FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/31 SUN

中村佳穂

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Photo by 安江正実 Text by 梶原綾乃

Posted on 2022.7.31 23:10

うたと仲間と

「歌が大好きで、ひとりで歌っていたら、仲間ができた。仲間と一緒に演奏できるのがうれしい」彼女はしばしばこのような話を私たちに語ってくれる。今日は、うたの力が欲しいと思った中村佳穂とその仲間による、特別なステージだ。

今日は伊吹文裕(Dr)、越智俊介(Ba)、植松陽介(key)と、コーラス&パーカッション隊を率いた特別な7人編成。中村は、頭にはツノを、背中には羽をつけた衣装で登場した。即興演奏で「なぜ、僕たちはうたを聴くと、幸せになるのか」と歌い、“GUM”がスタートする。曲中、突然YOASOBI“夜に駆ける”が差し込まれたりもして会場が湧いた。

続いて、ちょっぴジャジーにアレンジされた“さよならクレール”は、コーラス隊のうたの力あって、ハーモニーがダイナミックに響く。丁寧に重ねられた音の層は、まるで教会のゴスペルのような荘厳な響きをもたらしている。楽曲が大きく化けた決定的瞬間に会場は驚き、おおいに熱狂した。

いったんメンバーが去ると、しっとりとソロタイムが始まる。「まだ、誰も知らない新しい曲をやります」と、新曲や“口うつしロマンス”を披露。会話をするように、呼吸をするように歌う彼女の声に、仕草に、全てにぐっと引き込まれた。ときには、映画『竜とそばかすの姫』のBellが歌う“はなればなれの君へ”をちょっとだけ挟んだりも。とってもごきげんな彼女に、こちらの表情も緩んでいく。

再びサポートメンバーを従えると“get back”。「眠れない夜、みんなもある?ある?」とこちらに語りかけてきた彼女はうたの力を訴える。「うたの力が必要。お願い、高橋あず美、力を貸して!」と声に出すと、今回のサポート・コーラスのひとり・高橋あずみが、中村の歌っていたフレーズを引き継ぎ歌い出した。R&B的なフェイクを駆使して、太く声を膨らませていく豊かな表現が、本当にすごい!すかさず中村も加わり、2人のハーモニーだけが会場に響き渡る。その光景があまりにも美しかったので、涙が止まらなくなってしまった。うたの力って、こういうことなのか。

大胆なコーラスワークで曲の解像度がぐっと上がった“アイミル”や、声の掛け合いが実験的な“ブラ~~~~~”など、強力なうたが加わった楽曲たちは、いつも以上にスペシャルで、またまた気持ちがこみ上げてきてしまう。また、“LINDY”では、心からの「応援を、あげる!」という言葉に救われたし、後半にはお祭りわっしょいな展開でバラエティ豊かな1曲に化けていた。またこのとき、次に出演する予定のハナレグミの“家族の風景”を歌ったところ、ハナレグミ本人が袖から現れるというビッグなサプライズも!

MCでは、昨年に出演したmillennium paradeの話題になり、「家で常くん(常田大希)のライヴをみていて、(“U”のときに)私いないじゃん、って思っていた」と言う。定かではないが、もしかしたら彼女も折坂悠太同様、出演をしない選択をしたのかもしれない。当時の気持ちを歌にしたという“MIU”を披露し、わーっと泣くように、ときに祈るように歌った。

彼女には、大きな味方が2つある。それは、うたと仲間。だから、どんなときもひとりじゃない…そんな、彼女の活動の根底に関わるものが、今回のステージでしっかりと体現されていた。観客もまた、うたが心を動かすということを強く実感できたのではないかと思う。

最後、彼女が言っていた「みんな、気をつけて帰ってね。うたを、もってかえってね」という言葉が印象に残った。今日いただいた「うた」は、大切に持ち帰って、胸の中にしまっておきたい。

[写真:全10枚]

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7/31 SUNFIELD OF HEAVEN