“阿部仁知” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 過去最悪のどしゃ降りという試練を乗り越え、まるでなにもなかったかのように弾けていたフジロッカーに乾杯。間違いなく、これまでで最も素晴らしかったと絶賛のフジロックを作ったのはあなたたちです http://fujirockexpress.net/19/p_8672 Thu, 01 Aug 2019 01:33:33 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=8672  台風に襲われて、修羅場のようになった1997年のフジロックを、まさか2年連続で思い起こすことになろうとは、想像だにしなかった。例年なら、梅雨も明けてからっとした空気に包まれるのが開幕の頃。現地入りした火曜日も、ほとんど雨の気配は感じられなかったし、そろそろ梅雨明けと思っていた。実際、その頃の予想では、フジロック開催時の週末はわずかな雨を伴うが、おおむね好天だろうと囁かれていたものだ。が、台風発生のニュースが飛び込んでくる。当然のように、脳裏に浮かんだのは昨年の惨状。風で吹き飛ばされたテントの数々や横殴りの雨…。 コンピュータ機器が重要な役割を果たす、我々の作業場となっているテントも補強しなければいけないし、キャンパー達にはテントの再点検も呼びかけなければいけない。そんなことを頭の片隅に感じながら幕開けした前夜祭で、DJ Mamezukaのターンテーブルから飛び出してきたのは、1997年、台風に見舞われたフジロックで強烈なインパクトを残した電気グルーヴの“富士山”だった。

 わざわざその意味を説明する必要もないだろう、全身全霊でこれを受け止めていたオーディエンスがそれを雄弁に物語っている。とりわけ、今年は特別なんだろうが、例年、ここで目の当たりにするのが弾けんばかりの笑顔の数々。間違いなく、これこそがこの会場で働くスタッフの宝物だ。だからこそ、それを目にしようと多くの関係者がこのステージ脇に集まってくる。今回は、総合プロデューサーの大将こと、日高正博氏もここで、ニコニコしながら、オーディエンスを見守っていた。そんな彼らの表情を記念写真という形で記録し始めてすでに10余年。それをポストカードという形で販売し始めたのが数年前と思うんだが、今年からは無料で配布することにした。どれほどの人がそれを手にしてくれたのか定かではないが、ささやかなお土産として受け取っていただければ幸いだ。

 限られた時間しかないステージで多くを語るのは難しい。が、今年なによりも伝えたかったのは14年ぶりに苗場に戻ってきたイタリアのバンド、バンダ・バソッティが、世界で初めて“フジロック”というタイトルで発表した歌のことだった。

「ようこそ、フジロックへ。君たちが目の当たりにしているのは紛れもない現実で、ここにいるのは戦争とは無縁の人たち。僕らは一人ぼっちじゃない。残酷な世界は僕らを潰しにかかるだろう。でも、誰にも僕らを止めることはできない…」

 すでに今年のフジロックへの出演が決まっていた昨年暮れ、この歌を書いてくれたバンドの要のひとり、ギター&ヴォーカルのアンジェロ”シガロ”コンティが他界。どこかで彼がフジロックを愛する人たちに残してくれた遺産にも思えるのがこの歌だ。「Welcom To Fuji Rock」という英語のフレーズが出てくるが、歌詞のオリジナルはイタリア語。今回、こちらのリクエストに応える形で、バンド側が「フジロッカーズ限定盤」としてプレスしてくれたイタリア盤シングルの日本での販売に向けて出来上がった歌詞対訳を見ると、彼がフジロックに、そして、その向こうに何を見ていたのかがくっきりと浮き上がる。

 その歌で「まるで流れる川」のように山に戻ってくると描かれている人々にここ数年著しく増えたのが、様々な人種や国籍。フジロック好きが集まってくる飲み会のようなフジロッカーズ・バーが台湾でも開催されているのは昨年お伝えした通りで、フジロッカーズ・ラウンジのそばにあるグラフィティ・ボードには香港関係の書き込みも多かった。また、お隣の韓国から東南アジアの国々にオーストラリア…と、会場では様々な国の言葉が飛び交っていた。彼らがコミュニケーションに戸惑うことはないんだろうかという危惧をよそに、僕らの共通言語、音楽がそれを全てカバーしてくれているようにも感じたものだ。

