FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/29 SAT

LOUIS COLE

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Posted on 2023.7.30 02:39

スキルフル・ビッグバンドのスーパー・ルイス・コール・パーティ

フジロック2日目もあっという間に夜が更け、ホワイト・ステージのライトが煌々と光り輝いている。そりゃもう楽しくて、満身創痍である(自分が)。コロナ禍を経て“普段通り”に戻った今年の開催だけに、ミュージシャンたちそれぞれの想いは強く、すべての音楽体験が胸を震わせた。まだ2日目、超気持ちいいどころか昇天させたいのかフジロック。身体は大砲の弾を何発も喰らい穴ボコだらけ。会場と作業場のテントを生ける屍として往復していた。もうダメかもしれない。レポ書くのも。

そんな自分をよそ目に、夜も更けたホワイト・ステージには期待という名の笑顔を輝かせたフジロッカーたちが続々と集まっていた。例年一番混み合う2日目だが、今年はとんでもない集客となりそうだと午前中のグリーン・ステージで前座MCの人が言っていたっけ。そんなスペシャルな日のヘッドライナーとして登場するのが話題沸騰中のスペシャルな変人、いや超人、ルイス・コールというわけだ。

ルイス・コールは、超絶技巧派ドラマーにして作詞・作曲・プロデュースかつどうやら何でもできてしまうと噂のマルチ・プレイヤー。彼のポップ・センスとドラム・スキルが融合したファンクネスを魅せつけたアルバム『クオリティー・オーバー・オピニヨン』は大ヒット。2022年12月のジャパン・ツアーは追加公演を含む全4公演を即完売し、自身のバンドにこれまたスキルフルな日本人ホーン隊を加えたビックバンド編成で観衆の度肝を抜いた。

その超絶テクニックや楽しいと噂のライブを生で観られるだけでも嬉しいのに、スペシャルなビッグ・バンドを率いてフジロックにやってくるというわけで、楽しみにしてきた方も多いだろう。ポップだけど、どこか漂う彼の得体の知れなさは何なのか存分に体感してみたいと思った。

真っ赤に照らされたステージから「Welcome to Louis Cole Welcome musical Louis Cole……」と低音ボイスが流れ、開演の期待が高まってくると、ステージはパッと明るくなり、ドクロの全身スーツを纏ったバッキング・ボーカルの3人娘(以下、都合上バッキング・ガールズと呼ぶ)が子ども用の木馬(?)に乗ったルイス・コールを押しながら登場。拍子抜けした観客から笑い声が漏れる。ルイスは丈の短いスーパーマリオブラザーズのパーカー(子ども用?)を着こなし(?)、「コンニチハ〜!」と日本語で挨拶。キーボードでチャルメラのメロディを弾いて、早速観客からウケを取る。登場数十秒で日本へのファンサービスが情報過多である。

噂に違わぬ豪華なビッグ・バンド編成は、ピーター・オロフソン(B)とライ・ティスルスウェイト(Key)、歌とダンスを担う先ほどのバッキング・ガールズ3名、日本人プレイヤーによるホーン隊の7名だ。超絶テクニックを持つ精鋭ホーン隊もバッキング・ガールズ同様全身ドクロ・スーツ着用だ。

「最初の曲はこれ」とドンドンと鳴るリズムに、鍵盤もお手の物なルイスのキーボードが乗ってスタート。そこへファンキーなベースが入ってくると、クレイジーなスーパーマリオワールド「ホワイト・ステージ」は始まった。曲の途中で、ルイスはおもむろにステージ右手側のドラム・セットに座ると会場がザワつく。「ワン、ツー、ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー!」のカウントで高速ドラミングがスタート。スティックを持ったら水を得た魚のように残像が見えるレベルで叩き始めた。フジロッカーたちから大歓声が上がる。

ルイス・コールのドラム、「うまーーーーーーい!!!」と心のスピードワゴンが全速力でフレーズを間違えるくらい上手かった。高速かつ滑らかなドラムさばきで凄まじいグルーヴを出している上に、打ち込みかのようにビッタビタにリズムへアジャストするプレイのタイトさ。生音でこれって脅威的ですらある。彼はインタビューでも毎日ドラムの練習は欠かさないと言っていたが、まさにその賜物だろう。僕のような素人でもグリッドへのジャスト感が異常なレベルだと分かるドラミングは久しぶりに聴いたかもしれない。

ルイスのやたら長いロング・トーンがブレイクの役割を果たし、そこへ華やかなホーン隊が入ってきて、さらにゴージャスさを増すサウンド。会場パンパンに集まった観客は大喜びの大騒動。ライとピーターのファンキーな高速ソロ・フレーズからルイスのドラム・ソロへとパーティはもう止まらない。

ルイスのキーボードとホーン隊で始まったアーバンなシティ・ポップ“シンキング”でホワイト・ステージは巨大ダンス・フロア化。ルイスと上からTシャツを着込んだバッキング・ガールズが並び、“アイム・タイト”のPVでも見せた心臓が飛び出すキレのないダンス(服の中に片手を入れて突き出すやつ)を繰り出すなどステージングでも魅せた。曲が終わっても機材からまだループ音源が流れており、ドラム・セット側にいたルイスはバッキング・ガールズの1人にアイコンタクト。「ブツン」と止めさせ、笑いが起きた。演奏はパッキパキなのにダンスはすこぶるユルい、後処理は雑。そのギャップがマンマミーヤ。

荘厳な音像の中、ルイスが何かの宣誓のように早口で白い紙を読み上げた“クオリティー・オーバー・オピニヨン”から、ドラムへ移動し、シンバルの連打から“ビッチズ”へ。爆発するビート、ウネウネのベースにホーンの音色が鮮やかに乗っていく。

