“三浦孝文” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '22 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/22 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 24 Oct 2022 01:00:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.20 いつものフジロックへの http://fujirockexpress.net/22/p_8780 Mon, 15 Aug 2022 02:01:28 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=8780  3年ぶりに開催された、世界最大規模のフェスティヴァル、英国のグラストンバリーが2年遅れで50周年を祝った今年、初めてここを訪れてから40年の節目を迎えた筆者の目前で繰り広げられたのは「いつものグラスト」だった。日本で大騒ぎしているコロナ禍の影響は微塵も見られない。マスクをしている人はほぼ皆無で、ステージから感染防止のアナウンスが流れることもなく、注意書きさえ目にはしていない。幸運なことに、ほとんど雨も降らず、会場を歩いていると悩まされるのが砂埃。そのためにマスクを着用しようかとも思ったのだが、それさえはばかれる開放的な空気が会場を包み込んでいた。30万人ほどが数日間を過ごしていたなか、見かけたマスク姿は数えるほど。まるで誰もなにも気にしていないという空気が会場を支配していたように思える。

 変化が見られたとすれば、2019年か、その前年からか、「ペット・ボトルを会場からなくそう」と始まった「Reuse Refill Repeat」というキャンペーンの成果かもしれない。「清潔な水を全ての人へ」を形にしようと動いている国際非営利組織、Water Aid(ウォーター・エイド)と協力して、会場内に設置された「ウォーター・キオスク」で水を無料供給。水筒やタンブラーさえあれば、美味しい水がいつでも手に入る。手持ちのものがなければ、グラストの名前が入った特製も購入も可能。それが運動をサポートする収益にも繋がる。これによって、膨大な量のペットボトルが会場から姿を消しつつあるのだ。加えて、毎朝、数多くのヴォランティアが会場のゴミを清掃。それに気付いたのか、以前ならどこにでもポイッとゴミを捨てていた人々に変化が現れて、「ゴミに溢れた」イメージが定着していたグラストが確実に変わりつつあることに驚かされていた。

 そのグラストから約1ヶ月後に開催されたのが、25年という節目を迎えたフジロック。ここがまるで別世界のように見えていた。開催を前に観客のみならず、スタッフ、関係者に周知徹底されたのが『感染防止対策ガイドライン』。それもあったんだろう。土壇場になって「陽性となった」、あるいは、「身内が感染して濃厚接触者となった」と出演をキャンセルしたアーティストも少なくはなかった。さらに、それが理由で会場には向かわないと判断せざるを得なかったスタッフもいて、フジロック・エキスプレスでも、リモート業務を余儀なくされたメンバーもいる。おそらく、そんな事情はお客さんも同じだったと察する。しかも、ちょうど開催期間中あたりか、日本での感染者数が世界最大となったと伝え始めたのがマスメディア。なんとか開催にこぎ着けた昨年よりも、遙かに厳しい状況が待ち受けていたようにも思える。

 ただ、会場にやって来た人達のほとんどがガイドラインをチェックしていたんだろう。多くの人たちがマスクを着用したり、密な状態を避けようとしていたのは伝わった。といっても、屋外で観客同士の距離が確保できて感染リスクが少ないときは、マスクを外して熱中症予防やリフレッシュしてほしいとアドバイスも添えられている。昨年は「がんじがらめの」感染予防を決まり事として受け入れなければいけなかったのに対して、今年は「自分のことは自分で」という本来の姿が戻ってきたようにも思えてた。それが「いつものフジロック」への布石なんだろう。

 例年通り、前夜祭のオアシス・エリアにはやぐらが建てられ、フジロッカーにはおなじみの『苗場音頭』が鳴り響く。そこで踊り出す老若男女も、打ち上げる花火を見上げる人達も、「やっとここまでこぎ着けた」と感じているんだろう、なにやら華やいでる。どこかで悲しさを誘った昨年とは違って、今年はシンプルに「嬉しい」気持ちで空を見上げていた人がほとんどじゃないだろうか。それは3年ぶりに復活させることができた、レッド・マーキーでの前夜祭ライヴ直前の記念撮影でも感じていた。

 舞台裏の話をすれば、はたして記念撮影をすべきかどうかで悩んでいた。全スタッフにPCR検査を施し、観客全てに抗原検査をお願いした昨年、会場に足を運んでくれたフジロッカーがガイドラインを守ろうと涙ぐましい努力をしていたのは、昨年お伝えした通り。その結果、おそらく、国内で最も完全で感染リスクの少ない場を作っていたはずだが、この様子を好意的に伝えたメディアはほとんどなかった。まるで揚げ足をとるように重箱の隅をつつく記事が大半で、なかには意図的に読者をネガティヴな方向に誘導するような記事さえ目に入っていた。脳裏のどこかで、集合写真が「その素材として使われるのではないか」と危惧する気持ちがなかったと言えば嘘になる。

 それでも「やろう」と決断したのは、「いつものフジロック」を取り戻そうと、主催者や地元のみなさんのみならず、会場にやって来たフジロッカーも懸命に努力をしていることを記録したかったというのが一番の理由だ。前夜祭からやって来る筋金入りのフジロッカーにとって、この祭りが、彼らの生活やライフ・スタイルにとってどれほど重要な意味を持っているか言うまでもないだろう。ここは年に一度、里帰りのように訪ねてくる故郷のようなもの。「おかえり!」と声をかけると、自然に「ただいま」と返したくなる「自分たちの居場所」なのだ。それを彼らが守ろうとしている姿を残したかった。2007年から毎回続けられてきた、前夜祭最初のライヴ前に撮影される彼らの記念撮影でそれを証明できないだろうかと考えて主催者に交渉。OKの返事をもらったのは、ぎりぎりとなった当日じゃなかっただろうか。

 が、いつものように、「おかえり」と言うと、みなさんから大声で戻ってくる「ただいま」というレスポンスを撮影することは考えてはいなかった。それよりも、記録したかったのは「みんなが思いをひとつにすればなにかを形にできる」ことを証明すること。その思いとは、単純にルールを守ることではない。それぞれの命を守り、この祭りを守ろうとする気持ちであり、そのために自分で考え、責任ある行動をとらなければいけない。大多数の人達がそれを理解していることを形にしたかった。単純にマスクを付ければ感染から完全に身を守ることができると断言はできないし、大声で話せば感染するとも言い切れない。でも、それぐらいのこと、僕らには簡単にできるんだということを見せたかったのだ。

