FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/30 SAT

NAI PALM from HIATUS KAIYOTE

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Photo by 粂井 健太 Text by 三浦孝文

Posted on 2022.8.3 18:15

絶対的な個が持つパワーと表現

フジロック2022の2日目ももうすぐ終わりを迎えようとしている。完全に日没した21時、ここフィールド・オブ・ヘブンではミラーボールが周囲の山々をライトアップしている。今日は天気が抜群なので空には星々が煌めいていて、いつも以上に幻想的で美しい。この最高なムードの中、これから登場するのは、不測の事態により出演がキャンセルとなってしまったブラック・ピューマズの代わりに急遽出演することになったネイ・パーム。彼女は初日にグリーンステージで圧巻のパフォーマンスで会場を盛り上げてくれたハイエイタス・カイヨーテの唯一無二のフロントウーマンだ。

ステージ上にはアンプと4本のマイクスタンド程度しか見当たらない。MCのジョージ・ウィリアムズも語っていたが、フジロックの歴史の中でもここまでシンプルなセットはなかなかないのではなかろうか。ネイ・パームの声とギターを生々しく届けることのみを意図した最小限の潔い機材に俄然ワクワクしてきた。

開演時刻にギターを抱えてネイが登場。ブルーグリーンの髪、全体がオレンジと一部にヒョウ柄が描かれているタンクトップ(どうやらザ・クランプスのバンドTのようだ)、パープルやピンクといった煌びやかに彩られたロングブーツ…。施されたメイクや両腕にびっしりのタトゥー、耳や鼻、首にかけられたアクセサリーのひとつひとつがネイ・パーム自身であり表現なのだ。誰が何と言おうがただ自分の好きなものだけを身に着ける、このスタンスを貫けたらどれだけの人が自由になり表現の幅が広がるだろうか。

冒頭から3曲、ギターを片手に弾き語る。マイクにもギターの音色にもエフェクト類が一切かけられていない。ごまかしが効かないからこそネイの表情豊かな非凡な歌声がストレートに胸を打つ。そして、あの自由奔放に発声しながら、しっかりと基盤を造りつつ曲を前進させるネイのギターがいかに非凡なのかを思い知らされた。

Laura Christoforidis(以下、ローラ)、Jace Excell、Alejandro Abapoの3名のコーラス隊を「ドリームチームよ!」と迎え入れ、フロアから飛んできた投げかけに「私たちは日本を本当に愛しているわ!日本食は本当に美味しいしね!」としばしの談笑タイムを挟み、「一番好きなジミ・ヘンドリックスの曲なの」と“Have You Ever Been(To Electric Ladyland)”を披露。コーラス隊が加わりグッとソウルフルになった歌声が心のうちに迫りくる。ヘブンで星空の下、堪能する静謐で極上の音楽。何て贅沢な時間なのだろう。

曲が終わった後、おもむろにネイが、(曲名のTo Electric Ladylandにかけて)「日本のelectric city(電気街)ってどこだっけ!?」とローラが「秋葉原よ!」と返すとサビの部分を「Have you ever been to Akihabara…」と替え歌でおどけてオーディエンスを楽しませる。

“Crossfire / So Into You”や“Blackstar / Pyramid Song / Breathing Underwater”のクルクルと世界観が変貌していく様は圧巻で間違いなく本セットのハイライトだ。タミア、デヴィッド・ボウイにレディオヘッドの楽曲がネイの声とギターを通して時に優しく、妖しく、暖かくヘブン一帯を包み込んでいく。心地よさの極致とはこのことを言うのだろう。

どんな時にも終わりはやってくるというもの。寂しいがラスト曲の“When the knife”で再びネイは圧倒的な歌とギターで場に感動の渦を創り出し、感謝と投げキッスを飛ばしまくってステージを後にした。鳴り止まない拍手と歓声に再び戻ってきて、「生意気な子守歌(cheeky lalaby)」だという曲をしめやかに披露し、感動と心地よさに満ちたステージを締めくくった。

人が持つパワーや表現というのはこんなにも可能性に満ちあふれ、場を一変させるほどもの凄いものなのかということをネイのステージからあらためて感じさせてもらった。観客の誰もが満足げな表情で拍手し続け、ステージを去る際のネイが嬉しそうにスキップしている様子からいかに本ステージが素晴らしいものだったかが一目瞭然だろう。

[写真:全10枚]

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7/30 SATFIELD OF HEAVEN