 耳にしたくなくてもメディアで伝えられるぎくしゃくした国際情勢がここでは嘘のように思えていた。世界中で分断を謳う偏狭なナショナリズムや人種差別の嵐が吹き荒れているというのに、ここで目撃したのはそれとは真逆の世界。誰もが互いを個人として尊重し、いたわり、繋がろうとする。その結果、単純な言葉では描ききれない平和がもたらされていた。この平和を愛し、形にすること、あるいは平和について語ることって政治的? 人種差別に反対し、繋がることが政治的なら、もっと政治的になってもいいじゃないかとも思う。ここ数年、きわめてちっぽけな世界で囁かれている「音楽(あるいは、フジロック)に政治を持ち込むな」という発想がどれほどの矛盾を抱えているか、言うまでもないだろう。音楽であれ、アートであれ、自由。それを規制をしようとすることがどれほど政治的なのかを理解できないとしたら、あまりに貧しい知性の持ち主でしかないだろう。

 誰もが政治や経済、社会とは切っても切れない存在としてこの世界を生きている。だからこそ、背を向けるのではなく、向き合うことが必要とされるのだ。そうすることで自らの未来を描くことができる。「The Future Is Unwritten」と語ったジョー・ストラマーが、その言葉の向こうに込めたのがそれなんだろう。音楽やアートはそういったことを気づかせてくれる貴重な宝物であり、そんな宝物で溢れているのがフジロック・フェスティヴァルなのだ。

 実を言えば、今年NGOヴィレッジに生まれた「うちなーヴィレッジ」の発端も音楽だった。きっかけは10年ほど前に辺野古への新たな米軍基地建設計画を巡って、沖縄で繰り広げられていたピース・ミュージック・フェスタの仲間たち。「フジロックは沖縄に関して何もやってくれないの」というつぶやきをきっかけに昨年からなにかが動き始めていた。それを快く受け入れてくれたのが、フジロックのルーツと言ってもいいだろう、アトミック・カフェ・フェスティヴァルのスタッフ達。それが沖縄県知事を担ぎ出す流れを生んでいる。

 が、そんなことよりなにより、今年を振り返った時、真っ先に語られるのはどしゃ降りの雨だろう。過去10年連続で台湾からフジロックに通っている友人が「10年で最悪の雨」と語っていたんだが、それどころか、1997年の第1回目から振り返っても、これほどひどい雨はなかった。特に土曜日の午後から日曜日早朝にかけて、まるでバケツをひっくり返したような雨がひっきりなしに降っている。ときおり雨脚が緩やかになって「ひょっとして止んでくれるかも…」とかすかに期待するのだが、それをあざ笑うかのように、さらに激しい雨が、これでもかと言わんばかりに我々を殴りつけていた。

 そんななかを走り回って取材を続けていたスタッフからも「カメラ、死んじゃいました」とか、「テント水没です」なんて話が飛び込んでくる。その一方、どしゃ降りの下、大騒ぎでライヴを楽しんでいるオーディエンスがいた。この日のヘッドライナー、SIAが姿を見せたグリーンステージや他界したアート・ネヴィルのことを思い出さざるを得なかっただろう、フィールドオヴヘヴンのジョージ・ポーター・ジュニア・アンド・フレンズからエゴ・ラッピン…。どれほど防水加工されたコートやジャケットにポンチョだろうが、太刀打ちできないほどの雨だというのに、それを跳ね返すほどの熱気が生まれていた。それは比較的小さなステージでも同じこと。苗場食堂では目の前にいるはずの観客が見えないほどに激しい雨が降っていたと教えてくれたのがコージー大内。また、ピラミッド・ガーデンでは滝のような雨を浴びながら、リアム・オ・メンリィがプリンスをカバーした「パープル・レイン」に感動していた仲間がいた。おそらく、生きているうちに幾度も体験できない奇跡のライヴとして、これが彼らの脳裏に刻み込まれ、語り継がれていくはずだ。

 各ステージでヘッドライナーが演奏を始める頃、会場内の裏導線には規制が入り、最重要車両を除いて、奥地に入るのは不可能となっていた。憔悴しきったスタッフの送迎もかなわない状態となっていたが、彼らには雨をしのぐことのできる場所がある。それより観客の安全を最優先すべきと動いていたのが主催者であり、スタッフだ。会場内を流れる川が増水し、かなり早い段階でボードウォークの一部を閉鎖。過去に例を見ない豪雨の影響で会場に繋がる国道17号線に規制が入ったという情報が流れ、各ステージでの最終ライヴが終わった後、グリーンステージから奥が閉鎖されている。でも、毎年積み上げてきた教訓、特に昨年の経験が生かされていたんだろう、その頃にはテント泊に不安を感じる人々のために地元やプリンス・ホテルが一部を休憩所として確保。彼らを誘導し、キャンプ場の安全を確保し続けたキャンプよろず相談所のスタッフに賞賛の言葉を贈りたい。加えて、悲惨な目にあった仲間たちに救いの手をさしのべようとした人たちがいっぱいいたことも忘れてはいけない。