 その問いかけに見事なまでに応えてくれたのが、前夜祭のライヴ直前にレッド・マーキーにいたみなさんだった。ステージから簡単に今回の狙いを説明。「おかえり!」と声をかけるけど、心の中で「ただいま」と叫んで声には出さないで、代わりに大きく手を上げて応えてほしい。そして、みんなにマスクを付けてほしいと、手短にお願いして撮影に臨んでいた。

 もちろん、リハーサルなんて無し。具体的にどうするかを思いついたのも、ステージに向かっているときだった。が、ステージからマイク越しに声をかけると待っていたのは完全な沈黙。あまりに感動的なみんなの反応にステージ上から奇声を発してしまった自分が完全に浮いているようにも思えていた。が、あの叫び声が、逆に静寂を浮き上がらせていたようにも思う。しかも、レッド・マーキーの屋根の下だけではなく、その外でも同じような光景が姿を見せていたことを、友人がフェイスブックに投稿した映像で知ることになる。撮影された写真を見ると、屋根の下にいた2000人を越えるオーディエンスの99.9%が、「マスクを付けてくれ」というリクエストに応えてくれて、例年とは全く違う記念写真が出来上がっていた。

 これから何年か先、このコロナ騒ぎが本当はなにだったのか、そして、どういう意味を持っていたのかを知ることになるかもしれない。それがなにであろうと、この場所を守ろうとしていたフジロッカーの記録は残る。おそらく、そんな思いを共有していたオーディエンスこそがステージで演奏したアーティストたちの好演を呼び起こしていたのではないだろうか。数多くのライヴを見たわけではないが、スタッフや友人の口から耳にしたのが感動を呼んだライヴの数々。スクリーンやモニター越しにその素晴らしさを感じた人達も多かったようだ。が、同じ時間と空間を共有して、空気の波動や臭いに熱気も感じる至福は、その場にいる人にしか得られない。コロナのせいで会場に来られなかった、それを熟知している仲間がモニター越しに悔しい思いをしたという話しも伝わっている。

 でも、「いつものフジロック」と呼ぶにはもうひとつだったかもしれない。天上のエリア、デイ・ドリーミングやピラミッド・ガーデンに見られたのはいつもの表情。でも、フジロックをただ素晴らしい環境下での野外コンサートではなく、フェスティヴァルたらしめている要素のひとつ、まるで異次元の空間にいるような感覚を楽しませてくれるエリア、パレス・オヴ・ワンダーや奥深くに用意されていたカフェ・ドゥ・パリあたりがすっぽりと抜け落ちている。主に英国のスタッフを中心に企画制作されているのがこのエリア。彼らが来日できなかったという事情もあるんだろう。それに彼らが演出してきたボードウォークやグリーンからホワイトに繋がるルートのオブジェにも以前の輝きは感じられなかった。もちろん、それを国内のスタッフがその穴を埋めるように努力しているのは理解しているのだが、なにかが「たりない」という気持ちは否めない。

 その一方で、我々が続ける、この速報サイト、フジロック・エキスプレスは見事なまでに「いつものフジロック」に映っていた。ライヴのことはもとより、会場に集まってきた人々の幸せな表情を切り取り、よだれが出てきそうなほど美味しそうな食べ物が顔を出す。コロナ禍の影響で出店できなかったおなじみのお店が気がかりだが、アルコール無しだった昨年はお休みしたお店も復活。「フジロック的なるもの」がここではてんこ盛りになっていた。さすがに、根っからフジロックを愛するフジロッカーが集まったfujirockers.orgが生み出した速報サイトだと自画自賛したくなる。

 ここはそんなフジロッカーたちにとって、年に一度のミーティング・ポイントなんだろう。再会を喜ぶ人達が「久しぶりだねぇ」と、再会できなかったここ数年の話に花を咲かせている様子も目に入っていた。同時に、まるでずっと繋がっていたかのような気分で新たな出会いも生まれていたようだ。SNSでは「今年は会えなかったね。どこにいたの?」なんて会話が見受けられ、初めてフジロックを体験した人達から耳にしたのは、苗場での幸せな数日間。彼らにとって、ここが年に一度の里帰りのような場所なってくれたら、それに越したことはない。

 さて、来年はどうなるんだろう。このコロナ騒ぎは収まっているだろうか。それとも、「コロナと共に生活する」ってことになるんだろうか。できるなら、マスクなんぞおさらばして、仲間たちと心置きなく大騒ぎできるようになればいいんだけど、どうだろう。そして、フジロックをこよなく愛してくれたジョー・ストラマーが語ったように「生きている意味を確認できるような」時間や空間を引き戻したいと思う。それを人ごとのように語るのではなく、そのために自分でできることはなになんだろうと、思いを巡らしながら、これからの1年を過ごしていこうと思う。来年こそは、当たり前のフジロックを楽しめるように祈りながら。

なお、「フジロック愛」に溢れたフジロック・エキスプレス、今年のスタッフは、以下の通り。会場の様子を羨ましそうに眺めながら、自宅からリモートで作業してくれたスタッフもいる。作業をスムーズに進めるために好きなライヴをほとんど見られることのないスタッフもいた。ありがとう。感謝しています。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/22/
東いずみ、阿部光平、阿部仁知、安藤淳太、イケダノブユキ、ミッチイケダ、古川喜隆、石角友香、板場俊、あたそ、岡部智子、梶原綾乃、おみそ、北村勇祐、粂井健太、小亀秀子、Eriko Kondo、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、リン(YLC Photograpghy)、中島たくみ、馬場雄介(Beyond the Lenz)、HARA MASAMI、平川啓子、丸山亮平、三浦孝文、吉川邦子、森リョータ、安江正実、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/22e/
Mishu Callan, Mika Carl, Karen Lynch, PARK BAKER, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:mimi、obacchi、藤原大和、土井優子、関根教史

