“あたそ” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '22 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/22 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 24 Oct 2022 01:00:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.20 いつものフジロックへの http://fujirockexpress.net/22/p_8780 Mon, 15 Aug 2022 02:01:28 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=8780  3年ぶりに開催された、世界最大規模のフェスティヴァル、英国のグラストンバリーが2年遅れで50周年を祝った今年、初めてここを訪れてから40年の節目を迎えた筆者の目前で繰り広げられたのは「いつものグラスト」だった。日本で大騒ぎしているコロナ禍の影響は微塵も見られない。マスクをしている人はほぼ皆無で、ステージから感染防止のアナウンスが流れることもなく、注意書きさえ目にはしていない。幸運なことに、ほとんど雨も降らず、会場を歩いていると悩まされるのが砂埃。そのためにマスクを着用しようかとも思ったのだが、それさえはばかれる開放的な空気が会場を包み込んでいた。30万人ほどが数日間を過ごしていたなか、見かけたマスク姿は数えるほど。まるで誰もなにも気にしていないという空気が会場を支配していたように思える。

 変化が見られたとすれば、2019年か、その前年からか、「ペット・ボトルを会場からなくそう」と始まった「Reuse Refill Repeat」というキャンペーンの成果かもしれない。「清潔な水を全ての人へ」を形にしようと動いている国際非営利組織、Water Aid(ウォーター・エイド)と協力して、会場内に設置された「ウォーター・キオスク」で水を無料供給。水筒やタンブラーさえあれば、美味しい水がいつでも手に入る。手持ちのものがなければ、グラストの名前が入った特製も購入も可能。それが運動をサポートする収益にも繋がる。これによって、膨大な量のペットボトルが会場から姿を消しつつあるのだ。加えて、毎朝、数多くのヴォランティアが会場のゴミを清掃。それに気付いたのか、以前ならどこにでもポイッとゴミを捨てていた人々に変化が現れて、「ゴミに溢れた」イメージが定着していたグラストが確実に変わりつつあることに驚かされていた。

 そのグラストから約1ヶ月後に開催されたのが、25年という節目を迎えたフジロック。ここがまるで別世界のように見えていた。開催を前に観客のみならず、スタッフ、関係者に周知徹底されたのが『感染防止対策ガイドライン』。それもあったんだろう。土壇場になって「陽性となった」、あるいは、「身内が感染して濃厚接触者となった」と出演をキャンセルしたアーティストも少なくはなかった。さらに、それが理由で会場には向かわないと判断せざるを得なかったスタッフもいて、フジロック・エキスプレスでも、リモート業務を余儀なくされたメンバーもいる。おそらく、そんな事情はお客さんも同じだったと察する。しかも、ちょうど開催期間中あたりか、日本での感染者数が世界最大となったと伝え始めたのがマスメディア。なんとか開催にこぎ着けた昨年よりも、遙かに厳しい状況が待ち受けていたようにも思える。

 ただ、会場にやって来た人達のほとんどがガイドラインをチェックしていたんだろう。多くの人たちがマスクを着用したり、密な状態を避けようとしていたのは伝わった。といっても、屋外で観客同士の距離が確保できて感染リスクが少ないときは、マスクを外して熱中症予防やリフレッシュしてほしいとアドバイスも添えられている。昨年は「がんじがらめの」感染予防を決まり事として受け入れなければいけなかったのに対して、今年は「自分のことは自分で」という本来の姿が戻ってきたようにも思えてた。それが「いつものフジロック」への布石なんだろう。

 例年通り、前夜祭のオアシス・エリアにはやぐらが建てられ、フジロッカーにはおなじみの『苗場音頭』が鳴り響く。そこで踊り出す老若男女も、打ち上げる花火を見上げる人達も、「やっとここまでこぎ着けた」と感じているんだろう、なにやら華やいでる。どこかで悲しさを誘った昨年とは違って、今年はシンプルに「嬉しい」気持ちで空を見上げていた人がほとんどじゃないだろうか。それは3年ぶりに復活させることができた、レッド・マーキーでの前夜祭ライヴ直前の記念撮影でも感じていた。

 舞台裏の話をすれば、はたして記念撮影をすべきかどうかで悩んでいた。全スタッフにPCR検査を施し、観客全てに抗原検査をお願いした昨年、会場に足を運んでくれたフジロッカーがガイドラインを守ろうと涙ぐましい努力をしていたのは、昨年お伝えした通り。その結果、おそらく、国内で最も完全で感染リスクの少ない場を作っていたはずだが、この様子を好意的に伝えたメディアはほとんどなかった。まるで揚げ足をとるように重箱の隅をつつく記事が大半で、なかには意図的に読者をネガティヴな方向に誘導するような記事さえ目に入っていた。脳裏のどこかで、集合写真が「その素材として使われるのではないか」と危惧する気持ちがなかったと言えば嘘になる。

 それでも「やろう」と決断したのは、「いつものフジロック」を取り戻そうと、主催者や地元のみなさんのみならず、会場にやって来たフジロッカーも懸命に努力をしていることを記録したかったというのが一番の理由だ。前夜祭からやって来る筋金入りのフジロッカーにとって、この祭りが、彼らの生活やライフ・スタイルにとってどれほど重要な意味を持っているか言うまでもないだろう。ここは年に一度、里帰りのように訪ねてくる故郷のようなもの。「おかえり!」と声をかけると、自然に「ただいま」と返したくなる「自分たちの居場所」なのだ。それを彼らが守ろうとしている姿を残したかった。2007年から毎回続けられてきた、前夜祭最初のライヴ前に撮影される彼らの記念撮影でそれを証明できないだろうかと考えて主催者に交渉。OKの返事をもらったのは、ぎりぎりとなった当日じゃなかっただろうか。

