LIVE REPORTWHITE STAGE7/29 FRI
D.A.N.
たいくつな時代を踊ろう
2015年のルーキー・ア・ゴーゴー出演から始まり、今年で4度目の出演となるD.A.N.。昨年発売したアルバム『NO MOON』や、ライヴ・アルバムを聴いたうえでは、より深く、「音を聴かせる」フェーズへ入り込んでいき、世界観の構築も立体感を増していると感じた。今回は最新作にも参加していた盟友・小林うてなを迎えた4人でのセットということもあり、そのパフォーマンスに期待が高まる。
1曲目“Chance”。櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)は、自身の鳴らす音と苗場の自然にアクセスを試みるかのように、手をひらひらと動かしていく。空間のあちらこちらを張り巡らせるようにシンセのサウンドが飛び散り、スティール・パンのフレーズと重なっていくと、スペイシーなサウンドがあたり一面に広がっていくのを感じた。
続いて“Anthem”が始まると、繊細で手数の多い川上輝(Dr)のドラミングに釘付けになる。また、それまで黒かっただけのステージ後ろの液晶が光り、幕が開いていくような映像演出があった。それも相まってか、オーディエンスは何か解き放たれたかのごとく、大きく踊りだした。市川仁也(Ba)の奏でるファンキーなラインに夢中になって踊っていると、やがて楽曲の解像度もぱっとクリアになっていくのを感じた。
彼らのライヴを久々に観た筆者は、D.A.N.をクールで無機質なイメージだと捉えていた。しかしそれは、どうやら勘違いだったようだ。外側はクールでも、内なる肉体性をハッキリもっていて、想像よりもエキゾチック。難解だと思っていた人も、じつはわかりやすく踊れる。それがこの曲で証明されて、パズルのピースが埋まったような、そんな気持ちになった。
“SSWB”では、さらにD.A.N.という音楽の奥へ奥へと引きずり込まれたような、ドープなサウンドが広がっていく。これは打ち込みなのか生音なのか、その境界線がぐにゃりと曲がっていくパフォーマンスに、驚きと興味関心が止まらない。小林のコーラスで浮遊感たっぷりの“Native Dancer”と続き、そして“Aechmea”。 9分にも及ぶ壮大なナンバーであることは承知の上だが、ライヴでもエレクトリック・チェロやハープがきっちり取り入れられていたりと、奥行きのあるサウンドに魅了された。
そして、頂点は“No Moon”だった。これが本当に素晴らしかった。低音が地割れのように鳴り響き、風が吹くような音がする。櫻木のエフェクトがかったヴォーカルも艶かしく悲しげ。平衡感覚もよくわからなくなり、ここは苗場じゃなくて、どこかの星に降り立ったかのような、壮大な世界観でもって会場を圧倒してくれた。「どうする どうする このストーリー」、「たいくつな時代を踊ろう」。強烈なD.A.N.の音像に加えて、時代を嘆くような歌詞の持つ強烈なパワーにもしびれた。
ジャパニーズ・ミニマル・メロウの最先端が詰まった白熱のプレイ、全7曲。“No Moon”で感じた世界のように、空間まるごと切り取って、どこかの星にペーストしてほしいなあ。そんなことを静かに思うも、世界の安定を願っている自分がいた。
[写真:全8枚]