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一(デザイン)、坂上大介

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgは1997年のフジロック公式サイトから派生した、フジロックを愛する人々によるコミュニティ・サイトです。主催者からのサポートは得ていますが、完全に独立した存在として、国内外のフェスティヴァル文化を紹介。開催期間中も独自の視点で会場内外のできことを速報でレポートするフジロック・エキスプレスを運営していますが、これは公式サイトではありません。写真、文章などの著作権は撮影者、執筆者にあり、無断使用は固くお断りいたします。また、文責は執筆者にあり、その見解は独自のものであることを明言しておきます。

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補足です。例年、河原に姿を見せるゴンちゃんは最終日まで、そっとしておいてくださいとお願いしているのに、平気で「盗んで、連れ去っていく」人達が未だにいると聞きます。子供達が我慢してその時を待っているのに、恥ずかしいとは思わないんでしょうか また、森に姿を見せるマッドバニーも作品で、「勝手に持っていって(盗んで)いい」とは作者はもとより、誰も表明してはいません。これを持って帰った人達は泥棒です。「いつものフジロック」をぶちこわしにするような人達はもうここには来ないでほしい。

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NAI PALM from HIATUS KAIYOTE http://fujirockexpress.net/22/p_1752 Wed, 03 Aug 2022 09:15:27 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1752 フジロック2022の2日目ももうすぐ終わりを迎えようとしている。完全に日没した21時、ここフィールド・オブ・ヘブンではミラーボールが周囲の山々をライトアップしている。今日は天気が抜群なので空には星々が煌めいていて、いつも以上に幻想的で美しい。この最高なムードの中、これから登場するのは、不測の事態により出演がキャンセルとなってしまったブラック・ピューマズの代わりに急遽出演することになったネイ・パーム。彼女は初日にグリーンステージで圧巻のパフォーマンスで会場を盛り上げてくれたハイエイタス・カイヨーテの唯一無二のフロントウーマンだ。

ステージ上にはアンプと4本のマイクスタンド程度しか見当たらない。MCのジョージ・ウィリアムズも語っていたが、フジロックの歴史の中でもここまでシンプルなセットはなかなかないのではなかろうか。ネイ・パームの声とギターを生々しく届けることのみを意図した最小限の潔い機材に俄然ワクワクしてきた。

開演時刻にギターを抱えてネイが登場。ブルーグリーンの髪、全体がオレンジと一部にヒョウ柄が描かれているタンクトップ(どうやらザ・クランプスのバンドTのようだ)、パープルやピンクといった煌びやかに彩られたロングブーツ…。施されたメイクや両腕にびっしりのタトゥー、耳や鼻、首にかけられたアクセサリーのひとつひとつがネイ・パーム自身であり表現なのだ。誰が何と言おうがただ自分の好きなものだけを身に着ける、このスタンスを貫けたらどれだけの人が自由になり表現の幅が広がるだろうか。

冒頭から3曲、ギターを片手に弾き語る。マイクにもギターの音色にもエフェクト類が一切かけられていない。ごまかしが効かないからこそネイの表情豊かな非凡な歌声がストレートに胸を打つ。そして、あの自由奔放に発声しながら、しっかりと基盤を造りつつ曲を前進させるネイのギターがいかに非凡なのかを思い知らされた。

Laura Christoforidis(以下、ローラ)、Jace Excell、Alejandro Abapoの3名のコーラス隊を「ドリームチームよ!」と迎え入れ、フロアから飛んできた投げかけに「私たちは日本を本当に愛しているわ!日本食は本当に美味しいしね!」としばしの談笑タイムを挟み、「一番好きなジミ・ヘンドリックスの曲なの」と“Have You Ever Been(To Electric Ladyland)”を披露。コーラス隊が加わりグッとソウルフルになった歌声が心のうちに迫りくる。ヘブンで星空の下、堪能する静謐で極上の音楽。何て贅沢な時間なのだろう。

曲が終わった後、おもむろにネイが、(曲名のTo Electric Ladylandにかけて)「日本のelectric city(電気街)ってどこだっけ!?」とローラが「秋葉原よ!」と返すとサビの部分を「Have you ever been to Akihabara…」と替え歌でおどけてオーディエンスを楽しませる。

“Crossfire / So Into You”や“Blackstar / Pyramid Song / Breathing Underwater”のクルクルと世界観が変貌していく様は圧巻で間違いなく本セットのハイライトだ。タミア、デヴィッド・ボウイにレディオヘッドの楽曲がネイの声とギターを通して時に優しく、妖しく、暖かくヘブン一帯を包み込んでいく。心地よさの極致とはこのことを言うのだろう。

どんな時にも終わりはやってくるというもの。寂しいがラスト曲の“When the knife”で再びネイは圧倒的な歌とギターで場に感動の渦を創り出し、感謝と投げキッスを飛ばしまくってステージを後にした。鳴り止まない拍手と歓声に再び戻ってきて、「生意気な子守歌(cheeky lalaby)」だという曲をしめやかに披露し、感動と心地よさに満ちたステージを締めくくった。

人が持つパワーや表現というのはこんなにも可能性に満ちあふれ、場を一変させるほどもの凄いものなのかということをネイのステージからあらためて感じさせてもらった。観客の誰もが満足げな表情で拍手し続け、ステージを去る際のネイが嬉しそうにスキップしている様子からいかに本ステージが素晴らしいものだったかが一目瞭然だろう。

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Terry Riley with Sara Miyamoto – Everything and Beyond – http://fujirockexpress.net/22/p_1807 Sun, 31 Jul 2022 20:52:51 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1807 いよいよフジロック2022も終わろうとしている。帰路につこうとゲートに向かう者、朝まで遊び倒すべくレッドマーキーやオアシスエリア、イエロークリフに足を急ぐ者、それぞれの選択してフジロックの最後を満喫している様子が見て取れる。私は、ピラミッド・ガーデンを目指していた。朝から快晴が続いていた今日だが、23時を回ろうかという頃に雨が降り始め、ポンチョが必要な程度の強さだ。

