LIVE REPORTPYRAMID GARDEN7/30 SAT
田島貴男
Photo by HARA MASAMI Text by あたそ
Posted on 2022.7.31 10:39
ソウルに愛された男、夜のステージで変幻自在に歌い抜く
のんびりとした雰囲気が溢れるピラミッドガーデンに大きな拍手で迎え入れられる田島貴男。麦わら帽子にアロハシャツをまとい「今日はトロピカルな恰好をしています!」と軽めの挨拶を済ませて、ギターを持つと、“BODY FRESHER”の演奏がしっとりと始まる。フット・ストンプのテンポにアコースティックギターの音色、田島ひとりでの演奏だからこそ、普段のOriginal Loveとは異なるアレンジがうれしい。ときには「これはベースの音です!」と自分の出す音の解説をしてくれる場面があり、会場にいる観客皆を楽しませようとホスピタリティ溢れるパフォーマンスも素敵だ。
ソウルフルな歌声に情熱的なメロディが印象的な“フィエスタ”、エモーショナルに歌いあげる“ローラー・ブレード・レース”。田島は、このあとのMCでも自己紹介として「ブルースに影響を受けた」と自身について話し、今回も一人でさまざまな楽器を駆使する「ひとりソウルショウ」という形式であった。その様子を見ながら情熱的な歌声を聴いていると、自然と心も踊る。彼のキャリアの長さに裏付けられた表現や場の空気の掴み方みたいなものを終始感じることはできた。
心臓の音のようなフット・ストンプの音に温かなギターサウンドが身体にたまった疲労を癒す“好運なツアー”のあとは、“接吻”。「おお~!」という声が思わず観客から上がる。最近では、中高生もTik Tokを通じてこの曲を聴いていると耳にしたことがある。世代を超えた名曲に、音源と異なる形でのアレンジが加わり、新鮮な印象を持つ。たったひとりの演奏、シンプルだからこそ田島のソウルフルな声が艶やかに響き、歌詞も相まって思わずうっとりしてしまう。まさに至福のときであった。
次に演奏された“bless You!”、“フリーライド”と、時にシャウトを響かせ、観客から起こるハンドクラップはまるでひとつの楽器のよう。会場が全体となって、「ひとりソウルショウ」のステージを作り上げていく。
田島といえば、やはりシンガーとしての一面に注目してしまいがちだが、味のあるギターもたまらない。歌声を引き立てながらも、飛び回るような自由なギターは聴いているだけで心地がよい。
最後は、“JUMPIN’ JACK JIVE”。カントリー調のメロディにブルー・ハープの音色が乗る。少しのトラブルもあったが手慣れたもので、ギターの音でカバーしながら観客たちの笑いをかっさらっていく。こういうのも、長くステージに立ち続けてきたからこそできることなのだろう。新型コロナウイルス感染症で思うように声が出せないからこそ、普段のコール&レスポンスで盛り上げる場面では『クラップ&レスポンス』。拍手という形で、最後の最後まで私たちを楽しませてくれた。
ステージを去ってからも立ち上がって拍手をする人、アンコールのリクエストも多くみられた。あの会場にいた全員が田島の“ソウルパワー”とエネルギッシュな歌声に魅了されたからこそだろう。
[写真:全10枚]