“白井絢香” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '22 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/22 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 24 Oct 2022 01:00:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.20 いつものフジロックへの http://fujirockexpress.net/22/p_8780 Mon, 15 Aug 2022 02:01:28 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=8780  3年ぶりに開催された、世界最大規模のフェスティヴァル、英国のグラストンバリーが2年遅れで50周年を祝った今年、初めてここを訪れてから40年の節目を迎えた筆者の目前で繰り広げられたのは「いつものグラスト」だった。日本で大騒ぎしているコロナ禍の影響は微塵も見られない。マスクをしている人はほぼ皆無で、ステージから感染防止のアナウンスが流れることもなく、注意書きさえ目にはしていない。幸運なことに、ほとんど雨も降らず、会場を歩いていると悩まされるのが砂埃。そのためにマスクを着用しようかとも思ったのだが、それさえはばかれる開放的な空気が会場を包み込んでいた。30万人ほどが数日間を過ごしていたなか、見かけたマスク姿は数えるほど。まるで誰もなにも気にしていないという空気が会場を支配していたように思える。

 変化が見られたとすれば、2019年か、その前年からか、「ペット・ボトルを会場からなくそう」と始まった「Reuse Refill Repeat」というキャンペーンの成果かもしれない。「清潔な水を全ての人へ」を形にしようと動いている国際非営利組織、Water Aid(ウォーター・エイド)と協力して、会場内に設置された「ウォーター・キオスク」で水を無料供給。水筒やタンブラーさえあれば、美味しい水がいつでも手に入る。手持ちのものがなければ、グラストの名前が入った特製も購入も可能。それが運動をサポートする収益にも繋がる。これによって、膨大な量のペットボトルが会場から姿を消しつつあるのだ。加えて、毎朝、数多くのヴォランティアが会場のゴミを清掃。それに気付いたのか、以前ならどこにでもポイッとゴミを捨てていた人々に変化が現れて、「ゴミに溢れた」イメージが定着していたグラストが確実に変わりつつあることに驚かされていた。

 そのグラストから約1ヶ月後に開催されたのが、25年という節目を迎えたフジロック。ここがまるで別世界のように見えていた。開催を前に観客のみならず、スタッフ、関係者に周知徹底されたのが『感染防止対策ガイドライン』。それもあったんだろう。土壇場になって「陽性となった」、あるいは、「身内が感染して濃厚接触者となった」と出演をキャンセルしたアーティストも少なくはなかった。さらに、それが理由で会場には向かわないと判断せざるを得なかったスタッフもいて、フジロック・エキスプレスでも、リモート業務を余儀なくされたメンバーもいる。おそらく、そんな事情はお客さんも同じだったと察する。しかも、ちょうど開催期間中あたりか、日本での感染者数が世界最大となったと伝え始めたのがマスメディア。なんとか開催にこぎ着けた昨年よりも、遙かに厳しい状況が待ち受けていたようにも思える。

 ただ、会場にやって来た人達のほとんどがガイドラインをチェックしていたんだろう。多くの人たちがマスクを着用したり、密な状態を避けようとしていたのは伝わった。といっても、屋外で観客同士の距離が確保できて感染リスクが少ないときは、マスクを外して熱中症予防やリフレッシュしてほしいとアドバイスも添えられている。昨年は「がんじがらめの」感染予防を決まり事として受け入れなければいけなかったのに対して、今年は「自分のことは自分で」という本来の姿が戻ってきたようにも思えてた。それが「いつものフジロック」への布石なんだろう。

 例年通り、前夜祭のオアシス・エリアにはやぐらが建てられ、フジロッカーにはおなじみの『苗場音頭』が鳴り響く。そこで踊り出す老若男女も、打ち上げる花火を見上げる人達も、「やっとここまでこぎ着けた」と感じているんだろう、なにやら華やいでる。どこかで悲しさを誘った昨年とは違って、今年はシンプルに「嬉しい」気持ちで空を見上げていた人がほとんどじゃないだろうか。それは3年ぶりに復活させることができた、レッド・マーキーでの前夜祭ライヴ直前の記念撮影でも感じていた。

