“Koichi Hanafusa” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '22 | フジロック会場から最新レポートをお届け http://fujirockexpress.net/22 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Mon, 24 Oct 2022 01:00:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.20 いつものフジロックへの http://fujirockexpress.net/22/p_8780 Mon, 15 Aug 2022 02:01:28 +0000 http://fujirockexpress.net/22/?p=8780  3年ぶりに開催された、世界最大規模のフェスティヴァル、英国のグラストンバリーが2年遅れで50周年を祝った今年、初めてここを訪れてから40年の節目を迎えた筆者の目前で繰り広げられたのは「いつものグラスト」だった。日本で大騒ぎしているコロナ禍の影響は微塵も見られない。マスクをしている人はほぼ皆無で、ステージから感染防止のアナウンスが流れることもなく、注意書きさえ目にはしていない。幸運なことに、ほとんど雨も降らず、会場を歩いていると悩まされるのが砂埃。そのためにマスクを着用しようかとも思ったのだが、それさえはばかれる開放的な空気が会場を包み込んでいた。30万人ほどが数日間を過ごしていたなか、見かけたマスク姿は数えるほど。まるで誰もなにも気にしていないという空気が会場を支配していたように思える。

 変化が見られたとすれば、2019年か、その前年からか、「ペット・ボトルを会場からなくそう」と始まった「Reuse Refill Repeat」というキャンペーンの成果かもしれない。「清潔な水を全ての人へ」を形にしようと動いている国際非営利組織、Water Aid(ウォーター・エイド)と協力して、会場内に設置された「ウォーター・キオスク」で水を無料供給。水筒やタンブラーさえあれば、美味しい水がいつでも手に入る。手持ちのものがなければ、グラストの名前が入った特製も購入も可能。それが運動をサポートする収益にも繋がる。これによって、膨大な量のペットボトルが会場から姿を消しつつあるのだ。加えて、毎朝、数多くのヴォランティアが会場のゴミを清掃。それに気付いたのか、以前ならどこにでもポイッとゴミを捨てていた人々に変化が現れて、「ゴミに溢れた」イメージが定着していたグラストが確実に変わりつつあることに驚かされていた。

 そのグラストから約1ヶ月後に開催されたのが、25年という節目を迎えたフジロック。ここがまるで別世界のように見えていた。開催を前に観客のみならず、スタッフ、関係者に周知徹底されたのが『感染防止対策ガイドライン』。それもあったんだろう。土壇場になって「陽性となった」、あるいは、「身内が感染して濃厚接触者となった」と出演をキャンセルしたアーティストも少なくはなかった。さらに、それが理由で会場には向かわないと判断せざるを得なかったスタッフもいて、フジロック・エキスプレスでも、リモート業務を余儀なくされたメンバーもいる。おそらく、そんな事情はお客さんも同じだったと察する。しかも、ちょうど開催期間中あたりか、日本での感染者数が世界最大となったと伝え始めたのがマスメディア。なんとか開催にこぎ着けた昨年よりも、遙かに厳しい状況が待ち受けていたようにも思える。

 ただ、会場にやって来た人達のほとんどがガイドラインをチェックしていたんだろう。多くの人たちがマスクを着用したり、密な状態を避けようとしていたのは伝わった。といっても、屋外で観客同士の距離が確保できて感染リスクが少ないときは、マスクを外して熱中症予防やリフレッシュしてほしいとアドバイスも添えられている。昨年は「がんじがらめの」感染予防を決まり事として受け入れなければいけなかったのに対して、今年は「自分のことは自分で」という本来の姿が戻ってきたようにも思えてた。それが「いつものフジロック」への布石なんだろう。

 例年通り、前夜祭のオアシス・エリアにはやぐらが建てられ、フジロッカーにはおなじみの『苗場音頭』が鳴り響く。そこで踊り出す老若男女も、打ち上げる花火を見上げる人達も、「やっとここまでこぎ着けた」と感じているんだろう、なにやら華やいでる。どこかで悲しさを誘った昨年とは違って、今年はシンプルに「嬉しい」気持ちで空を見上げていた人がほとんどじゃないだろうか。それは3年ぶりに復活させることができた、レッド・マーキーでの前夜祭ライヴ直前の記念撮影でも感じていた。

 舞台裏の話をすれば、はたして記念撮影をすべきかどうかで悩んでいた。全スタッフにPCR検査を施し、観客全てに抗原検査をお願いした昨年、会場に足を運んでくれたフジロッカーがガイドラインを守ろうと涙ぐましい努力をしていたのは、昨年お伝えした通り。その結果、おそらく、国内で最も完全で感染リスクの少ない場を作っていたはずだが、この様子を好意的に伝えたメディアはほとんどなかった。まるで揚げ足をとるように重箱の隅をつつく記事が大半で、なかには意図的に読者をネガティヴな方向に誘導するような記事さえ目に入っていた。脳裏のどこかで、集合写真が「その素材として使われるのではないか」と危惧する気持ちがなかったと言えば嘘になる。