 主催者、地元の人々、スタッフのみならず、会場にやって来るフジロッカーに与えられたのが、これでもか、これでもかと思えるほどの試練の数々。でも、ほとんどの人たちがそれを乗り越えた後、まるでご褒美のように幸福な時間がもたらされる。夜が明けて、お日様が顔を出す頃、会場に溢れていたのは、まるでなにもなかったかのように満面に笑みを浮かべて最後の一日を謳歌する人々。メディアやSNSが「最悪な一点」をあたかも全体であるかのように吹聴し、尾ひれをつけて拡大していった一方で、この現場にいる人たちが至福のフェスティヴァル体験を語り始めていた。申し訳ないが、それはこの場所で同じ時間と空間を共有しなければわからない。モニターでライヴを見ても、全身に降り注ぐ興奮を感じることはできないし、このエキスプレスをチェックしていても、語り尽くせない幸せを体験することはできない。だからこそ、ここにおいでと呼びかけ続けているのだ。

「これまでで最高のフジロックだった。なによりもこのフェスティヴァルがために、ここに多くの人たちがやって来てるってのがよくわかるんだよ。バンドとか、ライヴとか…。それよりなにより、ここにいることに大きな意味がある」

 全てが終わりかけ、夜空に浮かんでいた三日月が、しらけてきた空に姿を消しかけた頃、今年、「I Am A Fujirocker」というTシャツをデザインしてくれたDJでミュージシャンのギャズ・メイオールが、そんな言葉を口にしていた。しかも、同じような言葉がいろいろな人たちから届けられるのだ。あれほど過酷な時間を過ごしたというのに、多くの参加者が「素晴らしいフジロックだった」あるいは、「過去最高!」と今年を語り始めたのはなぜだろう。もちろん、問題がなかったわけではない。あふれかえるゴミやはた迷惑なキャンプ・チェアーや地面に広げられたシートに、置き去りにされるテントなど、解決しなければいけない問題は山積している。が、規則でがんじがらめにしたところで、思考を停止させるだけで本質的な問題は残されたままとなる。じゃ、どうすればいいんだろう。と、そんなことを考えながら、今年のエキスプレスを締めくくることになる。

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 フジロック史上最悪のどしゃ降りのなか、一方で、熱中症も心配された灼熱の下、開催期間中のみならず、その前から最後の最後まで様々な場所に出没し、会場中を駆け巡って取材をしてくれたのは以下の仲間たち。手前味噌ではあるかもしれませんが、いろいろな圧力や問題に立ち向かいながら、公式にサポートされた独立メディアとして、私たちのフジロックを伝え続けてくれたことを褒めてあげたいと思います。もちろん、完成形はまだまだ。もっともっと学ばなければいけないだろうし、数々の試練も乗り越えなければいけないだろうと思います。間違いもあるかもしれません。もし、そういったことが見受けられたら、ぜひご指摘ください。真摯に対応いたします。

 日本のリクエストに応えてバンダ・バソッティが作ったくれた「フジロック (c/w) レヴォリューション・ロック」の限定盤7インチ・シングルはこちらのサイト、fujirockers-store.com、および、フジロッカーズ・バーで販売を続けます。会場で入手できなかった方で、アナログ好きな方はぜひチェックしてくださいませ。

なお、今年、動いてくれたスタッフは以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/19/
写真家:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、Yusuke Baba(Beyond the Lenz)、白井絢香、リン、HARA MASAMI(HAMA)、おみそ、森空
ライター:丸山亮平、阿部光平、イケダノブユキ、近藤英梨子、石角友香、東いずみ、あたそ、梶原綾乃、長谷川円香、坂本泉、阿部仁知、三浦孝文、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/19e/
Laura Cooper, Sean Scanlan, Park Baker, Jonathan Cooper, Sean Mallion, Laurier Tiernan

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、関根教史、小幡朋子、町田涼、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:岡部智子、熊沢泉、三ツ石哲也、志賀 崇伸、Masako Yoshioka、MASAHIRO SAITO、増田ダイスケ、Riho Kamimura、タカギユウスケ、永田夏来、Masaya Morita、suguta、つちもり、Taio Konishi、Hiromi Chibahara、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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VAUDOU GAME http://fujirockexpress.net/19/p_1796 Sun, 28 Jul 2019 19:45:48 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1796 びっくりした。本当にびっくりした。疲れ切ってクタクタで向かったフィールドオブヘブンで、こんなバンドがみられるとは。周りの人たちも、口々にベストアクトだ!と語っていたが、ここにいた人は本当に誇りに思っていい。トーゴ共和国出身、フランスを拠点に活躍中のピーター・ソロ率いるアフロファンクバンド、ヴォードゥー・ゲームの登場だ!

