FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/28 FRI

STUTS

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PHOTO BY古川喜隆
TEXT BY石角友香

Posted on 2023.7.28 20:51

愛されキャラは常に真剣

STUTSが「何々くん、きてくれてありがとう“です”!」と、ゲスト全員にその都度、謝辞を述べるたびに、そばにいる誰かが「可愛い〜」と呟く。もしくははっきり聴こえる声で言う。ジャパニーズ・ヒップホップをトラックメーカー/プロデューサーという立場で、ドラマ主題歌などでも意義あるヒットを放ち、貢献しているアーティストではあるけれど、彼の人柄に触れた瞬間、さらに楽曲への愛着が増すんじゃないだろうか。

ついさっき、雷を伴う通り雨が降ったばかりのWHITE STAGEはいい塩梅に涼しい風も吹いてきた。先日の日本武道館公演とほぼ同じ、岩見継吾(Ba)、仰木亮彦(Gt)、TAIHEI(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋 聡(Sax、Flute)、佐瀬悠輔(Tp)という生バンドのメンバーとともにオンステージしたSTUTS。このメンバーならではの“Renaissance Beat”で幕を開け、“One”で自身のラップを聴かせ、尋常ならざるテンションでMPCをプレイし、立て続けに武嶋のフルートが映える“Come to Me”、TAIHEIのエバーグリーンなフレージングが美しい“Conflicted”と一気の4曲を披露した。ホーン隊の活躍も現在のSTUTSの音楽性と切り離せないことをライブで実感する。

都市生活者である青年の生活感みたいなものがSTUTSの音楽の軸にはあるが、それは彼とコラボするラッパーそれぞれの個性や主義がミックスされて生み出されたものだと思う。そこで、最初のゲストは北里彰久(Alfred Beach Sandal)。淡白めなインディポップのボーカリストではあるけど、甘めなポップソウル“Horizen”にあまりにもハマる。一転、真逆な個性のKMCは“Storm”でストロングスタイルのラップをかまし、去り際には「ライブの規制はないけど、ケガとか熱中症に気をつけて!」と、抜群にいい奴ぶりを発揮。そしてイントロで爆発的な歓喜が溢れた“Presence Ⅱ”でBIMが登場。ステージ狭しと動き回り、ハンドワイパーがオーディエンスに広がっていく。BIMが出てきたということはこれもやるでしょ!と期待した通り、リリースされたばかりの“ひとつのいのち”が披露された。MVでも見られるように、特段何も起こらないような日常の風景にたまらなく愛おしさを感じさせる二人の音楽のマジックはフジロックのステージでも証明されていた。

ヒップホップ・アーティストとしての矜持と普通の青年であることの身近さをSTUTSほど、共演で表現している人も稀なんじゃないかと改めて思う。さらに澱みない声が真っ直ぐにラップをデリバリーするJJJも加わり、BIMとともに“心”をパフォーム。さらにはJJJのアルバムにSTUTSが参加したつながりで、JJJの“Change”を生バンドで披露するという貴重な場面もあった。STUTSは曲の良さやリリックにかなり共感しているんじゃないだろうか?(もちろんどの共演者にもリスペクトはあるだろうけど)、この曲でのフィンガードラムのプレイはことさらエモーショナルだった。ゲストを迎えるレパートリーは続く Campanellaと再びの北里がラップと歌で参加する“Expressions”で終了。さまざまな個性の一線にいるラッパーを一望できたのはSTUTSのライブだからこそだろう。

バンドとともに送る演奏は本人も言っていたが、この日はPUNPEEのいない“夜を使い果たして”。6年前、PUNPEEがWHITE STAGEに登場したのを見て、自分もいつかこのステージに立てたらこの曲をやってみたかったと話してくれた。今やクラブアンセムを超えて、今日なんかはまさにフジロックの夜を使い果たそうとしているオーディエンスにはしみて仕方なかったと思う。ジャジーなニュアンスのある“Seasons Pass”でステージを締めくくったSTUTSは感謝とともに「ここからまだまだいい方、いっぱいいらっしゃるんで、楽しんで行きましょう!」と、フジロックそのものを祝福していた。こういうところなんだよなあ。

[写真:全10枚]

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7/28 FRIWHITE STAGE