“Masanori Naruse (Official Photo)” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/19 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 02 Sep 2019 02:34:33 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.10 TAKKYU ISHINO http://fujirockexpress.net/19/p_1776 Tue, 30 Jul 2019 18:08:59 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1776 2日目。これまで経験したことが無いような豪雨に見舞われた今年のフジロック。かなりきつい思いをした人もたくさんいたと思う。僕たちエキスプレスのスタッフも同様に機材を壊した者もいたし、テントが流された者もいた。GAN-BAN SQUAREでの石野卓球のステージは、天候不良によりキャンセルされた。
3日目。昨日の豪雨が嘘のように晴れ渡った苗場。これが山の天気か。そう思わせる、いわばフジロックを象徴したような天気だった。あっという間に時間は流れ、グリーンステージではお決まりの“Power To The People”がかかる。ここから会場内は、レッドマーキーの時間となる。最後まで楽しもうというフジロッカー、そして今年もフジロックに終止符を打つ石野卓球を見ようと残るフジロッカーがたくさんいた。
卓球のステージをどのように感じただろう。今年ほど、斜めに見られる年はなかったのではないだろうか。音楽以外でのニュースが飛び交い、SNSではさまざまな憶測が語られた。なにか特別なことが起きるんじゃないか…。そう期待した人も多かったのではないか。いつもなら、“その期待は裏切られ、通常営業の卓球のステージ、期待を我関せずといつも通りのステージを展開し、観客を沸かせた”なんて書いていたかもしれない(きっと本人は今年もそういう感じなんだろうけど)。しかし、今年、我々フジロッカーは、いつもとは違うものを見たんだ。
もろもろの仕事を終え、レッドマーキーに到着したのは、朝4時半を回っていた。あと30分。これで今年のフジロックが終わってしまう。そんな悲観と焦燥が入り混じった気持ちでレッドマーキーを覗くと、大勢の観客が踊っていた。サイドの出入り口からは、人が溢れんばかり。後方までしっかり埋まっている。毎年この時間のレッドマーキーで、ここまで観客がいることはそうないので、かなり驚いた。空はとうに明るくなっている。フジロックの終わりが刻一刻と迫るなか、最後になる卓球のステージを堪能すればするほど、物憂げな気持ちになっていく。卓球はと言えば、たんたんとDJをしているように見える。後半も後半、“富士山”がかかり、「おお! 今年のフジロックは、富士山で始まり、富士山で終わるのか! 粋だねぇ」なんて思ってテンションがあがり、観客と一緒になって、ふじさーんを連呼。素晴らしいステージだった。本当にありがとう卓球さん。なんて思っていたら、ここで“虹”がかかる。そしてバックには、今年のフジロックの映像が。
ふりかえる事もたまにある
照れながら思い出す
遠くて近い つかめない
どんな色か分からない
ゆっくり消える虹みてて
トリコじかけになる
この時間、ここに居られて本当に良かった。今年のフジロックのハイライト。過酷なフジロックだったからこそこの曲が効く。瀧のことを思ってこの曲が効く。最終日だからこの曲が効く。いろんな共感があったと思う。だからこそ、あの時間にあの盛り上がりがあったんだろう。割れんばかりの歓声と苗場にかかった“虹”がフジロックのカーテンコールとなったのだ。ふとステージを見れば、ウルトラのツアーTシャツを纏った卓球。なんだいるんじゃん、瀧。今でもこの文章を書いていて鳥肌が立っている。

]]>
竹原ピストル http://fujirockexpress.net/19/p_1797 Mon, 29 Jul 2019 02:22:40 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1797 竹原ピストル。ここ数年、その名を聞く機会が増えたと思っているのは、私だけではないはずだ。ミュージシャンとして、役者としての実りを迎えて絶好調の彼が、フジロックに初登場する。実は彼、2002年にフォーク・バンド「野狐禅」としてアバロンに出演した経験も。野狐禅でできなかったこと、フジロックでできなかったことを果たすべく、満を持してメインステージへ。竹原ピストル、タイトル獲得に向けリベンジ・マッチが今ここでスタートする!

その熱の入りようはリハーサルをする様子からもすでに伝わってきた。きっと彼には伝えたいことや歌いたいことがいっぱいあって、限りある時間を最大限に使って表現していきたいのだと、私には映った。

1曲目が”オールドルーキー”。タイトルからして明らかなのだが、ここ、フィールドオブヘブンに立つオールドルーキー・竹原ピストルの姿が歌と重なる。「積み上げてきたもので/勝負しても勝てねぇよ/積み上げてきたものと/勝負しなきゃ勝てねえよ」。そう歌う彼の言葉一つ一つを観客たちは、自身に受け止めた。生きろと叱咤激励される“live in 和歌山”や、献身的な愛を歌う日本語詞をあわせた“Amazing Grace”など、あらゆる曲たちがあって、ときに励まされ、ビンタされ、優しく抱きしめられたりする。混じりけのない直球メッセージに涙を誘われ、ハンカチで目元を押さえる観客もちらほら。