まず目を引くのがピーター・ソロの異様な存在感。2mはあろうかという長身に赤いパンツ、上半身裸で部族的な首飾りをジャラジャラつけ、頭には白い布を巻く。これだけでもう圧倒されてしまう。そんな彼が最初から長々と語りを入れるものだから、なんだなんだ?と会場は彼から目を離せなくなるが、1曲目の“Not Guilty”が鳴った瞬間、ヘブンに集ったオーディエンスは度肝を抜かれる。僕も思わず「おおお…」と声を上げてしまった。なんなんだこのグルーヴは…

バンドが同じフレーズを延々とループすることで、瞬時にあたためられるグルーヴに、ホーンセクションの伸びやかなフレーズが絡んだ、体感したことのないようなサウンド。僕らの身体は喜びの声をあげる。1曲だけでヘブンのフィールドを完全に掌握してしまった。ヴォードゥー・ゲーム、恐るべきバンドだ。

1曲1曲聞き取りやすいゆっくりとした英語で、丁寧に語りを入れるピーター・ソロ。“La vie c’est bon”では「ラヴィセボンボンボンってどういう意味かわかる?ライフイズビューティフルビューティフルビューティフルってことだよ」と会場を沸かせる。と思ったらいきなり6人全員でアカペラの合唱を始める。彼の信仰するヴォードゥー教のスタイルなのだろうか、いずれにせよこんなライブは観たことがない。だけど、この語りやアカペラが僕らと彼らをより親密に繋げてくれる感じがする。発音練習をするように丁寧にコールアンドレスポンスをしながら、また狂乱のグルーヴにダイブ。なんなんだこれ…

サックスがガンガン攻めたり、ピーターの超絶ファンキーなカッティングギターに酔いしれたり、どんどん大きくなっていく盛り上がりに、会場全体が総立ちに。彼らが去った後も鳴り止まぬ拍手、そしてまさかのアンコール。“Grasse mat”ではメンバー全員が前に出てきてヘブンが一体となった大合唱が巻き起こる。こんなライブ体験、凄過ぎて言葉が出ない。

「サンキューネイチャー、ありがとうネイチャー」と語ったピーターだが、彼らの音楽はここ苗場の地に確かに刻まれた。そして、ホワイトステージ、いや、グリーンステージでもいい、体調万全でもう一度観たい!頼むからまた帰ってきてくれ!

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MARTIN GARRIX http://fujirockexpress.net/19/p_1714 Sun, 28 Jul 2019 16:21:21 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1714 世界ナンバーワンDJと名高いマーティン・ギャリックスが、苗場の地に降臨!SIAとともに新時代のフジロックを象徴する存在として、ラインナップの中でも異彩を放っていた彼は、定番となっているベルギーのEDMフェスティバル、トゥモローランドの1週を蹴ってまで、わざわざ苗場を選んでくれた。

注目されていたステージセットはシンプルなものだったが、プレイするマーティンとそれに熱狂するオーディエンスを交互にモニターに映しながら、リアルタイムで様々な映像効果を重ねる、2年前のAphex Twinのステージを彷彿とさせるビジュアルが展開された。これがまた絶妙で、映し出された自分の熱狂が、グリーンステージ全体に伝播していく、なんとも中毒的なものだった。

そして、なんといっても鮮烈だったのが、ステージから後方の森へ投影される数十本のレーザー光線。縦横無尽に動くレーザーが映しだす雨粒の数が増えれば増えるほど、より幻想的な空間がグリーンステージに現出する。これがまた僕らを高揚させるのだ。

しかし、そういったテクノロジーはあくまでおまけのようなもの。王道のEDMマナーにのっとって「1,2,3 Let’s Go!」とドロップされる曲群の中でも、“No Sleep”や先日リリースされた“These Are the Times”が持つメロディアスなフレーズが彼の特徴の一つ。これがまたなんとも感傷的で、あっという間に過ぎ去ってしまうフジロックの刹那的な儚さと実によくマッチしていた。そして、代表曲の“Summer Days”や“Virus”では初日のThe Chemical Brothersのようなディープなエレクトロサウンドも飛び出す。この男、一筋縄ではいかない。

“Scared to Be Lonely”、“In The Name of Love”や、クライマックスの“There for You”、“High on Life”に込められた歌心も彼の真骨頂で、思い思いのシンガロングが巻き起こっていたし、フジロックアンセムのひとつ、The White Stripesの“Seven Nation Army”でもリフの大合唱。EDMにそれほど慣れていない人が多いであろうフジロックでも、ただただ「楽しい」という気持ちを共有していた。

この時間は大雨が降っていたが、マーティンのプレイに没頭しているとほとんどそれが気にならない。むしろ、レーザーが投影された時にこんなに降っていたのかと驚かされたりもした。こうしてマーティンのプレイが、数万人が集ったグリーンステージをダンスフロアに変えたのだった。