 舞台裏の話をすれば、はたして記念撮影をすべきかどうかで悩んでいた。全スタッフにPCR検査を施し、観客全てに抗原検査をお願いした昨年、会場に足を運んでくれたフジロッカーがガイドラインを守ろうと涙ぐましい努力をしていたのは、昨年お伝えした通り。その結果、おそらく、国内で最も完全で感染リスクの少ない場を作っていたはずだが、この様子を好意的に伝えたメディアはほとんどなかった。まるで揚げ足をとるように重箱の隅をつつく記事が大半で、なかには意図的に読者をネガティヴな方向に誘導するような記事さえ目に入っていた。脳裏のどこかで、集合写真が「その素材として使われるのではないか」と危惧する気持ちがなかったと言えば嘘になる。

 それでも「やろう」と決断したのは、「いつものフジロック」を取り戻そうと、主催者や地元のみなさんのみならず、会場にやって来たフジロッカーも懸命に努力をしていることを記録したかったというのが一番の理由だ。前夜祭からやって来る筋金入りのフジロッカーにとって、この祭りが、彼らの生活やライフ・スタイルにとってどれほど重要な意味を持っているか言うまでもないだろう。ここは年に一度、里帰りのように訪ねてくる故郷のようなもの。「おかえり!」と声をかけると、自然に「ただいま」と返したくなる「自分たちの居場所」なのだ。それを彼らが守ろうとしている姿を残したかった。2007年から毎回続けられてきた、前夜祭最初のライヴ前に撮影される彼らの記念撮影でそれを証明できないだろうかと考えて主催者に交渉。OKの返事をもらったのは、ぎりぎりとなった当日じゃなかっただろうか。

 が、いつものように、「おかえり」と言うと、みなさんから大声で戻ってくる「ただいま」というレスポンスを撮影することは考えてはいなかった。それよりも、記録したかったのは「みんなが思いをひとつにすればなにかを形にできる」ことを証明すること。その思いとは、単純にルールを守ることではない。それぞれの命を守り、この祭りを守ろうとする気持ちであり、そのために自分で考え、責任ある行動をとらなければいけない。大多数の人達がそれを理解していることを形にしたかった。単純にマスクを付ければ感染から完全に身を守ることができると断言はできないし、大声で話せば感染するとも言い切れない。でも、それぐらいのこと、僕らには簡単にできるんだということを見せたかったのだ。

 その問いかけに見事なまでに応えてくれたのが、前夜祭のライヴ直前にレッド・マーキーにいたみなさんだった。ステージから簡単に今回の狙いを説明。「おかえり!」と声をかけるけど、心の中で「ただいま」と叫んで声には出さないで、代わりに大きく手を上げて応えてほしい。そして、みんなにマスクを付けてほしいと、手短にお願いして撮影に臨んでいた。

 もちろん、リハーサルなんて無し。具体的にどうするかを思いついたのも、ステージに向かっているときだった。が、ステージからマイク越しに声をかけると待っていたのは完全な沈黙。あまりに感動的なみんなの反応にステージ上から奇声を発してしまった自分が完全に浮いているようにも思えていた。が、あの叫び声が、逆に静寂を浮き上がらせていたようにも思う。しかも、レッド・マーキーの屋根の下だけではなく、その外でも同じような光景が姿を見せていたことを、友人がフェイスブックに投稿した映像で知ることになる。撮影された写真を見ると、屋根の下にいた2000人を越えるオーディエンスの99.9%が、「マスクを付けてくれ」というリクエストに応えてくれて、例年とは全く違う記念写真が出来上がっていた。

 これから何年か先、このコロナ騒ぎが本当はなにだったのか、そして、どういう意味を持っていたのかを知ることになるかもしれない。それがなにであろうと、この場所を守ろうとしていたフジロッカーの記録は残る。おそらく、そんな思いを共有していたオーディエンスこそがステージで演奏したアーティストたちの好演を呼び起こしていたのではないだろうか。数多くのライヴを見たわけではないが、スタッフや友人の口から耳にしたのが感動を呼んだライヴの数々。スクリーンやモニター越しにその素晴らしさを感じた人達も多かったようだ。が、同じ時間と空間を共有して、空気の波動や臭いに熱気も感じる至福は、その場にいる人にしか得られない。コロナのせいで会場に来られなかった、それを熟知している仲間がモニター越しに悔しい思いをしたという話しも伝わっている。

