LIVE REPORT - RED MARQUEE 7/30 SUN
NIKO NIKO TAN TAN
Posted on 2023.7.30 13:37
ここが入口!どんどんデカいステージに進出予定!
最終日のRED MARQUEEの一番手、NIKO NIKO TAN TANを見ようと、ゲートオープンを待つ人がそこそこいる。去年、苗場食堂で見た時はエクストリームではありつつ、そこまでフジロック出演に執着を感じなかったのだが、その後、バンドの輪郭がどんどん明確になり、音楽性で言えばKing GnuやTempalayがJ-POPにもたらしたロックとファンクの混交やサイケデリックな音処理がなされたポップナンバー好きをどんどん獲得してきた。はっきり言ってこんなに上昇志向というか、上に上がっていきたいバンドだとは去年の段階で思っていなかった。
ステージ上にはOCHANのシンセやパソコンのセットとマイクスタンド、Anabebeのドラムセットが並列。生楽器はドラムだけなのに、佇まいは強力な2DJのセットみたいに見える。そこにスティックを持った腕をぶん回すAnabebe、ハンズクラップを促しながらのOCHAN。このハイテンション&オープンマインドがもう去年と全然違う。スターターは“
胸騒ぎ“。バンド名のロゴがオレンジ色の背景に抜かれた映像を背負って、初っ端からどんどん上げていく。Anabebeのドラミングはパワフルで正確無比だが、引き締まったサウンドメイクで音が大きすぎないのも良い。チームとしてのライブの完成度がすこぶる上昇している。哀感が滲むメロがこのバンドらしさを表す”多分、あれはFly“は後半にラウドロックばりのビートを投入して飽きさせない。リズムチェンジが生音なのはやはりスリリングだ。
冒頭から煽りに煽るOCHANが感慨深そうに「バンドにとってずっと憧れてきたRED MARQUEEにたてました。一生忘れられないステージになると思います。みんなも楽しんで!」と、この場所を愛するミュージックラバーらしい謝辞を述べた。いやー、こんなに自分の思いをまっすぐ話す人だったっけ?と、こちらも感慨深くなる。
レパートリーにセンチメンタルなラブソングが多いニコタン。悲しい感情とも違うのだが、泣きながら踊るという感覚がわかる人に“琥珀”はすごく沁みると思う。届かない人の心の中を歌うのにOCHANのファルセットは抜群のハマりを見せる。センチメンタルなナンバーは次の“琥珀”につながり、ゆらゆら上がるオーディエンスの腕が共感を示す。そんな光景を見て二人とも嬉しそうだ。最高!を連発しつつ、しかしMCでは「ここは入口なんで、もっと大きなステージでやっていきますんで」と、OCHANはどこまでも強気。「ルーキーに何度も落ち続けて、路上で発泡酒片手に“フジロック出たいなー”って言ってた頃もあって。次はこのステージをイメージして書いた曲です、“Jurassic”」と曲振り。今年の夏フェスも各地に出演している彼らだが、間違いなくこの新曲はこの場に為に書き下ろされた。アーティストをそんな気にさせるのがフジロックだと思う(昨夜、Vaundyが新曲を初お披露目したのもそういうことだ)。“ドンドン・タッ!”のリズムはクイーンの“We Will Rock You”を想起させるが、Anabebeの叩くドラムはもっとプリミティヴ。大きなステージで見てみたい、ニコタンの次のフェーズだ。さらに大きなステージ、それも夜に見たくなる“Paradise”を投下。もうダンスは止まらない。
OCHANの曲作りの引き出しの多さは“同級生”の可愛げと機能的なダンスビートが融合した展開で、そこまでとちょっと違うレイヴっぽい空間を作る。なんというか電気グルーヴの“虹”みたいなニュアンスというか。そういえば彼らがVANSの[Musicians Wanted]でアジアのトップ5になった際、審査員の一人だったアンダーソン・パークが「バンドだけど二人で、レイブっぽいところも良い」と評していたのを思い出した。それはイコール音楽の自由度だと思う。
もはやちょっと動くだけでも汗が吹き出すRED MARQUEE内だが、時折風が吹き抜けていくと、最高に気持ちがいい。“パラサイト”でもうひと踊り。Drug Store Cowboyの手になるエイリアンと花が合体したようなカラフルなアニメーションも脳に来る。そう。カラフルだけど、どこかノイズだったりサイケデリックな風味があるのがニコタンだ。この世界観がどんどんブラッシュアップされて行くんだろうな、でかいステージでも見てみたいな、と、想像が捗る。
余力を残すまいと全力のライブを展開してきたOCHANはラストソングを前に「ありがとうフジロック!また来年も会いましょう!」、おいおい来年も出る気満々じゃないか(笑)。シリアスすぎない感傷をメロディに内包した“キューバ、気づき”で、宿願のRED MARQUEEをフィニッシュ。ハグする二人はなんだか一戦終了したボクサー(Anabebe)とセコンド(OCHAN)みたいで愛しい。
[写真:全10枚]