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KHRUANGBIN http://fujirockexpress.net/19/p_1794 Sun, 28 Jul 2019 16:11:20 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1794 ミラーボールが周囲の木々を照らし、幻想的な雰囲気に包まれたフィールドオブヘブン。3月の来日ツアーが全公演ソールドアウトとなるなど、テキサスの3人組への期待の高さがうかがわれる沢山の人の中、大トリのクルアンビンが登場すると、割れんばかりの拍手が沸き起こる。

トレーニングウェアのようなカラフルな衣装のローラ・リーのベースが、ラフなタッチでビート刻んでいく。そこに流れるようにスライドしていくマーク・スピアーのギターが絡み合い、妖艶でサイケなサウンドスケープが展開。そして、衣装も相まってフロントの2人が目を引きがちだが、ドナルド”DJ”ジョンソンのクレバーなドラムプレイがどっしりとバンドの屋台骨を支える。

それぞれの技量を最大限に引き出すトライアングルから、ディープなグルーヴが生まれてくる。アジアンテイストをまとったメロウなファンクサウンドを、最終日の大トリ、疲れのピークに当てられるのだ。夢なのか現実なのか曖昧になってくる陶酔感に浸りながら、身体の反応のまま踊りふけるオーディエンス。うとうと座りながら心地よく浸ってる人もいる。ここは桃源郷なのか。

こんなに踊れる音を鳴らしているのに、本人達はまるで歌謡ショーのようなゆったりとした佇まい。“Evan Finds the Third Room”では、電話を使った小芝居で「ハロー、フジロック!」と声をかけてみたり、ゆったり歩くローラとマークが交錯し、ただならぬ雰囲気を醸し出したり、クルアンビンの異様な存在感はライブが進むにつれ増していくばかりだ。

軽快で陽気なYMOカバー“Firecracker”に続いて、必殺ギターの“Maria También”が本編を締める。マークの早弾きとローラの音数の少ないベースの絡み合いがなんとも気持ちいい。ドナルドだけを残し2人が脇に下がると、割れんばかりの拍手がヘブンにこだまする。

拍手がリフレインする中、ドナルドのキックの音が聞こえてくる。スネア、タムと音数を増していき、銀ピカのセットアップを纏ったローラの登場に、再び盛大に湧き上がるオーディエンス。マークもステージに戻り、ゆったりと育て上げてきたグルーヴは最高潮を迎える。始まる前は満身創痍という感じだった僕も、最後の“People Everywhere (Still Alive)”が終わる頃には、確かな満足感に清々しさを感じていた。

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YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ×オオルタイチ) http://fujirockexpress.net/19/p_1912 Sun, 28 Jul 2019 12:13:09 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1912 前日から降り続いた雨もようやく上がり、しっとりした空気の漂うピラミッドガーデン。大きな麦わら帽子を被りながら現れたコムアイは、「朝起きてくれてありがとう」と集まった人々を労うように声をかける。YAKUSHIMA TREASUREの登場だ。

数々のコラボレーションをしてきた水曜日のカンパネラが次に選んだ相手はなんと屋久島。YAKUSHIMA TREASUREは、コムアイと電子音楽家のオオルタイチが屋久島の自然の中で、あの手この手で様々な音を採集し、それを元に楽曲に再構築するプロジェクトだ。前日のデイドリーミングでのERUSAERT AMIHSKAYと併せて、今回のフジロックが初めてのライブセットという彼ら。いったいどんなことが起こるんだろうというソワソワした空気の中、マニピュレーション担当のオオルタイチから屋久島の音が飛び出してくる。

風がせせらぎ、波は揺れ、水滴がリズムを刻む中、遠く彼方を見つめながら息を吐くように歌うコムアイ。彼女が見ているのは苗場の木々たちだ。オオルのコントロールするビートが加速するにつれ、まるで大地全体が躍動しているかのような感覚を肌に感じる。装飾も照明もないシンプルなステージセットだが、後ろに広がる広大な自然や、呼応するように照り出した太陽がそれといってもいいだろう。トンボを手に停め戯れるように揺れるお客さんがいたのが印象的だった。

テクノやエレクトロのような音楽を奏でるオオルタイチだが、その響きはどこまでもオーガニック。コムアイも自然の力が憑依したかのように全身で躍動を表現する。屋久島の言葉だろうか、民謡のような歌が特徴的な“屋久の日月節”では、どことなくゆったりとした異国情緒が漂う。と思えば大地の怒りをあらわしたような重いビートが身体を打ったり、生き物の鼓動のようなリズムにゆらゆら揺れたり、屋久島の自然はどこまでも雄大に僕らを包み込む。