さらに驚いたのは、MCにおいても彼はとても丁寧で、びっくりするくらい腰が低いということ。手拍子が自然発生した曲の最後には「盛り上げてくださって、ありがとうございます」とか、盛り上がった曲には「嬉しかったです」などストレートな対応で、彼と観客、お互いに穏やかな気持ちになれる気がするのだ。また、CMソングでおなじみの“よー、そこの若いの”では、観客みんなが一緒に歌いだし、逆に彼の涙を誘うという場面もあった。

なんといっても素晴らしかったのが、“カウント10”。かつてボクシング部に所属していた竹原らしい1曲なのだが、ここに、彼の核ともなるワンフレーズが存在する。歌詞を簡単に解説すると、「カウント9までは神様が決めてしまう部分があるかもしれないが、10だけは、自分の諦めが決める」という内容。野狐禅の解散でカウント10を出さなかった、絶対に数えなかった竹原が今ここに立っているのは、自分との戦いに勝ったからなのかもしれない。

人生は戦いだ。常に自分に勝ち続けなければならない。勝負への決意と厳しさ、そして喜びを教えてくれる竹原ピストルは、私たちの中のチャンピオンだ。

]]>
MITSKI http://fujirockexpress.net/19/p_1747 Fri, 26 Jul 2019 13:47:48 +0000 http://fujirockexpress.net/19/?p=1747 9月以降、ライブ活動を無期限停止するという彼女。昨年リリースの近作『ビー・ザ・カウボーイ』がPitchforkの年間ベストに選出。それまでのオルタナティヴな女性アーティストというイメージから、洗練されたサウンド・プロダクションの上で感情というより魂を自由に放つような歌が際立つこの作品は世界的に高い評価を獲得した。それだけに日本ではこのフジロックでのライブ以降、次はいつ見られるかわからない、今のMITSKIを確かめにきた人たちがレッドマーキーを埋める。

縦長のアーティストロゴが白く光り、ドラム、ギター、キーボードがステージに上がり、続いてMITSKIが登場。フィットした白いカットソーにフィットネスに着用しそうなタイトなショートパンツ、膝にはプロテクターという衣装。少し不思議なその衣装の訳はすぐ判明する。

キャリアを総括する意味合いなのか、1曲目は“Goodbye,My Danish Sweetheart”でスタートし、続くは新作から“Why Didn’t You Stop Me?”。ここで机を使ったパフォーマンスに移っていく。膝をついて器械体操のようにもヨガのポーズにも見えるようなアクションを見せながら、歌は全くブレない。驚くことに仰向けになって足を動かしたり、大きく反り返ったりしても物憂げなあの歌は変わらないのだ。

これは憶測だけれど、新旧の楽曲を今までで最もアバンギャルドなパフォーマンスという表現で今のMITSKIのショーとして並列し、オーディエンスにとってひと連なりのストーリーを見せようというアプローチなんじゃないか?

バンドの生演奏と無機的なシークエンスが融合する“I Will”や“I Don’t Smoke”などを経て、曲のエンディングで背景のロゴとスポットライトに照らされるMITSKIの組み合わせに鳥肌が立つ。いわばロゴと本人で架空の雑誌のようなビジュアルなのだ。でも華やかというより、ダークで孤独な歌姫といった印象だろうか。ショーの間に3度ほどあったこのシーンはしばらく目に焼き付いて離れないだろう。

MCでは「レッド(マーキー)住まいの皆さん、今日、何曜日ですか?金曜日。よく休みが取れましたね。今日はこんな調子でいきますよ。踊ります」と、彼女流のユーモアが発揮されると、固唾を飲んで見つめていたフロアの温度が少し上がった。加えて、彼女のレパートリーの中でも広く知られる“Nobody”で歓声が上がり、一瞬ポップなモードに入ったが、フロアタムのビートが攻撃的なな“Drunk”で、マイクスタンドをマシンガンのように構えてフロアに向け、シャウト。むき出しのエモーションのようにも思えるが、机を使ったパフォーマンスそのものがアーティスティックなせいか新旧の楽曲に一貫性を見出せる。というか、自分が見出したいのかもしれない。ラストには諦観と平穏と疑いが混ざったような曲、“Happy”を配したのも意味深な感じだ。

「ありがとうございました。MITSKIでした」と深々とお辞儀をした後は潔くステージを後にした彼女。自由と束縛の両方を感じさせる机の上での運動のようなパフォーマンスを突き詰めたことで、表舞台のMITSKIは一つの完成に至ったのだと思う。稀有な場面を目撃できたことに、レッドマーキーを後にする人たちは言葉少なだった。

]]>