 それでも「やろう」と決断したのは、「いつものフジロック」を取り戻そうと、主催者や地元のみなさんのみならず、会場にやって来たフジロッカーも懸命に努力をしていることを記録したかったというのが一番の理由だ。前夜祭からやって来る筋金入りのフジロッカーにとって、この祭りが、彼らの生活やライフ・スタイルにとってどれほど重要な意味を持っているか言うまでもないだろう。ここは年に一度、里帰りのように訪ねてくる故郷のようなもの。「おかえり!」と声をかけると、自然に「ただいま」と返したくなる「自分たちの居場所」なのだ。それを彼らが守ろうとしている姿を残したかった。2007年から毎回続けられてきた、前夜祭最初のライヴ前に撮影される彼らの記念撮影でそれを証明できないだろうかと考えて主催者に交渉。OKの返事をもらったのは、ぎりぎりとなった当日じゃなかっただろうか。

 が、いつものように、「おかえり」と言うと、みなさんから大声で戻ってくる「ただいま」というレスポンスを撮影することは考えてはいなかった。それよりも、記録したかったのは「みんなが思いをひとつにすればなにかを形にできる」ことを証明すること。その思いとは、単純にルールを守ることではない。それぞれの命を守り、この祭りを守ろうとする気持ちであり、そのために自分で考え、責任ある行動をとらなければいけない。大多数の人達がそれを理解していることを形にしたかった。単純にマスクを付ければ感染から完全に身を守ることができると断言はできないし、大声で話せば感染するとも言い切れない。でも、それぐらいのこと、僕らには簡単にできるんだということを見せたかったのだ。

 その問いかけに見事なまでに応えてくれたのが、前夜祭のライヴ直前にレッド・マーキーにいたみなさんだった。ステージから簡単に今回の狙いを説明。「おかえり!」と声をかけるけど、心の中で「ただいま」と叫んで声には出さないで、代わりに大きく手を上げて応えてほしい。そして、みんなにマスクを付けてほしいと、手短にお願いして撮影に臨んでいた。

 もちろん、リハーサルなんて無し。具体的にどうするかを思いついたのも、ステージに向かっているときだった。が、ステージからマイク越しに声をかけると待っていたのは完全な沈黙。あまりに感動的なみんなの反応にステージ上から奇声を発してしまった自分が完全に浮いているようにも思えていた。が、あの叫び声が、逆に静寂を浮き上がらせていたようにも思う。しかも、レッド・マーキーの屋根の下だけではなく、その外でも同じような光景が姿を見せていたことを、友人がフェイスブックに投稿した映像で知ることになる。撮影された写真を見ると、屋根の下にいた2000人を越えるオーディエンスの99.9%が、「マスクを付けてくれ」というリクエストに応えてくれて、例年とは全く違う記念写真が出来上がっていた。

 これから何年か先、このコロナ騒ぎが本当はなにだったのか、そして、どういう意味を持っていたのかを知ることになるかもしれない。それがなにであろうと、この場所を守ろうとしていたフジロッカーの記録は残る。おそらく、そんな思いを共有していたオーディエンスこそがステージで演奏したアーティストたちの好演を呼び起こしていたのではないだろうか。数多くのライヴを見たわけではないが、スタッフや友人の口から耳にしたのが感動を呼んだライヴの数々。スクリーンやモニター越しにその素晴らしさを感じた人達も多かったようだ。が、同じ時間と空間を共有して、空気の波動や臭いに熱気も感じる至福は、その場にいる人にしか得られない。コロナのせいで会場に来られなかった、それを熟知している仲間がモニター越しに悔しい思いをしたという話しも伝わっている。

 でも、「いつものフジロック」と呼ぶにはもうひとつだったかもしれない。天上のエリア、デイ・ドリーミングやピラミッド・ガーデンに見られたのはいつもの表情。でも、フジロックをただ素晴らしい環境下での野外コンサートではなく、フェスティヴァルたらしめている要素のひとつ、まるで異次元の空間にいるような感覚を楽しませてくれるエリア、パレス・オヴ・ワンダーや奥深くに用意されていたカフェ・ドゥ・パリあたりがすっぽりと抜け落ちている。主に英国のスタッフを中心に企画制作されているのがこのエリア。彼らが来日できなかったという事情もあるんだろう。それに彼らが演出してきたボードウォークやグリーンからホワイトに繋がるルートのオブジェにも以前の輝きは感じられなかった。もちろん、それを国内のスタッフがその穴を埋めるように努力しているのは理解しているのだが、なにかが「たりない」という気持ちは否めない。

