FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/29 SAT

TESTSET

  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
  • TESTSET
PHOTO BYsuguta Instagram
TEXT BY石角友香

Posted on 2023.7.29 19:01

”ただのバンド”の意志表示

「ありがとうございます」という謝辞以外、LEO今井はMCをしなかった。

2021年は特別編成(もしくは緊急事態)のMETAFIVEとして砂原良徳とLEO今井が軸となって、高橋幸宏のライブなどでゆかりのあった(もっと言えば白根はLEO今井バンドのドラマーでもある)白根賢一、砂原とマネジャーが同じ時期があったという永井聖一で組織された急ごしらえのバンドは今や正真正銘、バンドである。オーディエンスがどんなストーリーを描こうが自由だが、自分達はアルバムもリリースしたバンドであるという無言の意志が、MCに現れていたんじゃないか。

そのアルバム『1STST』リリースタイミングでの一夜限りのライブを経てのフジロックでのステージはMETAFIVE時同様、WHITE STAGEなのがどこか因縁めいているが、音響的におそらくここが最もハマるのだ。というのも、オープニングSEの段階で凄まじくローの効いた出音で、どちらかと言えばテクノやハウス系のダンスミュージックの音場ができていたからだ。1曲目の”El Hop“も生音のドラムが入ってくるまではガムランのような音の壁が支配し、歌メロはどちらかと言えば聴き取りにくいぐらいだった。それが白根のドラムが入ると同時に、ポップミュージックの様相を呈した。そうなるとアルバムの新曲を聴き込んできたファンにはスケールアップしたWHITE STAGEでのTESTSETが120%堪能できる。コインが転がる映像がノワールな映画のように”Moneyman“を演出していく。永井聖一のギターは個人的には80年代のデヴィッド・ボウイの作品でのギター、カルロス・アロマーやロバート・フリップのセンスを感じる。

メンバー全員のバックボーンと今を繋ぐ音楽性がTESTSETの面白さだと思うのだが、ライブだとより誰がどの音を出しているのかがわかるのが醍醐味だ。生ベースが存在しないTESTSETの屋台骨は砂原のシンセベースであることは間違いない。このローの成分がオーディエンスの腰あたりを直撃する。サブスクやCDで聴いているだけでは感じえない“Japanalog”や“Carrion”の肉体性をライブで知るのだ。そしてフロントマン、LEO今井の独特な存在感はライブで増幅する。あらゆることに違和感しかないような表情で、怒りとはまた違う悲鳴のような叫びを発する様子は我々が実は蓋をしている感情なんじゃないかと思うのだ。

映像も特徴的なTESTSET。“Carrion”で鳥の群れの怖さと同時にグラフィックとしての面白さを見せたあと、鳥の視点で街を見下ろすような映像を背負う“Where You Come from”に繋ぐのも面白い。そこからTESTSETで最もオーセンティックなバンド曲と言える“Bumrush”つないだのも、このバンドの幅の広さを実現。振り幅と言えば、ある種、LEO今井のシグネーチャーとなりつつあるカウベルを思いっきり叩く様子がインダストリアル・テクノめいている“The Paramedics”はこの日のセットリストで最もテンション高く迎え入れられていた。黙々と演奏に徹する4人がたどり着いたこの日のラストナンバーは“A Natural Life”。何度もタイトルをリフレインしていると、何が自然な生活なのかわからなくなってくるというトラップが、背景の都会のビルと自然の中に屹立する断崖を交互に映し出すことで効果を上げていた。

最初はダンスフロア仕様の音作りに自然と体を動かすところから始まり、聴覚も視覚も曲が表現しようとしていることに自然と照準を合わせていくようなダイナミックな体験ができた1時間。もう前史としての特別編成のMETAFIVEについてTESTSETが語る必要はないのだ。

[写真:全10枚]

TAGS
7/29 SATWHITE STAGE