ピラミッド・ガーデンに到着。今年は初日から3日間ともここが私の終着点だ。控えめで美しい照明、ステージ上に灯されたキャンドルの光、目に映るものすべてが感慨深い。

さて、これからここに登場し本ステージの幕引きを行うのは、ミニマル・ミュージックの創始者、テリー・ライリーだ。1960年代に『in C』や『A Rainbow in Curved Air』をリリースし、広く音楽の世界に多大な影響を与えてきたレジェンド。御年87歳。今年のフジロック出演者リストに彼の名前を見かけて目を疑ったが、何とテリーさんは日本は山梨県在住なのだという。

「さどの島銀河芸術祭」におけるDOMMUNEが手掛ける新プロジェクト「LANDSCAPE MUZAK」に参加する予定だったテリーさんは、2020年3月に視察のため佐渡島に訪れる。しかし、ご存知のように新型コロナの蔓延により米国でロックダウンが施行されてしまったため帰国を断念し今に至るとのこと。今年の3月にはビルボードライブ東京でライヴも行われており、我々日本人がテリーさんの音楽の世界観を知り、触れることができるまたとない機会が到来していると言えるだろう。

これらを踏まえ今夜のステージは目撃しておかないといけない。テリーさんは昨日の朝にも同じピラミッド・ガーデンに姿を見せており、何と名曲“A Rainbow in Curved Air”を披露したのだという。

雨脚が強まる中、開演時刻にテリーさんが登場。ただいるだけで伝わってくる存在感。仙人のようだ。キーボードから幻想的なドローンを出力する。音におぞましい質感が加わっていくと、仮面を付けた宮本沙羅が杖をつきながらゆっくりと登場し、テリーさんが繰り出す流麗にして不気味な音に合わせてうごめくような踊りを披露している。宮本の仮面は密林仮面として活動するアーティスト、鈴木明子氏による植物を織り込んで作られたもののようだ。

続く曲ではアコーディオンあるいはピアニカのような音をテリーさんがじんわりと響かせ、宮本が挿入してくる民族楽器がノイズのように絡み合い、幻想的な音世界はどんどん深淵なものになっていく。宮本が奏でるダフ(フレームドラム)の控えめなビートが心地よく鼓膜を叩いてくる。テリーさんが深みのある声で「ゴーマンダー、ゴーマンダー…」とマントラあるいはお経のような調べで歌いはじめ、キャンドルの光や照明の色と相まって宗教儀式の様相を呈してきた。

最後に向けてテリーさんの鍵盤がもたらす音像は、バイオリンのような音だったり奏でる多種多様な音色が混ざり合い、場をどんどん覚醒させていき、最後はしめやかに約1時間のステージの幕引きを行った。テリーさんの演奏が神がかっていくに連れて、演奏に呼応するかのように降りしきっていた雨がいつの間にか上がっている。

テリーさんの音世界と対峙した1時間が何だったのか。頭では理解ができない。他の音楽や現実世界のものとは明らかに違う時間が流れている音楽だった。音楽の世界はどこまでも深い。テリーさんが87歳にしてなお、その世界の奥の更に奥まで表現を深めて行こうとしているように感じられたライヴだった。テリーさんが今日本に住んでいるという幸運、フジロックに出演してくれた幸運、ここに居合わせた幸運とたくさんの奇跡を経て今がある。この一度きりの人生すべてが奇跡だということに感謝しつつ今年のフジロックを完了したいと思う。

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奇妙礼太郎 http://fujirockexpress.net/22/p_1763 Sun, 31 Jul 2022 15:23:32 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1763 フジロック2022もいよいよ最終日!晴れ渡ったフィールド・オブ・ヘブンのトップバッターを務めるのは奇妙礼太郎だ。起きがけの目覚ましと言わんばかりの咆哮し挨拶をする奇妙。今の天候にぴったりの気だるさが漂う“エロい関係”からステージの幕が開ける。潮田雄一が繰り出す流麗なギターソロをはじめ、バックバンドものっけから気合十分だ!

この炎天下にぴったりの“かすみ草”のパワーフレーズが飛び出す。奇妙の力強い声も、村田シゲによる縦横無尽に響くベースも、ラストでバチを折ってしまう松浦大樹もすべてがフルスロットル。バンドのパワーに呼応しフロアのオーディエンスのテンションもどんどん上がっていっているのが見て取れる。

「お久しぶりです!元気ですか?」と軽くMCをした後、奇妙の静かな弾き語りからはじまる“アスファルト”。清涼感漂うキーボードと、リヴァーヴが効いたギターが絶妙に乗ると奇妙の真っ直ぐな歌声がヘブン一帯に拡散し感動でオーディエンスを包み込んでいく。

トランペットとドロンボーンのホーン隊が登場すると、スカ調のバックビートが楽しい“たまらない予感”へ。ゴキゲンなグルーヴに居合わせた誰もが楽しそうに身体を揺らしている。

下北沢でリハーサルしていた時にできた曲だという新曲“バーミヤンで烏龍茶”を披露。奇妙が「伝えたいことがある」と言うので何かと思いきや「みたらし団子って食べにくいよね」との言葉に肩透かしを食らいつつ、そのまま「みたらそうぜ!…」とトースティングのようにオーディエンスにもハンドクラップを促しつつ絶妙に繋げていく。最後に「もうすぐ本当に一緒に歌える時が近づいていると思うから、その時はこの曲をやると約束する!」と語り「烏龍茶!」と高らかに歌い上げ締めくくった。

続く“思い出の店”で奇妙は歌声の力量を見せつけ、「大好きな曲をやります!」と“愛の賛歌”のカバーを披露した。命を燃やすような恋の歌詞を歌い上げる奇妙の姿に思わず目頭が熱くなる。しんみりした後は一転して、中込陽大によるファッツ・ドミノのような軽快なキーボードの調べがたまらない“ピアノメン”。もうフロアはハンドクラップとダンスの動きを止めることはできない。コロナ禍でもハミングはいいじゃないかと、オーディエンスと一緒に「んー」とハミングでコール&レスポンスをトライ。「楽しいね!ありがとう!」と奇妙も満足げだ。

