LIVE REPORT - GREEN STAGE 7/30 SUN
LIZZO
愛!愛だよ、愛!!LIZZOから受け取った大きすぎる愛!!!
大音量でLIZZOの曲を流し、すでに出来上がっている観客たち。写真を撮り合ったり合唱したり、3日間のフジロックの終了に向かう緊張感を抱きながら、今か今かと待ち望んでいるようだった。
ライブは、23分押しでスタート。「待ってました!」と言わんばかりの大歓声と拍手が巻き起こる。後ろのスクリーンに文字が映し出され、自分自身と他者に向けられた愛のメッセージと大きなハートマークが映し出される。セットの扉が左右に開けば、そこにはLIZZO!!!パワフルな歌声とともに“CUZ I LOVE YOU”から2023年GREEN STAGEの最後のショーが幕開けとなった。タータンチェックのスカートがポイントのパンキッシュなドレスを身にまとい、踊りながら圧倒的な歌のパワーを全身で浴びる。ピンクのアイシャドウもキュートに光っている。
ダンサー8人が登場し、間髪入れずに“JUICE”の演奏が始まれば、サングラスを外してすかさずダンス!この曲は自分から満ち溢れる魅力について歌っているが、高らかな声からは十分すぎるくらいに彼女の魅力が伝わってくる。
そのまま勢いを止めることなく歌われた“2 BE LOVED”で、自由に踊るダンサーたちの様子を見ていると、なんだってできてしまうような気すらしてくる。Team LIZZOの女性ダンサーはボディポジティブな面々で構成されているのだと思う。その彼女たちがキラキラと自由に踊る姿を見ていると、私たちを制限するものなんてきっと何もないと思わせてくれるようでもあった。クラブの如く観客たちはノリノリでステージを眺めながら、クラップ&ハンズで反応をしていく。楽しい!とにかく、この空間にいられることが楽しい!そう思えた瞬間だった。
「こんばんは、ニッポン!私はLIZZOです!BITCH!」という流暢な日本語での挨拶が終われば、観客から合唱の起きた“SOULMATE”。それから“Grrrls”、“BOYS”と対をなす2曲が続く。個人的には、このショーはすべての人に向けられたものだというメッセージなのだと受け取った。Jordanのギターソロもうなり、大きな歓声があがる。
“TEMPO”ではMissy Eliotからのメッセージが、“RUMORS”ではCardi Bからのテレビ電話の様子がスクリーンに映されるという大サービス!リアルタイムで映しながらLINEのようなメッセージは下から上へと流れていく。どのメッセージも優しく、ポジティブ全開の内容!LIZZOの世界には、ネガティブとかマイナス思考なんて存在しないのかも。芸の細かさにもグッとくる。
センターに置かれたスタンドマイク。“JEROME”では、ライトのつけられたスマホが、LIZZOのときに力強く、ときに優しく語り掛けるような歌声に合わせて左右にたくさんのスマホのライトが揺れる。“SPECIAL”は必ず聴きたかった一曲でしょう!ここにいる私もあなたもスペシャルで、かけがえのない存在であると、目の前で繰り広げられる歌が証明してくれる。大きな愛だ、と純粋に思う。こんなの泣いてしまう。今年のフジロックに来るまでの1年間は決して楽しいことだけではなかった。それでも私は特別で、そのままでいいのかもしれない。優しい歌声が、広いGREEN STAGEに響き渡る。
Chaka Khanのカバー“I’M EVERY WOMAN”、そして肩にプライドフラッグをかけての“EVERYBODYS GAY”が続くと、改めてLIZZOの曲は性別や人種、性的趣向などは関係なくすべての人を肯定する曲たちなのだと思わされる。誰ひとりとして寂しい思いをさせたり、仲間外れなんてしない。見る者すべてを幸福にしようとするショーを見ているとそう思わずにはいられなかった。
バンドメンバーのゴリッゴリのソロが終わればBBT(Bad Bitch Meditation)にWATER ME!深呼吸をし、ときにBITCHのセルフケアとして自分を自分で抱擁することも大切なのです。衣装チェンジをし、ピンク色の大きなリボンに包まれているような素敵なコスチューム。「まるでセーラームーンの変身シーンみたいだな」と思ったのだが、本当にそのようだ。セーラームーンが大好きなLIZZOの「ムーンプリズムパワー!メイクアップ!」の台詞には、会場もおおいに盛り上がる。
COLDPLAYのカバー”YELLOW“ではシンプルなピアノの音とともに大合唱が起きる、嬉しいプレゼントのようなひと時であった。それから、サポートメンバーと2人でフルートの美しいメロディが聴けたと思えば、”MAGIC“に”TRUTH HURTS“!バンドを携えていることもあり、音源よりもグッとロックに、ソウルフルに聞こえる。だからこそ心にグッと届くのだと思う。目で映像やダンスを堪能し、耳でパワーたっぷりの音楽を聴き、飛んで跳ねて拍手をする。ポジティブなこと以外を考える暇さえ与えられていないことに気がつく。とにかく幸せでエネルギッシュな空間に自分が含まれているのだ。
ひとりの観客の持つボードが、セーラームーンに変身した自分であると気付き、「それにサインしていい?」とLIZZO。そこから少しの時間、サイン大会が始まる。受け答えやスタッフの背中を借りながら一枚一枚に書いている様子を見ていると、なんだかこちらまでうれしい気持ちになる。この時間もLIZZOの愛に包まれた瞬間なのだと感じられた。
空高く伸びていく歌声が印象に残る“I LOVE YOU BITCH”、コーラスがアクセントとなった“GOOD AS HELL”のあとは、最後の曲“ABOUT DAMN TIME”!ああ、もう終わってしまうのか。本当に幸せで楽しい気持ちしか感じなかった1時間のステージ。LIZZOの大きな愛情を感じずにはいられなかった。会場にいる全員で大合唱をし、フルートの演奏まで再び披露してくれるという大サービス!踊り、飛び跳ね、腕を挙げ、観客もそろってこの幸福な空間を最後まで演出していく。「ありがとうございました!」とLIZZOが深くお辞儀をすれば、サポートバンドの面々がステージ前方に出てきて、最後の最後まで見ている全員を楽しませるという姿勢を貫いているようだった。
本当に素晴らしかった。言葉に言い尽くせないほど幸せな空間で、LIZZOからもらった愛で胸がいっぱいになっている自分がいる。途中、「日本でパフォーマンスをするのが夢だったの!」と語っていたが、フジロックに出てくれて本当にありがとう。今、このタイングで見ることに大きな意味のある時間だった。あの空間で感じた溢れんばかりの気持ちを思い出すだけで、強く生きていけると思う。私は私を愛して生きていけるのだと思う。LIZZOから受け取った愛情を思い出せば、なんだってできる気がする。
[写真:全10枚]