“MITCH IKEDA” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '21 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/21 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 02 Aug 2022 05:24:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.18 誰もが真剣に向き合い、決断を迫られた「コロナ禍のフジロック」 http://fujirockexpress.net/21/p_5816 Tue, 31 Aug 2021 08:53:35 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=5816  いつも通りなら、エキスプレスの締めくくりとなるこの原稿の巻頭を飾るのは、すべての演奏が終了した会場最大のグリーン・ステージ前で、満面の笑みを浮かべるオーディエンスの写真となるはずだった。が、今年は撮影さえもしていない。例年ならば、この時間帯、巨大なスピーカーから放たれる名曲、ジョン・レノンの「Power To The People」でみんなが踊り狂うことになるのだが、それが聞こえてくることもなかった。それに代わったのはMC、スマイリー原島氏の挨拶と締めの一言「Power To The People」だけ。オーディエンスの興奮に水を差すのは承知の上で、現場が最後の最後に彼らに対して「ゆっくり静かにフェスティヴァルの幕を閉じるようにお願いしよう」と判断したからだ。

 コロナ禍でのフェスティヴァル開催という、きわめて特殊な状況の下、例年とは全く趣を異にする光景が、始まる前から様々な場所で見え隠れしていた。越後湯沢駅に向かう新幹線から会場へのシャトル・バスでも同様で、いつもなら、嬉々とした表情を浮かべて仲間とはしゃいでいるはずなのに、誰もが言葉少なに見える。彼らが互いに適度な距離を開けて整然と列に並び、苗場を目指しているのだ。今回のフジロックを開催するに当たって、参加するお客さんから、全スタッフ、関係者に伝えられていたのが感染防止ガイドライン。それを彼らが徹底して守ろうとしているのが見て取れる。

 フジロッカーにとってはおなじみの、オアシス・エリアのど真ん中に姿を見せるはずのやぐらは見当たらず、それを囲んで、地元生まれの「苗場音頭」を大音響でながしながら、みんなが輪を描いて踊る光景もなかった。それが今年のフジロック開催前夜。過去10年以上にわたって続けられてきたというのに、レッド・マーキーで、「おかえり!」と声をかけて、「ただいま」と応えるみんなの記念撮影をすることも、もちろん、なかった。本来ならば、フジロックを愛する人達が待ちに待った時間の到来に、彼らの興奮が一気に爆発するのが前夜祭の開かれる木曜日の夜。しかも、前年の開催が延期されての2年ぶりだというのに、きわめて静かな幕開けとなっていた。

 公式に「前夜祭はない」と発表されてはいたものの、唯一それを感じさせてくれたのは、直前までやるのかやらないのか全く知らされなかった花火ぐらいかもしれない。例年なら、ここで大歓声がわき起こり、否応なしに「祭り」の始まりを感じさせてくれるのだが、そんな反応は一切なかった。最初の一発が打ち上げられたとき、わずかに驚きの声が聞こえ、涙を流す人がいたという話も耳に入っている。が、誰もが夜空を飾る花火をなにやら厳かに見上げていたように思う。拍手はあったかもしれないが、シ〜ンと静まりかえった会場で、花火の音と光だけが響くという、どこかで「特殊なフジロック」を象徴するかのような光景が目の前に広がっていた。おそらく、誰もがここまでたどり着くのが簡単ではなかったことを察していたのではないだろうか。


Photo by 安江正実

 当初、ライブハウスなどからクラスターが発生したことも影響したんだろう、感染拡大を誘発する場所として、ライヴ・エンタテインメントの場所がやり玉に挙げられ、そういったものが知らない間に「不要不急」を象徴するものであるかのように語られ始めていた。数多くのライブハウスが閉店を余儀なくされ、ミュージシャンや演劇人が作品の発表の場を奪われたのみならず、照明や音響の技術者が職を失っていた。さらには大規模なコンサートからフェスティヴァルが次々と延期やキャンセルの憂き目にあう。もちろん、感染拡大は阻止しなければいけない。が、同時に、音楽のみならず文化とは生きることに必要不可欠な要素であり、それを否定することはできない。その集大成としてフェスティヴァルという文化が存在する。とりわけ、それが日本で生まれ、成長していくきっかけとなったフジロックを根絶やしてはいけないという思いが主催者、関係者、そして、フジロッカーにはあったということだろう。

 それだけではなかった。昨年、フジロックが延期を発表した頃、町内から「なんとか開催できないか」という打診があったという噂を耳にしている。その理由はフジロックで生まれる経済効果であり、それが断たれることが地元に計り知れない影響を与えることになる。それが二年も続けば壊滅的な打撃を受ける可能性も否定できない。だからこそ、地元と主催者が開催に向けた方法を模索し始めるのだ。その結果として、可能な限り徹底的な感染予防策を築き上げ、観客には不自由きわまりないがんじがらめの感染予防ガイドラインを提示することになる。しかも、本来のキャパシティのほぼ25%程度にまで規模を縮小。結果として1日の最大動員数は1.4万人弱と、一般的なスポーツ競技で日本武道館をほぼ満杯にした程度にとどまることになる。