 でも、「いつものフジロック」と呼ぶにはもうひとつだったかもしれない。天上のエリア、デイ・ドリーミングやピラミッド・ガーデンに見られたのはいつもの表情。でも、フジロックをただ素晴らしい環境下での野外コンサートではなく、フェスティヴァルたらしめている要素のひとつ、まるで異次元の空間にいるような感覚を楽しませてくれるエリア、パレス・オヴ・ワンダーや奥深くに用意されていたカフェ・ドゥ・パリあたりがすっぽりと抜け落ちている。主に英国のスタッフを中心に企画制作されているのがこのエリア。彼らが来日できなかったという事情もあるんだろう。それに彼らが演出してきたボードウォークやグリーンからホワイトに繋がるルートのオブジェにも以前の輝きは感じられなかった。もちろん、それを国内のスタッフがその穴を埋めるように努力しているのは理解しているのだが、なにかが「たりない」という気持ちは否めない。

 その一方で、我々が続ける、この速報サイト、フジロック・エキスプレスは見事なまでに「いつものフジロック」に映っていた。ライヴのことはもとより、会場に集まってきた人々の幸せな表情を切り取り、よだれが出てきそうなほど美味しそうな食べ物が顔を出す。コロナ禍の影響で出店できなかったおなじみのお店が気がかりだが、アルコール無しだった昨年はお休みしたお店も復活。「フジロック的なるもの」がここではてんこ盛りになっていた。さすがに、根っからフジロックを愛するフジロッカーが集まったfujirockers.orgが生み出した速報サイトだと自画自賛したくなる。

 ここはそんなフジロッカーたちにとって、年に一度のミーティング・ポイントなんだろう。再会を喜ぶ人達が「久しぶりだねぇ」と、再会できなかったここ数年の話に花を咲かせている様子も目に入っていた。同時に、まるでずっと繋がっていたかのような気分で新たな出会いも生まれていたようだ。SNSでは「今年は会えなかったね。どこにいたの?」なんて会話が見受けられ、初めてフジロックを体験した人達から耳にしたのは、苗場での幸せな数日間。彼らにとって、ここが年に一度の里帰りのような場所なってくれたら、それに越したことはない。

 さて、来年はどうなるんだろう。このコロナ騒ぎは収まっているだろうか。それとも、「コロナと共に生活する」ってことになるんだろうか。できるなら、マスクなんぞおさらばして、仲間たちと心置きなく大騒ぎできるようになればいいんだけど、どうだろう。そして、フジロックをこよなく愛してくれたジョー・ストラマーが語ったように「生きている意味を確認できるような」時間や空間を引き戻したいと思う。それを人ごとのように語るのではなく、そのために自分でできることはなになんだろうと、思いを巡らしながら、これからの1年を過ごしていこうと思う。来年こそは、当たり前のフジロックを楽しめるように祈りながら。

なお、「フジロック愛」に溢れたフジロック・エキスプレス、今年のスタッフは、以下の通り。会場の様子を羨ましそうに眺めながら、自宅からリモートで作業してくれたスタッフもいる。作業をスムーズに進めるために好きなライヴをほとんど見られることのないスタッフもいた。ありがとう。感謝しています。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/22/
東いずみ、阿部光平、阿部仁知、安藤淳太、イケダノブユキ、ミッチイケダ、古川喜隆、石角友香、板場俊、あたそ、岡部智子、梶原綾乃、おみそ、北村勇祐、粂井健太、小亀秀子、Eriko Kondo、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、リン(YLC Photograpghy)、中島たくみ、馬場雄介(Beyond the Lenz)、HARA MASAMI、平川啓子、丸山亮平、三浦孝文、吉川邦子、森リョータ、安江正実、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/22e/
Mishu Callan, Mika Carl, Karen Lynch, PARK BAKER, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:mimi、obacchi、藤原大和、土井優子、関根教史

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一(デザイン)、坂上大介

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgは1997年のフジロック公式サイトから派生した、フジロックを愛する人々によるコミュニティ・サイトです。主催者からのサポートは得ていますが、完全に独立した存在として、国内外のフェスティヴァル文化を紹介。開催期間中も独自の視点で会場内外のできことを速報でレポートするフジロック・エキスプレスを運営していますが、これは公式サイトではありません。写真、文章などの著作権は撮影者、執筆者にあり、無断使用は固くお断りいたします。また、文責は執筆者にあり、その見解は独自のものであることを明言しておきます。

