FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/28 FRI

NxWORRIES(Anderson .Paak&Knxwledge)

  • NxWORRIES(Anderson .Paak&Knxwledge)
PHOTO BYfujirockers.org
TEXT BY石角友香

Posted on 2023.7.29 09:26

心からの「会いたかったよ、フジロック!」

初日のWHITE STAGEのトリはアンダーソン・パーク&ノレッジによるNxWorries。70年代、80年代ソウルやディスコと現在のヒップホップやネオソウルを接続する、どこまでもポジティヴでスタイリッシュ、ひと匙のユーモアも交えたパーティーに紛れた気分を堪能した。いや、その前にお見それしました、アンダーソン・パーク。シルク・ソニックのライブを見ていないこと、前回、2018年のフジロックはGREEN STAGEでのマルチプレイヤーぶりが記憶に鮮明なせいで、これほどラッパー/シンガーとして強力なエンタテイメントショーを見せることに意表を突かれたわけです。みんなの太陽みたいな存在感はもちろん、スター、でした。

DJブースにしては恐ろしく高い壁状の物体がステージを横断していて、しかしどう考えてもそこにノレッジが位置する他ないセットの謎について考えていたが、ショーがスタートすればやはり高い場所にノレッジが陣取り、カメラは時折彼の手元を抜く。アンダーソン・パークはお馴染み、バカでかいファー(エコファーかもしれない)の帽子にスーツ、シャネルのストール姿。スタイリッシュな背景にパークがシルエットのように際立つ演出だ。“86 Sentra”から始まり、野外でも圧倒的なローが胸の辺りを振動させる”Wngs“やカバー曲も挟みながら、スムーズでチルなナンバーが続く。スタイリッシュなステージだが、パークのフジロックへの再来はめちゃくちゃ熱っぽい。「帰ってきたよ!思い切り騒いで、踊って!」というところだろうか。さすがみんなの太陽である。ステップを踏みながら確かなラップ&メロディを聴かせたかと思えば、ユニークな形状のマイクスタンドを使った歌唱もある。シンプルなセットながら、全然飽きない。ステージ上でカメラマンが追いかけて、WHITE STAGEの上方のビジョンに映し出しているのも嬉しい演出だった。MCをするパークがアップになると、手にミニ扇風機が見えて、なんだか可愛かった。

数曲パークがパフォームしたあとはノレッジのビートのルーツにありそうなナンバーをミックスしたコーナーが展開。ソウルやディスコクラシックだと思うが、ほとんどわからない……。しかし初めて聴く曲もなんとなく時代は想像できる。かなり幅広い世代が集まったこの日、ほとんど誰もが知っていたのはボビー・コールドウェルの”What You Wan’t Do For Loveだったんじゃないだろうか。この曲をブレイクしてはオーディエンスに歌わせる。ノレッジはハードワークするビートメーカーなだけじゃなかった。

再びパークが登場して、ギターのメロウなリフが印象的な“Where I Go”で、さらにとろけ、アルバム『Yes Lawd!』からどんどん曲を披露して行く。ハイライトは照明を落とし、暗闇を作った上で、オーディエンスのスマホのライトをつけるようにパークが声をかけ、出来上がった光景に、“Daydreamin”があまりにもハマっていたことだ。しかもそのオーディエンスの光景も画像処理して演出に使っていく。そのままの画像じゃないところが、このステージの物語の一つになるには大事な要素なのだと思う。

再びノレッジのコーナーではソウルトレインの映像など、懐かしめの選曲からのミックスで展開し、その後、大勢の女性たちがステージを占拠、じゃなくてそれこそソウルトレインばりにダンスを競う趣向だ。さらにパークとの絡みも盛りだくさんで、でもただセクシーなだけでもないし、もちろん嫌味でもない。そんな見え方が可能なのは彼のキャラクターによる部分がかなり大きい。その後、懐かしいネタはホイットニー・ヒューストンの“I Wanna Dance with Somebody”をかなり捻ったミックスでノレッジが届けるのだが、このライブのテーマはこの曲のタイトルとリンクするものだったんじゃないだろうか。そして満を持して、パークとノレッジがその後もともに音楽を作るきっかけになった”Suede“を終盤に持ってきたのはシンプルにアツい。またまたカラオケ状態になりかけたが、それも演出のうちだったのだろうか。ラストは”Scard Money“で締めくくってくれた。

フルアルバムがまだ一作しかないことも理由なのかもしれないが、ラッパーとビート/トラックメーカーのユニットという意味でも、この二人だからこそ成立するという意味でも、存分に楽しめた90分だった。

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7/28 FRIWHITE STAGE