 これで採算が取れるんだろうか? しかも、感染問題に絡んで参加に不安を感じている人達や体調がすぐれない人達へのチケット払い戻しにも対応している。加えて、チケット購入者にコンタクトをして、希望者には抗原検査キットを発送し、大多数の人たちがそれに応えていた。が、それでもまだ不安だと、目指したのは100%。必要とされる膨大な数の抗原検査キットを集めるのに東奔西走したという話が伝わっている。さらに、会場内の救護テントに加え、バックヤードには数多くの医療関係者や民間救急搬送車3台を待機。また、会場入りする前に全スタッフがPCR検査を受け、陰性であることを証明してからでないと、苗場入りできない取り決めをしていた。加えて、長期滞在するスタッフは定期的に抗原検査を繰り返す。さらに、すでに会場入りしていても、自宅の家族で濃厚接触者が報告されると速効で会場を追われ、陰性であることを証明することなく現場復帰はできなくなっていた。ちなみに、観客のみならずスタッフも全員が毎日検温チェックを受けないと、会場に入ることもできないことになっている。どこかの新聞が「厳戒態勢」という言葉を使っていたのだが、まさしくその通りだろう。


Photo by 粂井 健太

 下手をすると、今年は最もフジロックらしくないフェスティヴァルになるかもしれないという危惧があった。どこかで自由と自主性が魅力となっていたフジロックだというのに、感染対策に絡んで「がんじがらめ」のルールを守らなければいけない。しかも、コロナ禍での開催ということもあり、海外からのアーティストは皆無。会場を演出するUKチームの来日もできなかった。なにやら、フェスティヴァルと言うよりも、緑に囲まれた野外コンサートでしかないかもしれない。さらには、場内でのアルコール販売が禁止され、中心部から離れた場所にごくわずかに用意された喫煙所を除いて全面禁煙となっていた。1997年にフジロックが始まった頃から、毎回出店していた、オアシス・エリアの顔のような存在となっていたバーやお店の数々が出店をキャンセル。すでに「ここに来れば顔を合わせることができる」友人や仲間たちが参加を断念するにいたるのだ。

 誰もが苦渋の決断と選択を迫られていた。特に大都市を中心に新型コロナウイルス感染者が急増し始めると、「なんとか開催してほしい」という声と同じように、「中止すべき」という声も多くなっていった。出演を予定していたアーティストやパフォーマーに対しても、様々な声が寄せられ、参加しようとしていた個人も揺れ動いていた。その結果がなにであれ、ひとりひとりが真剣にフジロックに向き合い、判断したことに敬意を表したい。来てくれたみなさんにも、今年は来るのをやめたみなさんにも、ありがとう。中止すべきだと主張した人にも、開催すべきだと声を上げた人達にも、出演してくれたアーティストにも、出演辞退をした人達にも、ありがとう。そういった反響に感じるのは、多くの人たちにとってフジロックが大きな存在になっていること。だからこそ、真剣に向き合って、彼らが導き出した判断に最大限の敬意を表したいと思う。

 会場では感染予防ガイダンスを守ろうとするオーディエンスに圧倒されることになる。少なくとも、喫煙所やフード・テントを除いて、マスクをしていない人にはお目にかからなかった。しかも、ここで食事をしていて気付くのだ。ほとんど会話が耳に入ることはなかった。「黙食をお願いします」と書かれている注意書きを守ろうとしているのが、痛いようにわかるのだ。久々に仲間と会って握手をしたり、抱き合いたい気持ちがあっても、それを躊躇して肘や拳で挨拶。マスク越しに語り合う人はいても、大声で話す人にはお目にかからなかった。また、水分補給などでマスクを外すときも、周辺に人がいないことを確認してそうしているのが見て取れた。

 ふつうならグリーン・ステージ外にMCを置くことはなかったのだが、今回は全ステージにMCを配し、演奏が始まる前に必ずオーディエンスに呼びかけていたことがある。

「必ず鼻を隠すようにマスクをして、声は出さないでください。安全な距離を保つために地面に記されたマークを確認してください。ステージ前では水分補給用のペット・ボトルなどを除いて、飲食物を持ち込まないでください」

 MCにはそのマニュアルが渡され、毎回オーディエンスに訴えかけるように義務づけられていた。そうして飛沫や接触による感染を防ごうとしているのは言うまでもない。

 そのおかげで目撃するのは、おそらく、フェスティヴァルやライヴでは前代未聞の光景だっだ。どれほどライヴが白熱しても、ほとんど歓声が聞こえることはなく、聞こえてくるのは拍手や手拍子のみ。それでも、その想いがステージ上に伝播するんだろう。加えて、悩み抜いてここに来る決断をしたアーティストの想いがそこに重なって、誰もがとてつもない熱を感じさせるパフォーマンスを見せていた。それは数えるほどのオーディエンスしか目に入らなかったちっぽけなステージであろうと、幾分の違いもなかった。今年は、会場入りを断念した数多くの人達がYouTubeでそれを目撃することになるのだが、演奏の素晴らしさを支えていたのはこの場で生まれた、えもいわれぬエネルギーのたまものではなかっただろうか。


Photo by MITCH IKEDA


Photo by Eriko Kondo

 今年は、珍しく、チーフ・プロデューサーの日高大将が二度、グリーン・ステージに立っている。昔からフジロックを支えた二人の仲間が他界したことを告げたのが初日、そして、最後、日曜日のトリを務めた電気グルーヴの前。そこで彼がオーディエンスから感じたのは「なんとかしてフジロックを支えようとする人々の熱気だった」という。それが端的に表れていたのは彼らが感染防止ガイダンスを守り続けたことのみならず、まるで1999年の苗場で起きた奇跡の再現でもあった。すべてが幕を閉じた後、会場にはほとんどゴミが落ちていなかったという。ゴミ・ゼロ・ナビゲーションを訴えて、活動しているiPledge(アイプレッジ)が毎日、会場に落ちたゴミを拾い集めているのだが、各所に設置された収集箱を除いてほとんど仕事がなかったという嬉しい話も届いている。

