“古川喜隆” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '21 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/21 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 02 Aug 2022 05:24:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.18 誰もが真剣に向き合い、決断を迫られた「コロナ禍のフジロック」 http://fujirockexpress.net/21/p_5816 Tue, 31 Aug 2021 08:53:35 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=5816  いつも通りなら、エキスプレスの締めくくりとなるこの原稿の巻頭を飾るのは、すべての演奏が終了した会場最大のグリーン・ステージ前で、満面の笑みを浮かべるオーディエンスの写真となるはずだった。が、今年は撮影さえもしていない。例年ならば、この時間帯、巨大なスピーカーから放たれる名曲、ジョン・レノンの「Power To The People」でみんなが踊り狂うことになるのだが、それが聞こえてくることもなかった。それに代わったのはMC、スマイリー原島氏の挨拶と締めの一言「Power To The People」だけ。オーディエンスの興奮に水を差すのは承知の上で、現場が最後の最後に彼らに対して「ゆっくり静かにフェスティヴァルの幕を閉じるようにお願いしよう」と判断したからだ。

 コロナ禍でのフェスティヴァル開催という、きわめて特殊な状況の下、例年とは全く趣を異にする光景が、始まる前から様々な場所で見え隠れしていた。越後湯沢駅に向かう新幹線から会場へのシャトル・バスでも同様で、いつもなら、嬉々とした表情を浮かべて仲間とはしゃいでいるはずなのに、誰もが言葉少なに見える。彼らが互いに適度な距離を開けて整然と列に並び、苗場を目指しているのだ。今回のフジロックを開催するに当たって、参加するお客さんから、全スタッフ、関係者に伝えられていたのが感染防止ガイドライン。それを彼らが徹底して守ろうとしているのが見て取れる。

 フジロッカーにとってはおなじみの、オアシス・エリアのど真ん中に姿を見せるはずのやぐらは見当たらず、それを囲んで、地元生まれの「苗場音頭」を大音響でながしながら、みんなが輪を描いて踊る光景もなかった。それが今年のフジロック開催前夜。過去10年以上にわたって続けられてきたというのに、レッド・マーキーで、「おかえり!」と声をかけて、「ただいま」と応えるみんなの記念撮影をすることも、もちろん、なかった。本来ならば、フジロックを愛する人達が待ちに待った時間の到来に、彼らの興奮が一気に爆発するのが前夜祭の開かれる木曜日の夜。しかも、前年の開催が延期されての2年ぶりだというのに、きわめて静かな幕開けとなっていた。

 公式に「前夜祭はない」と発表されてはいたものの、唯一それを感じさせてくれたのは、直前までやるのかやらないのか全く知らされなかった花火ぐらいかもしれない。例年なら、ここで大歓声がわき起こり、否応なしに「祭り」の始まりを感じさせてくれるのだが、そんな反応は一切なかった。最初の一発が打ち上げられたとき、わずかに驚きの声が聞こえ、涙を流す人がいたという話も耳に入っている。が、誰もが夜空を飾る花火をなにやら厳かに見上げていたように思う。拍手はあったかもしれないが、シ〜ンと静まりかえった会場で、花火の音と光だけが響くという、どこかで「特殊なフジロック」を象徴するかのような光景が目の前に広がっていた。おそらく、誰もがここまでたどり着くのが簡単ではなかったことを察していたのではないだろうか。


Photo by 安江正実

 当初、ライブハウスなどからクラスターが発生したことも影響したんだろう、感染拡大を誘発する場所として、ライヴ・エンタテインメントの場所がやり玉に挙げられ、そういったものが知らない間に「不要不急」を象徴するものであるかのように語られ始めていた。数多くのライブハウスが閉店を余儀なくされ、ミュージシャンや演劇人が作品の発表の場を奪われたのみならず、照明や音響の技術者が職を失っていた。さらには大規模なコンサートからフェスティヴァルが次々と延期やキャンセルの憂き目にあう。もちろん、感染拡大は阻止しなければいけない。が、同時に、音楽のみならず文化とは生きることに必要不可欠な要素であり、それを否定することはできない。その集大成としてフェスティヴァルという文化が存在する。とりわけ、それが日本で生まれ、成長していくきっかけとなったフジロックを根絶やしてはいけないという思いが主催者、関係者、そして、フジロッカーにはあったということだろう。

 それだけではなかった。昨年、フジロックが延期を発表した頃、町内から「なんとか開催できないか」という打診があったという噂を耳にしている。その理由はフジロックで生まれる経済効果であり、それが断たれることが地元に計り知れない影響を与えることになる。それが二年も続けば壊滅的な打撃を受ける可能性も否定できない。だからこそ、地元と主催者が開催に向けた方法を模索し始めるのだ。その結果として、可能な限り徹底的な感染予防策を築き上げ、観客には不自由きわまりないがんじがらめの感染予防ガイドラインを提示することになる。しかも、本来のキャパシティのほぼ25%程度にまで規模を縮小。結果として1日の最大動員数は1.4万人弱と、一般的なスポーツ競技で日本武道館をほぼ満杯にした程度にとどまることになる。