 が、いつものように、「おかえり」と言うと、みなさんから大声で戻ってくる「ただいま」というレスポンスを撮影することは考えてはいなかった。それよりも、記録したかったのは「みんなが思いをひとつにすればなにかを形にできる」ことを証明すること。その思いとは、単純にルールを守ることではない。それぞれの命を守り、この祭りを守ろうとする気持ちであり、そのために自分で考え、責任ある行動をとらなければいけない。大多数の人達がそれを理解していることを形にしたかった。単純にマスクを付ければ感染から完全に身を守ることができると断言はできないし、大声で話せば感染するとも言い切れない。でも、それぐらいのこと、僕らには簡単にできるんだということを見せたかったのだ。

 その問いかけに見事なまでに応えてくれたのが、前夜祭のライヴ直前にレッド・マーキーにいたみなさんだった。ステージから簡単に今回の狙いを説明。「おかえり!」と声をかけるけど、心の中で「ただいま」と叫んで声には出さないで、代わりに大きく手を上げて応えてほしい。そして、みんなにマスクを付けてほしいと、手短にお願いして撮影に臨んでいた。

 もちろん、リハーサルなんて無し。具体的にどうするかを思いついたのも、ステージに向かっているときだった。が、ステージからマイク越しに声をかけると待っていたのは完全な沈黙。あまりに感動的なみんなの反応にステージ上から奇声を発してしまった自分が完全に浮いているようにも思えていた。が、あの叫び声が、逆に静寂を浮き上がらせていたようにも思う。しかも、レッド・マーキーの屋根の下だけではなく、その外でも同じような光景が姿を見せていたことを、友人がフェイスブックに投稿した映像で知ることになる。撮影された写真を見ると、屋根の下にいた2000人を越えるオーディエンスの99.9%が、「マスクを付けてくれ」というリクエストに応えてくれて、例年とは全く違う記念写真が出来上がっていた。

 これから何年か先、このコロナ騒ぎが本当はなにだったのか、そして、どういう意味を持っていたのかを知ることになるかもしれない。それがなにであろうと、この場所を守ろうとしていたフジロッカーの記録は残る。おそらく、そんな思いを共有していたオーディエンスこそがステージで演奏したアーティストたちの好演を呼び起こしていたのではないだろうか。数多くのライヴを見たわけではないが、スタッフや友人の口から耳にしたのが感動を呼んだライヴの数々。スクリーンやモニター越しにその素晴らしさを感じた人達も多かったようだ。が、同じ時間と空間を共有して、空気の波動や臭いに熱気も感じる至福は、その場にいる人にしか得られない。コロナのせいで会場に来られなかった、それを熟知している仲間がモニター越しに悔しい思いをしたという話しも伝わっている。

 でも、「いつものフジロック」と呼ぶにはもうひとつだったかもしれない。天上のエリア、デイ・ドリーミングやピラミッド・ガーデンに見られたのはいつもの表情。でも、フジロックをただ素晴らしい環境下での野外コンサートではなく、フェスティヴァルたらしめている要素のひとつ、まるで異次元の空間にいるような感覚を楽しませてくれるエリア、パレス・オヴ・ワンダーや奥深くに用意されていたカフェ・ドゥ・パリあたりがすっぽりと抜け落ちている。主に英国のスタッフを中心に企画制作されているのがこのエリア。彼らが来日できなかったという事情もあるんだろう。それに彼らが演出してきたボードウォークやグリーンからホワイトに繋がるルートのオブジェにも以前の輝きは感じられなかった。もちろん、それを国内のスタッフがその穴を埋めるように努力しているのは理解しているのだが、なにかが「たりない」という気持ちは否めない。

 その一方で、我々が続ける、この速報サイト、フジロック・エキスプレスは見事なまでに「いつものフジロック」に映っていた。ライヴのことはもとより、会場に集まってきた人々の幸せな表情を切り取り、よだれが出てきそうなほど美味しそうな食べ物が顔を出す。コロナ禍の影響で出店できなかったおなじみのお店が気がかりだが、アルコール無しだった昨年はお休みしたお店も復活。「フジロック的なるもの」がここではてんこ盛りになっていた。さすがに、根っからフジロックを愛するフジロッカーが集まったfujirockers.orgが生み出した速報サイトだと自画自賛したくなる。

 ここはそんなフジロッカーたちにとって、年に一度のミーティング・ポイントなんだろう。再会を喜ぶ人達が「久しぶりだねぇ」と、再会できなかったここ数年の話に花を咲かせている様子も目に入っていた。同時に、まるでずっと繋がっていたかのような気分で新たな出会いも生まれていたようだ。SNSでは「今年は会えなかったね。どこにいたの?」なんて会話が見受けられ、初めてフジロックを体験した人達から耳にしたのは、苗場での幸せな数日間。彼らにとって、ここが年に一度の里帰りのような場所なってくれたら、それに越したことはない。

 さて、来年はどうなるんだろう。このコロナ騒ぎは収まっているだろうか。それとも、「コロナと共に生活する」ってことになるんだろうか。できるなら、マスクなんぞおさらばして、仲間たちと心置きなく大騒ぎできるようになればいいんだけど、どうだろう。そして、フジロックをこよなく愛してくれたジョー・ストラマーが語ったように「生きている意味を確認できるような」時間や空間を引き戻したいと思う。それを人ごとのように語るのではなく、そのために自分でできることはなになんだろうと、思いを巡らしながら、これからの1年を過ごしていこうと思う。来年こそは、当たり前のフジロックを楽しめるように祈りながら。