ラストは「あんたの歌だー!あんたの歌だよー!」と叫んではじまる“わたしの歌”。自分の良いところも悪いところもそのまんま愛するという自己承認曲を、中込陽大の絶品なピアノ主体のバンドアンサンブルの基、力強く歌い上げる。奇妙はやり切った笑顔を浮かべ、颯爽とステージを後にした。

歌というものは感情をストレートに届ける。奇妙が歌う“わたしの歌”を聴きながら、あぁ俺も自慢したくなったりするけどそれを隠したりしてるなぁって、そしてその時自分のことを嘘つきで駄目なやつってしているなぁって気づいてグッときていた。終演後、会場には佇んで涙を流している人たちが散見された。グッときたところは違うかもしれないが共感がその場に生まれていたことは確かだ。歌と音楽の持つものすごいパワーに触れさせてくれたことに、感謝しかない。

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TOM MISCH http://fujirockexpress.net/22/p_1692 Sun, 31 Jul 2022 12:19:07 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1692 フジロック2022もいよいよ最終日。とっぷりと日も暮れ、今年のフジロックの終わりが徐々に近づいてきた。寂しさを感じつつも、今グリーンステージ前で嬉しさを噛みしめている。去る7月19日に、コロナ禍による長いブレイク後の過酷なツアーによるメンタルヘルスへの影響からオーストラリアとニュージーランドのツアーをキャンセルするとのアナウンスがあった。直前のアナウンスだったこともあり、フジロックも無理だろうと諦めていたが、こうして無事来日してくれて本当に良かった。

いてつく吹雪のようなミニマルノイズが響き渡る中、6名のバンドメンバーが、ステージに向かって右からベース、ドラム、サイドギター、キーボード、パーカッション、バイオリン、それぞれの定位置についていく。サウンドチェックのようでいて非常に練られた絶妙なタイミングで音やビートを入れ込んでいく。トムが登場し、照明でステージが青くぼやける中、浮遊感のあるフレーズで本セットのイントロを創り出していく。不穏なフレーズのループがはじまると、フロアから待ちわびた大歓声が巻き起こる。ドラムの鋭いビートと地鳴りのようなベース音が入り“What Kinda Music”がはじまった。高音の声もよく出ていてコンディションは良さそうだが、今のところトムに笑顔はなく、終始厳しめの表情を浮かべているのが気にかかる。

中央のトムにスポットライトが集中照射され“It Run’s Through Me”の柔らかなギターフレーズが奏でられると、ひと際大きな歓声が上がった。ボサノヴァ調のムードで軽快に進みながら、随所で入ってくるベース音の太さに驚かされる。生だとここはこう鳴るのか!という発見と体験。ライヴで最高なのこういう瞬間だ。後半のトムのギターとサックスの掛け合いもライヴならではのスリリングさに満ちあふれ、かつバンドが渾然一体となって生み出しているグルーヴは心地よさの極地だ。

間髪を入れず“Losing My Way”へ。トムが静かに歌い上げる冒頭部をオーディエンスがバンドグラップでバックアップ。みんなで手を叩いて創る音に全身が包まれているような感覚にさせられ、何とも心地よい。後半に向けて徐々にファンキーさが増幅していってトムのギターソロが爆発するところ、涙ちょちょぎれもんのカッコよさだ!

「コンニチハ!ここへ来れて嬉しいよ!聴いてくれてありがとう!」と挨拶するトム。ようやく笑顔が見れた。ここで新曲“Falling For You”を披露。3ギターにより刻まれるファンキーなカッティング、サビ後の王道ロックなキメキメのフレーズ、パーカッションによるアフリカンビート…大好物だらけ!これは踊れる。

ここで照明の使い方の巧みっぷりも特筆しておきたい。“I Wish”では、最低限のスポット照明とバックに映し出された映像の光だけでスタートし、サビ周辺でプルーとピンクとクルクルとカラフルにステージをフロアを照らして曲展開のポイントをしっかり押さえている。Nightriderでは、照明がほぼ落ちて夜の世界を醸成するとともに、浮遊感漂うフレーズに合わせてスクリーンにパープルに光る円柱の様なデザインが回転し続け、音の雰囲気を助長していた。“Disco Yes”での虹色にきらめくミラーボールの使い方も絶妙!トムの曲進行の緩急に合わせた照明のコントラスト、そして観るものを唸らせ感動させる粋な照明デザインには何度も膝を打ってしまった。

“Tidal Wave”での圧巻のギターソロを堪能して、トムが現代を代表するギターヒーローであることをあらためて実感が、「俺の超絶技巧プレイを見ろ!のタイプでは決してない。あくまでバンドの中の一人として、メンバーと一緒にグルーヴを創り出していくプロデューサーとしてのギターというところからソロを披露している。ゲストシンガーを迎え入れプレイしたマイケル・キワヌカの“Money”においても、シンガーが歌いやすいようにリードしていくようなギターだ。トムの人間性の高さの表れと言ってしまえばそれまでかもしれないが、新しいギターの可能性を感じたのは私だけだろうか。

ラストはバイオリンのフレーズが効いている“South of the River”。テムズ河の南側、サウスロンドンシーンのことを歌っていると思われるこの曲で、トムとバックバンドの仲間たちが次々と放ってくるたまらなく美しいグルーヴにいつまででも身体を委ねていたくなる。トムはバンドとともに渾身の表現を100%放ち切った演奏の幕引き後、オーディエンスと集合写真を撮って笑顔でにこやかにステージを後にした。

アフリカにこんな諺がある。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」バックバンドの6名、ゲストミュージシャンの2名の仲間たちと一緒に極上のグルーヴと感動を創り上げたトムの今夜のステージを観てこの諺を思い出した。トムはこれからも仲間たちと一緒に新しい音楽世界へどんどん進んでいくことだろう。

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Caravan http://fujirockexpress.net/22/p_1799 Sun, 31 Jul 2022 09:12:50 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1799 フジロック2022も二日目が終わろうとしている。ここはフジロックの1日を終えるのにピッタリの場所、ピラミッド・ガーデン。夜はCandle JUNEのたくさんのキャンドルがステージを照らし、美しいライトアップとともに極上の癒し空間と化すのだ。しかも今日は晴れ渡っていて空には満天の星が!