 これで採算が取れるんだろうか? しかも、感染問題に絡んで参加に不安を感じている人達や体調がすぐれない人達へのチケット払い戻しにも対応している。加えて、チケット購入者にコンタクトをして、希望者には抗原検査キットを発送し、大多数の人たちがそれに応えていた。が、それでもまだ不安だと、目指したのは100%。必要とされる膨大な数の抗原検査キットを集めるのに東奔西走したという話が伝わっている。さらに、会場内の救護テントに加え、バックヤードには数多くの医療関係者や民間救急搬送車3台を待機。また、会場入りする前に全スタッフがPCR検査を受け、陰性であることを証明してからでないと、苗場入りできない取り決めをしていた。加えて、長期滞在するスタッフは定期的に抗原検査を繰り返す。さらに、すでに会場入りしていても、自宅の家族で濃厚接触者が報告されると速効で会場を追われ、陰性であることを証明することなく現場復帰はできなくなっていた。ちなみに、観客のみならずスタッフも全員が毎日検温チェックを受けないと、会場に入ることもできないことになっている。どこかの新聞が「厳戒態勢」という言葉を使っていたのだが、まさしくその通りだろう。


Photo by 粂井 健太

 下手をすると、今年は最もフジロックらしくないフェスティヴァルになるかもしれないという危惧があった。どこかで自由と自主性が魅力となっていたフジロックだというのに、感染対策に絡んで「がんじがらめ」のルールを守らなければいけない。しかも、コロナ禍での開催ということもあり、海外からのアーティストは皆無。会場を演出するUKチームの来日もできなかった。なにやら、フェスティヴァルと言うよりも、緑に囲まれた野外コンサートでしかないかもしれない。さらには、場内でのアルコール販売が禁止され、中心部から離れた場所にごくわずかに用意された喫煙所を除いて全面禁煙となっていた。1997年にフジロックが始まった頃から、毎回出店していた、オアシス・エリアの顔のような存在となっていたバーやお店の数々が出店をキャンセル。すでに「ここに来れば顔を合わせることができる」友人や仲間たちが参加を断念するにいたるのだ。

 誰もが苦渋の決断と選択を迫られていた。特に大都市を中心に新型コロナウイルス感染者が急増し始めると、「なんとか開催してほしい」という声と同じように、「中止すべき」という声も多くなっていった。出演を予定していたアーティストやパフォーマーに対しても、様々な声が寄せられ、参加しようとしていた個人も揺れ動いていた。その結果がなにであれ、ひとりひとりが真剣にフジロックに向き合い、判断したことに敬意を表したい。来てくれたみなさんにも、今年は来るのをやめたみなさんにも、ありがとう。中止すべきだと主張した人にも、開催すべきだと声を上げた人達にも、出演してくれたアーティストにも、出演辞退をした人達にも、ありがとう。そういった反響に感じるのは、多くの人たちにとってフジロックが大きな存在になっていること。だからこそ、真剣に向き合って、彼らが導き出した判断に最大限の敬意を表したいと思う。

 会場では感染予防ガイダンスを守ろうとするオーディエンスに圧倒されることになる。少なくとも、喫煙所やフード・テントを除いて、マスクをしていない人にはお目にかからなかった。しかも、ここで食事をしていて気付くのだ。ほとんど会話が耳に入ることはなかった。「黙食をお願いします」と書かれている注意書きを守ろうとしているのが、痛いようにわかるのだ。久々に仲間と会って握手をしたり、抱き合いたい気持ちがあっても、それを躊躇して肘や拳で挨拶。マスク越しに語り合う人はいても、大声で話す人にはお目にかからなかった。また、水分補給などでマスクを外すときも、周辺に人がいないことを確認してそうしているのが見て取れた。

 ふつうならグリーン・ステージ外にMCを置くことはなかったのだが、今回は全ステージにMCを配し、演奏が始まる前に必ずオーディエンスに呼びかけていたことがある。

「必ず鼻を隠すようにマスクをして、声は出さないでください。安全な距離を保つために地面に記されたマークを確認してください。ステージ前では水分補給用のペット・ボトルなどを除いて、飲食物を持ち込まないでください」

