LIVE REPORTRED MARQUEE7/30 SAT
The fin.
Photo by MITCH IKEDA Text by 梶原綾乃
Posted on 2022.7.30 13:23
成熟し、さらに高みへ
2日目のレッドマーキー、トップバッターを飾るのはThe fin.だ!彼らをここで観るのは、2017年のレッドマーキーぶりである。あれから海外を拠点とした活動、メンバーの脱退、コロナ禍直前に帰国など、バンドを取り巻く環境は大きく変わった。そして昨年リリースしたサード・アルバム『Outer Ego』は、バンドをよりニュー・ウェイヴやアンビエントな方向に磨き上げた傑作アルバムとなった。
そんな今の彼らを観ようと、会場には多くの人が集まっていた。時間を迎えると、Yuto Uchino (Vo, Syn,Gt)、Kaoru Nakazawa (Ba)の二人が登場、サポートメンバーにはDuran(gt)、松浦大樹(dr)、Yusuke(key)を迎えた5人編成だ。
1曲目“Shine”から、規則的なシンセのサウンドがサーチライトのように会場を照らし、レッドマーキーは幻想的な空気に包み込まれた。Uchinoがギターを持つと、「1、2、1・2・3・4!」とカウントの入る“Over The Hill”で、わっと観客が沸く。イントロから硬質なカッティングが効いていて、ガッチガチに踊れる感じだ。
“Gravity”では、シンセの音色がディレイしていく一方で、ベースは前へ前へと進むのを感じ、そのギャップが面白い。やがて5人が思うままに音をかき鳴らしていくと、それが巨大な音の塊となり、まるで音のヴェールに包まれているような、不思議な感覚になる。
続いて“Night Time”が始まると、会場は待っていましたとばかりにわっと湧き、力強いドラミングに胸を高鳴らせた。Nakazawaの芳醇なベースのうねりに乗って、シンセのループもトーンが上がっていく。いったん静寂からのビルド・アップ、そしてブレイクで、この日いちばんの盛り上がりに!ファースト・アルバムからの人気曲だが、ずいぶん磨きがかかっていて、成熟した音の厚みも魅せ方からも、アダルトな成長を感じさせる。
メタルっぽさもある泣きのギターが炸裂した“Deepest Ocean”や、ジュブナイル的な浮遊感を持つ“Outer Ego”などは、これまで彼らが着地していたドリーム・ポップ的な雰囲気からは、また一歩違ったアプローチが感じられた。そういえばこれらの楽曲が収録されているアルバム『Outer Ego』は、Uchinoが作詞作曲、歌、演奏、プロデュース、レコーディング、ミックスまで全てを担当したという。Uchinoの世界をさまざまなアプローチで解釈するNakazawaとサポートメンバーのテクニックをみるかぎり、今バンドはかなり脂がのっているなと思う。
変化の時期も前向きに捉え、次なるフェーズへと足を勧めたThe fin.。彼らとレッドマーキーの相性はとても良いのだが、次はぜひホワイトステージのあの音響で浴びてみたいとも思っている。
[写真:全10枚]