LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/28 FRI
FEVER 333
伝説再び!FEVER 333がフジロックをぶっ壊す!
フジロックは毎年何かしらの事件が起こる。「フジロックで思い出に残っていることは?」という話を常連に聞くと、まずは大災害かと思うほどの土砂降りの雨のなかで見たSIAが挙げられるが2018年のWHITE STAGEでのFEVER 333のライブも、まさに革命のようなひと時であった。身内だけの話かもしれないが、未だにあの光景は語り継がれているし、今思い出すだけでも凄まじい瞬間を目撃したと言いきれる。
あの伝説的なライブに魅了された方も多いのではないだろうか。期待値が高まらないわけがない。何も制限のかからないGREEN STAGEも4年ぶりということもあり、いつもの挨拶の時点でステージ前方には多くの観客が押し寄せている。そうそう、これこれ。ライブ前のこのふわふわとした緊張感を思い出す。
爆音のイントロが流れ、白装束を身にまとった4人のメンバーがステージへとゆっくり登場すると、「待ってました!」と言わんばかりの拍手と歓声が送られる。更に押し寄せてくる観客の多さが、あの5年前のライブの衝撃を物語っているようでもあった。
1曲目は、“Bite Back”。マスクをつけたJasonが突き刺さるようなシャウトをしながらステージを暴れ回る。ベースのApril KaeもギターのBrandon Davisも負けじとJasonに呼応していく。Thomas Pridgenの爆発音のようなドラミングに野太いベースとギター音が心地よく、思わず「これだよ!これ!」と言いたくなってしまう。このときの気温は30℃を超えていたけれど、もうすでに熱気が溢れかえり、暑苦しい。
“Only One”では、スピーカーの上に陣取り、空に祈るようなシャウトをあげるJason。ステージではスライディングをし、水をまき散らし、観客たちを煽っていく。アクションだけではなく、パワフルなサウンドが苗場のこの空間そのものをぶっ壊し、めちゃくちゃにしていくようでもあった。もちろん、前方では汗だくでモッシュをし、腕も上がる。身体も自然にゆれてしまう。純粋な音楽な楽しさが詰まっているようでもあった。
FEVER 333といえば、今年ボーカル以外のメンバーを総入れ替えしたばかりである。あのパフォーマンスをまた見られるのか?まったく異なったバンドになってしまうのでは?という心配は、杞憂に終わる。新メンバーにベースを入れたことによって、サウンドには力強さが増したし、April Kaeの観客を挑発するようなエロティシズム全開のパフォーミングが抜群に上手い。バンドとしてのバランス感覚がグッと安定したようにも感じる。今、この瞬間に私たちがFEVER 333に求めているものがすべて揃っているのだと思った。
続く“Made an America”、“One of Us”では、天にマイクを投げ、キャッチからの即シャウトというJasonお決まりのパフォーマンスにも思わずにやけそうになる。観客たちからも声があがり、うねるベースにソリッドなギターがアクセントとなって、ここでもサウンドとしての力が増していることを思い知らされる。「落ち着いたよね」とか「前のほうがよかったよね」とか、絶対に言わせないのだ。
5月末にリリースされたばかりの“$wing”は、身体の芯に響くドラムとベースに身を任せていると、自分のなかでの熱量がどんどん増していくのがわかる。知っているイントロが流れたと思えばBLURの“Song 2”のカバー!こんなの盛り上がらないはずがない。サビパートでの「Woo-hoo」では観客からも声が上がり、それぞれが飛び跳ね、前方のサークルモッシュもその輪をどんどん広げていく。久しぶりのフジロック。彼らなりの私たちに向けたささやかなプレゼントのようでもあった。
4人の屈強なセキュリティに支えながらJasonのシャウトが響いた“We’re Coming In”のあとには、未来の子どもたちのために捧げられた“Prey For Me”。サビに向けてテンポが上がっていき、更に会場をヒートアップさせていく。「アクティビズムとしてのアート」というミッションのもとに集結した彼らの楽曲やMCからもわかるように、すべての人に向けられた平等・平和に対する祈りなのである。
突き刺すようなドラムのサウンドが印象に残る“Out of Control”のあと、お決まりの耳馴染みのあるイントロが流れれば、“BURN IT”だ。サークルモッシュもこの日最大に広がっていき、大いに盛り上がりを見せる。フロントの3人は縦横無人にステージ上を動き回っていく姿は、すべてが予想の斜め上、規格外であるように思う。クラップ&ハンズに歓声と、観客たちも負けじと応えていく。
ぶっ飛んだステージとはいえ、ここまでなんとなく物足りなさを感じた方もいるはずだが、ここで終わるのはFEVER 333らしくない。ラストの“Hunting Season”では、汗だくになりながらの観客たちのサークルモッシュに、JasonがPA卓すぐ上の照明にまで駆け上り、身体を半分以上出しながらのシャウト!ちょっと間違えてそこから落ちたら普通に死にますけど……?でも、やっぱりそうだよな。そうなんだよな。FEVER 333はこうでなくちゃ!!!5年前のWHITE STAGEでも思ったが、よくこのはちゃめちゃなパフォーマンスで出禁にならないな。笑いをこらえることができなかった。
やはり、FEVER 333は予想と期待を遥かに超えるライブをいつでもやってくれるのだ。今回のライブも今年のフジロックのひとつの大きな事件になったのではないだろうか。その証拠に、階段を降り、ステージまで戻るJasonには惜しみない拍手が鳴りやまなかった。
[写真:全10枚]