 MCにはそのマニュアルが渡され、毎回オーディエンスに訴えかけるように義務づけられていた。そうして飛沫や接触による感染を防ごうとしているのは言うまでもない。

 そのおかげで目撃するのは、おそらく、フェスティヴァルやライヴでは前代未聞の光景だっだ。どれほどライヴが白熱しても、ほとんど歓声が聞こえることはなく、聞こえてくるのは拍手や手拍子のみ。それでも、その想いがステージ上に伝播するんだろう。加えて、悩み抜いてここに来る決断をしたアーティストの想いがそこに重なって、誰もがとてつもない熱を感じさせるパフォーマンスを見せていた。それは数えるほどのオーディエンスしか目に入らなかったちっぽけなステージであろうと、幾分の違いもなかった。今年は、会場入りを断念した数多くの人達がYouTubeでそれを目撃することになるのだが、演奏の素晴らしさを支えていたのはこの場で生まれた、えもいわれぬエネルギーのたまものではなかっただろうか。


Photo by MITCH IKEDA


Photo by Eriko Kondo

 今年は、珍しく、チーフ・プロデューサーの日高大将が二度、グリーン・ステージに立っている。昔からフジロックを支えた二人の仲間が他界したことを告げたのが初日、そして、最後、日曜日のトリを務めた電気グルーヴの前。そこで彼がオーディエンスから感じたのは「なんとかしてフジロックを支えようとする人々の熱気だった」という。それが端的に表れていたのは彼らが感染防止ガイダンスを守り続けたことのみならず、まるで1999年の苗場で起きた奇跡の再現でもあった。すべてが幕を閉じた後、会場にはほとんどゴミが落ちていなかったという。ゴミ・ゼロ・ナビゲーションを訴えて、活動しているiPledge(アイプレッジ)が毎日、会場に落ちたゴミを拾い集めているのだが、各所に設置された収集箱を除いてほとんど仕事がなかったという嬉しい話も届いている。

 フェスティヴァルが終わった8月24日に発表された主催者からの公式声明によると、その時点で「会期中の会場においてひとりの陽性者も確認されていないこと」が伝えられている。もちろん、それで完結してはいない。「今後も、時間経過と共に情報収集に努め、その結果をあらためて皆様へご報告し、未来のフェスティヴァルにおける感染防止対策の改善につなげてまいります。」と続いている。また、振り返るには早すぎるかもしれないが、完璧を目指したすべての関係者、地元のみなさん、そして、全国から会場にやって来ることができた方々や来られなかった方々にも、批判した方々にも、ここまでたどり着けたことを感謝したいと思う。

 台風に襲われて惨憺たる状況を経験した1997年開催の第一回目から、その存続が問われる大きな試練となったのが苗場に場所を移して最初の1999年。「ロック・フェスティヴァルは危険だ」という偏見に対して、互いを思いやり、愛し合うことを行動で示すことによって、会場どころか、苗場の町からお世話になったホテルや民宿でゴミひとつ落ちていない「奇跡」を形にしていた。これが「地元と共にフェスティヴァルを育てる」という流れを生み出している。それ以降、同じように台風や記録的な豪雨といった幾多の試練を乗り越えて成長してきたとは言え、今回直面したのは前代未聞のウイルスによる危機だった。前述のように、まだまだ結論を導くには早すぎるのは十分承知の上で、関わるすべての人達が可能な限りの知恵と努力で「奇跡」を目指した今年は、フジロックの歴史を語る上で無視できない1年となったことは言うまでもないだろう。

 どこかで様々な意見や考え方の違いが音楽界で分断を引き起こしているという声も耳に入る。が、フェスティヴァルを愛する人達が、多様性を認めるのは当然であり、互いを尊敬し、受け入れて、そこからよりよい選択肢へと自らを導いていくべきだと思う。その上で、今回の経験を糧に、来年を目指したいと思うのだ。このウイルスによる影響がいつまで続くのか、誰にも予測はできないかもしれない。いつか、そんな心配をすることもなく、苗場でみんなとまみえることがある日を願って、今年のエキスプレスの幕を閉じたいと思う。

 なお、ガイダンスに則り、感染を防ぎながら取材をしなければいけないという難しい状況のなかで、動いてくれたスタッフに最大限の賛辞を贈りたい。マスクやフェイス・シールドの用意はもちろん、安全な距離を保ちながらの取材は簡単ではなかったはず。また、独自に用意周到な感染対策を生み出してラウンジを運営したスタッフにも頭が下がる。心の底から、ありがとう。

 今年動いてくれたスタッフは、以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/21/
フォトグラファー:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、白井絢香、HARA MASAMI、おみそ、suguta、シガタカノブ、佐藤哲郎
ライター:丸山亮平、阿部光平、石角友香、あたそ、梶原綾乃、阿部仁知、近藤英梨子、イケダノブユキ、三浦孝文、東いずみ

