LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/30 SAT
中納良恵
表現豊かな歌声と演出にヘブンが惚れた
大きな拍手とともに、ゴールドの衣装をまとった中納良恵とコーラスの2人がステージ中央に現れ、まずは“オムライス”。3人のすべるようななめらかな歌声、アカペラでの演出、さらには「フジロックの空の下のオムライス」と今日このときだけの歌詞が嬉しい。
そこにバックバンドの2人がゆっくりと登場する。“オリオン座”では、中納の力強い声がどこまでも響き、シンプルなピアノの音が夕暮れどきのフィールド・オブ・ヘブンにマッチしている。ピアノとドラム、コントラバスと華やかなコーラスが色めく“ソレイユ”。間奏にはハンドクラップが起こり、会場全体を巻き込んでいくようであった。
さまざまな声を楽器の音のように表現するイントロからはじまる“真ん中”。ときにエネルギッシュに、そしてときにはささやくような声。会場をかき回すサウンドや突然の転調はさまざまな表情を見せてくれる。中納と言えば、EGO-WRAPPIN’のボーカルとして知られているけれど、こうしてソロでの活動を見ていると、自身の声ひとつにしても曲によってまったく異なった印象を受ける。豪雨の中で行われた2019年フジロックでの苦い思い出を笑い話に変えたあとは、“濡れない雨”。優しく語り掛けるような歌声が、夜の疲れた身体に染み渡る。
一度サポートメンバー「甘い奴らバンド」がステージを去り、特別ゲストとして先ほどまでグリーンステージで素晴らしい演奏を披露したばかりの折坂悠太が大きな拍手で迎えられる。スポットライトが2人に当たり、ピアノにギター、それから質の異なる2人の声が呼応するように響く。気持ちがいい。ステージを見つめながら、じっくりと聴き入ってしまう。曲が終わると、交互に紹介をし、2人でかわいらしいお茶目なダンスを見せてくれた。
ステージに甘いシスターズを呼び寄せ、“ケムニマイテ”と“ポリフォニー”。混ざり合う歌声が響き渡り、共鳴していく。野球帽のようなお揃いのキャップを被り、3人でのダンスシーンも見せてくれた。音や歌声だけでなくて、さまざまな演出で楽しませてくれるのはうれしい。
ハンドクラップのあとには“SASOU”。軽やかなピアノのメロディにロマンチックな歌声、赤く照らすライトに心が躍る。中納の作り出す音の世界にどんどん惹き込まれていく。ラストは、まるで映画のエンドロールのような“おへそ”。寂しくぽつりぽつりと鳴らされるキーボードの音は、フジロック2日目の終わりを惜しむかのよう。
中納の声の持つ大きな力を楽しみ尽くしただけではなく、さまざまな音と演出で感情を揺さぶる、贅沢な時間であった。
[写真:全10枚]