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補足です。例年、河原に姿を見せるゴンちゃんは最終日まで、そっとしておいてくださいとお願いしているのに、平気で「盗んで、連れ去っていく」人達が未だにいると聞きます。子供達が我慢してその時を待っているのに、恥ずかしいとは思わないんでしょうか また、森に姿を見せるマッドバニーも作品で、「勝手に持っていって(盗んで)いい」とは作者はもとより、誰も表明してはいません。これを持って帰った人達は泥棒です。「いつものフジロック」をぶちこわしにするような人達はもうここには来ないでほしい。

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Terry Riley with Sara Miyamoto – Everything and Beyond – http://fujirockexpress.net/22/p_1807 Sun, 31 Jul 2022 20:52:51 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1807 いよいよフジロック2022も終わろうとしている。帰路につこうとゲートに向かう者、朝まで遊び倒すべくレッドマーキーやオアシスエリア、イエロークリフに足を急ぐ者、それぞれの選択してフジロックの最後を満喫している様子が見て取れる。私は、ピラミッド・ガーデンを目指していた。朝から快晴が続いていた今日だが、23時を回ろうかという頃に雨が降り始め、ポンチョが必要な程度の強さだ。

ピラミッド・ガーデンに到着。今年は初日から3日間ともここが私の終着点だ。控えめで美しい照明、ステージ上に灯されたキャンドルの光、目に映るものすべてが感慨深い。

さて、これからここに登場し本ステージの幕引きを行うのは、ミニマル・ミュージックの創始者、テリー・ライリーだ。1960年代に『in C』や『A Rainbow in Curved Air』をリリースし、広く音楽の世界に多大な影響を与えてきたレジェンド。御年87歳。今年のフジロック出演者リストに彼の名前を見かけて目を疑ったが、何とテリーさんは日本は山梨県在住なのだという。

「さどの島銀河芸術祭」におけるDOMMUNEが手掛ける新プロジェクト「LANDSCAPE MUZAK」に参加する予定だったテリーさんは、2020年3月に視察のため佐渡島に訪れる。しかし、ご存知のように新型コロナの蔓延により米国でロックダウンが施行されてしまったため帰国を断念し今に至るとのこと。今年の3月にはビルボードライブ東京でライヴも行われており、我々日本人がテリーさんの音楽の世界観を知り、触れることができるまたとない機会が到来していると言えるだろう。

これらを踏まえ今夜のステージは目撃しておかないといけない。テリーさんは昨日の朝にも同じピラミッド・ガーデンに姿を見せており、何と名曲“A Rainbow in Curved Air”を披露したのだという。

雨脚が強まる中、開演時刻にテリーさんが登場。ただいるだけで伝わってくる存在感。仙人のようだ。キーボードから幻想的なドローンを出力する。音におぞましい質感が加わっていくと、仮面を付けた宮本沙羅が杖をつきながらゆっくりと登場し、テリーさんが繰り出す流麗にして不気味な音に合わせてうごめくような踊りを披露している。宮本の仮面は密林仮面として活動するアーティスト、鈴木明子氏による植物を織り込んで作られたもののようだ。

続く曲ではアコーディオンあるいはピアニカのような音をテリーさんがじんわりと響かせ、宮本が挿入してくる民族楽器がノイズのように絡み合い、幻想的な音世界はどんどん深淵なものになっていく。宮本が奏でるダフ(フレームドラム)の控えめなビートが心地よく鼓膜を叩いてくる。テリーさんが深みのある声で「ゴーマンダー、ゴーマンダー…」とマントラあるいはお経のような調べで歌いはじめ、キャンドルの光や照明の色と相まって宗教儀式の様相を呈してきた。

最後に向けてテリーさんの鍵盤がもたらす音像は、バイオリンのような音だったり奏でる多種多様な音色が混ざり合い、場をどんどん覚醒させていき、最後はしめやかに約1時間のステージの幕引きを行った。テリーさんの演奏が神がかっていくに連れて、演奏に呼応するかのように降りしきっていた雨がいつの間にか上がっている。