そんな最高の場所にこれから登場するのはCaravanだ。もう想像するだけで気持ちが和んでこないだろうか。開演時刻ちょうどにCaravanが登場し、「2日目、お疲れ様です!ゆっくりリラックスしていってください」と夜も更けてきた今にぴったりの“Night song”を披露。Caravanの声、静かに爪弾かれるギター、ステージから放出される音がシャワーのように降りかかってきて1日の疲れた耳と全身を癒してくれる。

「この空間が大好きで、地上の天国というか、噛みしめるようにやって帰りたいと思います」と再びこのピラミッド・ガーデンという愛するところに戻ってこられたことに対する喜びを表現する。すると耳馴染みのあるギターフレーズが流れた。“ハミングバード”だ!疲れを取った後に活力を注入してくれるような曲だ。

コロナ禍がはじまった2020年に創られたという“Magic Night”がそれから2年を経て、ここで満を持して披露できる喜びを分かち合ってくれた。魔法の夜。最高の音楽を最高の仲間たちと堪能している、まさしくたった今がそうじゃないか!

子供の頃の自分と話せるとしたらというテーマの“Kid”、こんな素晴らしい瞬間が人生で後何回あるのかがテーマの“革命前夜”の2曲を弾き語る。現場でゆったりと癒されながらも隣の愛する友人や恋人、家族に感謝と愛を表現したんじゃないだろうか。ほんとにピースフルな雰囲気が満ちあふれている。

ここから、つい先ほどまでホワイトステージでのコーネリアスのライヴに参加していた堀江博久が登場し、セッションに参加。「ホワイトステージから遠いねー!ビール持ってきたよ」と堀江。家にやってきたかのような寛ぎ加減にほっこりしてしまう。堀江のピアニカで心地よさが倍増した“サンティアゴの道”が終わり、「明日、最後!悔いのないよう開放して帰ってください!ありがとうございました!」とステージを後にした…と思いきやすぐにステージに戻ってきて、「久しぶりに会った皆さんと景気のいい曲をやって締めたいと思います」と正真正銘のラスト曲“TRIPPIN’ LIFE”。飲酒運転ならぬ飲酒演奏だという堀江のピアニカの鳴りの気持ちいいこと!飲酒演奏最高!どこまでも続いていてほしいほど軽快で楽しいCaravanと堀江の掛け合いが終わり、極上の和みステージの幕が下りた。

1日の終わりに、愛と感謝に満ちあふれた空間を創り上げてくれたCaravanと堀江博久の二人には感謝しかない。さぁ、今年のフジロック後1日!何もかも解放して楽しもう!

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ALTIN GÜN http://fujirockexpress.net/22/p_1761 Sun, 31 Jul 2022 07:40:57 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1761 フジロック2022、最終日の昼下がり。朝から汗が滴り落ちるほど快晴が続いている。が、会場のフィールド・オブ・ヘブンに到着すると雨がぱらつきはじめた。これからここに登場するのは噂のオランダ/トルコ混成グループ、アルトゥン・ギュンだ。この名前はアメトーーク!の夏フェス芸人特集でハライチの澤部さんが何度もバンド名を連呼していたので覚えた人も多いのではないだろうか。2020年のフジロックの時から名を連ねていたバンドだ。ようやく達成した初来日にして記念すべき本邦初ライヴがはじまろうとしている。

開演時刻丁度にメンバー総勢6名がステージに登場。颯爽と姿を見せたメンバーの出で立ちから、オーラを醸し出している。バンドリーダーのJasper Verhulst(以下ジャスパー)がベースでリズミカルに踊れる素地を創りそこにパーカッションとドラムが絡み合い進行していく“Cemalim”からキックオフ。バンドの歌姫、Merve Dasdemir(以下マーヴ)が歌いはじめると場は一気にトルコ民謡の世界へと誘われる。Erdinç Ecevit(以下エルディンチ)がサイケデリアをキーボードで醸成して、のっけから一筋縄ではいかない。

「ここは今まで行ったことがある中で一番素敵なところよ!」とマーヴがここに来られた喜びを表現し、リズムセクションが軽快に入り「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」の掛け声から“Vay Dünya”に突入。エルディンチがサズをいなたく鳴り響かせ中東特有のグルーヴを場に生み出していくとそこはもうダンス天国!踊れる音楽のビートとグルーヴが世界の共通言語で、世界をひとつにすることを証明した瞬間だ。

マーヴがキーボードで80年代を想起させるフレーズを奏ではじまる“Yüce Dağ Başında”。Thijs Elzinga(以下、シジス)のギターのカッティングも地を這うようなベース音も最高だ。ピアニカが盛り込まれたことで一層ダブっぽい音色も加わり多国籍感満載なグルーヴで問答無用に踊らせてくれる。

エルディンチがリードボーカルをとる“Badi Sabah Olmadan”の疾走感には頭の振りが一切抑えられない。メタルとトルコ民謡の親和性のようなものを感じ取ってしまった。こと音、非常に中毒性が高く、癖になる。フロアは腕を突き上げ、腰を振り、笑顔でジャンプしている癖になっちゃった人たちだらけだ。

マーヴが「踊り方を教えるわ!両腕を挙げて、指を鳴らすだけよ!」とステージ上を所狭しと踊り倒すのだから、ヘブン一帯は狂乱のダンスフロアと化す。ラストは、メンバーそれぞれが「私を見て!」ではなく「あなた一人一人を躍らせる!」ことが主目的のソロパートを次々に繰り出していき、オーディエンスをグルーヴで歓喜の渦に巻き込んで日本での、フジロックでの初演を清々しく完了した。

アルトゥン・ギュンの一度体験してしまうと癖になってしまうビートとグルーヴ。これからも世界中で中毒者が増えて行くことだろう。彼らがショウを繰り広げていくと、いつの間にか世界がひとつになっていたりして。

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清水タケオと南国気分 http://fujirockexpress.net/22/p_1816 Sun, 31 Jul 2022 01:53:50 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1816 フジロック2022、2日目も日が落ち過ごしやすい時間帯に入って来た。今日は本当に朝から天候に恵まれている。さぁこれから南国へ旅しに行こうとやってきました苗場食堂ステージ!