なお、「フジロック愛」に溢れたフジロック・エキスプレス、今年のスタッフは、以下の通り。会場の様子を羨ましそうに眺めながら、自宅からリモートで作業してくれたスタッフもいる。作業をスムーズに進めるために好きなライヴをほとんど見られることのないスタッフもいた。ありがとう。感謝しています。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/22/
東いずみ、阿部光平、阿部仁知、安藤淳太、イケダノブユキ、ミッチイケダ、古川喜隆、石角友香、板場俊、あたそ、岡部智子、梶原綾乃、おみそ、北村勇祐、粂井健太、小亀秀子、Eriko Kondo、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、リン(YLC Photograpghy)、中島たくみ、馬場雄介(Beyond the Lenz)、HARA MASAMI、平川啓子、丸山亮平、三浦孝文、吉川邦子、森リョータ、安江正実、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/22e/
Mishu Callan, Mika Carl, Karen Lynch, PARK BAKER, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:mimi、obacchi、藤原大和、土井優子、関根教史

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一(デザイン)、坂上大介

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgは1997年のフジロック公式サイトから派生した、フジロックを愛する人々によるコミュニティ・サイトです。主催者からのサポートは得ていますが、完全に独立した存在として、国内外のフェスティヴァル文化を紹介。開催期間中も独自の視点で会場内外のできことを速報でレポートするフジロック・エキスプレスを運営していますが、これは公式サイトではありません。写真、文章などの著作権は撮影者、執筆者にあり、無断使用は固くお断りいたします。また、文責は執筆者にあり、その見解は独自のものであることを明言しておきます。

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補足です。例年、河原に姿を見せるゴンちゃんは最終日まで、そっとしておいてくださいとお願いしているのに、平気で「盗んで、連れ去っていく」人達が未だにいると聞きます。子供達が我慢してその時を待っているのに、恥ずかしいとは思わないんでしょうか また、森に姿を見せるマッドバニーも作品で、「勝手に持っていって(盗んで)いい」とは作者はもとより、誰も表明してはいません。これを持って帰った人達は泥棒です。「いつものフジロック」をぶちこわしにするような人達はもうここには来ないでほしい。

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JONAS BLUE http://fujirockexpress.net/22/p_1698 Wed, 03 Aug 2022 09:30:09 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1698 大量のスモークに、背後のスクリーンには巨大なジョナスの姿が映され、ステージ中央に向かって駆けていくJONAS BLUE。開始時間は20時、苗場の夜はまだまだこれからとでも言いたいかの如く、“Intro”ではハンドクラップが起こり、火花も散るし、重低音が響く。いやあ、WHITE STAGEってこんなにきっつい低音が出るんですね。自分の身体とか鼓膜だけではなくて、地面そのものが音で揺れている。あまりの音のでかさに笑ってしまう。軽い災害レベルの音のでかさだった。ジョナスも途中のMCで「3年ぶりの日本だ!」と言っていたけれど、この手のゴリゴリに踊らせるEDMサウンドも3年ぶりになる訳で、音の大きさにも気合いが入りまくっているのは、そりゃあ当然でしょう!

まずは“Fast Car ”に“All Night Long”と、会場が徐々に加速していく。身体の芯までがつんと来る低音に、きらびやかな照明、エッジの効いた映像に容赦がない。1日目の夜にして、もうすでに明日以降の体力が残りそうにない。どこよりも踊れる場所が、今ここにあるような気がした。

「スペシャルゲストです!BE:FIRST!」という声とともに登場したのは、待ってました!BE:FIRSTの7人。いやあ、正直“Don‘t wake me up”が発表されたとき、もしかしてフジロックに出るんじゃないか?とか、ちょっと期待したじゃないですか。でもまさか、本当に実現するとは……!流石はBMSGなんですよ。色鮮やかな衣装をまとう7人が並ぶ見慣れたはずのWHITE STAGEは、まるで違う会場のよう。正直に言うと、かなりアウェイだったと思う。だって今まで公式でフジロックに出たアイドルってBABYMETALしかいないし。しかし、丁寧に歌い、しっかりと踊り抜き、時には飛び跳ねる姿には全く緊張の色が見えず、デビュー1年未満のアイドルだとは思えない。背後で音をかけるジョナスの優しい視線も印象に残っている。会場からは温かな拍手が送られた。

これからが本番と言うかの如く、“Show me love”、“Perfect Melody”、“Needin‘U”、と上がらないわけにはいかないナンバーが続く。ただでさえ湿度が高く、じめっとしている苗場の熱気がどんどんヒートアップしていくのがわかる。というか、改めてライブを見ているとやっぱりJONAS BLUEって捨て曲がまったくない。時にはステージ前方に現れ、「Make some noise!!」と言いながら、スマホで写真や動画をパシャリ。ジョナスは日本が好きなことで知られているけれど、この人本当に日本が好きなんだな……と思わざるを得ない。なんだかんだ、会場で一番楽しんでいたのはジョナス本人だったんじゃないだろうか。