■英語版(http://fujirockexpress.net/21e/
Laurier Tiernan, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、obacchi、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:三ツ石哲也、若林修平、守田 昌哉、Park Baker、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgとは1997年のフジロック公式サイトから独立した、フジロックを愛する人々のコミュニティ・サイト。主催者から公式サポートを得ているが、独自取材で国内外のフェスティヴァルからその文化に関わる情報を発信。開催期間中は独自の視点で会場から全方位取材で速報を届けるフジロック・エキスプレスを運営。
http://fujirockers.org/
MerdekaTogel

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Awesome City Club http://fujirockexpress.net/21/p_838 Wed, 25 Aug 2021 23:00:00 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=838 最終日、グリーンステージのトップバッターを飾るのはAwesome City Club。ステージ上部には緑と花の巨大なリースが掲げられていて、下手にはビニールプール、上手にはベンチと、なんだかにぎやかなステージの予感がする。3人のコーラスと、キーボード、ドラム、ベースという編成のもと、atagi(Vo&Gt)、PORIN(Vo)、モリシー(Gt)が舞台に登場。3人とも緑色に統一されたファッションだ。

「おはようございます!Awesome City Clubです!」と始まったのは“夏の午後はコバルト”。ビニールプールに現れたダンサーがバブルガンでしゃぼん玉を放っていくと、PORINとatagiのハーモニーがばっちり決まって、会場は一気にハッピーな空気に包まれていく。ここで新たに4人のストリングスがメンバーに加わり、13人という大編成にパワーアップ!「今日最高の景色を見に行きましょう」とatagi。

“GOLD”が始まると、待ってました!とばかりの大きな手拍子が会場に響き渡る。そのまま“アウトサイダー”では、コーラス隊と一緒に右に左にとステップを踏むPORINのなんと楽しそうなことか。何重にも分厚くなった圧倒的サウンドスケールで、観客を魅了した。“青春の胸騒ぎ”はゆったり伸び伸びとした苗場の昼下がりにちょうどよく合うし、“color”の息のあったコーラスワークもまた癒やされるのだけど、今日は“Don’t Think, Feel”からの流れが素晴らしかった。もう曲名の通りなのだが、着席していたストリングスまでも立って踊ってのお祭り騒ぎ。奏者から観客までが全身で感じる、ソウルでファンクな巨大ナンバーに化けていた。続いての“今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる”もまた、会場が一体となって盛り上がれる曲だった。空にぐるっと輪を書くような振り付けが楽しいが、モリシーの鋭いサウンドも差し込まれたりして、多角的なアプローチを感じられる。atagiとPORINが立ち位置を入れ変えながら歌う姿は、ミュージカルで恋の駆け引きでも見ているような気分だった。

中盤には、すっかり彼らの代表曲となった“勿忘”も披露された。みんながもう何度も聴いているであろうこの曲、会場の空気感で咀嚼すると、ずいぶん違う曲になるんだなと思った。静かでまっさらな空に響き渡る2人の力強いハーモニー。かと思えば、13人の厚みが総動員されて、ぐっとロックになっていく。静と動の使い分けや、言葉と言葉の絶妙な間も効いていて、バラードというよりはロックなナンバーに仕上がっていた。

最後は「みんな元気でいてください、また会いましょう」と“Lullaby For TOKYO CITY”。メンバー全員がギターを構え、笑顔をこぼしながら演奏するその姿は、音楽への喜びと未来に向けての祈りが詰まっていた。総勢13人のビッグステージ、いまのAwesome City Clubのエンターテインメントが全部詰まった、現在の集大成的ステージだった。

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Julia Shortreed http://fujirockexpress.net/21/p_937 Sun, 22 Aug 2021 13:00:27 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=937 GOMA meets U-zhaan http://fujirockexpress.net/21/p_936 Sun, 22 Aug 2021 11:00:21 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=936 Char http://fujirockexpress.net/21/p_891 Sun, 22 Aug 2021 06:30:54 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=891 私が見たフジロック(Day 2)from スタッフI http://fujirockexpress.net/21/p_3627 Sat, 21 Aug 2021 17:22:52 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=3627 フジロック2日目が終わった。いつものフジロックなら「こんな楽しい時間があと1日で終わるのか……」と寂しい気持ちに襲われて時間を止めたくなる。だけど、今年はそんな気持ちになれない。とりあえず2日目が終わってホッとしている感じである。

素晴らしいライヴもたくさんあった。感動して涙も流した。旨い飯も食った。明日も楽しみなアーティストはいる。まだ自分の気持ちに整理をつけることができない。

この日観たのは、KEMURI、ムジカ・ピッコリーノ、AJICO、サニーデイ・サービス、The Birthday(後半)、ROVO、THE SPELLBOUND(後半)だった。