すると、バッキング・ガールが手持ちのビデオ・カメラでステージ上を撮影し始めた。その映像はステージ後方の下半分(上半分は映像部隊のもの)に映し出されるのだが、画角ブレブレの安定感皆無さで、ルイスのどアップを撮ったりホーン隊や観客を撮ったり床や靴を撮ったり、どこを撮っているのか判然とせず、特にそこまで音楽とシンクロしないホーム・ビデオのような情報がこの後ホワイト・ステージの大画面半分を占領し続けたのもルイス・コールらしいといえば、らしい。どこ撮ってんだ。

バラードを聴かせたかと思うと、最後の締めにホーン隊が入るところのカウントをルイスが間違え、照れる。可愛いかよ。感極まったフジロッカーたちから次々に「愛しているよ!」との声が飛べば、こっちも愛しているよ!と返すルイス。相思相愛かよ。

ステージ上のルイスは、とにかく忙しかった。キーボードやギターを弾いて、ドラム叩いて、歌って踊って、喋ってととにかく動き回っていた。その合間も観客へのサービスを忘れない、というかライブ全体がサービスの塊。音楽性も含め、そのサービス精神こそが彼のすべてだと思えた。得体の知れなかった彼の一面が少し分かった気がした。

次に、ルイスは「ドン、ドン」とマイクを叩いてビートを作るとその場で録音、ループさせ、今度はギターでいくつかフレーズを重ねていき、歌入れをして即席のループ・ミュージックで“アイム・タイト”を披露。これには手拍子で観客も大盛り上がり。ライブ後半でも、ステージ上で発生した「ブーーン」というノイズに「Oh, Bad Noise!」と言いながら、そのままルーパーで声を重ねバンド演奏の中に組み込み、星間飛行のようなSF的音像の“レッツ・イッツ・ハプン”に仕立て上げていった。才能の塊かよ。

強烈なビートの“フォーリング・イン・ア・クール・ウェイ”が始まると、バッキング・ガールズが冒頭の馬の乗り物に乗ってステージをランダムに走り回った。3人のモソモソした動きは絶望的にキレはなかったが、音のスタッカートが短く入るイントロ部分のフレーズなど、曲のキレからはゲーム・ミュージックにも影響を受けたと語っていたルイスのバックボーンが感じられた。合いの手のように入る超絶早弾きベース・ソロに観客が沸き、ホーン隊でのソロ回しからファンク調になったかと思えば、それぞれの演奏メンバーがバカテクをぶつけ合う超人デスマッチ状態。ルイスのビートもブラストするように暴れ、会場は全員無敵のマリオ状態で飛び跳ねた。

ここで、ステージ後方に大きく映し出されていた「LOUIS COLE」の画像がズレてWindowsのデスクトップが出現するアクシデントが発生し、会場爆笑。しまったとルイスは手元のPCでサクッとフォルダからデータを引っ張り出し修復し事なきを得たが、ステージ・バックのLOUIS COLE画像、自作かい。というかステージ後ろの画像管理まで自分かい。多才かよ。

ドリーミングな曲調の“ナイト”でクールダウン。バッキング・ガールズが懐中電灯で会場を照らし、お返しとばかりに観客はスマホのライトを点けて幻想的な雰囲気に。「アイシテル!」と叫ぶルイス。次の曲の準備として、彼はおもむろに手元のPCでステージ画像を危険な雰囲気の赤い画面へと差し替えた。裏方作業丸見えで危険さはダウンした。

特徴的なイントロが耳に残る“マイ・ビュイック”のリズムに合わせて、バッキング・ガールズがカクカク機械的なユルかわダンス、ルイスの異常な手数のドラム・ソロ、アグレッシブなホーン隊やキーボードのソロなどで会場はさらにヒートアップ。バッキング・ガールズの「I love you so good」の歌声が祝祭をフィナーレへと導く“パーク・ユア・カー・オン・マイ・フェイス”では、ドラムは唸りを上げ、ホーン隊も全力で総参戦。楽しげに歌ったルイスは、笑顔で踊りまくるフジロッカーたちをビデオ・カメラで子どものように撮影していた。

「One more song」とルイスはバス・ドラムのビートを刻み始め、“フリーキー・タイムス”へ。終盤ドラムは加速し、トランペットも火を噴く。ホーン隊で最後はゴージャスに締め、ルイスが観客一人ひとりを指差し「アリガト! アリガト!」を連呼。「アイシテルヨー!」と終演……したかに思われたが、全曲演奏し終えたもののまだ時間があるということで、「次やる?」となんともう1曲“ドゥ・ザ・シングス”をプレイ!

アーバンなキーボード・サウンドからホーン隊のソロ7連発、キーボード、ベース、そしてルイスのドラム・ソロへと超絶スキルのファンキー頂上決戦リレーはいつまでも聴いていられる最強のグルーヴだった。こうなったら会場にいるフジロッカーは体力の続く限り無敵スター状態で踊り続けるしかない。大歓声に包まれた超人テクニカル集団のスーパーマリオパーティはこうして終わりを告げた。マンマミーア。

2日目の大トリにて、苗場に最高のグルーヴを生み出したルイス・コール。彼の超絶ドラミングは、手数が多くとも“すべての音”が寸分の狂いもなくジャスト・タイミングだった。そして、内容山盛りすぎのステージと彼のサービス精神、そのすべてがジャストでフジロッカーの心を鳴らしていた。

<Set list>
1. F it Up
2. Thinking
3. Quality Over Opinion
4. Bitches
5. I’m Tight(即席)
6. Message
7. Falling in a Cool Way
8. Night
9. My Buick
10. Let It Happen
11. Park Your Car on My Face
12. Freaky Times
13. Doing the Things

[写真:全10枚]

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7/29 SATWHITE STAGE