 フェスティヴァルが終わった8月24日に発表された主催者からの公式声明によると、その時点で「会期中の会場においてひとりの陽性者も確認されていないこと」が伝えられている。もちろん、それで完結してはいない。「今後も、時間経過と共に情報収集に努め、その結果をあらためて皆様へご報告し、未来のフェスティヴァルにおける感染防止対策の改善につなげてまいります。」と続いている。また、振り返るには早すぎるかもしれないが、完璧を目指したすべての関係者、地元のみなさん、そして、全国から会場にやって来ることができた方々や来られなかった方々にも、批判した方々にも、ここまでたどり着けたことを感謝したいと思う。

 台風に襲われて惨憺たる状況を経験した1997年開催の第一回目から、その存続が問われる大きな試練となったのが苗場に場所を移して最初の1999年。「ロック・フェスティヴァルは危険だ」という偏見に対して、互いを思いやり、愛し合うことを行動で示すことによって、会場どころか、苗場の町からお世話になったホテルや民宿でゴミひとつ落ちていない「奇跡」を形にしていた。これが「地元と共にフェスティヴァルを育てる」という流れを生み出している。それ以降、同じように台風や記録的な豪雨といった幾多の試練を乗り越えて成長してきたとは言え、今回直面したのは前代未聞のウイルスによる危機だった。前述のように、まだまだ結論を導くには早すぎるのは十分承知の上で、関わるすべての人達が可能な限りの知恵と努力で「奇跡」を目指した今年は、フジロックの歴史を語る上で無視できない1年となったことは言うまでもないだろう。

 どこかで様々な意見や考え方の違いが音楽界で分断を引き起こしているという声も耳に入る。が、フェスティヴァルを愛する人達が、多様性を認めるのは当然であり、互いを尊敬し、受け入れて、そこからよりよい選択肢へと自らを導いていくべきだと思う。その上で、今回の経験を糧に、来年を目指したいと思うのだ。このウイルスによる影響がいつまで続くのか、誰にも予測はできないかもしれない。いつか、そんな心配をすることもなく、苗場でみんなとまみえることがある日を願って、今年のエキスプレスの幕を閉じたいと思う。

 なお、ガイダンスに則り、感染を防ぎながら取材をしなければいけないという難しい状況のなかで、動いてくれたスタッフに最大限の賛辞を贈りたい。マスクやフェイス・シールドの用意はもちろん、安全な距離を保ちながらの取材は簡単ではなかったはず。また、独自に用意周到な感染対策を生み出してラウンジを運営したスタッフにも頭が下がる。心の底から、ありがとう。

 今年動いてくれたスタッフは、以下の通りです。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/21/
フォトグラファー:森リョータ、古川喜隆、平川啓子、北村勇祐、MITCH IKEDA、アリモトシンヤ、安江正実、粂井健太、白井絢香、HARA MASAMI、おみそ、suguta、シガタカノブ、佐藤哲郎
ライター:丸山亮平、阿部光平、石角友香、あたそ、梶原綾乃、阿部仁知、近藤英梨子、イケダノブユキ、三浦孝文、東いずみ

■英語版(http://fujirockexpress.net/21e/
Laurier Tiernan, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:飯森美歌、obacchi、藤原大和

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、坂上大介(デザイン)、迫勇一

スペシャルサンクス:三ツ石哲也、若林修平、守田 昌哉、Park Baker、そして、観客を守るために奔走してくれた全スタッフ、試練を乗り越えてフェスティヴァルの素晴らしさを伝えてくれた観客のみなさん。

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgとは1997年のフジロック公式サイトから独立した、フジロックを愛する人々のコミュニティ・サイト。主催者から公式サポートを得ているが、独自取材で国内外のフェスティヴァルからその文化に関わる情報を発信。開催期間中は独自の視点で会場から全方位取材で速報を届けるフジロック・エキスプレスを運営。
http://fujirockers.org/
MerdekaTogel

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私が見たフジロック(Day 3)from スタッフM http://fujirockexpress.net/21/p_5524 Tue, 24 Aug 2021 09:01:04 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=5524  今年のフジロックもあっという間に最終日を迎えた。例年なら、3日目の朝に目が覚めた瞬間から終わってしまうことへの寂しさがこみ上げてきたものだが、もちろんその気持ちもあるものの今年は少し違う。とにかく平穏無事に終わってほしいと、フジロックが来年も開催されることを切に願う気持ちが強い。 

 今年のフジロック開催にあたって、ツイッターで「#フジロックの開催中止を求めます」ハッシュタグができるなど、主催者をはじめ、出演アーティストや全国から来場するフジロッカーが批判にさらされている。批判している人たちの言い分、意見や考えはごもっともなものが多いのも事実だし、批判や批評があって当然で何も悪くない。なぜ主催者は開催に踏み切り、演者は出演を決め、我々は現地に赴くのか。「なぜフジロックなのか?」ということに尽きると思う。

 私もフジロックに参加しはじめた頃は、お目当ての出演アーティストがいて、音楽を聴きに行くのが一番の目的として参加していた。毎年足を運ぶうちに、徐々にただ愛する音楽を聴きに行くだけの場ではなくなってくる。フジロックはフェスティヴァルなんだということを体感するのだ。音楽、アート、食事というそれぞれの分野で活躍している人たちが大切にしている表現、苗場の大自然の中でこそのフジロックだということ、地元湯沢町、新潟県との繋がり、主催者の想い、ここで出会った仲間たち、現場で新しく知り発見する社会のことなど、その総和がフェスティヴァルという文化を醸成し、自分の中でのフジロック像を形成してきた。ここに触れて感動するからこそ毎年参加し、現場を伝えたいというところからフジロック・エキスプレスにも参加するようになり、フジロックがない普段の大阪での日々もフジロック好きや音楽好きの集いである【フジロッカーズ・バー関西】をbig cakeでやらせてもらったりと、フジロックと繋がって生きている。これが私なりの「なぜフジロックなのか?」だ。

