LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/30 SUN
BLACK MIDI
思わず頭を抱える、超絶技巧の数々
昨年のジャパン・ツアーも好評だったBLACK MIDI。音楽やプロフィールから漂う只者じゃない感じに惹かれて、興味津々でホワイトステージへ向かう。彼らを待つ数分間、周囲の空いていたスペースはものすごい勢いで埋まっていき、あっという間にぎゅうぎゅうになってしまった。
ステージは下手からキャメロン・ピクトン(Ba、Vo)、ジョーディ・グリープ(Vo、Gt)、モーガン・シンプソン(Ds)が並ぶ。ジョーディは浴衣や民族衣装、バスローブを思わせる形状の衣装をまとい、独特なオーラを放っている(それを脱ぐと、水兵のような衣装だったのだが、それも非常にかっこよかった)。“Welcome to Hell”が始まると、ソリッドなギターカッティングが炸裂し、鈍くて黒くてギラついた空間が会場を包み込む。ハードなギターとキャメロンの咆哮が重なり合う“speedway”、骨太ベースとタイトなドラミングがたくましい“sugar/tzu”など、いとも簡単に、シームレスに、次から次へとプレイされていく。
展開のめまぐるしさと、その予測不能感はライヴでよりいっそう高まる。彼らの曲は、印象的なメイン・フレーズを起点に楽曲がスタートし、いったんトーンダウンのうえ、セッションが研ぎ澄まさていく。そして最後はダンサブルなドラミングで収束……そんな筋書きもあるように感じるが、それが実際、想定通りのものなのか、インプロゼーションなのかもよくわからない。とにかく、展開、構成、リズムの鬼だと思った。
キャメロンの咆哮とジョーディの早口な歌いまわし、その対比やキャラクター性も、このバンドに緩急をつけていて、ライヴで見るとよりその差が引き立つようにも感じた。モーガンのドラムは力強く好奇心旺盛で、各パートの首に噛み付いては話さない猛獣のようだ。それでいながら、このプログレッシブな展開をスムーズに運んでいく、指揮官のようでもある。キラー・チューン“John L”は汗だくなドラミングに、うねるようなベース、ギターのメイン・フレーズは悲鳴のように鋭く甲高く、想像以上に変態的なサウンドだった。ステージ前方はもうずっと前からモッシュピットで、オーディエンスは感情のままに体をぶつけ合っていた。
はっきり言ってしまうと、すごすぎてまったく理解が追いつかない!数ある引き出しの中から一瞬でベストを引き抜き、それを世に放つスピードの速さ、あんなに重厚で個性的な世界をたった3人で作れるテクニック……思わず頭を抱えてしまった。BLACK MIDIは、耳や頭で理解するというより、魂で感じるような音楽なのだろう。
[写真:全10枚]