テリーさんの音世界と対峙した1時間が何だったのか。頭では理解ができない。他の音楽や現実世界のものとは明らかに違う時間が流れている音楽だった。音楽の世界はどこまでも深い。テリーさんが87歳にしてなお、その世界の奥の更に奥まで表現を深めて行こうとしているように感じられたライヴだった。テリーさんが今日本に住んでいるという幸運、フジロックに出演してくれた幸運、ここに居合わせた幸運とたくさんの奇跡を経て今がある。この一度きりの人生すべてが奇跡だということに感謝しつつ今年のフジロックを完了したいと思う。

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SILENT POETS (Minimal Reggae Set) http://fujirockexpress.net/22/p_1806 Sun, 31 Jul 2022 20:39:22 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1806 マカロニえんぴつ http://fujirockexpress.net/22/p_1730 Sun, 31 Jul 2022 14:42:36 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1730 今や飛ぶ鳥を落とす勢いのマカロニえんぴつ、初のフジロックはレッド・マーキー。開演前のリハーサルの場には
バンドメンバーの姿があり、ほぼライブと言っても過言ではない演奏を見せていた。バンドもそんな変な状況を、はっとりがMCで自らいじっていて、「いい感じでひねくれているなぁ」と思ったのだが、それもまたバンドの魅力のうちのひとつなのだろう。そんな開演前のリハーサルで、既に温まった感のあるマカロニえんぴつの初フジロックは、彼らのキャリアをぎゅっと凝縮されたミニベストアルバム的な内容だった。

ザ・ビートルズの“Hey Bulldog”で入場してきたマカロニえんぴつは、はっとり(Vo./G.)、田辺由明(G.)、長谷川 大喜(Key.)高野賢也(Ba.)の4人組ロックバンドだ。ここにサポートメンバーの高浦”suzzy”充孝(Dr.)が加わり、ライブはスタートした。1曲目はソリッドなリズムのポップ・チューン“洗濯機と君とラジオ”。この曲で一気にに会場のボルテージを上げていく。サビに入り、両手を大きく両手を上下に振るオーディエンス。その熱を引き継いでいくように、某アニメ映画の主題歌にも使われている“はしりがき”、ポップなピアノイントロが印象的な“レモンパイ”と続いていった。

「どうもマカロニえんぴつです。すごく嬉しいです。まさかフジロックに出れるとは。今日は思い出に残るようなステージにしたいと思います!」 そんなはっとりの決意表明と共にライブは中盤へと突入。全ての音楽ファンに愛されるような普遍的名曲“MUSIC”では、Aメロからハンズクラップが巻き起こり、続く”たましいの居場所”では、この曲が車のCMソングにも使われているということもあり、僕の後ろに居た、おそらく初めて彼らのライブと観たと思しき人から「あっ!この曲知ってる!」なんて声も上がっていた。ここで長谷川のピアノソロを挟み、緩やかな大人の雰囲気漂うファンキー・チューン“裸の旅人”、ディスコ・ポップなイントロアウトロの“ワルツのレター”と続いていく。「ここのセクションはの曲は洋楽ファンにも受けそうだな」なんて思いつつ、ライブは後半へ。

エレクトロなポップ・ロック・チューン“STAY with ME”、バンドらしいソリッドでシンプルなロック・サウンドのある“星が泳ぐ”と続き、胸が熱くなるメロディラインのある“愛の手”にオーディエンスはメロディに身を任せて体を揺らしていた。はっとりのヴォーカルとイントロのピアノのリズムが素晴らしい“なんでもないよ、”には思わず一緒に歌いたくなってしまいそうな心地よさが感じられた。はっとりのオーディエンスと音楽に対する思いが感じられるMCを挟んで、ラストは美しいメロディとバンドアンサンブルが心に響く“hope”で終演を迎えた。

約60分のライブはあっという間に終了。正直聴き足りない感じはあるが、冒頭にも書いたように彼らの要素がぎゅっと詰め込んだこの日のライブは、初めて彼らの音楽を聴いた人にも響いたんじゃないだろうか。

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BREIMEN http://fujirockexpress.net/22/p_1822 Sun, 31 Jul 2022 11:37:24 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1822 キーボードの“だーいけ”こと、いけだゆうたが残念ながら新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受け、出演できなくなったことで、急遽、本来のセットリストとはガラッと変更してきたBREIMEN。苗場食堂にはミュージシャンとしてフレキシブルな彼らが何を見せてくれるのか?に期待して人が集まってくる。そんな中、自宅からだーいけがツイキャスの音声で「自分も何が起こるかわかりません」と、アナウンス。ステージ右手には大きな彼のパネルが飾られている。しかもライブ中、彼はツイキャスを続けていたようだ。