 最終日の印象的なライヴのことも振り返っておきたい。まず、GEZANだ。首謀者のマヒトゥ・ザ・ピーポーは、フジロックの直前に晶文社のスクラップブックでの連載『懐かしい未来』において「批判や責任の一端を背負った上で、個人的な切実さを理由にわたしはフジロックのステージを全うする。生きてるってこういうことだよなっていう一つの感触を、人と人が出会うことの意味を、2021年の混乱と光の同軸で鳴らし、記号ではない血の通った存在の振動でもって、苗場を爆発させる」と自分なりの考えを表明し、尋常ではない覚悟でフジロックにのぞむことを宣言していた。そして、宣言通りに、感動の渦を生み出して苗場を爆発させた。「それぞれの選択を」という言葉には、分断を求めない祈りにも似た感情が込められている。GEZANと同時間帯にホワイトステージに立っていたのがTHA BLUE HERB。MCのILL-BOSSTINOは、今回のフジロックをただの感動で終わらせない、補償とか枠組みとか仕組みを作る重要性について、そしてそれができるのは政治家たちだということを訴えキャップを脱ぎ、頭を下げた。思い出す度に感動して震えてしまう。そして、忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER。 東日本大震災に新型コロナ、どんどん混沌としていく世界をキヨシローはどんな歌で表現しただろうか。どんな辛辣な言葉を浴びせただろう、どんな優しい言葉をかけてくれただろう、どんな可笑しな言葉で笑い飛ばしてくれただろうか。豪華出演アーティストたちが嬉々として繰り広げるまったく古びないゴキゲンなナンバーたちを聴きながら、雨が降り注ぐグリーンステージの前でみんなと一緒にて、この瞬間を噛みしめ涙が流れた。キヨシローの「愛し合ってるかい?」の投げかけに、ここには愛しかないと答えたい。

 怒っている人、おちゃらけている人、真面目な人、優しい人、混乱している人、かっこつけている人、世の中には本当に色んなあり方の人たちでいっぱいだ。それぞれがそれぞれの表現をしている。それぞれが大切なものを持っている。多くの出演アーティストたちが自分なりの考えを表明し、制限やルールがある中でも存分に楽しみことを自ら生み出していたお客さん。今年のまたとないフジロックを体験して、お互いの存在に向き合うこと、お互いが大切にしていることを大切に扱うこと、相手を自分の意に沿うように変えたりしようとせず、そのままを、あるがままを認め合うことの大切さを強く感じた。ありがとうフジロック!来年は、7月29日(金)、30日(土)、31日(日)の3日間、開催されることが決定した。みんなで愛してやまないこの場所にまた必ず帰ってこよう!

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DJ/KOTARO http://fujirockexpress.net/21/p_935 Tue, 24 Aug 2021 07:18:59 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=935 DJ/松田”CHABE”岳二 http://fujirockexpress.net/21/p_934 Mon, 23 Aug 2021 12:06:51 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=934 曽我部恵一 http://fujirockexpress.net/21/p_931 Mon, 23 Aug 2021 03:48:15 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=931 なんとかたどり着いたフジロック最終日。ピラミッドガーデンで過ごす人々にも疲れが見て取れる。ただでさえ楽ではないフジロックの日々に加えて、常時マスク着用で常に気を張って過ごしているのだから、それも無理はない。それでもみんな彼を待っている。2日目のレッドマーキー、サニーデイ・サービスで素晴らしいパフォーマンスを披露した曽我部恵一が、弾き語りで登場だ。

出演するにせよしないにせよ、ミュージシャンが自身のスタンスを示すことを半ば迫られたような今年のフジロックで、僕が特に気になっていたのは「曽我部恵一は何を思うんだろう」ということ。でも彼はただ淡々と弾き語るだけだった。考えてみれば当たり前だ。いつだって歌ひとつで、今この瞬間をクリティカルに描き出してきたのが曽我部恵一なのだから。

ざっくりしたストロークでアコギを鳴らす“キラキラ!”で幸福を紡いでいく中でも、随所で声を張り上げる曽我部。ブリッジの「いつだってだれも分かっちゃいないんだ」でシャウトする様に、僕ははやくもうるっとしてしまう。どこか「自分だけは特別」という感覚が拭い去れない自身への自嘲や疎外感。集った人々もみな椅子に座りながら、じっくりと彼の歌に耳を澄ませている。

今月50歳になるという彼の生まれた年のことを歌った“サマー’71”に、柔らかく指弾く“少年の日の夏”。そこには在りし日へのノスタルジーが感じられたが、今僕らが思う「在りし日」とはコロナ禍以前のことに他ならないだろう。当たり前に思っていたものが失われ、フジロックだって従来のかたちではない。そんな僕らの思い出の中の光景と彼の少年時代の情感が、歌を通して緩やかに交わりあっていく。

