FUJIROCK EXPRESS '23

LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 FRI

YVES TUMOR

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Posted on 2023.7.28 22:00

孤高な音楽がサイケデリックに響き渡る

始まる前から超満員、湿度も手伝ってかRED MAQUEEには熱気が溢れ、今から始まるステージへの期待値の高さを物語っているようでもあった。Yves Tumorと言えば、今年リリースされた『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』に、Coachella Festivalへの出演と、すっかり魅了された方も多いのではないだろうか。

3分押しでのスタート。Yves Tumorが銀色のマイクで金切り声のようなシャウトを出し、ひとりずつ登場するメンバー。大きな歓声に指笛の音が送られ、前方にどんどん人が押し寄せてくる。
“God Is a Circle”から演奏が始まる。ドラムパッドにじっとりとしたベースの音。ステージを左右にゆったりと練り歩きつつ、この場の雰囲気を確かめるような歌声は、サイケデリックに怪しく響く。耳に残る「same old dance」のリリックに相応しく、観客たちも身体を揺らし、目の前の音楽と一体になっていくのがわかる。
新アルバムから“Echolalia”、“In Spite of War”と続いていく。突き刺すようなソリッドなサウンドに妖艶なYves Tumorの歌声、ときに更にRED MAQUEEを魅了し、躍らせに来る。図太い複数の音に乗る力強いYves Tumorの歌声は、音源とはまた違う表情を見ることができ、彼らがライブバンドであることを思い知らされる。そりゃあ、あれだけCoachellaでも歓声が上がるでしょうよ。そう思いながらステージを眺めていたが、日本の観客も負けないくらいの歓声が上がり、どんどん会場が熱を持ち始めているのがわかる。

今回の出演でコロナ以降では初のライブとなるが、その間にリリースされた“Jackie”、“Gospel For A New Century”では、重低音に身を任せながらも、ひとつずつ差し迫ってくるような音にYves Tumorに向けて降り注ぐような照明は、神の啓示とでもいうべきか、ゴスペル調であることも手伝って聖なる神そのものが今目の前にいるのではないかと信じてしまうほどの神々しい瞬間であった。
ときにドラムのアレンジが会場の空気を活かし、問い詰めるようなじっとりとした高音の歌声には、うなりっぱなしであった。もちろん、それぞれのパフォーマンススキルが高いというのもあるが、Yves Tumorがステージを歩くだけで絵になる目が離せなくなってしまう。シルバーのきらびやかなエプロンを少しずつ脱ぎ去っていき、結果的にブラックのローライズパンツのみになるのだが、思わず釘づけになる。目が離せなくなってしまう。

ときには観客に向けてお菓子を投げ配るというキュートな一面を見せつつ、シンセが合うアクセントとなる“Fear Evil Like Fire”をしっとりと聴かせる。ステージに横たわりながら魂に叫びとも言えるような絶叫をするYves Tumor。1時間という限られた時間のなかでの見せ方が上手いなと思わされる。
“Lovely Sewer”では、地を這うようなベース音に、駆け抜けるようなドラム、Yves Tumorの対となるベース・Gina Ramirezのクリアな声との掛け合いが気持ちいい。続く“Meteora Blues”でもステージを飛び出し、観客により近い距離でYves Tumorが歌えば、会場は更なる盛り上がりを見せる。彼の生み出す音楽は常に孤独とか寂しさが内包されているように思う。だからこそ、優しく、温かなのだろう。リヴァーブのかかる、ささやくような声にChris Greattiのギターソロがエモーショナルに響く。

ミラーボールが輝けば、“Parody”、“Heaven Surrounds Us Like a Hood”、“Operator”と新アルバムからの楽曲が続き、更に会場は温まっていく。ときにマイクスタンドを天高く掲げ、雄叫びをあげ、空間を破壊していくようなサウンドに身体を委ねながら聴き入ってしまう。彼なりの福音や、讃美歌のようにも感じられた瞬間だった。
リズミカルなドラムが印象に残る“Secrecy Is Incredibly Important to the Both of Them”では、Yves TumorだけではなくギターのChris Greattiがステージから降り、自分たちの立つ場所を拡張させていく。“Ebony Eye”は、物語の終焉のような一曲であった。壮大で耳に残るメロディラインにGinaの透明感のあるコーラス、そこに乗っていくYves Tumorの歌声が、やはりどこか寂しく、気づいたときには天に召されそうな瞬間である。

最後の“Kerosene!”では、真っ白なマフラータオルで各サポートメンバーの汗を拭いてあげるというサービス精神旺盛なYves Tumorに微笑ましさを覚えながら、各メンバーのソロやアレンジを十分に堪能することができた。もう十分なんじゃないか。あの演奏を見た全員が、彼の生み出す孤独で寂しい音楽に心を奪われてしまった1時間だったように思う。

[写真:全10枚]

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7/28 FRIRED MARQUEE