後半になるにつれエレクトリックな感触を増してくるオオルタイチのサウンド。最後は水曜日のカンパネラに彼が提供した“愛しいものたちへ”。この空間を共有するすべてのものへの大らかな愛に溢れたコムアイの歌唱に、ピラミッドガーデン全体がしみじみと聞き入っていた。ここ苗場の地で始めてのライブセットを披露した意義は大きいだろう。新たな自然の力を取り込み邁進する彼ら。来月のLIQUIDROOMでのワンマンもまた違う景色が見られそうだ。

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COURTNEY BARNETT http://fujirockexpress.net/19/p_1736 Sun, 28 Jul 2019 11:05:05 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1736 大雨が降ったり、急にやんでまた降ったりする、不安定な気候の午後4時。ホワイトステージに駆けつけた時には大雨が降り出し、待っている人達も心なしか動きが重いが、白いタンクトップ姿で現れた彼女を見て一気に湧き上がる。オーストラリアのシンガーソングライター、コートニー・バーネットの登場だ。

ギターを弾く姿がなんて様になることだろう。気怠げな雰囲気を漂わせながらも、“Avent Gardener”のギターソロを弾くコートニーのハマり具合に思わず「カッコいい…」と何度もつぶやいてしまう。口ずさむ人もちらほらいて、雨の中でも彼女のパワフルなプレイにのせられて、ホワイトステージのテンションは上がっていく。

ピックを使わずにストロークをする独特のスタイルで、カラッとしたギターサウンドを奏でるコートニー。左利きなこともあって、よくカート・コバーンが引き合いに出される彼女だが、“Need a Little Time”の退廃的な叙情を思うと、確かに彼の姿がダブるかもしれない。

キラーチューン“Nameless, Faceless”が投下されると、ボルテージは急上昇!身体を投げ出すような動きで、コートニーがキレのあるギターを叩き込むと、オーディエンスは応えるようにシンガロングしながら手を振り上げる。ああ、かっこいい…。そして、日本語で「大好き…」なんて呟くコートニー。これにはさすがにみんなドキッとして、一瞬遅れて歓声があがる。

“Depreston”、“Elevator Operator”と続けた頃には雨があがって、さっきまで以上にガンガンのりだすオーディエンス。最新曲”Everybody Here Hates You”では、楽しそうにする僕らの姿を見て、コートニーから思わず笑みがこぼれる。そして、荒々しくギターロックの衝動をぶつける“Pedestrian at Best”は今日一番の盛り上がり。最高潮のまま、コートニーは駆け抜けていく。あえてヒロインという必要もない。僕らの胸を熱くさせる彼女の姿は、最高のギターヒーローだった。

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STELLA DONNELLY http://fujirockexpress.net/19/p_1764 Sun, 28 Jul 2019 10:17:59 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1764 開始10分前から、大勢の人が詰めかけるレッドマーキー。サウンドチェック中のバンドから、聞き覚えのあるフレーズが飛び出すだけで歓声があがり、注目度の高さが伺える。オーストラリアはパース出身のシンガーソングライター、ステラ・ドネリーの待望の初来日ステージだ。

ABBAの“Dancing Queen”が流れる中、踊りながら登場したステラ。幼少期の自らの写真が大写しとなったスクリーンをバックに、「元気ですか!」といきなり日本語で会場を沸かせると、1曲目“Grey”が始まる。ハイフレットにカポタストをつけ、シンプルに爪弾くその姿は、ジェフ・バックリィやエリオット・スミスといった往年の名シンガーソングライターを彷彿とさせる。歌心溢れる甘美なメロディに、どことなく憂いが混ざるあの感じだ。

“You Owe Me”、“Beware of the Dogs”、“Mosquito”と続く弾き語りパートでは、表情豊かな歌声でシンガーとしての実力を存分に発揮するステラだが、その姿はどこまでも愛らしくキュート。オーストラリアでYouTube配信を観ているという父親に、「ハーイ!ダッド!」と声をかけたり(そう考えるとすごい時代だ)、ギターを弾く仕草や、ふとした表情などすべてが愛おしい。レッドマーキー中が彼女に夢中になり、一曲ごとに大歓声が湧き上がる。それを見て照れたように笑うステラもまたかわいい…。

続く“Old Man”でいよいよバンドが登場。ドラムやベースを加えたビートに、奔放に動き回るステラはさらに愛らしさを増しているが、「あなたは私が怖いの、おじいさん? それとも、私がしようとしていることを恐れているの?」と刺激的な言葉が飛び出すこの曲。男性社会に対する痛烈な言葉で、#MeToo時代のアイコンとなった彼女だが、いたずらに分断を煽るのではなく、どこまでもキュートにポップに表現するからこそ、垣根を越えて誰からも愛されるのだろう。僕も少し考え込んでしまう。