開演時刻を若干超えるまで入念にサウンドチェックをしているバンド、清水タケオと南国気分の記念すべきフジロック初出演ステージがこれからはじまるのだ。彼らが活動の拠点としている岡山で開催された昨年のUNKAI NATURAL CAMPに出演した時の素晴らしさを、立ち会った友人たちから耳にしていて、フジロックに出演が決まった瞬間から「観たい!」と目を付けていた。

清水タケオ(以下タケオ)が「岡山からはるばるやってきました!フジロックイェーイ!友達になって帰ってくださーい!」と何とも嬉しそうに叫び、ぶっといベースとパーカッションが軽快に刻み込まれ、ルンバからステージをスタート。田淵キミトの熱いサックスと小川ゲンタのトロンボーンが奏でるキューバンでトロピカルな音でのっけから一気に南国へと誘ってくれる。ゴキゲンな音に惹かれて徐々にステージ前にオーディエンスが集まってくる。

小さな子供たちのために書いた曲、と紹介しはじまった“Calypso Riyo”。川崎ヨーへーによる絶妙なスティールパンの音がめちゃめちゃ耳に心地よい。ゴキゲンな音と場の楽しい雰囲気に足を止め、徐々にオーディエンスが集まってくる。子供の世界はこんなにも美しいんだって。「すべての子供たちに捧げまーす!」と晴れやかに締めくくった。

お次は、タケオがブルースハープををいなたーく吹上げる!これ、たまらない。「俺とジャンプしたいかーい?」と何度も連呼したら“俺のJump Blues”を発進!それぞれが冴えたソロパートをかましていく中で、嶋田テツロウだけがシンプルかつ着実に響かせてくる。タケオは「渋い!クラシック!」とツッコミ。「ハイハイハイハイ!イェーエオ!」なんて掛け声を互いにやり取りし楽しませてくれる。オーディエンスのみんなも笑顔で身体を揺らし、ジャンプし楽しんでいる。

世界の音楽のようなグルーヴが日本にないのか?それは民謡だ!ということで、鳥取の民謡“貝殻節”を披露。ホーンセクション鳴りとリズムセクションのビートがずっしりと腹に重たくて響いて最高。手拍子の合間に両手をこすり合わせる「揉み手」のことをタケオが教えてくれた。確かに揉み手だと民謡のリズムを取りやすい気がする。

ここで、昨晩はToshizo and Happy Catsとして、アバロンにも姿を見せていたShiraishi Toshizoがゲストギタリストとして登場。優しくバックビートを刻みはじまったインスト曲“浜辺Step”。ゆるい波をモチーフにしたという曲だけあってかToshizoは耳に心地よい控えめなソロで楽曲を緩やかに彩っていく。

楽しい時間はあっという間!ラストはサンバチューン“港の見える丘のサンバ”。「テーレレ!テーレレオ!」とみんなで合唱し、腰にくるサンバのビートでノリにノって最高に楽しい場創り上げ、「最後まで付き合ってくれてありがとうございました!愛してるぜー!」と爽快に約40分強のステージを駆け抜けた。終演後、オーディエンスは笑顔でご満悦のご様子だ。初フジロックのステージは大成功だったと言っていいだろう。

いやー、楽しかった!振り返るとルンバにはじまり、カリプソ、ブルーズ、民謡、レゲエにサンバとほんとにそのまんま音楽の世界旅行に連れて行ってくれた。あなたも清水タケオと南国気分と一緒に愉快で楽しい音楽の世界旅行に行ってみないかい?

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TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA http://fujirockexpress.net/22/p_1687 Sat, 30 Jul 2022 14:51:13 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1687 フジロック2022、2日目も17時前。うだるような暑さが続いた昼下がりから一転し、空には曇天が立ち込め涼しくなってきた。フジロックいちの大箱、グリーステージには本日4組目のアーティストが登場する。8年ぶりの苗場帰還となる東京スカパラダイスオーケストラだ!そんなに来ていなかったっけ?と感じてしまうほど、安心で安全のみんなのスカパラ。久しぶりでこのメインステージと来ちゃ、バンドもオーディエンスも盛り上がらないわけがない!

開演時刻数分前に注意事項とバンドロゴがドン!と映し出され“MONSTER ROCK”が軽快にステージに鳴り響くと黄色のスーツでキメた総勢9名がステージに登場した。「フジロッーク!アー・ユー・レディー?」の掛け声から“5 days of TEQUILA”がはじまった。のっけからガンガンに繰り出されるアジテートに、ブラス隊をはじめとしたメンバー全力でステージ上を縦横無尽に動き回り。あっという間に投下されたキラーチューン“DOWN BEAT STOMP”がはじまるや否やフロアにスカダンスの嵐が吹き荒れる。当然の反応だ!

頭の王道ロックフレーズがカッコいい“HURRY UP!!”では、トロンボーンの北原雅彦がステージ上をスケボーに乗りながらソロを繰り広げるわ、スーザフォン頭にかぶって曲を締めくくるわで、飛び道具的楽しさをステージに提供している。谷中敦と加藤隆志がボーカルをとるゴキゲンなスカコアナンバー“Pride Of Lions”の後、ファンキーなグルーヴが醸成された。本日のスペシャルゲスト、ハナレグミがステージに呼び込まれ、「フジロック二日目!味わい尽くそうぜー!」と“太陽と心臓”を熱く、かつポップに歌い上げる。「踊りが足りてないよー!」と自ら自由な創作ダンスを披露しオーディエンスを鼓舞していく。

グリーンステージからの景色に感動したハナレグミからサプライズな告知が!明日のフィールド・オブ・ヘブンのトリを務めるハナレグミのバックをスカパラがやります!とのこと。明日の20:40はヘブンに行っちゃうしかないな!スカパラとハナレグミがコラボした大切な曲“追憶のライラック”へと繋がっていく。ダウンテンポでメロドラマ感漂う楽曲の質感が空も曇ってきて涼しい今にぴったりだ。