まずはインストセッションで各々のプレイヤビリティを自己紹介。高木祥太(Vo/Ba)が、バンド初の4人編成で、本来のBREIMENを見たかった人はまたどこかのライブに来てもらって、今日はゲストを迎えたお祭りにする旨を伝える。一人目は昨日、Gypsy Avalonにバンドセットで出演したさらさが、サポートするSo Kanno(Dr)の縁もあり登場。井上陽水の“傘がない”をスモーキーな声でカバーした。

高木がそれでもやはり4人編成は慣れないというようなことを言い、続いては自身がベースで参加しているTENDREを呼び込み、さらにこれまたKannoがBIMのバンドセットのサポートをしている縁から、さきほどまでPUNPEEのステージで盛り上げていたBIMが登場して“KIRARI Deck”を披露。メロディを歌っても強い。それにしても今年のフジロックでBIM大活躍である。TENDREはそのまま残り、さらに彼ら自身、思い出野郎Aチームのピンチヒッターで急遽本日出演したYOUR SONG IS GOODからパーカッションの松井 泉を迎えTENDREの人気曲“hanashi”を、ジョージ林のフルートがレアなアレンジで聴かせ、また、TENDREバンドでは聴くことのないギターヒーローらしいサトウカツシロ(Gt)が存分にソロを弾きまくるバージョンに変容していたのも、彼らの関係の為せる業だ。

BREIMENのメンバーが若く優れたミュージシャンであることが可能にした大改編セットリストだが、最終兵器とも言える人が登場。紹介の途中でさっさと出てきたのは昨日、グリーンステージを沸かせた田島貴男だった。スーツで決めた昨日とは一転、リラックスモードだが、ボーカルは1曲入魂の“接吻”。いや、BREIMENにORIGINAL LOVEナンバーは似合いすぎでしょう。TENDREと高木のコーラスもいい。根本にあるパンク精神も共通していそうだ。

いけだを欠いた状態で、本来のBREIMEN楽曲はできないと、方向転換した彼らは根っからのバンドマンだからこそ、今日のステージが成り立ったのだろう。ただ、BREIMENの名前を掲げ、足を運んでくれた人もいる中、最後の1曲だけはバンドのオリジナル曲“棒人間”をTENDREのサポートで披露した。絶対、悔しいはずだけど、高木も言っていたように、来年か再来年か、近い将来、BREIMENの5人のステージが見られる気がする。ライブをする場所もスケールアップしているんじゃないだろうか?そんな予感もある。いけだの回復を願うと同時にBREIMEN本来のライブが今、すごく見たい。

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Kanna http://fujirockexpress.net/22/p_1833 Sun, 31 Jul 2022 04:35:53 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1833 和田永 ELECTRONICOS FANTASTICOS! http://fujirockexpress.net/22/p_1819 Sat, 30 Jul 2022 16:06:05 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1819 中納良恵 http://fujirockexpress.net/22/p_1753 Sat, 30 Jul 2022 15:42:24 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1753 大きな拍手とともに、ゴールドの衣装をまとった中納良恵とコーラスの2人がステージ中央に現れ、まずは“オムライス”。3人のすべるようななめらかな歌声、アカペラでの演出、さらには「フジロックの空の下のオムライス」と今日このときだけの歌詞が嬉しい。

そこにバックバンドの2人がゆっくりと登場する。“オリオン座”では、中納の力強い声がどこまでも響き、シンプルなピアノの音が夕暮れどきのフィールド・オブ・ヘブンにマッチしている。ピアノとドラム、コントラバスと華やかなコーラスが色めく“ソレイユ”。間奏にはハンドクラップが起こり、会場全体を巻き込んでいくようであった。

さまざまな声を楽器の音のように表現するイントロからはじまる“真ん中”。ときにエネルギッシュに、そしてときにはささやくような声。会場をかき回すサウンドや突然の転調はさまざまな表情を見せてくれる。中納と言えば、EGO-WRAPPIN’のボーカルとして知られているけれど、こうしてソロでの活動を見ていると、自身の声ひとつにしても曲によってまったく異なった印象を受ける。豪雨の中で行われた2019年フジロックでの苦い思い出を笑い話に変えたあとは、“濡れない雨”。優しく語り掛けるような歌声が、夜の疲れた身体に染み渡る。