“By Your Side”、“Perfect Strangers”、“MAMA”が流れる頃には、会場にもなんとなく漂う疲労感。まだ一日目の夜なんですよね。フジロックはまだまだ続くけれど、明日以降の体力なんてまったく残してくれない音楽たちにハンドクラップやジャンプで思いっきり応える観客たち。休む暇のないバカでかい音が残された体力を搾り取っていく。
“Polaroid”、“What I Like About You”と、そうそう!こういうステージをずっとフジロックで見たかったんだよ、と言いたくなるような大盤振る舞いの曲たちに、緑のレーザーや前方がまったく見えなくなるくらいの真っ白いスモークが焚かれ、笑いそうになってしまう。
最後には、“Rise”で会場を去るジョナス。いやあ、踊った。踊り尽くした。会場からは「めちゃくちゃ楽しかった~」という声以外にも「疲れた~」という声も聞こえたくらい。2023年にはまた来日するという嬉しいニュースもあった。更に爆音で踊り狂いたい。

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ハナレグミ http://fujirockexpress.net/22/p_1758 Sun, 31 Jul 2022 17:16:09 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1758 たくさんの人が集まるフィールド・オブ・ヘブン。それもそのはずで、昨日の東京スカパラダイスオーケストラのライブで、この日のハナレグミのバックバンドをスカパラが担当するという、うれしい発表があったからというのもあるだろう。今年は3年ぶりのいつものフジロック。絶対に特別な夜になるに決まっている。きっと、そんな風に思っている人で溢れているのだろう。

全員が登場し、まずは“愛にメロディ”で冒頭から飛ばしていく。3日目の夜で疲労が蓄積されているはずなのに、自然と身体が揺れる。踊らずにはいられない。会場全体が一体となって左右に揺れ、夜にぴったりの一曲であった。「ここをジャマイカに変えようじゃないか!」で始められた“Jamaica Song”のあとの、“追憶のライラック”では大きな拍手も巻き起こる。今まで何度も聴いてきた曲が、今日の思い出に深く残る一曲になる。ライブ全体を通じて、スカパラのメンバーのソロでも大盛り上がり!もう、どれだけ踊ればいいんだろう。このハッピーな空間がずっと続けばいいのに、とすら思ってしまう。

軽快なメロディに優しく語り掛けるような歌声響く“独自のLIFE”と“オハナレゲエ”で心を鷲掴みにされ、「スカパラはマネーのほうがね」と笑いを取りつつ、永積以外のメンバーがステージから捌け、アコースティックギターで弾き語られたのは“サヨナラCOLOR”。息をする音を立てるのも惜しく、いい曲というのは、いつどこで聴いても素晴らしいということを再実感する。先ほどまでは飛び、跳ね、踊っていたけれど、こうしてひとつひとつの音に耳を傾ける時間も愛おしい。沖祐市(Keyboards)が登場し、2人で演奏されたのは“発光体”だ。じっくりとした演奏に、ひとつひとつの音は身体に響く。中盤でトランペット・トロンボーン・サックスの管楽器の音が加わり、更に彩りを添えた。

ムーディーなピアノの優しい音にミラーボールが眩く光る“Quiet Light”、温かな歌声が切なく沁みる“家族の風景”と、さまざまな編成で聴けるのは嬉しい。「まだ、動けそうな感じですよね?」という永積の言葉とともにはじまる“いかれたBaby”!もう、大盤振る舞いすぎる!茂木欣一(Drums)がワンコーラス歌うシーンもあり、身体も自然に揺れてしまう。

お次は、“大安”、“Peace Tree”、“オアシス”の豪華なメドレー!ピースフルなフィールド・オブ・ヘブンの雰囲気にぴったりと合う。「好きなように踊って!」という永積の言葉どおり、観客たちは自由に自分たちの気持ちを表現する。歓声のあがる“オリビアを聴きながら”、一日の終わりに向かって永積の声が優しく鳴り渡った“光と影”と、聴きたかった歌、演奏、演出をすべてやってくれたようなセットリストだった。
アンコールは、明日に向かう祈りのような“明日天気になれ”では、チャップリンの名曲“Smile”のカバー!途中で2人の男女の乱入してダンスを踊り出す。会場にいた全員が「いや、あれ誰だ……?」と思ったでしょう。なんと、その2人はUAとRADWIMPSの野田洋次郎だという予想しなかったサプライズもあった。まるでエンドロールのように、2022年フジロックの終わりにはふさわしすぎるステージになった。

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Nariaki Obukuro http://fujirockexpress.net/22/p_1729 Sun, 31 Jul 2022 15:34:49 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1729 ステージに温かく灯る2つのスタンドライト。下手にはコーラスの3人にベース、上手にはDJの計5人のサポートメンバーが位置に着き、ゆっくりと登場する小袋成彬。ぽつりぽつりと鳴るピアノの音にきれいな裏声、和やかな雰囲気のなか、まず演奏されたのは“Night Out”。これから日が落ちていく今の時間帯にぴったりの1曲だと思った。
鳴らされるベースの低音は容赦のないほどに重い。そこに3人の柔らかいコーラスが合わさって、小袋の放つ言葉は会場にゆっくりと落とし込まれる。時折、天まで伸びゆく裏声がどこまでも気持ちがいい。

浮遊感のあるサウンドに3人のコーラスが載せられた“Rally”と“New Kids”が終わると、軽い挨拶のあとに「ひとついいですか?今日、配信断ったんですよ。」と話をしはじめる小袋。「俺の音楽は、クーラーの効いた部屋でゆったり聴くものじゃなくて、こんなクソ田舎の苗場にわざわざ来て、Super organismを蹴ってまでこのステージに来た人たちのためにあるんですよ!」という熱っついMCには会場が思い切り湧く。
そのあとの、“Route”では、直に身体を貫く重低音に身を任せ、観客たちは各々で揺れる。音数が少なく、重くのしかかるようなサウンドと3人のコーラス、それから小袋の美しい歌声が引き立つ構成だからこそ、ひとつひとつのリリックが音楽としても耳に残る。曲の終わりに送られた長く温かな拍手は、まるでロンドンから帰ってきた小袋に向けた「おかえり」のメッセージのようであった。