そんな彼女の魅力がいっぱいに詰まったのが“Die”だろう。キーボードのジャックとともに、コミカルな振り付けを披露するポップソングに、会場はキュンキュンしっぱなしだが、「死にたくない!」を連呼する姿は、Chvrchesのローレン・メイベリーとも似た、意志の強さを感じさせる。決してかわいいだけではないのだ。そして圧巻は、真に迫る歌声が胸に刺さる“Boys will be boys”。「男の子なんだからしょうがない」と諦めにも似た皮肉を込めたこの曲を、会場中が見守る。僕は、わけもわからずウルっとなってしまう。

最後は「一緒に踊ろう!」と、キャッチーなダンスナンバー“Tricks”でレッドマーキーを朗らかな気持ちで包み込んだステラ・ドネリー。しかし、それ以上に大切な何かも、残していったように思える。自然体で愛らしい彼女の表現を観ていると、シリアスな社会問題も自分事として入ってくる。これこそが、無知と偏見の荒野を切り開くポップミュージックの精神を体現した、ステラ・ドネリーのパワーなのだ。

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INTERACTIVO http://fujirockexpress.net/19/p_1744 Sun, 28 Jul 2019 07:02:27 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1744 昨年は別名義も含む6ステージを賑やかなキューバンビートで踊らせたインタラクティーヴォが、今年も苗場の地にやってきた!大将こと日高正博が惚れ込んだキューバのビッグバンドは、昨年のフィールドオブヘブンでのライブを収録した『INTERACTIVO EN VIVO EN FUJI ROCK』をリリースしたことも相まって、「もう一度観たい」と、恋い焦がれていたフジロッカーも多かったに違いない。

前日の木道亭、苗場食堂でもフジロックを賑わせた彼らは、負けじと多数のステージを練り歩く、スタンダップコメディアンのSaku Yanagawaに迎え入れられて、ステージに登場する。昨日とは打って変わって、かんかん照りのホワイトステージ。彼らと一緒に踊るには最高の環境だ!

歓迎ムード全開の中、1曲目の“ALABAO SEA DIOS”から熱いキューバンビートで会場中が踊りだす。このバンドの頭脳、ロベルティコことロベルト・カルカセスのピアノを中心に賑やかす、13人編成のビッグバンドだが、ごちゃごちゃした感じもせず、驚くほどまとまりのあるサウンドを奏でるのが印象的だ。

リラックスしたムードで身体を動かすオーディエンス。後方で座っている人も手を振り上げたり、歩きながら見知らぬ人と手を振り交わしたり、横の友達と競うようにダンスしたりと、とにかく視界に入るすべての人が気分よく踊っている。こんなの最高じゃないか…。

代わる代わるメインボーカルが入れ替わったり、ギターソロ、ピアノソロと目まぐるしく展開したり、観ているだけで楽しい彼らのライブ。「日本語で話してみるよ」と始まった“ANANAOYE”では、日本語混じりの歌詞にハンドクラップが巻き起こり、「あななおいぇー」とコールアンドレスポンス。ボーカルのフランシスコは歌わずに、客席にビデオカメラを向け続ける。なんでもありか。なんだか観光旅行みたいだなと、思わずクスッとしてしまった。

コンガやギロのリズムに乗せて、バイオリンや高速ラップなどいろんな音が縦横無尽に飛び交うホワイトステージ。僕らも、ややこしいことを考えずとも「踊るの楽しいな!」なんて素直な気持ちで、自由に身体を動かしていた。ああ、最高だ!

「フジロック最高!」と口々に喜びをあらわしていた彼らだが、こちらこそインタラクティーヴォ最高!と言いたい。ありがとう。また来年もフジロックで会いたいな!

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長澤知之 http://fujirockexpress.net/19/p_1815 Sat, 27 Jul 2019 19:59:19 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1815 雨が降り出した午後のジプシーアヴァロンでは、まばらに座る人々が次の演者の登場を待つ。もっと降るのかな、やんでほしいなと少し不安に思いながらも、彼が現れるのを持ち望んでいる。フジロック初出演のシンガーソングライター、長澤知之の登場だ。

まず最新作から表題曲の“ソウルセラー”と“金木犀”を披露。サポートキーボードの山本健太がさりげなく彩りを添えるシンプルで力強い弾き語りに、耳をすませる人々は座りながらもうんうんと頷いている。続く“ボトラー”ではスペーシーなSEと高速で爪弾くアコギに乗せて、長澤と山本は掛け合うように歌う。なんとも息のあったコンビネーションだ。

そして、“マンドラゴラの花”。アコギは繊細と大胆の間を縦横無尽に行き来し、キーボードにはエレクトリックな響きが混ざり合う。まるで2人とは思えない展開力だ。
“夢先案内人”では、加速するリズムにタクシーの運転手さんをモチーフとしたストーリーが重なっていく。

