LIVE REPORT - WHITE STAGE 7/30 SUN
WEEZER
ウィーザーの歴史を振り返る至福の旅
フジロック’23の終わりが近づいている。毎年この時間帯になると寂しくなってくるのは私だけではないだろう。苗場にいる時間がより愛おしく、残りの時間を大切にしようとも思えて来る時間帯だ。
フジロック最終日のホワイトステージの大トリを飾るのは、WEEZER(ウィーザー)だ。結成の1992来、今年て31年目となる大ベテランバンド。コンスタントに作品リリースし続けており、昨年はヴィヴァルディの「四季」に影響を受けた『SZNZ / シーズンズ』というプロジェクトを立ち上げ、春、夏、秋、冬と季節毎にEPをリリースするという創作意欲衰え知らずのハードワーキングなバンドでもある。そんなウィーザーが初出演の2009年来14年ぶりに苗場へ帰還だ。
開演2分前になると「WEEZER」の文字ステージに映し出され、TOTOの名曲“Africa”が夜風に心地よく流れる。TOTOは今月来日ツアーをしていたのでナイス選曲!と思ったが、この曲は開演のSEとして定番のようだ。暗闇のステージに稲妻のようにライトが随所で差し込まれ、ラジオのチャンネルを次々に切り替えていくようなイントロがしばらく続く。パッとステージに黄色の鮮やかな照明が付き、トップバッターの曲“My Name Is Jones”がはじまった。瞬間に笑顔が弾けるオーディエンス。完璧なスタートだ。続いて重たいリフが刻まれ“Beverly Hills”がスタート。私の目の前にお父さんと思われる人に肩車をして嬉しそうに手拍子をしている小さい女の子がいたのが忘れられない。ウィーザーはやっぱり曲がいい。このシンプルでキャッチーなメロディライン。子供から大人まで楽しめる佳曲をたくさん持っていることがウィーザーの真骨頂だ。
疾走するインストチューン“Return To Ithaka”をバンドのリーダーにしてフロントマンのリヴァース・クオモがエディ・ヴァンヘイレンのごとくライトバンド奏法で締めくくると、耳馴染みのあるリフが奏でられる。“The Good Life”だ。今夜はみんなが聴きたい曲をすべてやってくれるんじゃないだろうか。
ここでリヴァースお得意の流暢な日本語MCタイム「よー!日本!元気?ウィーザーの歴史を振り返る旅に出ます。じゃあシートベルトをしめて!」と重ためリフを刻んでから泣きのフレーズを奏で“Pork And Beans”へ。続く“Pink Triangle”の流れはウィーザーの名刺だった「泣き虫ロック」を存分に堪能できる展開だ。お次は“El Scorcho”とコミカルな方向にも振ってくる。疾走パートにフロアは大盛り上がりだ。
リヴァースのソロ曲“Blast Off!”の中で、リヴァースがおもむろに腕立て伏せをするパフォーマンスをして聴衆の笑いを誘う。バックの映像が1stアルバムを想起させる水色になるとあのフレーズが飛び出した。大歓声に包まれる中“Undone – The Sweater Song”をパワフルに披露。
リヴァースによる日本語MCタイム再び。「美味しい水。日本の水、一番!」とオーディエンスを笑顔にし「(ギターテックに)ギターを上げてください。全然分かりませんね…」と英語でその指示し「少しレアな曲を歌います。グリーンアルバムに入っている曲」。LAのハリウッドサインの山の近くに住んでいた時に近くに住み付き合っていた彼女との別れの寂しい気持ち歌にした“O Girlfriend”だ。歌とアコギ1本でしめやかに披露し涙を誘う。ありがとー!次もアコギ1本で歌うところから入る“Only In Dreams”。導入部からギターが荒々しく吹き荒れる転調するパートへの曲展開は、ウィーザーの楽曲が一筋縄ではいかぬと主張しているような曲だ。“The Greatest Man That Ever Lived(Variation On A Shaker Hymn)”をこの曲が入っているレッドアルバムと同様のハットを被って披露するリヴァース。組曲のような展開を持つ曲。難解だが大好きだ。会場のみんなと楽しく「Hip hip」と合唱し“Island In The Sun”を完了。
「苗場、いいところですね、日がさす、大雨来る、みんな楽しんでる?」と日本語でリヴァース。今の瞬間にぴったりのキーワードと“Perfect Situation”を「ohoh ohoh ohhhh hoooo」と大合唱し、バンドと聴衆は完全に一体となる。リヴァースがピアノで弾き語る“All My Favorite Songs”は場に感動を生み出し、“Say it Ain’t So”ではサビを大合唱し、フロアがここまでのセットで一番の反応を見せた。
“Run, Raven, Run”のソロパートのみを披露した後、重量級のリフが刻まれ“Hush Pipe”が投下された。バンドから繰り出されるビートに呼応するようにフロアは聴衆によるジャンプで大きく波打った。
「ジャパーン!We love you! また会いましょう」とまんまなタイトルの“Thank You And Good Night”
がザ・ヘヴィメタルなリフがザクザク刻まれはじまった。かなり難解な展開を見せる曲だが、ノリやすいサビパートにダンスしステージに向かって手を振り、ハンドクラップをするオーディエンス。ヘヴィメタ調の激しく締めくくってステージを後にした。
すぐに戻ってきてアンコールタイムに突入。“The Waste Land”の入りからポップなフレーズが流れ、“Surf Wax America”へ流れ、そのまま“Buddy Holly”へ。このウィーザー印のパワーポップ2連弾にあがらない人はここには一人としていない。笑顔で大合唱し、踊り、ジャンプし手を叩く。これにて至福の1時間半の旅も終着点を迎えた。
楽しくって、ほっこりし、泣けて、時に不安になったりもする。ひとつのセットでここまで色んな気持ちさせられ、感情が揺さぶられることがあるだろうか。最終日の大トリにドンピシャな完璧なステージを提供してくれた。
ウィーザーはこの後も日本に滞在し単独公演を行うことになっている。8/1(火)に大阪で、8/2(水)は東京だ。今日のライヴを目撃した人もしていない人も、みんなで会いに行こう!
[写真:全10枚]