LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/28 FRI
YONA YONA WEEKENDERS
飲んで踊ろう! 最高の夏を“開栓”したグッド・ミュージック
長く続いた自粛期間、そして2021年と2022年の規制を設けた上でのフジロックを経て、ついに始まった声出しOKのフジロック。1日目は見事な快晴だ。そして、今年の夏はとにかく暑い。フジロック開催期間中は10年に一度の猛暑になるなんて予報を見て、ゾッとしながら苗場入りした。果たして今のフジロックに対して自分は何が書けるのだろうかと思いながら。
今年のフジロックのテーマは「超気持ちいい! FUJI ROCK」だという。最初聞いたときには耳を疑い、こちらが不安になるハイテンションさだと思ってしまったことは素直に白状する。このテーマを満喫するためには、3日間の初日に何のライブを観るべきか悩みに悩んだ。その答えは、そう、今年フジロック初参加のYONA YONA WEEKENDERS(以下、YYW)だったというわけだ。
6月にリリースしたEP『into the wind』ではクラムボンの原田郁子が参加した“眠らないでよ”が話題となったYYW。もともとメロコアやパンク畑出身のメンバーから繰り出される体幹のしっかりしたグッド・ミュージックは各所で話題を呼び、CMソングへの起用や主題歌などのタイアップでいまや引っ張りダコだ。“Night Rider”ではthe band apartの荒井岳史、“夜行性”ではbonobosの蔡忠浩が参加するなど、作品を共作するゲストの顔ぶれから見てもハズレなしの選択だと自分で自分を褒めたい。
朝、会場へ向かうバスの窓からテント・サイトが見えたが、すでにテントで隙間がないほど満員御礼のギュウギュウ状態。道にも人、人、人。昨夜の前夜祭からして最近のフジロックと比べ、明らかに人が多かったという。グリーン・ステージから鳴り響くサウンド・チェックもすでに本番のボルテージだ。今年は明らかに最初から観客も出演者もギアの入り方が違う。そんな空気が会場全体を覆っているのを感じていた。
「家族連れが多くなったなぁ」と思いながら会場を歩き、ホワイト・ステージへ到着すると、やっぱりまぁまぁな灼熱。ホワイト・ステージは日陰がなく炎天下では厳しいステージだが、それでもこの日差しを引き受ける気満々のお客さんはもうたくさん集まっている。みんな、これから最高な「フジロック初め」が始まることを知っているかのようだ。
サウンド・チェック中のステージを眺めていると、左手からアンペグのベース・アンプ、オレンジのギター・アンプ、ラディックのドラム・セット、冷蔵庫、キーボ……。冷蔵庫。4月に行われた恵比寿リキッドルームでのワンマン・ライブでもお目見えしていたという冷蔵庫、フジロックにもお越しいただいているのか。
大歓声に迎えられメンバーが登場すると、磯野くん(Vo & G)は早速冷蔵庫から缶ビールを取り出し、マイクの前で缶の蓋を開け「パァァァンッ……!」と一発。「プシュッ!」じゃない、パァァァン。美しいまでにリバーブがかった開栓の残響音(ナイスPA)は会場中に響き渡り、その瞬間に「超気持ちいい!FUJI ROCK」は約束され、みんなこの夏が最高なものになることを確信したに違いない。
磯野くんの「やってくぞ! カンパーイ!」の音頭から、真夏の日差しを讃えるかのように“SUNRISE”へ。笑顔の観客たちも自然とハンズクラップ。Voの美しい声が宿った「All you need is sunrise」の歌詞とサウンドが好天に恵まれたフジロックの最高さを余すことなくすべて表現していて、もはや祝祭ムードだ。キイチ(G)の爽快なギター、スズキ シンゴ(B)と小原”beatsoldier”壮史(Dr)による気持ちいいビートが夏を盛り上げる。Key.とChor.のサポート・メンバーも終始曲の合間を見てはビールを飲み、磯野くんは「いい酒を飲んでいってください」と、次の“君とdrive”で観客と一緒に走り出し、新EPの表題曲である“into the wind”の気持ちいいグルーヴで大人も子どももみんな肩を揺らした。
「今日は本当に普段の肩書きを取っ払って心の底からフジロックを最後まで楽しんでいってください。すっぴんの気持ちで楽しんでください」と磯野くんがMCし、“シラフ”へ。「飲んでますか!」と言えば今度は「シラフでいこう」と言うし一体どっちだとなるが、「あるがままの姿でいればいい」という今年のフジロックの大正解を教えてくれている気もした。あるがままの姿でいられるフジロックが「お帰り」と迎えてくれたように。
軽快なドラム・ビートに乗せて、観客を踊らせライブハウス・バンドとしての力を発揮しながら、「フジロッカーの皆さんまだまだ踊れますかー!? まだまだ酒飲めますかー!? 楽しんでいきましょう!」からの「カンパーーぁぁぁいぃぃぃ……!!(カスレ声)」と磯野くんは缶ビールを一気飲みして「今夜は無礼講」と歌う。”R.M.T.T”では「今夜ちょっとさ フジロックでやってこう」と歌詞を変えてグルーヴし、超気持ちいいを体現していく。“15”のイントロが鳴ると、磯野くんは「ずっとフジロックに出たかった」とフジロックへの気持ちを吐露し、ホワイト・ステージはこの音を待っていたと言わんばかりに涼しい風が吹き抜けた。
「いい酒は飲めましたか?」「もう一発いっとくか」と、磯野くんが冷蔵庫の缶ビールをメンバーに配り、ドラム・ビートに乗せて、みんなで3回目の「カンパーーーイ!」(小原以外)。「またいつかここでただいまと言えるようにYYW頑張りますんで」「いろいろあったけど僕らなりに小さな光を灯し続けて良かったなと思います」と最後は“光の中”。音に身体を委ねる会場を見渡して、スズキ シンゴとキイチはニコッと微笑んだ。
いろんなことがあって、今日みんながここにいた。いつも通りのフジロック、それこそが光だったのかもしれない。終演後、フジロッカーたちの眩しいくらいの笑顔を見れば分かる。これが3日間最高のスタートだったと。去り際にステージ上を見ると、冷蔵庫の缶ビールはしっかり4割ほどなくなっていた。
<Set list>
01.SUNRISE
02.君とdrive
03.into the wind
04.シラフ
05.眠らないでよ
06.R.M.T.T
07.よしなに
08.15
09.SUI SUI
10.光の中
[写真:全10枚]