LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 FRI
Alexander 23
しっとりとしたあたたかい余韻を残しながら
太陽が照りつけじめっとした暑さを感じる、フジロック初日の昼頃。レッド・マーキーに登場したのはシカゴ出身のシンガー・ソングライターのアレクサンダー23だ。
まずは“Cosplay”からライブはスタート。ドラムとエレキギター弾き語りに少し音源を織り交ぜた簡素なセットだが、だからこそブリッジミュートで刻むAメロとかき鳴らすサビのコントラストが光る軽やかなサウンドが気持ちいい。続くポップチューン“Girl”でも、しきりに僕らを指差し身振り手振りでコミュニケーションしながら、最後には「フジロック・メイクサムノイズ・レッツゴー!」と叫び、ギターでフロアを鼓舞。
幼い頃から影響を受けてきたというジョン・メイヤーのような小気味の良さも感じさせる、緩急の効いた彼のギタープレイ。「マイネーム・イズ・アレクサンダー・ニジュウサン」なんて話す姿も親しみやすく、“Crash”や“Cry Over Boys”でもなんだか自然と身体が動き出す軽やかなサウンドメイクは、ガンガンと低音を鳴らさないからこその気持ちの良さなのかもしれない。「ここは弾いてないんだよ」みたいな仕草を度々見せるのもなんだか可笑しかったが、ギターフレーズは音源にも託しつつ、弾くべきところは自分でしっかり弾くスタイルは、バンドセットにはない独特のフィーリングがある。
パワーポップ風味の“If We Were A Party”でも、やはりどことなく爽やかなので、じめっとした夏の空気にもとてもよく馴染んでいる。それにしたってギターソロが抜群に決まっているアレクサンダーのライブ。クリス・マーティンなんかも彷彿とさせるしっとりとした歌声の“Brainstorm”や、「簡単だから繰り返してみてよ」とみんなでコーラスを歌った“Sad”でも、詰めかけた人々はうっとりと感じ入るような表情で彼を見つめているのが印象的だ。いい顔してるなあ、みんな。
そしてティアーズ・フォー・フィアーズのカバー”Everybody Wants To Rule the World”も、古き良き詩情と20sの軽やかなポップネスを兼ね備える彼だからこそ自分の曲のようによく似合っていたし、デビュー曲“Dirty AF1s”もレッド・マーキーを包む哀愁にしみじみ。でも「カンパイ!」って水を飲む姿なんかもとても愛らしい。
昨年の初来日のショーケースでは「#Alexander23の深読み」というテーマで7人のインフルエンサーたちによって和訳された歌詞が掲載され、私的な葛藤や切ない気持ちが滲む歌詞も注目されたアレクサンダー23。言語の壁もあるし初めて観た僕はまだ彼のことをよく知らないけど、身振り手振りを交え情感豊かに弾き語る彼の姿を通して、なんだか少し通じ合えたような気持ちにもなる。最後に披露した大ヒット曲“IDK You Yet”は、そんなしっとりとしたあたたかい余韻をレッド・マーキーに残してくれた。
[写真:全10枚]