一度サポートメンバー「甘い奴らバンド」がステージを去り、特別ゲストとして先ほどまでグリーンステージで素晴らしい演奏を披露したばかりの折坂悠太が大きな拍手で迎えられる。スポットライトが2人に当たり、ピアノにギター、それから質の異なる2人の声が呼応するように響く。気持ちがいい。ステージを見つめながら、じっくりと聴き入ってしまう。曲が終わると、交互に紹介をし、2人でかわいらしいお茶目なダンスを見せてくれた。

ステージに甘いシスターズを呼び寄せ、“ケムニマイテ”と“ポリフォニー”。混ざり合う歌声が響き渡り、共鳴していく。野球帽のようなお揃いのキャップを被り、3人でのダンスシーンも見せてくれた。音や歌声だけでなくて、さまざまな演出で楽しませてくれるのはうれしい。

ハンドクラップのあとには“SASOU”。軽やかなピアノのメロディにロマンチックな歌声、赤く照らすライトに心が躍る。中納の作り出す音の世界にどんどん惹き込まれていく。ラストは、まるで映画のエンドロールのような“おへそ”。寂しくぽつりぽつりと鳴らされるキーボードの音は、フジロック2日目の終わりを惜しむかのよう。
中納の声の持つ大きな力を楽しみ尽くしただけではなく、さまざまな音と演出で感情を揺さぶる、贅沢な時間であった。

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toconoma http://fujirockexpress.net/22/p_1755 Sat, 30 Jul 2022 13:47:48 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1755 フジロック2日目の昼下がり。ヘブンの天候は快晴。正午ぐらいまではカンカン照りが続いていてかなり暑かったのだが、この時間になると、そよ風も涼しく感じる。そんなちょうど良い気候の中登場してきたのは、4人組インストゥルメンタル・バンド、toconomaだ。前回のフジロック出演は2018年のフィールド・オブ・ヘブンで、その年はバンド活動10周年というのも相まって、​​石橋光太郎(Gt.)が思わず涙ぐむという感動的なシーンがあったが、今年は果たしてどんなシーンを僕らに見せてくれるのだろうか?各々がそれぞれの期待を抱きつつ、ライブはスタートした。

メンバーは白と黄色を基調とした衣装を身に纏い、「最高な休日へようこそ!toconomaです。」「晴れて良かったね」という和やかなMCから始まったのは“Yellow Surf”。ミドルテンポのメロディーラインは、その時のヘブンの気候にマッチしていて、オーディエンスはみんな心地よさそうに体を揺らしていた。続くは、グルーヴィーなイントロから始まる“Highwind”。疾走感のあるこのナンバーは、ラストへ向かってどんどんと加速していく。オーディエンスも、そのスピードに「追いつけ追い越せ」と踊るスピードを上げていった。これぞヘブンなダンスチューンの次は、今月頭にリリースされたばかりの新曲“Quest4”。細かく刻まれるビートと緩やかに上がっていく高揚感のマッチングが素晴らしい。「ヘブンのインストバンドはやっぱりコレだからやめられないんだよなぁ。」思わずそう呟いてしまいそうになった。続くMCで「僕らインストバンドで、歌詞ないんで待ってたら終わっちゃうんで気をつけてください」なんて冗談や、矢向怜(Ba)が店主を務める東京・三鷹にあるタイ料理屋『キッチンconro(コンロ)』の宣伝も挟みつつ、ライブはMCも含め穏やかに進んでいく。

この後、初公開の新曲(曲名はまだない)と“DeLorean”、そして“underwarp”の3曲がシームレスに繋がるロングセクションに突入。新曲はエレクトロなダンスナンバーで、80’s風シンセ・ポップ・ファンクをベースにエクスペリメンタルな面も見え隠れしていて、初聴きでも全く問題なく踊れる楽曲だ。それにしても、この3曲のロングセクションは本当に心地よかった。シームレスに繋がるということは、曲間で瞬間的にテンポが変わったりするので、その変化に対応するのもまた楽しかったりするのだ。