KEMURIのふみおの涙にもらい泣きし、ムジカ・ピッコリーノでは藤原さくらの可愛さに悶絶し、AJICOではUAの存在感に圧倒され、サニーデイ・サービスは前日のくるりを思わせるような異様なテンションに惹き込まれ、ROVOはいつものように最高だった。途中、激しい雨が降り一旦宿に戻ったりもして、観たいバンドを断念したけど、観たライヴはどれも素晴らしかった。

しかし、昨日から考えていることはDYGLのことである。過去の盛り上がる曲を封印し、新曲でのセットリストにした。他のアーティストがひとつの答えをだして(例えば、RADWIMPSの野田やROVOの勝井のように「今回は成功させて次回に繋げよう」とか)、それを上手く消化してメッセージにするのではなく、自分の迷いをそのまま言葉にした。悩んでる、迷ってるというアーティストはいるけど、ほとんどの場合、ステージに立つ頃にはすでに答えがでている。KEMURIのふみおは「前日のリハーサルで、メンバーにフジロックに出ることへの賛否を訊いたら半々だった……でも、"P.M.A"をやった後でみんなに訊いたら『やってよかった』って」。"P.M.A"の直後の MCなので、そんなメンバー全員に訊いて回ってたっけ? と思うけど、つまりはその MCの時点で答えがでているのである。もちろんどっちがよいとか悪いという話ではない。

KEMURIもサニーデイも古くからのファンが喜ぶようなセットリストにした。AJICOもTHE SPELLBOUNDもメンバーが過去に在籍していたバンドの曲をやってファンを喜ばせた。そこで際立つのがDYGLなのだ。もちろん、キャリアからすれば、今挙げたバンドよりも短いし、まだ駆け出しともいえる。その中でも定番曲があり、盛り上がることが半ば約束されている曲を封印したのは、まだ成長途上のバンド故の試行錯誤なのか、コロナ禍に対する最も誠実な回答なのか。その答えがでるのはまだ先なのかもしれない。先であって欲しい。

ROVOがガラガラだった問題

ROVOのフィールド・オブ・ヘヴン(以下ヘヴン)がガラガラだった。グリーンステージで大物洋楽アーティストがやっていても、かなり埋まるようにフジロックのROVOは鉄板なはずなのに、なぜ今回はガラガラだったのだろうか。ステージ前は容易に最前までいけるし、後ろの通路あたりには人がいなかった。椅子を置いてもよいゾーンもソーシャルディスタンスを確保できるくらい。実感ではグリーンでレディオヘッドがやっているときのヘヴンのレイ・ディヴィスのようだった。

もちろん、集客と音楽の質は必ずしもイコールではないからガラガラだったのが悪いということではないし、ROVOを観ない人が悪いという話でもない。自分だって被りがなければTHE ALEXXや King Gnuやナンバーガールを観ていたのだ。このガラガラは今年のフジロックのことを象徴していることだと思うので、いろいろと考えてしまうのだ。

その理由のひとつは、普段ROVOを観る人がフジロックに来なかったということがある。いわゆる「ヘヴン(奥地)の住人」みたいな人がいなかったと感じるのだ。グリーンやホワイトのアーティストに目もくれずに、居心地のよいヘヴンで酒を飲みマッタリと過ごす人があまりいなかった。今回は酒が飲めないというのも大きかったかもしれない。そして、やはり人気のKing Gnuや復活して話題のナンバーガールが強力過ぎて邦楽ロックファンにアピールできなかったということもあろう。あとはハード面になるけど、ROVOが始まった時点でヘヴンより先のステージは終わっていたし、オレンジカフェの飲食店も22時には終わっていた。つまり、ヘヴンが終点になってしまい往来がなくなってしまったのだ。そして、ヘヴンにはさくらぐみのピザなど名物フェスごはんがあったけど、今年はヘヴンに飲食店がなかったことも大きいのではないか。ヘヴンに飯を食べにくるということがなくなってしまった。いろんな要因が重なってしまったけど、ライヴはいつものように最高だった。やっぱり「ROVOにとってヘヴンはホーム」を実感させるものだった。もちろんまたヘヴンに帰ってきてほしい。

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ROVO http://fujirockexpress.net/21/p_889 Sat, 21 Aug 2021 14:29:49 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=889 フジロックの常連でもあり、昨年から単独の野外公演「ハイライフ八ヶ岳」を多摩あきがわのキャンプ場で開催するなど、いち早くパンデミック時代のライブのあり方を模索し、同時に築き上げてきたROVO。自由に踊り自由に振る舞うライブをアップデートせざるを得なかった彼らの動向は多くのミュージシャンにとって、新しいライブのあり方やマナー(勝井祐二は「新しいクオリティ」と呼ぶ)を具体的に参照し、リスペクトも集めてきた。