きれいなファルセットを聴かせる“Strides”、ピアノとタンバリンが合わさったメロウな音に、ささやくような歌声が寄り添う“Formula”は、悦に浸るには十分すぎるほど。コーラスが華やかに響く“Parallax”が終わると、6~7月のツアーのため、3カ月禁酒をしていると話してくれた。「今日がまじのまじで最終なんですよね」「終わったらここで缶ビール開けていいですか!」という宣言も出る。フジロック最終日に聞くには辛い「生きるためには働かなきゃな」という歌詞に、リバーブの効いた歌声は“Work”だ。レッドマーキーでは音が反響し、手も挙がる。“Gaia”では、ゲストとして5lackが登場する。やっぱり来ると思ってた!2人が掛けあい、言葉をゆっくりと紡ぐ。幻想的なスポットライトに照らされ、会場は更なる盛り上がりを見せていく。

SWVのカバー曲“RAIN”ではミラーボールに照らされながらしっとり聴かせ、最後は“Butter”。メロウなコーラスが相変わらず重低音に乗せられ、疲れた身体に染み渡る。すべての演奏を終えると、スタッフが本当にビールを持ってきて、気持ちよさそうな音とともに缶を開け、美味しそうに流し込む小袋。「また帰ってきます!」という嬉しい言葉も聞くことができた。最大限に歌の魅力を引き出す構成から生まれたこの不思議な体験は、彼のライブでしか経験できないのではないだろうか。音楽の街・ロンドンでこれから何を考え、何を生み出そうとしているのだろう。ちょこちょこ日本に帰ってきてくれないだろうか……例えば、来年とかさ。すぐにでもいいですけど。そんなことを期待してしまう時間だった。

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ROUTE 17 Rock‘n‘Roll ORCHESTRA (feat. UA、中納良恵、トータス松本) http://fujirockexpress.net/22/p_1694 Sun, 31 Jul 2022 08:45:58 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1694 いつもこのバンドを見ると「フジロックに来たな!」と思うのだが、メンバーがステージに登場し、“Move on up”の演奏が始まると、終わりに向かっていくフジロックになんだか物寂しさを覚えてしまう。ハンドクラップが起こり、タニー・ホリデイ(Cho)のソウルフルな声が響く。今年のフジロックには珍しく突然の雨も降ってきたけれど、そんなのお構いなし!雨に負けない歌声を披露すると、MC・クリス・ペプラーが今日だけの特別なメンバーを紹介すると、“Everybody Needs Somebody”では、タニーとクリスの掛け合いが、豪華ゲストを待つグリーンステージを温める。

まず、登場したのは金と赤の晴れ舞台にぴったりのジャケットを着こなすトータス松本!まあ、まずはこの曲ですよね。“バンザイ”のイントロが聴こえると、会場も湧き上がるかのよう。トータス松本の力強く馴染みのある声を苗場で聴けるのはなんと嬉しいことか。サビの部分では、皆でバンザイをし、ステージを更に盛り上げていく。次に演奏された“Stubborn Kind of Fellow”では、エネルギッシュなトータスの声が響き渡る。こうして昔から知っている名曲を聴くことができるのも、この時間だけのうれしい特典なんじゃないでしょうか。

お次に登場したのは、昨日のフィールドオブヘブンでも素晴らしいステージを見せてくれた中納良恵!青と緑のクジャクのような、これまたド派手な衣装を身に纏い、“くちばしにチェリー”の耳馴染みのあるトランペットの音が聴こえると会場も大盛り上がり!グリーンステージで聴くこの曲のなんと気持ちいいことか!その小さな身体のどこにそんな力が眠っているんですか?と思うほどの勇ましい歌声に飛び跳ねるような管楽器とピアノに会場はどんどん加速していく。ただただ、今この時が楽しい。タニーとの掛け合いが心地よい“You Got it”のあとは。トータス松本を再び呼び戻しての“Dancing In The Street”!パワフルなサックスもうなり、アクセントとなり、2人の質の異なる歌声に寄り添う。

2人がステージから去り、待ってました!UAの登場です!えーっと、すみません。なんと説明していいのか……難しいのだが、カラフルな衣装に鳥類を神として崇める少数民族が祭りのときにだけ身に着けるロープからできた装飾具を身に着けている。まあ、気になった方は写真を見てください。その服装で、登場一番「おおきに!」はちょっとずるい。よっちゃんも鳥みたいだったし、今日は鳥が何かのキーポイントになるのかもしれません。そんななか、披露されたのは最新曲“微熱”。メランコリックなメロディに乗るUAの自由に伸びゆく声。苗場の地で聴くにはしっくり来すぎてしまう。フルートの音色も気持ちよく聴き入ることができる。こちらもうれしい選曲のひとつであった。まどろみのなかにいるような“Nothing Compares 2 U”では、壮大な演奏にUAの歌声が混ざり合い、うっとりと身体を揺らしながら聴いてしまった。