長女が生まれた時に作った曲という“おとなになんかならないで”では、昨日のサニーデイ・サービスでTwitterトレンド1位になったスクリーンショットを20歳になった彼女に送り、「よかったじゃん」と返ってくるなんて微笑ましいエピソードを交えながら、おおらかな表情で言葉を紡いでいく。大人になるにつれて僕らが失ってしまった無垢な心。ピラミッドガーデンの聴衆たちは軽く身体を揺らしながら聞き入っている。

いつも歌ったら自分がパワーをもらえるという“バカばっかり”で一転して荒々しく弾き語る曽我部恵一は、あらゆる続柄や肩書の名を挙げ、みんなバカばっかりと叫ぶ。だが真っ先にバカと歌う対象は「僕」。その分断の危うさに胸を痛めながらも、自分を守るためにほとんど無意識に敵/味方を区別しながら今日も生きている僕のことだ。ハッとさせられてしまう。それでも人は誰しも間違える。画一的な正しさに振り回されてしまうような昨今の空気の中で、曽我部の歌はなんと芯を射抜くことだろうか。

などと評論めいたことを書いているが、曽我部恵一は明快な主張やメッセージなど何も発していない。僕が勝手に感じ取っているだけだ。しかし彼の歌には聴く人の想像を喚起する余白と強度があり、ここに集った人の数だけそれぞれ感じることがあったはずだ。目をつぶって浸ったり手でリズムを刻んでみたり、みんな何を思っているんだろうか。

そんなピラミッドガーデンで曽我部が繰り出したのが“満員電車は走る”。「もう一日だって待てやしないんだ」「あなたの心が壊れてしまいそうなとき 音楽は流れているかい?」「誰も正しくはない 誰も間違っていない」。聞き入っているうちに僕は涙がとまらなくなってしまった。何度聴いたかわからない彼がずっと歌ってきた歌だ。この状況のために用意した言葉などではない。でも素晴らしい歌はいつだって時代を越えて今この瞬間のために鳴り響いているんだ。

日が照ってきたピラミッドガーデンで「ずっと恋をしていましょう!」と、“シモーヌ”、“LOVE-SICK”で曽我部は高らかに愛を歌う。「みんな残念ながら恋の病の陽性です」と投げかける彼だが、この状況でわざわざここに集まった僕らのフジロックへの気持ちもそうだろう。愛ゆえに見失ってしまうことへの自覚も滲ませながら、それでも「EVERYTHING’S GONNA BE ALL RIGHT」と繰り返す曽我部恵一。指使いや声色の機微、表情ひとつとってもすべてが生き生きとしている。

「今までで一番いい日になるでしょう」と“春の嵐”を朗らかに爪弾き、最後は遠く帰る場所を想う“おかえり”。何も特別なことはなく、いつものように歌いギターを弾いた曽我部恵一は、最後にそっと「おかえり」とつぶやいた。

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電気グルーヴ http://fujirockexpress.net/21/p_833 Sun, 22 Aug 2021 18:25:03 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=833 会場でどれだけ彼らのTシャツを見たことだろう。 2016年のグリーンステージで20周年のクロージングを飾って以来のフジロックとなった電気グルーヴ。僕にとって彼らは、「フェスに行ったらいる人達」だった。洋楽邦楽の区分を問わず様々なフェスに出演し、会場で「お、電気やってるやん!」くらいのノリで観たり観なかったりする。彼らが当たり前のようにいる安心感。熱心なファンはもとより、そんな距離に電気グルーヴがいたフジロッカーも多いのではないだろうか。それだけに2020年のラインナップからキャンセルとなり音源が販売停止になったことはとてもショックだったし、石野卓球とピエール瀧の帰還を待ち望んでいたフジロッカーの数は計り知れない。

SIAが流れる21:30過ぎのグリーンステージ。大将こと日高正博氏が登場し、この「特別なフジロック」に集ったフジロッカーを労う。「3年振りのギグ、最高のエンターテイナーを大きな拍手で迎えてください。世界に誇れる日本のアーティストです!電気グルーヴ!」と紹介し、ついに電気グルーヴの登場だ!注目のセットははじめから“Set You Free”。昨年の配信『KEEP ON FUJI ROCKIN’』で発表された曲から再びフジロックの歩みをはじめるのはなんとも感慨深い。 続く“人間大統領”では「吉田サトシ大統領!agraph牛尾大統領!」とサポートの2人を紹介し、祝祭の準備は万端だ。

無造作に設置された3つのキューブ状の物体に、色鮮やかな様々なモチーフが映るステージセット。ヘッドライナーだけに、いつもの電気グルーヴのステージとは一味違っている。“Shangri-La”では集った人々が手を振り上げ早速盛り上がりを見せるグリーンステージ。卓球は「恥ずかしながら帰ってまいりました!」と瀧と肩を組み、オーディエンスはあたたかい拍手で迎える。この瞬間をどれだけ心待ちにしていたか。続く“Missing Beatz”では5年振りのフジロックに顔見せをするように、卓球と瀧はステージを歩き回る。

ずっしりとしたビートは“モノノケダンス”だ!数時間前にここでMISIAのサポートも務めた吉田サトシもロックバンドさながらのギターを炸裂させ、ダンスミュージックにアクセントを加えている。エレクトロのグルーヴ全開の“Shame”の「罪無き者にも裁きを!」なんて自虐で言ってんのかと思ったものだが、これが成り立つのは瀧だからだよな。“B.B.E.”では苗場の森に投影するレーザーもガンガン出てきて、パーティーはさらに賑やかになっていく。