知見やライブ現場での皮膚感覚を積み重ねてきた2021年夏現在のROVOがフジロックに帰ってくる。主にコアなバンドのファンやフジロックで楽しむROVOのダイナミズムを知っているオーディエンスが多いように感じた。ただし、開演当初はグリーンのKing Gnu、ホワイトではNUMBER GIRLという、身体がいくつあっても足りない振り分けである。馴染みのオーディエンスを前にライブは勝井の「自分たちで新しいルールを作るフジロックだと思っています」と最近では恒例になったメッセージから、1曲目は“SPICA”。 益子樹(Syn)のシンセに芳垣安洋(Dr/Per)、岡部洋一(Dr/Per)のツインドラムが鋭く切り込み、原田仁(Ba)のローが地面を揺らすと、チルっていたオーディエンスにスイッチが入る。ステージの照明は暗く、わずかにプロジェクション・マッピングが演出に使われているぐらいのヘブンの暗闇で人々が蠢き、そしてどろどろの地面が匂う。五感すべてが開放されるとはこういうことなのだ。

静かに始まり物語を変遷しつつ、肉体も変身していくようなROVOの楽曲をヘブンで体感する贅沢はここに集まる人は知っているのだろう。ただただ、マスク越しにしか苗場の空気を吸い込めないのはつくづく残念だ。細胞に新鮮な空気と音を供給したいのだ。これはむしろノンアルだからこそ感じたことかもしれない。

“AXETO”、“SUKHNA”と生き物めいた展開を見せる曲が続き(どの曲もそうだが)、山本精一(G)の多彩なフレーズが楽しめる“ARCA”へ。優しい単音から、メタルのクランチなニュアンスに近い音もジャムバンド的なソロもある。ギター・ソロかと思えば勝井のエレクトリック・バイオリンが重層的に空間を広げる。セルフネームの新作『ROVO』収録の“SAI”は牧歌的な側面もあり、バンドの新しい方向性を示した楽曲。そう。この曲でマスクが恨めしくなったのだった。

1時間半という、ワンマンライブに匹敵するセットリストの最後は初期の代表曲“CISCO!”だった。遠巻きに眺めていたけれど、ツインドラムの熱量が上がる様はやはりしっかり見たい。前方にはおのおの自分の踊り方でROVOの宇宙を楽しんでいる人ばかり。ソーシャル・ディスタンスも踊るにはちょうどいい塩梅なのである。気がつけば随分、人が流れてきていた。初めてROVOに出会った人がいますように。

一時、勝井さんはMCをしないバンドがしゃべるようになった理由がライブの注意喚起だなんて不思議だと話していらしたが、それも徐々に浸透。一歩先に切り拓いてきた道はこの日のヘブンにももちろん通じていた。

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Dachambo http://fujirockexpress.net/21/p_890 Sat, 21 Aug 2021 12:03:45 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=890 日も暮れてライトが幻想的な雰囲気を醸し出す19時過ぎのフィールドオブヘヴンにはDachamboが登場。2014年以来7年振りのフジロックで、過去5回のバンド出演はすべてヘヴンだというのだから、中には「ヘヴンのDachamboは間違いない」ということを体験しているフジロッカーもきっといるのだろう。初日のピラミッドガーデンに続いての出演となったAO YOUNG(Gt / Vo)が「フジロック楽しんでいこう!俺たちがDachamboだ!」とヘヴンに投げかけ、音楽の旅のはじまりだ。

この地までたどり着いた喜びを噛み締めながら、音だけで徹底的にヘヴンを煽っていく“stoned monkey”から、シームレスに移行する“never ever breaking down”。EIJI(Ba / Cho)とYAO(Dr / Per / Cho)がどっしりと構えるビートが下支えする中、AO YOUNGが軽快にギターを掻き鳴らし、OMI(Didgeridoo / Cho)もフリーキーにディジュリドゥを振り回す。そして、サイケデリックな音像を創り出すHATA(Machine / Motivation)のシンセに、エレクトリックなビートメイク。かたやフィジカル全開で奏でる4人と電子が煌めくHATAのサウンドが混ざり合って、まるで一つの生命のように迫りくる演奏に圧倒されながらも、ヘヴンに集った人々の身体がじりじりと開放されていく。

ギターの音が出なくなるトラブルもなんのその。それさえも演出かのようにグルーヴを深めていくDachamboの面々。スキャットで呼応するAO YOUNGは「でも音楽は鳴り止みませんよ」と叫び、この場で曲が完成していく様は、まさに“never ever breaking down”じゃないか。「しっかり準備をしてもこうなるのがDachambo」とEIJIと軽口を交わすAO YOUNG。結成20周年を迎える彼らのパフォーマンスは、スリリングだけどとてもアットホームな空気が流れている。

「音出たー!!」と待ってましたとばかりにギターを掻き鳴らす“can not biz”では、フロントの3人が身振り手振りを交えながら輪唱のように声を重ねていく様が印象的だ。声も楽器として奏でるジャムセッションは、さらに自由なフィーリングをヘヴンに創り上げていく。2005年にはじめてここに来た時から歌っているという“サルビア・オリビア”では手拍子とかすかなシンセの中、荘厳な雰囲気で延々と「サルビア」「オリビア」を繰り返す間のセクションに混迷のジャムセッションを挟み込む。どんだけいろんなフィーリングが飛び出してくるんだよフィールドオブヘヴン!

