FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/29 SAT

Vaundy

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PHOTO BYfujirockers.org Instagram Twitter
TEXT BY石角友香

Posted on 2023.7.29 23:26

新曲披露に見た、Vaundyのフジロック愛

入場規制がかかった2日目トリ前のWHITE STAGE。それまでのステージとは明らかに違う老若男女のバランスの良さがすごい。同じフジロックのオーディエンスなのだろうか?と一瞬驚くぐらい、たとえばサッカー競技場とかの一般社会感がある。中でも小学校高学年から中学2年生ぐらいの男子の熱狂である。彼らが人波をかき分けてでも見たいヒーローはVaundyだ。

ギチギチに人が入ったWHITE STAGEでも後ろに下がればむしろ上方のビジョンが見えるだろうとたかを括っていたら、その映像はなし。なかなかなこだわりっぷりである。怒涛のツアーを共にしてきたバンドと共にライブに臨むVaundy。ステージを囲むように設えられたライトの演出がシンプルカッコいい。そして思わせぶりな選曲は一切なし。初めて見る人も、ツアーのチケットをなかなか取れない人も大満足の高い認知度を誇るヒット曲を連発していく。“恋風邪にのせて”をスターターに、リフもののロックチューン“そんなbitterな話”、ソウルフレーバーもあるピアノポップ“Tokimeki”と、連発した序盤はどこか英国の至宝で、先日ライブ活動を終了したエルトン・ジョンにも似た強いポップ性を感じた。

最初のMCでは「Vaundyだ!みんな(パワー)残ってる?俺はまあまあきてるんだけど」と、序盤から飛ばしたからか(?)何気に「そんなに何時間もやるわけじゃないから」と暗に言ってるような感じなのだ。これは彼のスタイルの一つだと思うが、初見のオーディエンスも多いはずなのに、なんとなく受け入れられている。

ジャンル的に1テーマでキャッチーな曲作りをするVaundyのレパートリーの中でもロック色強めかな?と思っていたところにディラ・ビートっぽいネオソウル“napori”を選曲したのは嬉しい驚き。そして80年代フレーバーもある8ビートの“踊り子”、“しあわせ”とヒット曲でこの場にいる人を一人残らず鼓舞していく。さらに“不可幸力”ではタフな演奏がアリーナクラスのアクトの実力を再認識させてくれた。

1曲1曲、ドッカンドッカン、反応があるにも関わらず、お馴染みの「そんなもんかい?フジロック!」を放ち(同様に「そんなもんかい?紅白!」というのがありました)、ソリッドかつ重厚な“CHAINSAW BLOOD”、続けて“裸の勇者”を披露し、ストレートなロックのステージ色がさらに濃くなる。イーブルなギターサウンドが響き渡る“泣き地蔵”へと、サウンドに一本筋を通しつつ、誰もが知るヒット曲がこんなにあることが彼の個性だと思った。

一つの型ができてはいるが、MCで余力がだんだんなくなっていくことを発言するのも、オーディエンスが後悔しないように楽しむためのヒントなのかもしれない。再び「だいぶキテんだわ。でもみんなすごいね。朝からいてんだろ?でも、俺は出し切りたいんだわ」と、ライブが残り少ないことを示唆。余力を残させない選曲はロックでダンスな“花占い”、ダメ押しに特大級のヒット曲“怪獣の花唄”をステージの端まで出て、歌う。全身を弾ませながら歌い、ロングトーンの終わりに少しだけフラットするあのボーカルのグラマラスなニュアンス。これはVaundyの発明だし、容易に誰でも真似できるものでもない。

誰もがこれで終わりなのでは?と思ったところに「おかしいな、終わんないな」と自ら言うのも面白かったが、この場で3年ぶりのアルバムを今年リリースすることを発表し、なんの説明もなく「ここからはずっと騒いでください」とだけ言い、骨太でちょっと哀愁も含んだマイナーチューンを披露したのだ。イメージとしては90年代のUKロック。おお、これをフジロックでやりたかったということ?と、その強気っぷりに感嘆してしまった。素晴らしいお披露目の場所ではないか。そしてWHITE STAGEにたどり着いた人だけに送られたサプライズでもあり、何よりVaundyなりのフジロック愛だと思う。

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7/29 SATWHITE STAGE