この後、今度は茂木欣一からハナレグミともう一曲やるとサプライズなプレゼントが!「フィッシュマンズの佐藤伸治も多分このグリーンステージの景色を見たかったはずなんで」と“いかれたBABY”のタイトルを叫ぶとフロアから歓喜の大歓声が上がる。フィッシュマンズの元メンバーであり、佐藤亡き後もフィッシュマンズの音楽を世界に存在させ続けている茂木だからこそのこの曲のカバーに目頭が熱くなってしまう。

ハナレグミがステージを後にすると、沖祐市によるキーボードの流麗な音が響き渡り、“水琴窟”がスタート。現代音楽顔負けのソロパートから美しい締めくくりまで、沖祐の見せ場だらけだった。続く“Paradise Has No Border”の中でGAMOによるオーディエンスの煽りコーナーに突中!「どこが一番盛り上がってるんだ?」と左右に動いて画面に大盛り上がりでアピールするクラウドが映し出され、盛り上げまくる。ラストは定番の”MONSTER ROCK”ですべてを出力し切り「明日、ヘブンで会おうぜー!」とステージを後にした。

スカパラは本当にエンターテイメントが何であるかを知り尽くしたバンドだ。「心の中には音楽でしか洗い流せない部分があると思ってます」と谷中がライヴ中に語っていた。音楽が持つ力をどこまでも信じ、人々を力づけ、笑顔にしてくれる音楽を世界中に発信し続けてくれていることに感謝しかない。

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BLOODYWOOD http://fujirockexpress.net/22/p_1690 Sat, 30 Jul 2022 03:47:16 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1690 大快晴のフジロック2022、2日目!今日もグリーンステージに忌野清志郎のフジロックテーマ曲、“田舎へ行こう”が高らかに鳴り響く。これを聴くと「今年も無事にここへ帰ってきたー!」って気持ちでいっぱいになって、感涙してしまうのは私だけではないはずだ。

さぁ、朝から汗が吹き出しまくりのグリーンステージ1発目をブチかますのは、苗場はこんな音を待ってたぜ!インドはニューデリー産フォークメタルバンド、ブラッディウッドだ!BABYMETALではないが「「諸君、首の準備はできているか」と釘をさしておきたくなる。ここに集ったサバスT着てるヤツ、早速ブラッディウッドT着こなしてるヤツ、メロイックサインを掲げるお姉さんも、25年前からフジロックを愛し続けているあなたもみんな最高!

MCからステージに呼び込まれたものの、なかなか登場せず、クラウドからハンドクラップと口笛が飛ぶ!BLoodywoodがドーン!とバックに映し出されると、ドラマーのVishesh Singhとインドの伝統打楽器、ドール奏者のSarthak Pahwaが登場。リズムセクション二組がドカドカとフロアの熱を上げていく。そこへギタリストKaran KatiyarとベーシストRoshan Royが、あのリフをザックザックと刻み込みゃ、“Gaddaar”でフロアは爆発!「ワー!ワー!ガッダーロ!ワー!」辺り一面腕を突き上げ、頭を振り回しているヘッズだらけと化す。ボーカル兼絶叫担当のJayant Bhadulaとラップ担当のRaoul Kerrが絶妙なタイミングで「フジローック!」と叫び、いとも簡単にこの場をジャックする。これは楽しい!とオーディエンスが続々とステージ前中央のフロアに集結してくる。久しぶりに見るヘドバンの津波の様子に、ライヴシーンの復活を感じ目頭が熱くなる。

お次はJayantの「Everybody jump!」との咆哮からはじまった“Bsdk.Exe”。こんなメタルヘッズのケツを蹴り上げてくれるリフに、フロアが反応しないわけがない。ジャンプの嵐が吹き荒れている。ギターのKaranがフルートを物憂げに響かせ、熱気でムンムンのフロアに、一瞬の清涼の風を送り込む“Aaj”。「みんな!シンガロングしてくれ!」とグリーンステージ一帯のみんなで「オー、オオオーオ、オオオーオ、オー!」と大合唱。“Dana-Dan”で再び狂乱の渦に叩き込み、随所で入るアンニュイなフルートが、無二の味わいを加える“Jee Veerey”で「反撃しろ!(Fight back!)とみんなで拳を突き上げる。

「最っ高だ!たった今みんなと、この時を分かち合えて!」と感動を表現するRaoul。続く“Zanjeero Se””のサビで、左右にみんなで腕を振り、ここにいる全員で創り上げていくことの空間、本当に最高だ!頭のドールの響きにセパルトゥラの名曲“Roots Bloody Roots”を想起してしまった“Machi Bhasad”。インドの調べとメタル愛ビンビンのリフに飛び跳ね、拳を突き上げ、ボルテージは最高潮に達している。今ここに放出されているエネルギー量は相当なものじゃないだろうか。

フロアにいるブラッディウッドTを着ているオーディエンスを目に付く限り一人一人ピックアップし、担当の音響メンバー、バンドメンバーとバンドのプロデューサーまで、全員を愛情たっぷりに紹介していく。彼らの人の良さに涙が出てこないかい?「国がどこだろうが、肌の色がどうだろうが、何を主食としていようが、俺たちはみんなワンピープルなんだ!」とRaoul。この言葉と包み込まれるこの空間に思わずブワッと泣いちゃったよ!

“Ari Ari”のあと、一旦メンバーが集合したので、これで完了かと思いきや!鳴り止まない拍手と「ブラッディウッド」コールに、「ワンラストタイム、盛り上がるか!?」と二度目の“Gaddaar”!音の塊が鼓膜と全身をビンビン叩いてくるわ、正真正銘最後のヘドバンタイムで、これでもかとみんなと頭を振る。全員ですべてを叩きつける。これぞ全身全霊の渾身の表現だ!気持ち良いったらない。

終演後は初来日で初ステージの集合写真を撮って、巻き起こる「ブラッディウッド」コールとともに、最高の笑顔でステージをあとにした。最後に放ったお客さんに向かって、「みんな!自分自身に向かってもメイクサムノイズしろよ!」って言葉、感涙もんだわ。フジロッカーはみんな、いつだってあなたたちの苗場帰還を心待ちにしているよ!おいおい、のっけからこの感動と充実感かよ!?フジロック2022、2日目!最っ高の幕開けだ!!

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