LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/30 SAT
石橋英子
Photo by HARA MASAMI Text by 若林修平
Posted on 2022.7.30 15:07
オルタナティブなアティテュードを感じたバンドアンサンブル
2日目のヘブンは超がつくほどの快晴。ヘブンの飲食店には、冷たい水分を求め多くの人が並んでいた。そう言う自分も喉がカラッカラだったので、列に並んで冷たいミネラルウォーターを購入。一口水を口にして、くるっとステージの方向に振り返ると、ヘブンのステージ前にはもう多くの人が集まっていた。我も参加せねばと小走りでステージ前を陣取ると、ちょうど定刻、ステージにメンバーが登場してきた。
石橋英子のバンド構成は、ステージ右からジム・オルーク(g)、藤原大輔(TennorSax, Flute)、松丸契(AltoSax, Flute, Clarinet)、山本達久(ds)、マーティ・ホロベック(b, WoodBass)、ermhoi(cho,syn)、そして石橋英子(Piano, Syn, Flute, Vo)の7人編成。全員文句の付け所のない実力者たちだが、ロックファンの観点で見た場合、気になるのはなんと言ってもジム・オルーク(元ソニック・ユース)だろう。昨今の音楽家としてのジムが参加していると言うことは…と想像するだけで、ライブがどんどん楽しみになっていった。
そして定刻、静かにフェードインするイントロから始まったのは“Epilogue:Innisfree”。その幻想的なサウンドに身を委ねるオーディエンス。ゆらゆらと身体を揺らし、なだらかで他にはなかなか無いグルーヴ感がそこにはあった。この曲もそうだが、石橋英子の楽曲とライブアレンジ、グルーヴの根幹には、オルタナティブなアティテュードがある。それは2曲目の“Agloe”をはじめ、中盤に演った“I Can Feel Guilty About Anything”など、各パートが微妙に音をずらすことによって、独特なアンサンブルを作り上げる。一歩間違えたらグダグダになってしまうところを、ギリギリのところで踏み留まり、楽曲として成立させる。そんな職人芸を目の当たりにして、曲が終わるたびに感嘆の(心の)声を上げてしまった。
時間を気にしながら「そろそろライブも終わってしまうのか…」とガッカリしていたら、ラストの“Drive My Car”で思わずハッとさせられる。轟音でかき鳴らすジムの激しいギターリフ。それがカオスを生み、これまでとはまた違うアンサンブルを生み出していた。あっという間の50分は音楽の可能性を改めて考えさせられる時間になった。
[写真:全10枚]