卓球がホイッスルを吹き鳴らす“Shameful”では瀧が身振り手振りで鼓舞し、スペーシーなサウンドと映像が光る“Fallin’ Down”ではみんな手をあげて手拍子。瀧も卓球もただただ奔放に楽しんでる。そしてみーんな踊ってる。いや、ぼーっとしてる人も寝てる人もいるが、あらゆる過ごし方が折り混ざるのがグリーンステージの懐の深さだし、そんな中で鳴り響くダンスミュージックのなんとあたたかいことか。瀧ははしきりに前方のオーディエンスを指差しサムズアップ。ああ、たまんねえ。この2人にハーモニーとかいうのもバカバカしいが、瀧と卓球が歌声を重ねる“Upside Down”もグッときたし、炎の映像が映える“MAN HUMAN”は瀧を見せつける時間。微動だにしない男の後ろで抜群に踊れるサウンドが流れているのも奇妙なものだが、こういう可笑しさも電気グルーヴだ。

終盤の“Flashback Disco (is Back!)”でさらに盛り上がるグリーンステージ。みんな喜びを爆発させてるなあ。瀧の頭の上に構えたマイクに向けてカンカンならす卓球、そして2人はハイタッチ!なんなんだこのオッサン達最高じゃないか。そして“N.O.”でまたグリーンステージを埋め尽くす、波のような手、手、手!正しさを求められ続ける世の中、2人のダメな大人はなんとかっこよく見えることだろう。それでもちゃんとソーシャルディスタンスなんだから、ここまで残ったフジロッカーの気合も凄いものだ。

「日本の若者のすべてがここに集まっています」なんて流れてくる“レアクティオーン”。そんなのえらいこっちゃという感じだが、聞いたところによるとYouTubeでもかなりの人が観ていたらしいじゃないか。そしてここグリーンステージではじめて電気グルーヴを体験した人も多かっただろうが、きっと「私ってこんな楽しみ方ができたんだ」なんて新たな自分に出会えたことだろう。そうだよ、これが電気グルーヴだ。

最後は「フッジッサーン!」がみんなの心を駆け巡る“富士山(Techno Disco Fujisan)”で、アンコールもなく一気に駆け抜けていった電気グルーヴ。あっという間だったな。あえて大袈裟に伝説というほどの感動的な演出があったわけでもなく、ただただエンターテイメントをまっとうした電気グルーヴだが、その一挙手一投足から愛を感じたものだ。

踊りたかった曲はまだまだたくさんあるけどそれはまたの機会。2019年の朝方の一番最後に“虹”が流れたあの奇跡のような時間を、ここからまた来年以降の「ノーマルなフジロック」で目指していこう。2人とともにまたそんな夢を描いていける喜びを誰もが心から実感する、今年のフジロックを象徴するような祝祭がここにはあったのだ。改めて最後に、フジロックにおかえり電気グルーヴ!

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忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER with ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA feat. 仲井戸”CHABO”麗市 GUEST:UA、エセタイマーズ、奥田民生、GLIM SPANKY、甲本ヒロト、チバユウスケ、Char、トーキョー・タナカ/ジャンケン・ジョニー、トータス松本、YONCE http://fujirockexpress.net/21/p_834 Sun, 22 Aug 2021 18:14:50 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=834  フジロック2021も早くも最終日。とっぷりと日も暮れ、ぼちぼち終幕へと向かっている。次のステージにワクワクしつつも、どうしようもない寂しさに襲われる時間帯だ。これからここグリーンステージに登場するのは、今年のフジロックの目玉のひとつ、忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER。2009年にこの世界から姿を消した我らがMr.フジロック、忌野清志郎(以下キヨシロー)。フジロックの箱バン、ROUTE 17 Rock”n”Roll ORCHESTRAの豪華メンバーたちが忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVERとして、キヨシローのご機嫌なロックン・ロールナンバーを繰り広げるのだ。

 開演直前まで強く降り注いだ雨も止み、まさしく雨上がりの夜空の下、流れる”清水次郎長伝の石松三十石船道中”とともにザ・タイマーズのオマージュバンドのエセタイマーズの4人が登場。フォトピットに乗り入れられたトラックの荷台に特設されたテントステージにて(「ステージに上げてもらえねぇんだよ!バカヤロー!」とのことだ)、ザ・モンキーズの名カバー曲”デイ・ドリーム・ビリーバー”を披露。冒頭のお馴染みのフレーズが流れるだけで周囲の熱がグンと上がるのが感じられた。

 どことなくBRAHMANのTOSHI-LOWによく似た人が、アジアン・カンフー・ジェネレーションのゴッチに似ている人に「言っちゃえよ!」と発言を促す。死んでもいいくらいの覚悟をもって苗場入りをしたこと、ここがグラウンドゼロみたいな気持ちで、愛し合って、許し合って、みんな家まで無事に帰って、生き延びて、周りの自分たちが関わっていない様々な人生のことも想像しながら、またこの素敵な場所でみんなに会えることを楽しみにしていると感謝を表した。ハイスタのツネさんに似ている人が叩き込む激しいドラムソロからの”TIMERSのテーマ”の替え歌を披露。差別をやめてよ!平和が大好き!お酒が大好き!来年は君と笑っていたいよー!こんなでたらめな政府とおさらばしたいよ!と歌に乗っけて伝えたいメッセージをこれでもかと届け、次の曲をマイクなしの状態で奏でながらトラックとともにステージ脇から退出していった。のっけから何という粋な演出だろう。

