FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTWHITE STAGE7/29 FRI

THE NOVEMBERS

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Photo by リン(YLC Photograpghy) Text by あたそ

Posted on 2022.7.29 18:39

いこうよ、爆音で魅せる「いい未来」

短いリハーサルを終え、“Singin’ in the Rain”のSEに合わせてゆっくりと登場する黒装束の4人組。相変わらず夏とか自然とか野外とか昼とか晴れた空が似合わなくて笑いそうになってしまう。

1曲目。温かなギターの音に思い切りのいいドラム。THE NOVEMBERSは今回で3回目の出演になるのだが、いい意味で緊張が取れ、柔らかさをまといながら会場の空気を確かめるようにゆっくりと“ANGELS”の演奏から始まる。ケンゴマツモト(Guitar)にかき鳴らすディレイのかかるギターの音に、小林祐介(Vocal & Guitar)の優しい声と高松浩史(Bass)のコーラスが混ざりあい、なんだかこの時点で何か、想像しないようなものを今から見せてくれるのではないか。そんな期待すら抱いてしまう。

“Hallelujah”、“Close To Me”と、ミドルテンポの曲が続く。近年はどこか穏やかな雰囲気というか、各々の表現の幅が広がって、より自由に音楽を楽しめていると感じることが多々ある。その雰囲気が昼過ぎのホワイトステージによくマッチしているように思えた。まるで自分ひとりのために演奏されているかのような、すぐそばに寄り添ってくれるかのような音が身体を包む。会場の端まで響く小林の丁寧な裏声も気持ちがよく、バンドとしてコンスタントに音源を出し、何度もライブを重ねてきた経験から得られた彼らの余裕やある種の包容力を感じた瞬間でもあった。

しかし、まさかそれだけで終わるはずがないのだ。“Rainbow”の爆発するような音に会場が一気に惹き込まれ、そして加速していく。「そうさ君はいつもここが はじまりさ」という歌詞の如く、今からが本領発揮とでもいうような太いサウンドにシャウト、今までの雰囲気から豹変し、すべてを張り倒していくような爆音が心地よい。やっぱり、このバンドは今が一番かっこいいのだ。5年前のホワイトステージも、もちろんよかった。けれど、当然のように過去を凌駕していく彼らの音を実際に体験していると、なんだか少し泣きそうになる。多分、あのステージを見ていた全員がそう思っていたはずだ。観客も負けぬように腕を上げ、ステージに呼応する。

“New York”、“楽園”ではハンドマイクに持ち替え、スピーカーの上で身体を揺らす小林。観客を煽る吉木諒祐(Drums)のダイナミックなドラムに高松の安定したうねるベースには、見ているこちらも踊らずにはいられない。貫くようなシャウトにどんどんバカでかく重くなっていくサウンドに、会場の熱がどんどん上がっていく。

「ラッセーラ、ラッセーラ」の歌詞が耳に残る、映画AKIRAのテーマ曲“KANEDA”をアレンジした曲のあとには間髪入れずに“BAD DREAM”!!!完璧な入り方だった。ああ、こんなのってずるいよね。声をあげずにはいられない。かっこいいとかダサいとか、そういう価値観すら置いてけぼりにして、認めざると得ないというか。押し倒されそうになるほどの音圧がたまらなく、容赦なく見ている観客を引き離していくような圧巻のステージは、やっぱりこのバンドでしか味わえないのだと思う。

「仕事も育児も勉強も遊びも、お疲れ様!」というあらゆる人に配慮するようなこのバンドらしさ満載のMCのあとは、ラストの“いこうよ”。「いい未来で会いましょう」と、どんなライブでも終盤に必ず小林は、そんな風に言う。大音量に乗せられた未来を見つめる歌詞はどこに連れて行ってくれるのだろうか。彼らの思う「いい未来」ってなんだろう。わからないけれど、5年前のホワイトステージよりも遥かに先を行く彼らの思う「いい未来」を私は信じたい。THE NOVEMBERSは私にとっての希望だ。好きでよかった。ずっと見続けていてよかった。ライブを見る度にいつもそう感じるが、フジロックの大きなステージで堂々と1時間やりきった彼らの勇姿を見ていると心からそう思う。多分、その気持ちはこれからも変わらないのだと思う。現実は嫌なことばかりだが、彼らのライブを見ていると、どんな未来を見せてくれるのだろう、どこに行こうとしているのだろう。どうしても期待してしまう自分がいる。

[写真:全6枚]

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7/29 FRIWHITE STAGE