最後の“ピカデリア”ではジリジリと育ってきたグルーヴが頂点に達し、気づいたら一心不乱に踊っているオーディエンスたち。それでもちゃんとソーシャルディスタンスを保ちながら自分の踊りに没頭している光景のなんと美しいことか。知らなかった自分を掘り起こすような音楽体験をもたらしてくれたDachamboに最後はみんな惜しみない拍手をおくるが、これはDachamboだけじゃなくて、同じ時をともにした人々と自分自身を讃える拍手だ。そんなことを感じながらヘヴンの余韻にしばらく浸っていた。

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THE BAWDIES http://fujirockexpress.net/21/p_861 Sat, 21 Aug 2021 09:55:11 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=861 2007年のルーキーステージ出演から始まり、2010年のホワイト、2013年のグリーン、2016年のレッドマーキーとコンスタントに出演し続けているTHE BAWDIES。バンドも歴史を重ね、フジロックとの付き合いも長くなってきた彼らが、5年ぶりにここへ帰ってきた。また、9月には約2年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『BLAST OFF!』の発売も予告されている。転がり続ける彼らの今をひと目見ようとレッドマーキーへ向かった。

この日は新衣装のお披露目でもあった。斜めストライプのネクタイに、マスタードカラーがアクセントのジャケット&パンツを合わせた『BLAST OFF!』告知画像と同じものである。SEとともに大きな拍手で迎えられると、それに応えるようなROY(Vo,B)の咆哮。「あのときを取り戻しましょうか、あのときに戻りましょうか!」と、“LET’S GO BACK”からスタートした。暴れだしたり、しゃがんだりとJIM(Gt)の縦横無尽な動きを見ていると、かつてのライヴにおける自由さが、少しだけでも蘇ってきた。彼に負けじと、飛び跳ねたりステップしたり、思い思いに楽しんでいる観客たち。ただもちろん、声は出せないので、「心で一緒に歌ってください」とROY。それぞれの心の中で、大きな歌声が響き渡ったに違いない。

アクセル全開、アドレナリン出っぱなしのまま「遅れないでついてきてくださいね!」と“IT’S TOO LATE”。ROYのおなじみのハスキーな歌声と、最後のひび割れたロングトーンに、観客は終始痺れっぱなしだ。
「飛び上がれますか?」と煽るように始まった“YOU GOTTA DANCE”では、2人のギターと1人のベース、それぞれのソロパートがつながれていき、よりいっそうの盛り上がりを見せていく。

KEEP ON FUJI ROCKIN’であると同時に、これからのTHE BAWDIESも走り続けていくつもりだ、そんな意志を込めて新曲“OH NO!”へ。MARCY(Dr)のセカンドラインのリズムの上に、ソリッドなギターリフがきいた王道的ナンバー。最近の彼らを知らない人にとっても楽しめたはずだ。また、この日初めてプレイした“T.Y.I.A.”もまた、一度聞いたら忘れられない、ライヴ向きの爽快ナンバーだった。

MCでは、彼らが高校3年生のときに参加したフジロックからもう20年が経過しているという話題に。学生時代からの付き合いであるTHE BAWDIESの4人。長い想いと歴史を重ねたぶん、彼らにとってここが特別な場所であるということがよくわかる。それぞれの想いのかけ方は違うかもしれないけれど、観客の想いも同じ。フジロッカーが積み重ねてきた想いや経験が、この地に染み込んでいるのだろうという話になった。

そんな熱い語りに心をもっていかれたのもつかの間、「我々は“HOT DOG”という楽曲の準備にはいらせていただきます」と準備の末、謎の寸劇が始まったところからが今日のハイライト。スターウォーズにおけるルークとダース・ベイダーの戦いを模しているようで、ルークがROY、TAXMANがダース・ベイダー、JIMがヨーダに、MARCYがC-3POに扮している。これにはおそらく観客も「ここからどうやって曲に持っていくの……?」と戸惑ったことだろうが、突然のドッグパンが登場し、ライトセーバーが一体となってホットドッグが誕生(?)した。そこからの“HOT DOG”は、飛べや踊れやの大盛りあがり!軽快なドラミングに体ははずみ、ROYのシャウトに血が沸きあがる。彼らといえばこの曲を挙げる人も多いだろう、観客たちがこの曲との再会を喜びあっているようにも感じとれた。

