LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/29 FRI
踊ってばかりの国
初日最初のヘヴン、どこまでも響き渡るロックンロールが今目の前に!
フィールドオブヘヴンの初日最初のライブは、いつもなにか特別な気がする。アーティストはもちろんだが、やっとのことでたどり着いたフジロックの一発目に奥地を選ぶ、フジロッカー達のワクワクとソワソワが織り混ざった空気も特別なものを感じる。19年の中村佳穂、21年の前野健太と連続で足を運んだが、今年の開幕を飾る踊ってばかりの国も、そんな雰囲気にぴったりなバンドだ。
昨年はソロでピラミッドガーデンに出演した下津光史(Vo / Gt)は、バンドでは6年振りの出演。その時以来のヘヴンのステージで鳴り響いた“それで幸せ”は、冒頭にしてハイライトのようだった。慈しむような歌唱に時折真剣な眼差しが混ざる下津とともにバンドは徐々に音数を増していき、シューゲイズ風味の轟音の中で叫ぶ「明日あなたと会う それで幸せ」。それは困難の中たどり着いたフジロックで友人と遭遇するようなささやかな幸せを讃えているようでもあったが、下津は噛みしめるように何度も何度もギターをかき鳴らす。
10年ほど前だろうか。神戸のライブハウスで観た時の情感が眼前で繰り広げられていることにしみじみとしていたが、この後だからこそ2021年の最新作『moana』の“Mantra song”や“Hey human”の新境地がよく映えるというもの。打って変わって身体をくねらせ奔放に弾き語る上半身裸の下津。「死に絶えたはずだった音楽が 今目の前に」と叫ぶ姿はただ純粋にこの瞬間を楽しんでいるようで、光る汗がタトゥーによく似合う。
「おかえりフジロックエンジェルス達。会いたかったぜベイビー!」と僕らに投げかけると、新曲の“Your Song”と“Paradise review”へ。思えば結成当初からメンバーも音楽性も大きく変わってきた踊ってばかりの国だが、この2曲も『moana』を引き継ぎつつよりシンプルなバンドサウンドで歌を響かせる次のステージを感じさせた。そして3本のギターアンサンブルからのシャウトがダイナミックにヘヴンを揺らす最新シングル“ニーチェ”や、『moana』同様後半に満を持して奏でる“orion”など、惜しみなくレパートリーを投入していく。
最後は強烈にディレイをかけるヴォーカルが冴え渡った“ghost”に、「子どもの心のまま最後まで走り抜けられるように」と想いを込める“Boy”と、近年のアンセムの応酬。ミラーボールを掲げたスタッフがフォトピットでぐるぐるしている様子もなんだか愛おしく、永遠に終わってほしくないアウトロのリフレインの中、下津が何度も叫んだ「ロックンロール!」はヘヴンに集った人々の胸に刻まれたことだろう。
最新のモードもフェスティバルらしい往年のアンセムも、すべてを今この瞬間のために歌い鳴らす姿がこの上なく美しい。踊ってばかりの国はいつだって今日こそがベストパフォーマンスだという確信を新たにしながら、僕はヘヴンの余韻にしばらく浸っていた。
[写真:全10枚]