 エセタイマーズの退出中に、ステージからボビー・ダーリンによる”Mack the Knife”が流れはじめ、【忌野清志郎 Rock n’ Roll Forever】のサインに照明がともる。MCのクリス・ペプラーが、キヨシローのソウルはここ苗場の地に根付いていると宣言し、今朝はキャンセルになった民謡クルセイダーズの代役として急遽アコースティックセットを披露したGLIM SPANKYの二人を呼び込んだ。彼らがセレクトしたのは”僕の好きな先生”。フロントウーマンの松尾レミ自身が美術の大学に行って、美術の先生にお世話になったことから、キヨシローの体験に基づいた大切なこの歌に自分を重ねて選んだとのこと。ハスキーボイスで響くサビのパートが身震いするほどかっこいい。

 お次はキヨシローと縁が深いChar。入りから奏でられた十八番の流麗なフレーズにジーンとさせられる。キヨシローとの共作曲の”かくれんぼ”を披露。「ひとりでかくれんぼ」をしている孤独なオニに対するシンパシーあふれる歌詞にも思わず目頭が熱くなってしまう。

 ROUTE 17 Rock”n”Roll ORCHESTRAのメンバー全員が顔を揃え、The Whoの超名曲”My Generation”をかますと、あのフレーズが!”JUMP”だ。トータス松本が、上下黄金のスーツでキメ、キヨシローよろしくマントを装着してステージ左右に歩きまわり、嬉しそうに歌い上げる。「JUNP!」とみんなと楽しく飛び跳ねるのはやっぱり最高だ。ライヴっていいなぁ。

 キヨシローのバディ、CHABOこと仲井戸麗市がギターをかき鳴らしながら満を持して登場。”よォーこそ”で熱く、場を仕切り直す。相変わらずめちゃめちゃかっこいいなこの曲は!「ヘイヘイ!フジロック!よォーこそ!」、「どうだい、のらないか?よォーこそ!」。そりゃぁ、のるに決まってるでしょ!

 SuchmosのYONCEが不思議なダンスしながら参上し、”すべてはALRIGHT”が開始。よりR&B感強めのYONCE印がスタンプされた歌に昇華され仕上げられていた。

 青木ケイタのバリトンサックスが”ボスしけてるぜ”のリフを重たくかつ軽妙に響かせる中、チバユウスケが登場し、”あきれて物も言えない”へなだれ込んだ。The Birthdayの曲と言われても不思議ではないほど完全にチバの歌になっている。中盤に”ボスしけてるぜ”のリリックも入れながら巧みに、かつクールにがなるのだ。

 ステージ横から嬉しそうに飛び跳ねながらUAが登場し、超名曲”トランジスタラジオ”を投下。「聞いたことのないヒット曲」にインスパイアされ「覚えてるかなこんなヒット曲」と自身の名曲”情熱”を挟み、とにかく楽しそうに歌い上げる。次にセクシーな”スローバラード”を歌うのは、「たみお・おくだ!」と奥田民生を呼び込み「風邪を引かないでね!」と雨に打たれるオーディエンスを気遣いステージを後にした。

 民生が渋くしめやかに”スローバラード”を歌い上げる。時が止まってしまったかのような感覚に陥るほど。間奏部でのブロウしまくるサックスの鳴りもたまらなかった。ここまでそれぞれが愛するキヨシローチューンを披露してきたが、時に笑顔にさせ、時にしんみりとさせ…あらゆる感情を想起させてくれる楽曲の振り幅の大きさにあらためて驚かされた。

 ギターのリフがザクザク刻み込まれると、お馴染みの2匹のオオカミが。トーキョー・タナカとジャンケン・ジョニーだ。キーボードの跳ねるリズム音が最高にロッキンブルーズな”ドカドカうるさいR&Rバンド”を発射。MAN WITH A MISSIONとキヨシローとのリンクには疑問を持っていたのだが、まったくの誤りだったようだ。想像以上のキヨシロー然としたロッケンローを表現しきっていた。ジャンケン・ジョニーが、この錚々たるメンバーと集合写真を取った時、チバユウスケに思いきり頭をとられそうになりましたと思い出を楽しく語っていたのも何とも可笑しかった。

 甲本ヒロトがいつもの痙攣したような動きで飛び出してきた。すぐにTシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になり「キモちEE!」とシャウト。ドンピシャ過ぎるセレクトに思わず爆笑。ヒロトの人生そのものな曲なのだろう。最後に歌詞を間違えたようで、『おそ松くん』のイヤミのシェーのポーズをして、「間違えたー!」と恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑顔でステージを後にした。

 ここから再びCHABOが場をリード。「フジロック、2年ぶりにようこそ。キヨシロー、来てるんじゃないかな。フジロック大好きだったから」「ご機嫌なやつらが集まって歌ってくれてるぜ!みんな一緒にいるぜー!」と空に向かって投げかける。もうこのくだりだけで泣けてしまう。「清志郎くんが愛していたラヴソング、俺たちRCが大事にしていたラヴソング」と”指輪をはめたい”を披露。梅津和時がブロウするシャープなサックスのソロも絶妙な味わい深い音を披露している。最後の梅津とチャボの掛け合いは涙ちょちょ切れものだ。ラストは「田舎へ行こうー」の一言で締めくくった。

 ROUTE 17 Rock”n”Roll ORCHESTRAのバンマスの池畑 潤二が叩き出すビートが続く中すべての出演者が順に登場し、「皆さーん!最後にもう一曲!日本の有名なロックンロール!」と甲本ヒロトが叫び、”上を向いて歩こう”を全員で合唱。「幸せは雲の上に」のところで、感極まって涙が流れてしまった。豪華な面子がもうこれでもかと楽しそうに次々にソロで繋いでいく。これだよ、これがロックンロール!割れんばかりの拍手の中、歓喜のステージが完了した。ステージが暗転し、画面に映し出されたのはフジロック出演時の映像”雨上がりの夜空に”。本当にキヨシローはここにみんなと一緒にいたんだね!