温かみが溢れるライブも後半に突入。「ちょっと踊ってみませんか?」というMCから、ポップでジャジーな風味のある“ALOE”。サビから一気に加速していくエモーショナル溢れる“Vermelho do sol”にオーディエンスは思いっきり踊る。そしてファンキーなリフとグルーヴィーなシンセが印象的な“relive”と続き、ラストは熱くなった心身をチルアウトさせるメロディの“the morning glory”で幕を閉じた。

途中のMCで西川隆太郎(Key)が「フジロック最高だね。ここに来て、変わらない場所があるんだなと実感しました。」と口にしていた。今の世の中、いろんなものが変わってしまった。一方で変わらないものもあるんだ。そんな当たり前のことを改めて気づかせてくれた彼らに感謝!

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KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男 http://fujirockexpress.net/22/p_1754 Sat, 30 Jul 2022 13:32:17 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=1754 フジロックで楽しいのは、やっぱりロック・ファンが見逃していたようなアーティストだったり、素晴らしいテクニックを持つジャズ・ミュージシャンに出会えることだと思う。今回、KYOTO JAZZ SEXTETとの出会いも、まさに衝撃的だった。

沖野修也によるアコースティック・ジャズ・プロジェクト、KYOTO JAZZ SEXTETは、日本のジャズドラマーの大御所、森山威男を迎えたアルバム『SUCCESSION』を今年4月にリリースしている。フジロック5年ぶりの出演は、そのアルバムと森山をフィーチャーしたステージとなった。夕方のフィールド・オブ・ヘヴンには、上手から沖野修也(SE,MC)、平戸祐介(P)、小泉P克人(Ba)、類家心平(Tp)、栗原健(Sax)、森山威男(Dr)が並ぶ。沖野が森山の名前を大きく叫び、「いっしょに盛り上がっていきましょう!」と言うと、会場が一気に湧き、そのまま1曲目“Father Forest”がスタート。

この曲は沖野が、森山をイメージして書き起こしたという。森のトンネルをくぐっていくような、神秘的な楽曲だ。類家&栗原の力強いメインフレーズが先陣を切ると、森山は祭囃子のような、にぎやかなドラミングで応える。ここで鍵盤の音がぐっと前にやってきて、トリルしたりスタッカートしたり、力強いアプローチでもって弾ませる。そんななかで森山は、穏やかな、優しい顔をしながらバンドと向き合う。ピアノ・ソロ中、ずっと小泉を見つめ、次の展開を読んでいた。きっとジャズでは当たり前なことなのかもしれないけど、プロの技をしっかりと見せてもらった気がする。

MCでは、「森山のドラムはフジロックで聴きたい」と言われたことがある、という話を披露。このヘヴンの盛り上がりを見て、その意味がよくわかったのだそう。また沖野は森山のことを「出演者の中で最高齢なのかも」と紹介していたが、きっと加山雄三に次いで2番目に高齢の出演者なのではないだろうか(※)。1位2位など関係なく、レジェンドの鳴らすものをこの目で、体で、直接楽しめるのは素晴らしい機会だ。ありがたい。

ごきげんなウォーキングベースと、渋みのあるサックスの音色が重なる“Forest Mode”は、類家&栗原の音のリレーが光る1曲。まずは栗原がどこまで出るのか、未知数なハイトーンで場を盛り上げると、それをにこにこと見ていた類家がバトンをキャッチする。頬を丸くたっぷり膨らませて(すごい!)爆発的なサウンドをメイクしている様子には思わず息を呑んだ。最後、メインテーマに戻ったあとは、森山のソロへ。繊細で堅実な高速連打にオーディエンスは釘付け。大きな盛り上がりを魅せた。

“Kaze”で沖野が、風が吹くような音を響かせたり、“Sunrise”では、森山と栗原の激しいセッションから、音がじゃれあっているような、そんなイメージが空間を駆け抜けた。日も落ちてきた頃に披露されたラスト・ソング“Watarase”は、ラストにふさわしく、しっとりと始まり壮大に消えていった。

「やっぱり、ジャズとロックは野外に限ります」そう言い残して去っていった森山。なんとクールなことか!ときには鬼のように、ときには優しい父のように。レジェンドが教えてくれるジャズは、決して難しいものではなく、懐の深いものだった。

※その後追記……6月24日に87歳の誕生日を迎えた、テリー・ライリーが最高齢。

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