FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTRED MARQUEE7/30 SAT

ARLO PARKS

  • ARLO PARKS
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Photo by 森リョータ Text by 石角友香

Posted on 2022.7.30 23:10

凛としたスイートネスがその場にいる人の気分を和らげる。

10分前にはレッドマーキーに着いていたのだが、なかなかの人気でいつものフジロックを実感する。まあ日本でもデビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』の評価・人気は高く、初来日が待たれていた筆頭アーティストと言える存在なので当然かも。むしろレッドで大丈夫だったの?という気持ちになってきた。そしてコーチェラやグラストンベリーの配信でも見ることができたたくさんのひまわりをあしらったステージセットはフジロックでも実現。それだけでも明るい気分の入り口のなるのに、後方に桜の造花?(生花は今の時期無理だろう)まで飾ってある。

ギター、ベース、キーボード、ドラムスが位置についてイントロダクションのセッションをスタート。ネオソウル、生音ヒップホップ・バンドとして最高のバランス感覚を持ったミュージシャン揃いだ。バンドサウンドまでは配信で体感できなかっただけに、バンドが素晴らしいのは得した気分。いよいよ本人が登場、しなやかで大きなアクションで“Green Eyes”を歌い始める。柔らかく、少しハスキーで甘く、話し声に近い親密さを持った極上のボーカルがしっかり聴こえる。大きく長い拍手に「ありがとうございます」と、丁寧に発されたその声の誠実なトーンで、もうなんか泣きそうになる。本格的なワールドツアー中だが、昨年回るつもりだったプランが伸びたのだから、大変さより、初めて接するオーディエンスと心を通わせることが嬉しそうだ。そのムードが待ち焦がれたファンも、ちょっと曲が好き、ぐらいの人も、声につられてレッドマーキーにたどり着いた人にも伝播している。反応が優しいだけじゃなく、お客さん同士も優しいのだ。なんなんだ、ARLO PARKS効果。

オルタナティブ・ロックやインディミュージックも背景にある彼女の音楽にはRadiohead的な部分もあり、“Caroline”や”Eugene“のアルペジオにはジョニー・グリーンウッドのテイストを感じる。それでいて、ソロは割とブルージーだったり、フュージョンぽいところもあるギタリストがいい仕事をしている。基本的にアタックの強くないキック&スネアが基本のドラムだが、上モノのムードの変化と、何よりARLOの声のすごく近い距離で聴いているような親密さをこのキャパでも明快に伝えていることが、ARLO PARKSひいてはこのライブバンドの実力じゃないだろうか。あ、ちなみにドラマーは日本語が堪能でARLOは「彼がトランスレートしてくれる」と笑っていた。

アルバムの中でも人気の“Hurt”はベースがかなりパッシヴになり、フロアの反応も熱いものに。いわゆる本編の締めくくりはピアノジャズとドリーム・ポップが邂逅したような“Hope”。曲調も相まってコリーヌ・ベイリー・レイの人柄と歌の魅力でその場にいる人々を溶かし、泣かせたいつかのホワイトステージを思い出してしまった。アンコール的な立ち位置で、新曲“Softly”の少しアッパーなビートでゆらゆらと挙がる手が増えていく。声に出せないけれど、サビの〈Break it to me〉を口パクしていた人は多かったんじゃないだろうか。スイートな人、見ているだけでいい気分になる人はこの世に存在する。優しいムードに包まれた終演後、近くにいた人にステージのひまわりの意味を訊かれたりした。
真意は知らないけれど、話がしたくなる魔法をARLO PARKSにかけられたのかも。

[写真:全10枚]

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7/30 SATRED MARQUEE