よっちゃんを呼び寄せてのアカペラと管楽器が響き合う“水色”、トータスとUAの2人の歌声が科学反応を起こした“歌”。今日このときだけのステージ、演奏だからこそ、出し惜しみすることなく3人のフロントマンが歌い上げていく。
最後は、“IMAGINE”。3色のカラフルな歌声が苗場の大地に響きわたる。ああ、最後にこの曲を持ってくるのは、なんとも最終日のフジロックらしい。平和や人間、生きているすべてのものについて想像を巡らせながらさまざまなことを考えながら聴き入ってしまう。今日だけの特別なステージに演奏。音楽や歌の持つ大きなパワーを全身で感じた1時間だった。

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go!go!vanillas http://fujirockexpress.net/22/p_1696 Sun, 31 Jul 2022 04:16:21 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1696 あっという間に過ぎゆくフジロック最終日のトップバッターを飾るのは、go!go!vanillas。残念ながら体調不良が原因で柳沢進太郎(g)の出演は叶わなかったが、サポートメンバーを含む6人で円陣を組み、気合いは十分。

爽やかなコーラスとアコースティックギターのメロディ。エモーショナルな牧 達弥(vo/g)の歌声に、バイオリンとキーボードの音色がよく似合う。観客のハンドクラップに合わせて加速していくように始まった1曲目は、“RUN RUN RUN”。掛け合いのようなサポートメンバーとのやりとりはカントリーっぽさを感じ、フェスらしさを覚えながらもバニラズの新たな一面を見ることができた。“LIFE IS BEAUTIFUL”では、飛び跳ねたくなるような音とバイオリンの音がマッチし、ピースフルな雰囲気が広いグリーンステージによく似合っている。一秒一秒を余すことなく楽しもうとするメンバーたちの姿もうれしい。正直にいうと、心配ではあった。仕方のないことではあるけれど、前日に柳沢の不在とサポートメンバーを入れての出演が発表され、本当に大丈夫なんだろうか?そんなことを考えてしまっていたけれど、ステージで鳴らされる音を聴いていると、まったくの杞憂であった。

挨拶とサポートメンバーの紹介を終えたあとは、長谷川プリティ敬祐(ba)が会場全体を盛り上げる。次の“エマ”に合わせ、観客たちがE・M・Aの文字を身体で作る。こういうところもバニラズのライブが愛される理由のひとつなのではないだろうか。ジェットセイヤ(dr)と長谷川の骨のあるリズムに軽快なメロディが混ざり合い、飛び跳ねずにはいられない。ただでさえ暑かったはずなのに、滝の如く流れる汗がバニラズの音楽によって絞り取られていく。

フジロックに強い思い入れのあるミュージシャンは多い。牧もそのひとりだったようで、10年前・大学生の頃に見たフジロックでの思い出や「いつかこのステージに立てたらな、と思っていました。今日、立ってるよ!」という喜びを報告してくれた。
「ギターはいないけれど、進太郎の魂はここにあると思うので!」と、3人(+1人)で演奏が始まったのは、牧が大学生の頃に作ったという“アクロス ザ ユニバーシティ”。お客さんとしてステージを見ていたひとりのミュージシャンがたった10年でこの広いステージに登り詰め、昔の曲を演奏する。粋な選曲だ。ファンにはたまらない、彼らの長いようで短い歴史を感じられるシーンでもあった。

背後をジェットセイヤと長谷川に預けてハンドマイクに持ち替えた牧が会場の隅までを楽しませてくれた“サイシンサイコウ”、キーボードがスパイスになって感情をむき出しにした“倫敦”と、もっとずっとヒートアップさせていく。

トランぺットが高らかに響き、「フジロックの未来に」「フジロッカーの未来に」という今日だけの特別な歌詞が嬉しい“アメイジングレース”のあとは、“平成ペイン”。ステージ前方は、あのお決まりのダンスを踊る人の姿が多く見られ、バニラズのライブは本人たちだけではなくてお客さんがいてこそ完成されるのかな、そんな風に感じられた瞬間であった。

ハンドクラップのあと最後に演奏されたのは、騒ぐにはぴったりの“マジック”。ピンチをチャンスに変え、今まで知らなかった一面を見せ、楽しさ以外の感情を吹き飛ばしてしまう空間だった。あっと言う間の45分。全然物足りないし、踊り足りないよ!!!そんな風に思う観客たちからは惜しみのない大きな拍手が送られた。

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田島貴男 http://fujirockexpress.net/22/p_1798 Sun, 31 Jul 2022 01:39:46 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1798 のんびりとした雰囲気が溢れるピラミッドガーデンに大きな拍手で迎え入れられる田島貴男。麦わら帽子にアロハシャツをまとい「今日はトロピカルな恰好をしています!」と軽めの挨拶を済ませて、ギターを持つと、“BODY FRESHER”の演奏がしっとりと始まる。フット・ストンプのテンポにアコースティックギターの音色、田島ひとりでの演奏だからこそ、普段のOriginal Loveとは異なるアレンジがうれしい。ときには「これはベースの音です!」と自分の出す音の解説をしてくれる場面があり、会場にいる観客皆を楽しませようとホスピタリティ溢れるパフォーマンスも素敵だ。

ソウルフルな歌声に情熱的なメロディが印象的な“フィエスタ”、エモーショナルに歌いあげる“ローラー・ブレード・レース”。田島は、このあとのMCでも自己紹介として「ブルースに影響を受けた」と自身について話し、今回も一人でさまざまな楽器を駆使する「ひとりソウルショウ」という形式であった。その様子を見ながら情熱的な歌声を聴いていると、自然と心も踊る。彼のキャリアの長さに裏付けられた表現や場の空気の掴み方みたいなものを終始感じることはできた。

