LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/28 FRI
OVERMONO
オアシス全体の風景を彩る、DJデュオの鮮烈なサウンドスケープ
25時過ぎのオアシスでは、座って談笑してる人や(今日のベストアクトとか話してんのかな?)、うとうとと眠りこける人、4年振りのGAN-BAN SQUAREに詰めかける人もたくさん居て、去年よりもラフで雑多な感じは2019年以前のフジロックのようでなんだか懐かしくなる。そしてレッド・マーキーの深夜の部でも国内アーティスト中心だった昨年に比べ、海外のトップDJが揃い踏み。夜を遊び倒したい僕らにとってこんなにワクワクすることはない。Vegynに続いてさらに深まっていく夜に、Overmonoの二人が登場!待っていましたとばかりに飛び交う大歓声!
テセラことエド・ラッセルと、トラスことトム・ラッセルの兄弟によるウェールズのDJデュオ、Overmono。DJブースごと投影された鮮烈なライティングの中、“Gunk”や“If U Ever”でじりじりとグルーヴを刻み、霧がかかったような幻想的なサウンドからブレイクで一気に解放される緩急に、手を振り上げお酒を掲げ、レッド・マーキー前方はみんなが入り乱れている。
向き合って見つめ合いながら踊るカップルがいたり、僕もビートに任せるままに外国のお姉さんと踊ったりと、音に触発されて身振り手振りだけでつながっていくクラブナイトの情感。ここにいる人の数だけそれぞれの物語が生まれているんだろうなあ。それがテクノやブレイクビーツ、ドラムンベースも入り乱れるバッチバチのビートの中で繰り広げられているのだからたまらないでしょうそりゃ。
兄弟だけに息のあった抜き差しでレッドを彼らのサウンドで染め上げるOvermonoの二人。最終盤ではタオルをぶん回したりもしていたが、取り立てて煽るでもなく虎視眈々とDJ卓に向かう様子は職人気質も感じ、照らされるシルエットもなんともエモーショナルに映える。
“Blind Date”や“So U Kno”などの自身が関わる楽曲だけではなく、様々な楽曲が飛び込んできたDJセットだが、声の扱い方に通底したトーンが感じられる彼らのプレイ。ラップというよりポエトリーに近いヴォーカルや、カットアップ・ヴォイスが飛び交う様子は、意味というより言葉の感触と戯れるような肌触りで、こんなところは例えばDÉ DÉ MOUSEなんかも彷彿とさせる。ほとんど非言語的に直感に訴えかけるからこそ、潜在意識をくすぐられて想像以上に軽く動く自分の身体にびっくりするような、あの感じだ。これが最高に楽しいんですよ。
ならもう一杯飲んじゃいましょうとばかりに少しレッドの外に出てみると、オアシスの広いスペースで踊っているグループもちらほら。レッドの爆音はオアシス中に響いているから、いる人の数だけ過ごし方も多種多様で、爆音の中寝ている人を見て「これも幸せだろうなあ」となんだか楽しい気持ちにもなった。オアシスをはさんで反対側のGAN-BAN SQUAREから聞こえてくるStones Taro & Lomax (NC4K) PAL. Sounds Showcaseのキックがなんとなく折り混ざるこの感じも、ある意味ハイライトとしてずっと僕の中に残っていきそうだ。このごっちゃごっちゃした感じこそが深夜のフジロック!愉快で仕方がない。
レッドに戻ると緑や青の鮮やかなレーザーが場内に投影されて、一層エモーショナルにブチ上がってる様子。そして最終盤では“Bby”でじっくりじっくり溜めてから、“Good Lies”、“Is U”と彼らのクラブアンセム3連発。これも1時間近くに渡って幅広い楽曲を繰り出すDJを浴びてきたからこそ鮮烈に映えるというもので、作品の解釈が大幅に広がっていくDJセットならではの醍醐味を堪能しながら、最後まで踊り倒してレッドを後にした。
「GAN-BANの太郎さんのところにもちょこっと寄ろうかな」とか「帰り道はルーキーやパレスも気になるな」なんてことを考えながら歩く足取りも軽い軽い。疲れさえもスパイスに変わっていくような深夜マジックも楽しみにしながら、明日も明後日もいろんなステージを巡って、今のオーヴァーモノのような最高のプレイを浴びる贅沢に胸を躍らせる。さあ、深夜のフジロックを遊び倒していこうじゃないか。
[写真:全10枚]