LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/29 SAT
KOTORI
心にまっすぐ飛び込んでくる、KOTORIの演奏を聴け!
リハーサルが終わり、「めちゃくちゃ二日酔いです!昨日楽しみすぎちゃいました!」という横山優也。本番まで少し時間があることから、“羽”を披露するというKOTORIなりのサービス精神に、早速魅入られてしまう。この日のRED MARQUEEは、人の多さも手伝ってか、立っているだけでじっとりとした暑さがまとわりつく。爽やかなギターのサウンドが気持ちよく感じるほどであった。
「ジャパニーズ・パーフェクト・バンド、KOTORIです!よろしく」という挨拶を合図に、軽快なドラムロールで始められたのは、“GOLD”。KOTORIの音楽を聴いていると、どうしたってワクワクしてしまう。もちろん、本人たちもフジロックに対して強い思いを持っているのもあると思うが、これからどんな演奏が見られるのか?必ず素晴らしい何かが起こる気がしてたまらない。純粋に心から楽しめるような音楽を真っ直ぐに聴かせてくれるバンドなのだろう。どこまでも伸びていくシャウトにRED MAQUEEのテントが揺れる。観客たちも、ステージに向かって各々が手を伸ばす。掴みはばっちりである気がした。
どこか懐かしさを覚える上坂仁志のギターのイントロの“1995”では、クリアでありながら爆発音のような疾走感溢れるサウンドが心地よく響く。会場が更に熱を持ち始めていることがわかる。続く“unity”を聴いていても同様のことが言えるが、佐藤知己と細川千弘の骨格のしっかりした余裕ある演奏、観客たちひとりひとりの胸にすっと飛び込んでくる歌詞・歌声は、ライブを見ること、音楽を楽しむことの純粋な気持ちを思い出させてくれるのだと思う。それもそのはずで、KOTORIといえば、ストイックにライブをし続けている。前回出演の2021年よりもバンドとして更にスケールが大きくなっているように感じた。ずっとずっとドキドキが止まらない。目の前の広がっている光景が、キラキラとした夢とか幻とか届かない何かみたいで、なんだか泣きそうになってしまう。
耳馴染みのいいサウンドがしっとり聴かせた“SPARK”、絶対にフジロックでやりたかった曲だったという“REVIVAL”。ステージ上で繰り広げられるエモーショナルな感情に、胸をグッと掴まれる。力強いシャウト、眩しい光、観客たちも音で震える空気を感じながら、それぞれが身体を揺らしている。
心を優しくくすぐるギターのメロディには、思わず大きな声が出る。“トーキョーナイトダイブ”だ。曲名通り、ブルーの照明がまるで夜のよう。ほんの少しの孤独や寂しさを覚えるような一曲。それの呼応するように観客たちも手を上げ、会場全体が曲に合わせてゆっくりと一体となっていくようでもあった。
彼らの表題曲のひとつである、“素晴らしい世界”の演奏が始まれば、前方にどんどん人が押し寄せてくる。ここにいる観客の多くが、Aメロの時点で大合唱をしている光景には笑いそうになってしまった。スピーカーから聴こえる横山の声に交じって、周囲の人の声も聴こえてくるのだ。ステージを降り、ダイブをしながら歌う横山。まるでワンマンライブみたいな瞬間だった。まあ、全然フジロックなんですけどね!(笑)
ミラーボールがきれいに回る“We Are The Future”は、前回のRED MARQUEEで1曲目で演奏された曲だが、こうして2年越しに聴いているとまた違った印象を持つ。コロナ禍があって、規制のないフジロックが戻ってきて、不安や心配ごとがより少ない状況で音楽を楽しめていることもあるのだと思うが、彼らも自分たちにバンドの在り方に向き合い続けてきたからこそ、これだけ身体に染み渡るような音が出せるのだと思う。
「一番でかい音出して帰ります!」と、“YELLOW”で50分間のライブが締められる。確かに音はバカみたいにでかくって、笑ってしまう。メンバー全員が持ち合わせているエネルギーをすべてステージに置いてくるかのごとく、かき鳴らし、叩き、すべての音に感情を乗せる。ライブを見る度に、KOTORIをどんどん好きになってしまう自分がいる。それは私だけじゃなくて、あの演奏を目撃した全員がそうなのだろう。RED MAQUEEを去る観客が、口々に「やばかった!」「すごかったよね……。」と言い合っているのを聴いていると、凄まじい瞬間に立ち会ってしまったのだと強く実感させられた。
[写真:全10枚]