心臓の音のようなフット・ストンプの音に温かなギターサウンドが身体にたまった疲労を癒す“好運なツアー”のあとは、“接吻”。「おお~!」という声が思わず観客から上がる。最近では、中高生もTik Tokを通じてこの曲を聴いていると耳にしたことがある。世代を超えた名曲に、音源と異なる形でのアレンジが加わり、新鮮な印象を持つ。たったひとりの演奏、シンプルだからこそ田島のソウルフルな声が艶やかに響き、歌詞も相まって思わずうっとりしてしまう。まさに至福のときであった。

次に演奏された“bless You!”、“フリーライド”と、時にシャウトを響かせ、観客から起こるハンドクラップはまるでひとつの楽器のよう。会場が全体となって、「ひとりソウルショウ」のステージを作り上げていく。
田島といえば、やはりシンガーとしての一面に注目してしまいがちだが、味のあるギターもたまらない。歌声を引き立てながらも、飛び回るような自由なギターは聴いているだけで心地がよい。

最後は、“JUMPIN’ JACK JIVE”。カントリー調のメロディにブルー・ハープの音色が乗る。少しのトラブルもあったが手慣れたもので、ギターの音でカバーしながら観客たちの笑いをかっさらっていく。こういうのも、長くステージに立ち続けてきたからこそできることなのだろう。新型コロナウイルス感染症で思うように声が出せないからこそ、普段のコール&レスポンスで盛り上げる場面では『クラップ&レスポンス』。拍手という形で、最後の最後まで私たちを楽しませてくれた。
ステージを去ってからも立ち上がって拍手をする人、アンコールのリクエストも多くみられた。あの会場にいた全員が田島の“ソウルパワー”とエネルギッシュな歌声に魅了されたからこそだろう。

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中納良恵 http://fujirockexpress.net/22/p_1753 Sat, 30 Jul 2022 15:42:24 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1753 大きな拍手とともに、ゴールドの衣装をまとった中納良恵とコーラスの2人がステージ中央に現れ、まずは“オムライス”。3人のすべるようななめらかな歌声、アカペラでの演出、さらには「フジロックの空の下のオムライス」と今日このときだけの歌詞が嬉しい。

そこにバックバンドの2人がゆっくりと登場する。“オリオン座”では、中納の力強い声がどこまでも響き、シンプルなピアノの音が夕暮れどきのフィールド・オブ・ヘブンにマッチしている。ピアノとドラム、コントラバスと華やかなコーラスが色めく“ソレイユ”。間奏にはハンドクラップが起こり、会場全体を巻き込んでいくようであった。

さまざまな声を楽器の音のように表現するイントロからはじまる“真ん中”。ときにエネルギッシュに、そしてときにはささやくような声。会場をかき回すサウンドや突然の転調はさまざまな表情を見せてくれる。中納と言えば、EGO-WRAPPIN’のボーカルとして知られているけれど、こうしてソロでの活動を見ていると、自身の声ひとつにしても曲によってまったく異なった印象を受ける。豪雨の中で行われた2019年フジロックでの苦い思い出を笑い話に変えたあとは、“濡れない雨”。優しく語り掛けるような歌声が、夜の疲れた身体に染み渡る。

一度サポートメンバー「甘い奴らバンド」がステージを去り、特別ゲストとして先ほどまでグリーンステージで素晴らしい演奏を披露したばかりの折坂悠太が大きな拍手で迎えられる。スポットライトが2人に当たり、ピアノにギター、それから質の異なる2人の声が呼応するように響く。気持ちがいい。ステージを見つめながら、じっくりと聴き入ってしまう。曲が終わると、交互に紹介をし、2人でかわいらしいお茶目なダンスを見せてくれた。

ステージに甘いシスターズを呼び寄せ、“ケムニマイテ”と“ポリフォニー”。混ざり合う歌声が響き渡り、共鳴していく。野球帽のようなお揃いのキャップを被り、3人でのダンスシーンも見せてくれた。音や歌声だけでなくて、さまざまな演出で楽しませてくれるのはうれしい。

ハンドクラップのあとには“SASOU”。軽やかなピアノのメロディにロマンチックな歌声、赤く照らすライトに心が躍る。中納の作り出す音の世界にどんどん惹き込まれていく。ラストは、まるで映画のエンドロールのような“おへそ”。寂しくぽつりぽつりと鳴らされるキーボードの音は、フジロック2日目の終わりを惜しむかのよう。
中納の声の持つ大きな力を楽しみ尽くしただけではなく、さまざまな音と演出で感情を揺さぶる、贅沢な時間であった。

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GRAPEVINE http://fujirockexpress.net/22/p_1724 Sat, 30 Jul 2022 13:53:54 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1724 「はい、フジロック!こんにちは、GRAPEVINEです!」という田中和将(Vocal/Guitar)を合図にし、層のように重なるギターのサウンドに乗る金戸覚(Bass)の低音、まず1曲目は“CORE”だった。重心を真下に落としていく亀井亨(Drums)のドラム、突き刺すような西川弘剛(Guitar)のギターに、滑らかに伸びていく田中の声に会場も揺れる。間髪入れずに“光について”のあの心を鷲掴みにされるイントロが流れると、会場からは歓声が起こる。あの、2曲目から飛ばしすぎなんじゃないでしょうか?会場の空気をじっくりと味わうようなそれぞれの音に、その場に立ち尽くしながら耳を傾ける。背後に光るオレンジの照明が美しく、歌詞やメロディに相まってギターソロやアレンジの入ったドラムは、瞬きすらも惜しいほど。