そんな彼の詩情が込められた“蜘蛛の糸”。「しっかり立ててしまう浅瀬ん中、泳げないことにムカついてる」という歌詞に、僕は涙が止まらなくなってしまった。痛々しいほどに率直な彼の言葉には、それぞれの日常と重なるフックが節々に潜んでいて、こんな風に不意に打ち抜かれて、思わずハッとしてしまうのだ。僕と同じ部分にグッときたのかはわからないが、ほろほろと感極まる人もちらちら見受けられる。

計ったかのように“べテルギウス”で「泣かないで」というフレーズが出てきて、なんだか見透かされたような気持ちになったが、思い思いに感情を投影しながら、ここに集う人々は情感溢れる彼の歌声に聴き入っている。なんて素敵な時間だろうか。

そして、ぐちゃぐちゃなストロークで声を枯らしながら歌う“パーフェクトワールド”。完全なんて訪れないと歌うこの曲は、不器用ながらも全身全霊で歌う彼だからこその説得力がある。“左巻きのゼンマイ”では求めたわけでもなく手拍子が沸き起こり、集った人々とともに愛を歌う長澤知之。雨に降られ続けた時間だったが、確かな元気を受け取り、僕らは立ち上がった。

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GEZAN http://fujirockexpress.net/19/p_1739 Sat, 27 Jul 2019 05:47:54 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1739 よくわからなくなってしまったというのが正直な気持ちだ。マヒトゥ・ザ・ピーポーの言葉を聞いてしまうと、あまりいい加減なことを書くわけにはいかない。
2日目のホワイトステージのトップバッターとして現れたGEZANは、あまりにも強烈に僕の胸に刻まれてしまった。そして、多分それはホワイトステージに集った人々も同じではないだろうか。

初っ端からモッシュピットを盛大に賑わせた“忘炎”。地鳴りのようなベースと空気をドライヴさせるギター、感情のまま叩きつけるようなドラムが織りなす轟音オルタナティヴロック。そこにマヒトの言葉が乗ることで、このバンドをGEZANたらしめている。マヒトは「持ってちゃいけない感情なんてない」と歌う。それは憎しみや恨みのような感情もそうなのだろうか。正解不正解ではっきり二分化される昨今の空気感の中で、この言葉はどれ程、慈しみ深く響いたことだろう。

“Wasted Youth”で更に前のめりに加速していくサウンドは、遅れて集まりだした人々を瞬時に捉えていく。一見無軌道な暴走のようにもみえる彼らの表現だが、そこにははっきりとした意志が感じられる。ベースのカルロス・尾崎がアンプの上でディジュリドゥ(アボリジニの伝統楽器)を吹き鳴らす“東京”でも、僕らの根本的な意識に疑問符が投げかけられる。「新しい時代には新しいレベルを」と語るマヒト。それは旧来の常識への反抗なのだろうか。言葉としての意味を超えたオルタナティヴの感覚が突き刺さってくる。

2012年のルーキーアゴーゴー以来のフジロック出演となるGEZAN。ギターのイーグル・タカは、その当時からホワイトステージでプレイするイメージができていたと語る。「ここに連れてきたのは自分たちの想像力」と語ったのはマヒト。所構わずコーラスの合唱が巻き起こり、モッシュにダイブにしっちゃかめっちゃかとなった“Absolutely Imagination”は、まさにそんな想像力の歌だ。例えばフジロックが始まったのもそんな想像力からなのだろうと思いを馳せる。

続く“BODY ODD”では、たくさんのゲストが入れ替わり立ち替わりする、圧巻のマイクリレーが行われる。Campanella、ENDONの那倉太一、THE NOVEMBERSの小林祐介、the hatchの山田みどり、DISCHARMING MANの蛯名啓太、そして鎮座DOPENESS。意味があるのは名前や所属ではない。彼ら一人一人の持つ個の力がGEZANと交わり新たな表現が生まれる、そんな瞬間に僕らは高揚していた。

そして、あっという間の最終曲“DNA”でマヒトは「僕らは幸せになってもいいんだよ」と歌う。彼の言葉は荒々しくも優しく、15000人とかそういう単位ではなく、僕ら一人一人に向けられているかのように胸に刺さってくる。閃光のように駆け抜けたステージを終えて、僕は泣き笑いのような、妙な感覚に陥っていた。

彼らの表現に触れると、誰もが自分のやっていることや置かれている状況について、深く考えさせられてしまう。それこそが、最後には後ろまで人々が詰め寄ったあの現場で起こっていたことなのだ。WE’RE GEZAN!と仕切りに表明していた彼らだが、その存在は苗場の地に深く刻まれたことだろう。

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