LIVE REPORTGREEN STAGE7/31 SUN
JAPANESE BREAKFAST
母との思い出を胸に、強い決意を持って次のステージへ
開演前、ステージ上にはサウンドチェックをするジャパニーズ・ブレックファストことミシェル・ザウナーの姿があった。アーティストがサウンドチェックすること自体、そんなに珍しいことではないが、ミシェルの場合「サウンドチェックを自分で行うことで全体を理解する」という明確な目的があるからのように思えた。彼女は何においても成長できる機会を無駄にはしたくないのだ。
最新アルバム『Jubilee』のオープニング・トラック“Paprika”からスタートしたライブは、アルバムタイトルの「Jubilee=祝祭」が指し示すような明るいムードで進んでいった。80年代っぽさを感じさせるストレートなポップ・ロック・チューン“Be Sweet”、ドリーミーなギターフレーズが印象的なアコースティック・サウンドの“Kokomo,IN”と続き、ライブも中盤にさしかかると、ミシェルのより奥底にあるものが見えてくる。セカンドアルバム『Soft Sounds From Another』からの“The Body Is a Blade”では、背景のスクリーンにミシェルの母親の写真がたくさん映し出された。この曲に込められているのは、「亡くなった母との思い出に縛られるのはもうやめよう」という思いだ。
彼女のアルバムは彼女のお母さんと共にある。ファーストアルバム『Psychopomp』は彼女の母親が癌で闘病中に書かれたもので、セカンドアルバム『Soft Sounds From Another』は母親の死からインスピレーションを受け作られた作品だ。『Jubliee』はそんな過去に縛られていた自分とおさらばし、大きく羽ばたいて行こうという思いが込められている。そして、そんな思いはサウンド面にも表れていて、それまでのドリーム・ポップやインディー・ポップ的な過去の音楽性から大きく飛躍し、新たなポップネスを獲得しようとする意思に満ち溢れている。そんなポジティブな思いはステージ上の彼女の明るい表情にも表れていて、実際ライブのスタートからミシェルはほぼ終始微笑みを浮かべていた。それは決して作ったものではなく自然に生まれたものであることは感覚的にではあるが伝わってきた。
無機質なビートのドリーミーチューン“Posing In Bondage”ではそんな開放的なマインドが表れていたし、“Everybody Wants to Love You”にはミシェルの「自分を愛して」というメッセージというメッセージが強く表れていた。ライブの終盤には、彼女の敬愛するウォン・カーワイ監督の代表作品『恋する惑星』のエンディング曲、フェイ・ウォンの“夢中人”(原曲はザ・クランベリーズの“Dreams”)をカバー。続く“Posing For Cars”では弾き語りで「夢は叶う」と歌い、ラストは“Driving Woman”でギターノイズの嵐を浴びせかけ、ライブは終了した。
彼女のクリエイティビティはこれからもさらに広がりを見せるに違いない。それは決して希望的観測ではなく、この日のライブを通して彼女が振り撒いていた笑顔がとても素直なものに感じられたからだ。
<セットリスト>
Paprika
Be Sweet
Kokomo, IN
Road Head
Savage Good Boy
Boyish
The Body Is A Blade
Glider
Posing In Bondage
Everybody Wants To Love You
Slide Tackle
Dreams(Faye Wong cover)
Posing For Cars
Driving Woman
[写真:全10枚]