 その一方で、我々が続ける、この速報サイト、フジロック・エキスプレスは見事なまでに「いつものフジロック」に映っていた。ライヴのことはもとより、会場に集まってきた人々の幸せな表情を切り取り、よだれが出てきそうなほど美味しそうな食べ物が顔を出す。コロナ禍の影響で出店できなかったおなじみのお店が気がかりだが、アルコール無しだった昨年はお休みしたお店も復活。「フジロック的なるもの」がここではてんこ盛りになっていた。さすがに、根っからフジロックを愛するフジロッカーが集まったfujirockers.orgが生み出した速報サイトだと自画自賛したくなる。

 ここはそんなフジロッカーたちにとって、年に一度のミーティング・ポイントなんだろう。再会を喜ぶ人達が「久しぶりだねぇ」と、再会できなかったここ数年の話に花を咲かせている様子も目に入っていた。同時に、まるでずっと繋がっていたかのような気分で新たな出会いも生まれていたようだ。SNSでは「今年は会えなかったね。どこにいたの?」なんて会話が見受けられ、初めてフジロックを体験した人達から耳にしたのは、苗場での幸せな数日間。彼らにとって、ここが年に一度の里帰りのような場所なってくれたら、それに越したことはない。

 さて、来年はどうなるんだろう。このコロナ騒ぎは収まっているだろうか。それとも、「コロナと共に生活する」ってことになるんだろうか。できるなら、マスクなんぞおさらばして、仲間たちと心置きなく大騒ぎできるようになればいいんだけど、どうだろう。そして、フジロックをこよなく愛してくれたジョー・ストラマーが語ったように「生きている意味を確認できるような」時間や空間を引き戻したいと思う。それを人ごとのように語るのではなく、そのために自分でできることはなになんだろうと、思いを巡らしながら、これからの1年を過ごしていこうと思う。来年こそは、当たり前のフジロックを楽しめるように祈りながら。

なお、「フジロック愛」に溢れたフジロック・エキスプレス、今年のスタッフは、以下の通り。会場の様子を羨ましそうに眺めながら、自宅からリモートで作業してくれたスタッフもいる。作業をスムーズに進めるために好きなライヴをほとんど見られることのないスタッフもいた。ありがとう。感謝しています。

■日本語版(http://fujirockexpress.net/22/
東いずみ、阿部光平、阿部仁知、安藤淳太、イケダノブユキ、ミッチイケダ、古川喜隆、石角友香、板場俊、あたそ、岡部智子、梶原綾乃、おみそ、北村勇祐、粂井健太、小亀秀子、Eriko Kondo、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、リン(YLC Photograpghy)、中島たくみ、馬場雄介(Beyond the Lenz)、HARA MASAMI、平川啓子、丸山亮平、三浦孝文、吉川邦子、森リョータ、安江正実、若林修平

■英語版(http://fujirockexpress.net/22e/
Mishu Callan, Mika Carl, Karen Lynch, PARK BAKER, Jonathan Cooper, Nina Cataldo

フジロッカーズ・ラウンジ:mimi、obacchi、藤原大和、土井優子、関根教史

ウェブサイト制作&更新:平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一(デザイン)、坂上大介

プロデューサー:花房浩一

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fujirockers.orgは1997年のフジロック公式サイトから派生した、フジロックを愛する人々によるコミュニティ・サイトです。主催者からのサポートは得ていますが、完全に独立した存在として、国内外のフェスティヴァル文化を紹介。開催期間中も独自の視点で会場内外のできことを速報でレポートするフジロック・エキスプレスを運営していますが、これは公式サイトではありません。写真、文章などの著作権は撮影者、執筆者にあり、無断使用は固くお断りいたします。また、文責は執筆者にあり、その見解は独自のものであることを明言しておきます。

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補足です。例年、河原に姿を見せるゴンちゃんは最終日まで、そっとしておいてくださいとお願いしているのに、平気で「盗んで、連れ去っていく」人達が未だにいると聞きます。子供達が我慢してその時を待っているのに、恥ずかしいとは思わないんでしょうか また、森に姿を見せるマッドバニーも作品で、「勝手に持っていって(盗んで)いい」とは作者はもとより、誰も表明してはいません。これを持って帰った人達は泥棒です。「いつものフジロック」をぶちこわしにするような人達はもうここには来ないでほしい。

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