その“HOT DOG”を皮切りに、後半戦は観客と怒涛の展開。「フジロックは世界に誇るお祭りですよね、祭りといえば打ち上げ花火!」「最高の打ち上げ花火をいただけますか?」と“SKIPPIN’ STONES”。みな、踊り疲れた足でもひたすらにジャンプをして、会場にたくさんの花火が打ち上がった。最後は“JUST BE COOL”で締め、最後の最後にメンバーによる「わっしょい!」の掛け声と観客のハンズアップで終了した。たくさんの手のひらが上げられていて、その間からは会場の光が漏れている。それはとてもきれいな光景だった。

今日のセットリストは、おなじみのナンバーを切り取りつつも、ここ数年の彼らの足跡をしっかりと辿ることもできる、バランスのよいものだった。結成20年はもうわずかの彼らが、これからも転がり続けていく様子を見守っていきたい。

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Yogee New Waves http://fujirockexpress.net/21/p_860 Sat, 21 Aug 2021 09:54:11 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=860 例年よりも約1ヶ月遅れのフジロック、初日。気持ちいい風が吹いてきたと思ったら、もう秋風っぽくて、もう少し夏でいさせてくれよと思ってしまう。そんな気持ちのまま、Yogee New Wavesを観るべくレッドマーキーへ向かった。

2014年のルーキーアゴーゴーを経て、2017年はメインステージへ出演した彼ら、久しぶりの登場である。同世代であるnever young beachやSuchmosらもどんどんと活動の場を広げていくなか、彼らもまた、彼らのやり方で、慎重に着実に歩みを進めてきたなと振り返る。先月、4枚目のアルバム『WINDORGAN』のリリースが発表され、それに伴うツアーも行われるということで、まだ出会えていない多くの新作たちを耳にするのがとても楽しみである。

舞台下手のベースアンプ上には、彼らのロゴをかたどったネオンが、テーマカラーであるブルーに輝く。「よろしく〜! We are Yogee New Waves!」と角舘健悟(Vo,Gt)の掛け声から始まる1曲目は“Summer of Love”。角舘の淡い淡い歌声がこだますると、上野恒星(Ba)のベースが脈打ち、楽曲に命が吹き込まれていく。ジュブナイル的な歌詞や、過ぎゆく季節を感じられるようなサウンドの機微も相まって、非常にドラマチックな幕開けだった。

続いて“SISSOU”は、先述した『WINDORGAN』からの先行リリース曲。竹村郁哉(Gt)の軽やかなギターに乗っかった<さらば ADIOS GOODBYE 再見 またね>というフレーズが印象的。角舘はときに柔らかく、ときに冷笑的にと、メリハリよく歌いこなしていった。
その後、“CAN YOU FEEL IT”と続き、“Climax Night”へ。会場の照明がブルーに染まると、一足早い夜がやってきたようだ。粕谷哲司(Dr)の的確なビートと、上野のゆったりとしたベースラインが、前へ前へと歩み出し、我々の背中を押してくれる気がした。

「いろいろな思いがあるフジロックだけど、今日はここでやれてよかったです」と言うと、「ソウル、ファンク、アンビエント……(数々の音楽ジャンルを挙げ)、刹那的に捉えないで、末長く楽しんで欲しい」と告げる。今日どのアーティストとも違う意思の表明。そのスケールの大きさには驚いたが、彼ららしい真っ直ぐな音楽への愛が伝わってきた。

ここからは、松井泉(Perc)と高野勲(Key)を迎えた6人編成で進行した。“to the moon”は松井のボンゴでダンサブルなアレンジが強まっているし、“Bluemin’ Days”の<部屋のすみで 少しだけピアノを弾き>というフレーズには、高野のピアノがきらびやかに添えられていて感動した。

終盤にかけては、よりムーディな空気がゆったりと会場を包み込む。“Ride On Wave”では、それぞれのパートがアンサンブルを重ね、バンドがひとつになっていく様子やそのグルーヴ感が壮観。そして“Like Sixteen Candles”は、現在のYogee New Wavesの実力を証明するかのような仕上がりだった。しっとりと始まったかと思えば、ずっしり重めなギターアレンジが効いている。角舘のヴォーカルはゆったりになったり、駆け足で畳みかけたりと、曲全体を自由に行き来しているようなアプローチだ。随所に遊び心も含みつつ、壮大な人生のバラードとして聴こえてきた。

「どうもありがとう、バイバイ」と最後は新曲“Toromi days”でしっとりしっかり、甘くチルアウトな雰囲気を残して彼らは去っていった。彼らは何倍にも大きくなって帰ってきたなと感じるし、とてもいい風も運んできてくれたと思う。名残惜しい今夏に刻むひと夏の思い出のような、特別な音をこれからも鳴らし続けていってほしい。

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