

現在ツアー中の彼ら、会場では毎度何かしらのトラブルがあるということなのだが……。今日もベースアンプの調整に時間がかかり、曲を少し削らないといけない1面も。しかしそんなトラブルもなんのその!観客の熱を冷ますことなくそのまま“新世代”へ突入。AAAMYYY(cho,syn)の甘酸っぱいコーラスが響き豊かだ。さらに“そなちね”の切ないサビのメロディーラインも胸にじんわりと染みてくるから、この夏の踊れるチューンはこの2曲で決まりか、と思う。

ラスト“革命前夜”のアウトロでは、ギターを鳴らしながら右へ左へと跳ねる小原のなんて楽しそうなことか。かつての骨折も、さっきの機材トラブルも、ものともせず駆け抜けた Tempalayのフジロック。さあ2年前の雪辱は晴らせた、次へと進もう。「ケガせず立てたことが成功」だと言っていたが、観客の盛り上がりを見ても、これは大成功だ!

(2019/8/7 12:30)
一部曲名とパフォーマンスの表現に誤りがあり、Tempalayのライブレポートを修正いたしました。大変失礼いたしました。

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