ライブが始まる前、「GRAPEVINEは今年デビュー25周年だそうで、おめでとうございます!フジロックも同じ25周年なんですよ!素晴らしいステージになるでしょうね!」と司会の方は言っていた。25年も何か同じことをしていると、老いを含めた変化というものが誰しも必ず起こるのだと思う。でも、どうしてなんでしょうかね。田中の声はデビュー当時から変わらない。それどころか、年々艶っぽさは増していき、表現力もどんどん広がっているような気がする。聴く度に好きになってしまっている。

最新アルバムから“目覚ましはいつも鳴りやまない”、そして「25年もやってると、夏の名曲もあるんですよ。」という言葉と共にアコースティックギターの温かいイントロから始まる“風待ち”。ミラーボールもゆっくりと回り、心をくすぐるようなギターの音も気持ちがいい。どこか懐かしく爽やかな音に乗る不器用な歌詞を、じっくり聴き入ってしまう。自然豊かな苗場の地でこの曲を聴けただけで、フジロックに来た意味があるような気がした。転調の気持ちいい“NOS”のあとは、ゆっくりとしたドラムから入る“ねずみ浄土”。一曲の中の無数にちりばめられた無音の一瞬が美しく、寄り添うようなコーラスとともにじっくりとステージから聴こえる音楽に身を委ね、釘付けになってしまう。そこからの“Gifted”の流れもたまらなかった。背後で支える高野勲(Keyboards)の不安を覚えるかのような音、「神様が匙投げた」という歌詞に耽美な照明がマッチし、神々しさすら感じる。

今までは胸をグッと掴まれるようないい意味で苦しみを帯びていたが、打って変わってアップテンポな“Alright”には観客たちが左右に揺れ、ハンドクラップも起こる。会場全体がGRAPEVINEに魅了され、一体になっていく。そして、聴き馴染みのあるイントロからの“FLY”。このワクワクするような、じりじりと何かが始まりそうなメロディに田中のシャウトが混じり、全ての音が放出するような始まり方が好きだ。伸びていく声はタイトルの如くどこまででも連れて行ってくれそうな気がしてしまう。

これで終わりなのかな、そう思った瞬間、なんと演奏がはじめられたのは“エレウテリア”。あー、本当にこれは……この曲をフジロックで聴けるとは……。まるでSnail Mailを蹴ってまで見に来た観客たちへのささやかなプレゼントみたいだ。意識的にテンポを落としているのだろうか、音の洪水に飲み込まれながら、ゆっくりとひとつひとつの音を堪能する。狂おしいほどのギターが響くアウトロにも惚れ惚れしつつ、彼らがライブバンドであることを改めて実感する。

往年の名曲から新曲、普段なかなか聴くことのできない曲まで、GRAPEVINEを余すことなく堪能した贅沢な時間だった。誰にでも忘れられないライブとか、記憶にずっと残っている演奏というのは、音楽を好きになった人なら誰しもあるはずだ。それが、今日だった。今日のあの瞬間を、私はこれからの未来に何度も何度も思い出すのだと思う。

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アトミック・カフェ いとうせいこう is the poet with 満島ひかり http://fujirockexpress.net/22/p_1774 Sat, 30 Jul 2022 07:03:31 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1774 「気候クライシスと原発」というテーマでのトークセッションを終え、津田大介のブラックジョークが会場をつなぎ、バトンを渡されるいとうせいこう is the poet with 満島ひかりのメンバーたち。

ゆっくりとメンバーが現れると、観客たちが一気に前に押し寄せてくる。荒野をゆっくりと歩くようサウンドに、管楽器のビビッドなメロディーに戦争反対を謳う詞が乗せられていく。
お次は新曲だという。「戦争を笑うな」「平和を笑うな」「光を笑え」「光と踊ろう」という詞が、なんともフジロックのアトミックカフェらしい。つい数分前にも行われたトークも気候や原発だけではなく政治や戦争の話に繋がってくる。この世のどこかには「政治を音楽に持ち込むな」という人もいるそうなのだが、音楽も政治も戦争も私たちの生活に地続きになっている訳で。こうしてひとつの音楽として、詞が載せられ、私たちの記憶に何かしらの爪痕を残し、現実社会に戻ってからふとした瞬間にさまざまなことに思いを巡らすことになるのだろう。

「満島ひかり!」という紹介のあと、「待ってました!」と言わんばかりの大きな拍手とともに登場する満島。お腹の出るライトブルーのシャツに蛍光グリーンのパンツがかわいらしく、フェスらしい。ムードあるミドルテンポから始まる“conquerer〜Waiting in Vain”。キーボードのメロディにコーラスも心地よい。時折、ハンドクラップも起こり、観客が自由に音そのものを楽しむ空間が広がる。
そして、UAの名曲“情熱”のカバー!体を揺らし、声を会場の奥まで伸ばしていくエネルギッシュな満島の姿がサマになってる。途中、笑いを含みながら歌うシーンがあり、最後にネタばらしがあったのだが、トンボが手に止まっていたそうだ。くすぐるような笑い声にもキュンとときめいてしまう。

最後は、変拍子のドラムにキーボードがアクセントとなった“怒り組曲(prologue~怒りを吠えるけもの~Walking down the street~DEAR A)”では、いとうと満島、熱のこもった2人の言葉の掛け合いが音楽に混ざり合い、心地よく響く。トークセッションでは「言葉と音楽は役割が違っている」と言っていた。そのとおりだと思う。すぐそこに迫るような、2人から織りなされる言葉の数々は音楽としても聴き入ることができるが、改めて平和や社会についてを見つめ直す贅沢な時間になったのではないだろうか?

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