 キヨシローの音楽と言葉、魂は今もフジロックに、苗場の地に、我々フジロッカーたちの心に生き続けている。東日本大震災に新型コロナ…言いたいことがどんどん言えなくなってきている時代にキヨシローが残したものの重みが年々増していっているように感じられてならない。今、大切なのは互いへの「愛し合っているかい?」からはじまるコール&レスポンスだ!

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THE ALEXX http://fujirockexpress.net/21/p_874 Sun, 22 Aug 2021 14:59:26 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=874 クロワッサンサーカス http://fujirockexpress.net/21/p_933 Sun, 22 Aug 2021 12:23:48 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=933 定刻になり、ハットをかぶった5人のメンバーが登場する。コントラバス、ギター、トロンボーン、ドラムが位置につくと、メンバーひとりが韓国伝統音楽の太鼓を持ち、頭の白いリボンを回しながらステージを走り回る。
クロワッサンサーカスはただのサーカス団ではない。音楽にあわせて芸を行うため、一度で二度美味しいというか、音楽が好きである人こそ、楽しむことができるんじゃないかと思う。

メンバーが続々と出てきて、前方に位置する4人が台の上へと乗り、ダンスをしながら倒立を行う。時には身体が平行になるよう腕で支えたり、連なる障害物の上に乗って倒立をしつつポーズを取る、バランス感覚や重力はどうなっているのだろう。「おお!」という言葉が出せない分、大きな拍手が送られる。夢中になって彼らの芸を見かける子どもたちの表情もかわいらしい。

ちょっと間抜けで愉快な音楽に合わせてスティックで小さな傘を自由自在に操ったり、わざと失敗してみたり。ひとつの短い劇を見ているようでふふっと笑いそうになる。
お次は、ポールダンス。ゆっくりとしたメロディーのなか、ステージの端に立つポールに女性が昇り、自由に動いていく。時に上って降り、片腕や片足、到底人間には不可能であろうポーズで自身を支える。男性と2人でお互いに支え合い、ポーズを取る姿には人体の身体の仕組みを感じてしまう。正直に言ってしまえば、どのような仕組みになっているのか、まったく理解ができなかった。

そのあとは、横に置かれた円柱の上に置かれた板に立ち、足元ではバランスを取りながらのジャグリングが披露される。時には膝をついたり、逆立ちをしたりと自由自在にパフォーマンスを行う姿は目が離せなかった。

突然降り出した大雨のせいで、本来1時間あったステージが残念ながら30分程度で終わってしまう。苗場の天気は変わりやすい。仕方のないことではあるけれど、後ろ髪引かれる思いで雨宿りをする。「また来年、会いましょう!」という言葉通り、当たり前の日常を取り戻したフジロックで彼らの作り出すお洒落でノンバーバルなサーカスを満足のいくまで見たい。

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LEARNERS http://fujirockexpress.net/21/p_932 Sun, 22 Aug 2021 11:42:55 +0000 http://fujirockexpress.net/21/?p=932 穏やかなPyramid Gardenに登場するLEARNERS。まずは、“WATER THE FLOWERS”、“LET ME IN”と軽快ないリズムに沙羅マリー(Vo)のキュートな歌声にダンスが会場の空気を徐々に温めていく。
LEARNERSは、やっぱり最強のパーティーバンドだ。ライブはいつだって飛び跳ねながら楽しみたい。ポジティブ全開のライブは、どんなときに見ても楽しませてくれる。

1日目に出演したドレスコーズのギタリストでもある堀口チエ(Gt)のギターソロが気持ちいい“GO AWAY DON‘T BOTHER ME“は、音に身を任せて踊りたい。それから、堀口がボーカルを務め、沙羅との掛け合いが楽しい“GOTTA LOT”に、ムーディーな雰囲気がたまらない”FOOLS FALLIN LOVE“。声は出せないが、観客が手をあげ、その場でジャンプをしたり、クラップ&ハンズで反応を返したりと、それぞれの楽しさを体現しているように見えた。

“TEENAGERKIKS” では、浜田将充(Ba)がまっすぐに歌い、ベースを置きざりにし、マイクひとつで「手えあげろ!!!」とシャウトをする。ボーカルが曲によってり、さまざまな表情を見せてくれるのも、LEARNERSの魅力のひとつなのだろうな、と思う。堀口のうねるギターソロもたまらなかったし、会場に飛ぶシャボン玉がグッと雰囲気を引き立てている。
サポートメンバーのトランペットがアクセントとなる“WHIPER BLUES”、シリアスな雰囲気のなか力いっぱいに沙羅が歌いあげる“シャンブルの恋”。夜の曲ではあるけれど、ゆったりとした午後のPyramid Gardenの雰囲気にはぴったりの“WALKING AFTER MIDNIGHT”と、今日という特別な一日を飾る曲が続く。名曲“恋はヒートウェーブ”のカバーもうれしい。

「今日くらいはお疲れ様って思ってもいいよね」という言葉のあとにはトランペットの音が気持ちよく響く、アイリッシュ調の“つきかけ”。夏の終わりを感じさせる“SHAMPOO PLANET”に、終わりに相応しく、祈りを込めて“ALLELUJAH”がゆっくりと歌われた。

全18曲。LEARNERSはいつも充実感を与えてくれる。どこまでも楽しさが突き抜けたピースフルなライブであった。

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